2018年3月6日火曜日

Chord Qutest DACのレビュー

英国Chord Electronicsから新型DAC「Qutest」を購入したので、感想とかを書いておきます。

Chord Qutest

2017年に登場したUSB DAC+ヘッドホンアンプ「Hugo 2」をベースに、バッテリーやヘッドホンアンプ部分を取り除き、RCAライン出力専用とすることで価格を抑えた据え置き型DACです。

英国での発売価格は1,195ポンドということで、決して安くありませんが、個人的に求めていたスペックにピッタリ合う商品だったので、試聴したその日にそのまま購入してしまいました。


Chord

Chord Electronicsといえば、Hugo、Mojo、そしてHugo 2という一連のポータブルヘッドホンアンプが好評を得て、今ではヘッドホンオーディオでは避けて通れない定番メーカーになりました。

それらポータブルジャンルに手を付ける以前から、Chordは家庭用据え置きの超高級オーディオメーカーとして一目置かれており、そもそも2014年に23万円で登場したHugoは、ヘッドホンユーザーからすると高価に思えますが、むしろハイエンドオーディオ雑誌にて「あの一流ブランドのChordが超低価格モデルを・・」といった方向から注目を集めました。

Chordの特色として、独創的なD/A変換技術と、過酷なスピーカーでも軽々と駆動できる強力なパワーアンプという二つの柱があり、それらの分野で長年培ってきた技術力を凝縮してヘッドホンオーディオにそのまま投入してきたことで、まさに異次元のハイパフォーマンスを見せつけてくれました。

DAC64, QBD76, DAVE

上級シリーズの据え置き型DACでは、FPGAプロセッサーにWTAフィルターとパルスアレイという独自技術を投入して2007年頃に登場したDAC64が一世を風靡したのが記憶にあたらしいです。当時はまだCDプレイヤーの全盛期で、デジタルオーディオも過渡期を乗り越えて、そろそろ決定的なD/Aコンバーターが欲しいと思うオーディオマニアが増えてきた頃です。DAC64はその後も進化しつづけ、後継機QBD76、そしてDAVEという一連のD/Aコンバーターシリーズにつながっています。とくに2016年のDAVEは、160万円という値段もあって、「究極のDAC」として話題になりました。

Chordette Qute HD, 2Qute

そんなChord社の据え置きオーディオ部門にて、エントリーモデルとして存在していたのがChordetteシリーズで、基本的に、数年前に登場したフラッグシップ機の技術を低価格な小型パッケージで提供するというコンセプトでした。

このシリーズの初代DAC Qute HDは、ちょうどDAC64がQBD76に交代する時期に登場しました。ちなみに当時DAC64は40万円、QBD76は70万円くらいでした。そんな高嶺の花だったChord DACの音が、20万円を切る低価格で手に入る、ということが凄かったです。

Chordの場合、FPGAプロセッサーベースなので小型化に適しており、廉価版といえど、デザインを真似るだけでなく中身もしっかりとWTAフィルターやパルスアレイといったChordらしさが活かせるのが大きな強みです。

時系列としてはQute HD (2012)→ Qute EX (2014)→ 2Qute(2015)→ Qutest (2018)という流れです。Qute HDはDAC64の経験を元に低価格化したモデルで、Qute EXはそれをPCM384kHz・DSD128に対応させたマイナーアップデート版、そして2QuteはHugo、QutestはHugo 2をベースに作られています。

私自身は当時Qute HDをずっと愛用していて、Qute EXへのアップデートもやりましたが、残念ながら2Quteは購入していません。

Qutest

ChordのD/A変換は極めて独創的な手法を使っているということは、以前から何度か紹介してきましたが、今回Qutestの中身はHugo 2と同等の回路を搭載しているとの事です。

細かな点については、ヒマがあれば以前のHugo 2のレビューを参照してくれると嬉しいのですが、要約すると:
  • Xilinx Artix 7 FPGAの演算処理にて、49,152タップの16FS WTA1→256FS WTS2という二段のアップスケールフィルターで、デジタルデータを限りなく原音に近く再構築する
  • 10素子のパルスアレイ回路にて、FPGAの出力をそのままアナログ的に増幅し、極限まで無駄を省いた最短ルートのアナログ出力

といった二つのポイントが独創的と言えます。

他社の高級DACといえば、ESSや旭化成など市販のD/Aチップを通し、出てきたアナログ信号を何段階にも及ぶオペアンプやディスクリート構成のアナログ増幅回路を通して、メーカー独自の「味付け」を演出するという手法で「重量と付加価値」を高めるのですが、Chordの場合は、一つの素子を通すたびにノイズが増えるという根本的な問題を念頭に置いて、外堀を固めて、信号は最短ルートで仕上げる事を大事にしています。

もちろん回路をあまりにも簡素化しすぎると、今度はアンプとしての役目を満足に果たせなくなるので、そのバランス感覚が設計の要のようです。

音質設計にてQutestとHugo 2は兄弟モデルのようなものですが、逆にHugo 2から変わった所というと、まずヘッドホン出力が無くなり、ライン出力のみなのでボリュームは固定され、ヘッドホン駆動のための高ゲインアンプが不要になったので、低ゲイン・低ノイズ化に向けて作り直されたようです。

さらに、据え置き型なので内蔵バッテリーは排除され、機能面ではBluetoothやクロスフィードエフェクトも無くなりました。

純粋な据え置き型ライン出力DACにすることで、Hugo 2の定価1,799ポンド(日本での発売価格30万円、現在の市場価格は約26万円)から、Qutestは定価1,195ポンドと大幅に値段が下がってます。

パッケージ

せっかくなので開封写真も撮っておきました。パッケージは過去作品と比べてずいぶんオシャレになっています。(Qute HDとかはただの白いボール紙にスリップケースのみでした )。私が買ったのは英国モデルなので、日本での正式輸入版とは内容が異なるかもしれません。

スリップケース

内箱

黒い外箱はロゴや写真のレイアウトもカッコよくモダンなデザインです。がっしりした内箱は上蓋が開いて、本体の下の引き出しにアクセサリーと説明書が入っています。

引き出しにアクセサリーと説明書

付属品

付属品はメッシュ素材の袋に入っており、各国対応のACアダプターと黒いUSBケーブルのみです。Qutestは単なるUSB DACなので、これ以上何を求めているというわけでもないのですが、高価なわりに、ちょっと味気ない感じはします。できれば後述するBNC→RCAアダプターは付属してほしかったです。

デザイン

これまでのChordの製品といえば、ゴツい腕時計みたいな派手なシャーシが有名というか、そのデザインが苦手で手を出さないという人も少なくなかったと思いますが、今回Qutestはずいぶんスマートなデザインになっています。

あいかわらず重厚なアルミ削り出しシャーシで、過去のモデルではシルバーとブラックが選べる事が多かったのですが、Qutestはマットブラックのみになりました。このブラック仕上げの質感が本当に素晴らしく、よくあるザラザラしたアノダイズやスプレー塗装というよりは、むしろセラミックの塊を削り出したような細やかな手触りです。

QutestとHugo 2

Chordらしく内部基板が見えるガラスレンズ窓は健在ですし、MojoやHugo 2から導入されたガラス玉のようなボタンもあります。Hugo 2も初代Hugoと比べるとずいぶん格好良くなったと思いましたが、QutestはそんなHugo 2の角型デザインを継承して、さらにシンプルに洗練されたようなイメージです。

Chordロゴ

右上に輝くクロームエンブレムは、これまではDAVEなど上位モデルのみの特権で、ポータブル機や旧モデル2Quteでは無かったので、ちょっと嬉しいです。

中を覗くことができます

中心の窓ガラスは凸レンズなので、内蔵LEDの光でガラス全体が綺麗に発色するような効果があります。ボタンの発光と合わせて、それなりに眩しいので、フロントボタンを同時押しすることで明るさを落とす機能もあります。

底面にはゴム足がついています

Hugo 2と比べるとかなり厚く重いです

サイズはコンパクトですが、結構な厚みがあります。Hugo 2もポータブルとしては重い450グラムでしたが、Qutestは770グラムのアルミ削り出しなので、持ち上げると想像以上に重く、底面は8個のゴム足でしっかりと安定しています。

デジタル機器であっても、しっかりしたハウジングと振動対策はとても重要だそうで、以前Hugo 2の話では、回路中のノイズ原因を一つ一つ解決していって、どんどんノイズフロアを下げていくと、最終的には、抵抗の熱雑音と、水晶オシレーターなどへの外来振動ノイズが観測できるそうです。

QutestとHugo 2の比較

これまでChordといえば、ライン出力が3Vrmsと若干高めだったのですが、Qutestでは1・2・3Vrmsから選べるようになっています。

やり方は、電源投入時に、立ち上がるまで待ち時間が結構あるのですが(16秒くらい)その間にフロントボタンを同時に押すと、色が変わり、それでライン出力電圧を変更できます。1・2・3Vrmsがそれぞれ赤・緑・青です。一旦設定すると、もう一度同じ手順を行うまでは再起動しても維持されます。

入出力は据置き用として理想に近いです

入力端子はUSB、BNC 1、BNC 2、角型光デジタルの順番で、フロントのINPUTボタンでそれぞれ「白・黄・赤・緑」で入力切替が行えます。RCAアナログ出力の隣には5V電源入力用のマイクロUSBがあります。

マイクロUSB電源を接続すると起動します

電源供給にマイクロUSBを採用したのは面白いです。Qutestはバッテリーを内蔵していませんし、電源スイッチも無いので、マイクロUSBケーブルを接続することで電源が立ち上がります。以前使っていたQute HDと比べると発熱はとても少なく、触っても常温くらいなので、私は電源を入れっぱなしにしています。

付属品のACアダプターはずいぶんチープな印象ですが、Qutestの内蔵電源レギュレーション回路がしっかりしているから、外部電源のクオリティには影響を受けないという自信の現れでしょうか。オーディオマニア的にはもうちょっとカッコいいUSB電源が欲しくなります。

付属アダプターは5V 2.1Aでしたが、Qutestスペック上の消費電力は1Aと書いてあります。実際に使用中に測ってみたところ、0.47~0.57Aくらいを消費していたので、起動時のマージンなどを考えると、1Aで十分といったところでしょう。ちなみに上の写真では近場にコンセントが無かったため、USBモバイルバッテリーを使ってみたら、ちゃんと起動しました。

RCA出力端子

アナログ出力端子はステレオRCAのみで、XLRバランスなどはありません。端子間隔は狭いですが、写真のようにWBTでも大丈夫でした。

コンパクトサイズのシャーシにこれ以上詰め込むのは無理でしょうし、どうしてもXLRが欲しい人は大型モデルのHugo TTかDAVEを買えということでしょう。実際Chordの場合、RCAでも測定限界までの広大なダイナミックレンジと低ノイズを確保できていますし、10mとかの長距離ケーブルを使う人もいないでしょうから、バランス化のメリットが無いのでしょう。わざわざアンプ回路を二倍の規模にするだけムダになり、消費電力も熱もノイズ源も増えるので、かえって逆効果という考えかもしれません。

自宅での接続例

USBオーディオ入力はB型端子なので、ガッシリした信頼性があり嬉しいです。(Hugo 2はマイクロUSBが貧弱そうなのが嫌でした)。ちなみにUSB B端子からのバスパワー給電はできませんので、電源用のマイクロUSB接続は必須です。

今回Hugo 2からQutestを開発するにあたって、スマホやDAPではなくパソコンなどと接続する事を想定して、USBオーディオ入力を電気的にしっかりとアイソレーションすることを心がけたそうです。つまりRCAで接続する下流のプリアンプなどと共通電位で、構造的にパソコンなど上流側からのノイズ混入やアースループなどが発生しないように設計されています。

RCAデジタルケーブルを使うには別途アダプターが必要です

光デジタル入力はTOSLINK規格の制限上96kHz・24bitが上限です。説明書によるとDoPのDSD64も認識するそうですが、光でDoPを出せる装置を持っていないのでテストできませんでした。

同軸デジタル入力はChordらしくRCAではなくBNC端子を選んでいます。旧モデルでは同軸入力は一つだけでしたが、Qutestでは二つになり、INPUTボタンでBNC1・BNC2と個別に選ぶことができます。

信号自体はRCA同軸S/PDIFと同じなので、写真のように別途アダプターを用意すればRCA同軸ケーブルもそのまま使えます。知らない人も多いと思うので、できればRCA変換アダプターを付属してくれれば良かったと思います。

ところで、今回QutestであえてツインBNC同軸を搭載した理由は、単体で384kHz、ツインで768kHz・24bitの超ハイレゾデータ受信に対応させるためです。具体的には、同社のハイエンドトランスポート「Blu Mk. 2」から768kHz・24bitにアップスケールした信号をツインケーブルでリンクアップする、Chord DAVEと同じ事ができるということです。実際やるかどうかは別として、技術力の意思表示としては凄い事だと思います。

ツインリンク状態にすれば自動認識するとのことで、試してみたいですが、さすがにBlu Mk. 2は持ってませんし身近にありません。

ハイレゾとなると、ちゃんとした75Ω高速デジタルケーブルが必要です

余談になりますが、同軸デジタルは44.1kHz程度であれば転送レートがゆっくりなので、RCAアナログケーブルでもとりあえず問題なく動くのですが、いざ192kHzや384kHzになると、アナログオーディオ用のツイストケーブルでは対応できなくなり、しっかりした「同軸構造の」75Ω特性インピーダンス高速伝送線でないと反射や漏れが起こり、音飛びなどのエラーが発生します。(高速75Ωを主張するRCA端子やケーブルも売っていますが、そもそも機器側の端子部品がBNCでないと、そこまで対応できないので、あまり意味がありません)。

さらに余談になりますが、ここ数年で4K動画制作用に75Ω超高速同軸ケーブル(12G-SDI)の技術進歩が凄いことになっているのですが、これらをバルクで買って派手な編み込みスリーブに入れて「高級オーディオ用」として10倍以上の値段で売っているメーカーが少なからずいるのが面白いです。

USB入力

個人的な話になりますが、私が過去にChord Qute HDをずっと使っていたのに、その後順当に2Quteにアップグレードせず、iFi AudioのDACに乗り換えてしまった理由は、音質以前に、USB入力にてChordは色々と不満があったからでした。

Qute HDが発売した2012年当時はまだハイレゾオーディオ最初期で、USBでDSDが再生できるというだけでも画期的でしたし、手持ちのアルバムも44.1kHzがメインで、ハイレゾ再生での多少の不具合や相性問題はまだ我慢できました。

しかしその後ハイレゾオーディオブームの到来とともに、XMOSやATMELなどOEMのUSBインターフェースチップを搭載したUSB DACメーカーが続々登場し、Windowsドライバーの完成度も飛躍的に進化しました。iFi Audioもその中で特出したメーカーです。

一方Chordはあくまで自社開発にこだわるせいか、超ハイレゾフォーマットなどへの対応が他社と比べるとイマイチでした。具体的には、相性によって音飛びや同期ミスがあったり、S/PDIFと比べるとUSBでの音が良くなかったりということで、Hugoや2Quteといったモデルは残念ながら見送ることにしました。その後に登場したMojoやHugo 2で一気にUSBインターフェースの完成度が上がり、全く問題無いと思えるレベルになりました。

実際のところ、Qutestに限らず、一般的な44.1kHz〜96kHzやDSD64アルバムで問題が起こる事はほぼ無いと思います。しかし、最近はそれ以上の超ハイレゾフォーマットでアルバムを販売しているレーベルが増えてきており、実際の音質メリットがどうであれ、再生できないとなると困ります。「音源フォーマットを気にせずに使えるDAC」というのが個人的にとても大事なポイントで、今回Chord Qutestは自分なりに満足できたので、気兼ねなく購入できました。

Windows用ドライバー

公式サイトにてWindows用ドライバーがダウンロードできます。インストールすると「Chord Async USB 44.1kHz-768kHz」と認識され、普段使っているJRiver音楽プレーヤーにて、何の不具合も無く、快適に使えました。

ちなみに、最近販売されているハイレゾアルバムでも最高で352.8kHzなので、わざわざ768kHzなんて超高レートPCMフォーマットに対応している意味があるのか疑問に思うかもしれません。(Blu Mk. 2を持っていれば別ですけど)。

唯一意味があるとすれば、MacやスマホなどでDSDを再生する際にはDoP方式を使うわけですが、現状購入できる最高レートのDSD256(11.2MHz)をDoPで再生するには768kHz(705.6kHz)が必要になります。WindowsはASIOドライバー対応なのでDoPに頼らずともDSDネイティブ再生が可能です。

これは意外と見落としがちな部分で、メーカースペックで「PCM 384kHz・DSD256対応」と書いてあっても、MacやスマホのDoPではDSD128までという事が多いです。

MacのAudirvanaにて

そんなわけで、Macbook AirのAudirvanaに接続してみたところ、ちゃんとDSD256まで対応していると表示されました。

実際に音楽を再生してみると、PCM 352.8kHzまではすんなり行くのですが、DSD256をDoPで再生すると、成功率はUSBケーブルの品質にかなり依存する事がわかりました。

たとえば、普段使っていた1.5m iFi Audio Geminiケーブルでは、結構な頻度でブチブチとノイズが入ってしまいます。Qutestに付属している1.5mの黒いUSBケーブルや、Supraの白いUSBケーブルの2mのものでは一分間に数回プチッとノイズが入り、Supraの1mのものではノイズはほぼ聴き取れませんでした。

ようするに、もしUSB DACの限界に挑戦するのであれば、USBケーブルにはかなり気を使うことになります。これはUSBケーブルの音質がどうというオカルト的な話ではなく、単純にプチプチノイズが出るかどうかなので、使ってみればすぐにわかります。

肝心なのは、高価な高級オーディオブランド品ケーブルだからといって安心できず(高価ならそれなりにテストしていることを期待しますが・・)、基本的に1mなど短いケーブルの方が成功率が高いようです。

明らかにノイズが出るのはMacのDoPでDSD256を再生した時のみでしたが、WindowsであってもASIOを使わずにKernel StreamingモードなどでDoPに依存する場合には同様の問題が起こります。逆に考えれば、QutestはUSBケーブルの性能を見分けるためのケーブルテスターとして使えますね。

AndroidのOnkyo HF Playerから

スマホからDSD256

アンドロイドスマホ(Xperia XZ)からOTG接続してみたところ、問題なく再生できました。Qutestは別途電源ケーブルがあり、USBバスパワーに依存しないため、実はOTG DACとしても優秀かもしれません。

上のスクリーンショットはOnkyo HF Playerの接続画面ですが、ちゃんと768kHzまで対応しており、DoPのDSD256(11.2MHz)も再生できました。

据置き用として買ったので、スマホOTGで使う機会は少ないと思いますが、こうやってちゃんと使えるのを確認できると安心します。

AK KANN

AK KANN DAPからOTG接続を試してみたところ、DSD128やPCM 352.8kHzまではいけましたが、DSD256を再生すると凄いノイズが発生したので注意が必要です。これはAK DAP側がDSD256のDoP送信に対応していないからだと思うので、他社のDACをつなげても同じ事が起こります。

RCA出力

Qutestはヘッドホンアンプではないので、RCA出力もいわゆる高インピーダンス受けのライン出力信号なのですが、内部設計をHugo 2からあまり手を加えていないせいか、パルスアレイという手法自体が高出力なためか、ライン出力と言うには異常なほどパワフルです。

16Ω負荷でようやく歪み始めました

USB入力から1kHz 0dBフルスケールのサイン波信号を再生してみたところ、出力レベルは事前に設定したとおりピッタリ1・2・3Vrmsが得られました。3Vrmsの状態で受け側の負荷をどんどん上げていくと、約16Ωくらいまで微動だにせず3Vrmsを出し続けてくれるので、出力インピーダンスは非常に低いです。16Ωを下回るくらいでようやく信号の下半分が切れて歪み始めました。ライン出力と称しながら、ここまでオーバースペックだと驚いてしまいます。

そんなことを書くと、だったらHugo 2を買わずとも、Qutestでヘッドホンを駆動すれば良いのでは、なんて思う人が出てくるので困るのですが、そもそもQutestはライン出力用途として設計されており、Hugo 2の電圧ゲインには到底敵いません。しかも可変ボリュームではないので、再生ソフトのデジタルボリュームを使ってしまうと肝心のWTAフィルターの恩恵が半減します。さらにHugo 2の音質の最重要ポイントである、瞬間電流を供給するためのバッテリー回路がQutestには無いので、ダイナミックな負荷特性(たとえば低音の押し出しなど)の安定感は劣ると思います。

ようするに、低価格なQutestでHugo 2を真似したいという貧しい考えは起こさずに、ヘッドホンを鳴らすなら素直にHugo 2を使う方が懸命だと思います。

フィルター

フロントパネルのFILTERボタンは白・緑・オレンジ・赤の4種類が巡回する仕組みで、Hugo 2に搭載されていた機能と同じ物のようです。

白が16FS WTA1→256FS WTA2を余すこと無く活用した、一番基本となる設定で、緑はそこから可聴帯域外の高周波をカットする(ローパス)フィルターが入ります。これは、一部のハイレゾ音源などでは制作エンジニアの不手際で(本来音楽には無いはずの)膨大な高周波ノイズが記録されているものなどがあり、それらをカットした方が自然なサウンドになる事もある、という事です。

フィルターモードがオレンジでは、初段の16FS WTA1のみを使い、二段目の256FS WTA2はバイパスすることで、より暖かめなサウンドになるだろうということで、説明書でも「Warm」モードと呼んでいます。これはQutest本来のポテンシャルからはダウンスペックする事になりますが、たとえばアルバム制作現場で甘めのDACを使っていたとしたら、それで作られたアルバムをQutest本来のサウンドで聴くとシビアに鳴りすぎてしまうからだそうです。そしてフィルターモードが赤だと、オレンジにさらにローパスフィルターが追加されたモードです。

Hugo 2の時のインプレッションでは、白モードがChord DAVEに一番近く、赤色がChord Mojoに近いという感じでした。個人的には今回のQutestでも基本的に白で不都合は無く、必要に応じて他のフィルターモードも試してみる事にしています。イコライザーなどと違って、実際そこまで大きく音色が変わるものではなく、長時間聴いていてなんとなく雰囲気を気に入るかどうか、という程度のものです。

音質とか

今回はまずHugo 2との違いが気になったので、それぞれRCA出力でiFi Audio Pro iCANに接続して聴き比べてみました。

Hugo 2との比較

ヘッドホンはフォステクスTH610やオーディオテクニカATH-ADX5000などを使いました。

入力はAK KANNからのUSB OTG接続です。QutestはUSB B、Hugo 2はマイクロUSBとそれぞれ必要なケーブルが異なりますが、ケーブル由来の変な音質変化とかを避けるため、どちらもAudioquestの緑色USBケーブルを使いました。OTGケーブルもAudioquestのものです。ライン出力はどちらも3Vrmsに合わせておきました。

ちなみに以前のChord Qute HDや初代Hugoなどでは、USBとS/PDIF入力ではずいぶん音が違うようだったのですが(どちらかというとS/PDIFの方が好みでした)、Qutestでは違いがわからないレベルでした。Hugo 2でもそう感じたので、このあたりは旧モデルから大幅に進歩していると思います。


Chandosレーベルから、Kathryn Stott, Christian Poltéra, Priya Mitchellによるフォーレのソナタ集を聴いてみました。

最近とくに活気のあるChandosレーベルですが、すでに聴き慣れたメジャーな曲目でも、つい新譜が出るたびに手を出してしまう魅力があります。その理由は、安定した高音質ということもありますが、演奏にトリッキーな奇抜さや学術的な持論などを掲げず、シンプルに、優秀な演奏家の、新鮮で高水準な演奏を目指しているところが好きだからです。


Chord QutestとHugo 2のサウンドの違いですが、色々聴いてみても、はっきり言ってそこまで大きな差は感じられませんでした。音色も空間展開もほとんど同じで、ブラインドでは判断出来ないくらいです。

それでも多少なりとも感じられるのは、中高域の存在感の違いです。Hugo 2の方が若干押しが強いというか、鮮やかで太く塗りつぶされたように鳴る感じがします。

試聴に使ったクラシックのアルバムでは、冒頭のチェロ・ソナタではそこまで気にならなかったのですが、後半ヴァイオリンが入ったトリオになったところで気になりだしました。

ヴァイオリンの音域がHugo 2ではグッと前に迫り、堂々と主役の座を演じるような力強さがあります。乱暴ではないので、情報量は十分に感じられるのですが、空間配置が前のめりになり、前後に展開する感じに乏しいです。もうワンステップ距離を置いてもらいたい、といったところでしょうか。音色は不自然ではないので、オンマイクといったような歪みっぽさは無いのですが、ブラシで厚く塗ったような中高音です。

一方Qutestの方がトリオ全体のバランス感覚が良く、立体的で奥ゆかしく感じます。派手さが控えめで、主張が弱い鳴り方と言えるかもしれません。それ以外の部分ではHugo 2とほぼ同じ音場展開や音色なので、特定の組み合わせでの表現がちょっと違うという程度です。どっちが正しいかはよく分かりませんが、Qutestの方が聴きやすく優しい感じです。

そもそもHugo 2のRCA出力というのは、独立した専用回路ではなく、ヘッドホン出力を分岐しているだけなので、その強力なドライブ力がライン出力としても現れてしまうのかもしれません。言ってみれば、Hugo 2からPro iCANというのは、ヘッドホンアンプにさらにヘッドホンアンプをつなげた「ダブルアンプ」状態なので、一般的に推奨されない構成です。

今回はQutestとの比較ということで、あえてHugo 2もRCAライン出力端子で聴き比べましたが、そもそもHugo 2があるなら、わざわざPro iCANに接続せずとも、そのまま単体でヘッドホンアンプとして使うべきです。

実際Pro iCANと合わせた状態よりも、Hugo 2単体の方がサウンドが明るく明確になり、Chordらしいサウンドが際立ちます。どの楽器も手に取るように直接的で、ツルッとした質感を持ったクリアなサウンドが楽しめます。ヴァイオリンの塗りつぶされた感じも、Hugo 2単体では弾けるような艶やかさに変わりました。

Hugo 2は決して無個性ではないので、Pro iCANなどのアナログアンプにつなげると、双方の特徴が喧嘩してしまい、うまくいかない場合もある(むしろHugo 2の良さを損なう)ということもあるのかもしれません。一方Qutestは必然的に後続するアンプに依存する部分が大きいので、それらと上手に付き合えるような工夫を感じます。

どちらにせよ高水準すぎるほどのクオリティなので、好みが分かれますが、Hugo 2であれば単体で楽しむべきですし、ライン出力に特化するのであれば、私自身はQutestの方が好みでした。

iFi Audio micro iDAC2との比較

Qutestを購入する際に、個人的に一番気になったのはHugo 2との比較ではなく、自宅でメインで使っているiFi Audio micro iDAC2を入れ替えるだけの価値があるか、という事でした。

これは毎日の音楽鑑賞で使っているシステムで、そこそこ満足しているので、下手に個性的なDACを買ったとしても、micro iDAC2を手放す覚悟はできません。

今回の試聴では、Qutestのライン出力はmicro iDAC2に合わせて2Vrmsに設定しています。ヘッドホンアンプは自宅でmicro iDAC2と合わせて使っているViolectric V281で、ヘッドホンはHIFIMAN HE560、Fostex TH610、AKG K812 PRO、そしてつい最近買ったCampfire Audio Cascadeなども使ってみました。スピーカーオーディオでも使ってみましたが、ヘッドホンのブログなのでヘッドホンでの感想です。


Sunnysideレーベルから、Clovis Nicolas「Freedom Suite Ensuite」を聴いてみました。ジャケットでわかるようにリーダーはベース奏者で、Kenny Washingtonのドラムとのピアノレスなリズムセクションに、トランペットとテナーが入ったバンドです。

タイトルにもある、ロリンズ作「フリーダム・スイート」のアレンジをメインに、オリジナルやスタンダードを散りばめています。ベースのウォーキングラインから始まるハードバップ調の演奏で、小手先の難解な作風ではなく、リズミカルな間合いを大切にするクールなグルーブ感が気持ち良いです。


micro iDAC2の音は毎日ずっと聴いてきただけあって、いざQutestに入れ変えてみると明確に違いを感じ取れました。

じっくり聴き比べてみたところ、Qutestはmicro iDAC2の約三倍の値段だから、音質も三倍アップ、というわけではなく、音作りの性格がかなり異なります。それでもQutestに変えて良かったと思えるポイントが多かったので、正直一安心しました。個人的にはアップグレード感が十分に得られて、満足しています。

私のオーディオシステムに組み込んだ中でのQutestのサウンドは、まずアタックが柔らかく、楽器の音色が輝かしく色濃くなり、特に連続した音同士が絶妙に滲むような感触があります。トランペットやサックスなど中高域の空間がグッと広くなり、楽器同士の距離感が増し、有機的で自然な鳴り方のように捉えられます。低音が緩まずしっかり締まっていて、中域以上が前方頭上に広がるので、空間表現は逆三角形のようなイメージが浮かびました。

楽器の空間配置が近いか遠いかという点では、中間よりも近めな距離感だと思います。近くても顔面に張り付くような違和感は無く、身近な距離感から遠くまで満遍なく展開してくれるという絶妙な仕上がりです。

コンサートホールの遠く二階指定席みたいな圧倒的なスケールは、以前Chord Blu Mk. 2とDAVEのシステムで凄まじい体験したので、それと比べるとまだまだQutestでは敵いませんが、また数年後に低価格モデルでそれを実現してくれる事を期待しています。距離は遠い方が絶対良いというものでもありませんが、フィルター設定で手軽に切り替えられたりしたら凄いだろうと思います。

ではQutestはDAVE単体に迫るサウンドかというと、並べて比較したわけではないので記憶に頼るしかないのですが、DAVEの方がもっと繊細でレファレンス的なサウンドでした。DAVEを初めて聴いた時は「あれっ?」と思うくらいシンプルで軽快なサウンドに意表を突かれたのですが、そこからさらにじっくりと聴き込むことで、あらためてその奥深さに感銘を受けるといった玄人好みのサウンドです。あれにコッテリした厚みのある真空管アンプを繋げたいと思う人の気持ちもなんとなくわかります。

そんなDAVEと比べると、Qutestはもっと音色が花開くような魅力を重視したサウンドですが、解像感は非常に高いので、見通しが悪いとか、フォーカスが甘いというわけではありません。録音された情報が、空間を十分に使って、ほどよく分解して映写されるような感じです。個々の音色がとても濃いため、広い空間を絶妙な厚さで埋め尽くしてくれるので、散漫とか奔放な感じはしません。

そんなQutestと比べると、micro iDAC2はかなりドライで、内省的に収束する感じです。良い意味で、デジタル的なカチッとした鳴り方を大切にしており、録音されている情報が事細やかにリスナー前方に提示されるので、その一点に意識を集中するだけで、楽曲の全てがピンポイントで拾えるような、虫眼鏡的な楽しさがあります。

micro iDAC2が蒸留酒で、Qutestがワインみたいな感じ、もしくは、micro iDAC2が線画で、Qutestが大きな油絵のような感触でしょうか。(油絵といっても抽象的というよりはあくまで写実的です)。表現が違うだけで、どちらも複雑な情報量を余すこと無く提示してくれるので、勢いや雰囲気だけのDACとはレベルが違います。

どちらもアタックは硬いとか金属的といった鳴り方ではないですし、低音もモコモコ膨らむでもなく、ドシンとメリハリを強調するでもなく、ちゃんと録音毎に正しい低音の鳴り方ができています。もっと高価なDACでも、これができず、高音や低音にクセがついてしまう物が意外と多いです。たぶんQutest・micro iDAC2のどちらも、アナログ回路に過剰な物量投入や味付けを行っていないからこそ、そういったクセが少ないのだと思います。


そんなわけで、micro iDAC2もQutestと遜色ないくらい好きだからこそ、ずっと使い続けていたわけですが、それでも、Qutestに変えてとくに良かったと思える事が一つあります。それはmicro iDAC2では44.1kHz・16bit CD音源の鳴り方が地味過ぎて、あまり楽しくない、という点です。

フォーマットの限界なのか、それともCD用に仕上げたマスタリングの傾向なのかは不明ですが、micro iDAC2では、CD音源の味気無さというか、低音も高音も乾いたパンのような、艶の無い鳴り方が気になってしまいます。そして、96kHz・24bitなどのハイレゾ音源での音質向上効果が顕著に現れます。

原音忠実なんで言葉がありますが、micro iDAC2は場合によってはそれが面白さを削いでしまうレベルにまで実行してしまう感じです。一方Qutestでは、フォーマットの優劣を意識させず、CD音源でも十分魅力的で色気のあるサウンドが引き出せるので、手元のアルバムコレクションを楽しめる幅が広がります。

iFi Audioのサウンドが間違っているというわけではなく、このメーカーの場合は後続するアナログアンプ製品に真空管オプションを提供することで、そこで豊かさを補うアプローチなのでしょう。一方ChordはD/A変換処理の段階で、CD音源に秘められた魅力を引き出す事に成功していると思います。

CD音源の音質向上と言っても、いわゆるハイレゾ化で有名な、JVCのK2や、ソニーのDSEEなどといった他社の補完アルゴリズムは、響きや高域成分といった空間要素を補填するような「エフェクト」で、上手くマッチするアルバムと、そうでないものに分かれるのですが、それと比べると、Qutestの方は空間よりも音色そのものが自然で魅力的になったような感覚で、どんなアルバムでも破綻が無く、聴いていて楽しいです。


もう一つ、Qutestを購入する決め手となったのが、DSD再生です。個人的に、ジャズやクラシックをよく聴くため、DSDは欠かせない存在です。

実はちょっと前までは、DSD再生というと、なんとなくフワフワしてフォーカスの甘い、空気感や雰囲気重視の、浮足立ったサウンドだというイメージがあったのですが、それは当時のSACDプレイヤーや初期のDSD対応DACに由来するものだということが、最近になってわかってきました。

Qute HDやHugoなどで聴くDSDも、そんなフワフワな雰囲気だったのですが、iFi Audioのmicro iDSDやiDAC2のシャキッとしたサウンドに出会ったことで、DSDの更なるポテンシャルが実感できました。Hugoを買わずにiFi Audioを選んだのも、その理由は大きかったと思います。

ChordはHugo 2とQutestにて、初段WTAの後に新たに256FSフィルターを導入したことで、DSD再生の手法を大幅に改善したらしいですが、実際に音を聴いてみると確かにレベルアップしている事が実感できます。

DSDらしい空間の広さや空気感は維持したまま、演奏家の配置にドッシリとした安定感があり、より明確な輪郭や音像が感じ取れます。音色の鮮やかさはPCM音源と同様に、Chordらしいサウンドが存分に味わえます。

そもそもDSDの存在意義は、フォーマットとしての優位性ではなく、A/D変換とD/A変換工程を簡略化して、マイクからスピーカーまでシンプルな流れでデジタル・オーディオを届けるという意図があります。それはChordのパルスアレイのコンセプトと通じるものがあるので、フォーマットのネガティブな点を取り除き、ポテンシャルを引き出す事に成功しています。

DSDというのは、Chordのみでなく、一般的なD/Aチップメーカーでも扱い方は各社バラバラで千差万別ですし、とくに近頃のDSD128などはまだ未知数な部分が多いので、オーディオマニアとして遊びがいのあるフォーマットだと思います。

おわりに

Chord Qutestは、個人的に長らく待望していた甲斐があり、音質・機能ともに日々のメインDACとして十分に満足して活用できる素晴らしい製品です。

とくに私自身が、かなり長い間micro iDAC2からアップグレードしようと、もうちょっと上の価格帯まで沢山のUSB DACを試聴してきて、あまり満足できる物が見つからなかったからこそ、Qutestにはなおさら感心できます。

さらにUSB接続での再生も安定していて、現状で購入できるファイルフォーマットを聴く上で、これ以上望むものはありません。近頃のDACといえばネットワーク機能やMQAなども話題になっていますが、それらはあくまで利便性の向上であって、音質面でのメリットは少ないと思うので、私の用途ではQutestのシンプルさで十分です。

そもそもHugo 2のサウンドをとても気に入っているだけあって、同じ技術を拝借しているQutestのサウンドにもすんなり共感できました。特にCD音源のフォーマット限界を感じさせない音作りの充実具合は凄いですし、ハイレゾPCMもDSDも完成度が高く抜かりないです。

ただし、いわゆる普通のUSB DAC勢とは一線を画する「Chordらしい」サウンドは、決して無難で凡庸とは言えません。柔らかい音色の自然さが印象的で、硬質なアタックで引き締めるタイプではないので、もしかすると、甘く緩いタイプのアンプと合わせるには、ちょっとパンチの足りない組み合わせになってしまう可能性もあります。

Qutestの値段が高いか安いかというのは、この手のオーディオ製品では愚問なので、高いと思うなら、他にも安くて優秀なモデルはいくらでもありますし、優劣を競うのも時間の無駄です。ただしChordの場合、このちょっと上にHugo 2があるのが一番悩ましい点だと思います。

すでにHugo 2を持っている人であれば、あえてQutestを買う必要は無いと思いますし、逆にHugo 2が買えないからQutestを買うという物でもありません。

純粋にヘッドホンだけのシステムを求めるなら、QutestではなくHugo 2を買うべきだと思います。今回試聴で使ったPro iCANやV281といったアナログヘッドホンアンプは決して安くありませんし、それですらHugo 2単体の方が良いかも、と思える事が多いので、たとえばQutestとHugo 2の差額で買えるクラスのアンプで満足することは難しいと思います。

私の場合はスピーカーシステムのプリアンプにフォノアンプやSACDプレイヤーなどいろいろ接続して、USB DACもその一環として使いたいので、Qutestが一番しっくりくるスタイルでした。

Hugo 2も欲しい気持ちは山々なのですが、やはり高価ですし、それでライン出力の据置き用に常駐させるのも哀れです(あと、単独ヘッドホンアンプとスピーカーシステム用ライン出力DACとして使い分けるのも、音量などのアクシデントが怖いです)。外出時はDAPで十分だと思っているので、Hugo 2のようなポータブル複合機というのは、なかなか使い所が難しいです。そんな風にあれこれ考えていたところに登場したのがQutestというわけです。

Qutestはこの価格帯のUSB DACの中では飛び抜けた存在だと思います。余計なゴチャゴチャの多機能が無く、シンプルにライン出力のみで音質を追求したモデルというのは意外と希少な逸品です。「実はこういうのを待っていた」という人は、私以外にも意外と多いかもしれません。