2026年5月2日土曜日

Fiio Snowsky Echo & Echo Mini のレビュー

Fiio Snowsky EchoとEcho Mini DAPを買ったので感想を書いておきます。

Snowsky Echo Mini &Echo

2025年発売のEcho Miniと2026年の新作Echo、どちらも一万円くらいで買えるベーシックなポータブルDAPで、カセットプレーヤー風のレトロデザインが印象的です。いつも高価な機器ばかり取り上げるのも嫌なので、たまにはこういうのも面白いと思いました。

Fiio Snowsky

SnowskyというのはFiioの低価格サブブランドです。近頃はFiio以外の中華系メーカーもこぞってサブブランドを立ち上げるのがトレンドになっているようで、HibyのHiby Digital、iBassoのiBasso Jr.など、それぞれメインブランドとは一味違った個性的なラインナップを展開しています。

サブブランドというとメインブランドのイメージを毀損しないようにとか、高級感演出のために関係性をぼやかすものですが、これら中華系DAPメーカーを見ると、同じ公式サイトでメインとサブブランドのラインナップを混在させているなど、線引きがだいぶ曖昧です。外注や若手チームに開発を任せるなど内部的な意味づけがあるのでしょうか。

Snowsky Echo Mini &Echo

FiioのSnowskyはレトロイメージを全面的に押し出しており、単なる格安コスパだけでなくデザインで興味を持ってもらえるようなブランディングに成功しています。

今回紹介するEchoはカセットプレーヤー風デザインのポータブルDAPですが、Snowskyブランドでは他にもBluetoothDACアンプやスポンジ耳当てのヘッドホンなどを展開しており、どれを見ても、たしかにコアなオーディオマニアでも惹かれてしまう魅力があります。

SnowskyとJade Audio

FiioはSnowsky以外にもJade Audioというサブブランドも展開しており、そちらでもJF11という懐かしいフォルムのイヤホンを出すなど、かなり積極的にレトロデザインに取り組んでいる様子です。

今回のSnowsky Echo MiniとEchoのどちらも約1万円という低価格のわりに物欲を満たしてくれるガジェット感にあふれているため、つい私も購入してしまいました。ショップでとりあえずシリコンイヤピースを買ってしまうような感じで、「持っていれば役立ちそうだから」と手を出してしまうわけです。

Echo Mini &Echo

Echo MiniとEchoの関係性はややこしいです。名前もまぎらわしいので、ここから先はEcho Miniの方はMiniと呼ぶことにします。

まず2025年にMiniが出て、一年後の2026年にEchoが登場しました。Miniがプラスチック製で2インチ画面、Echoはアルミ製で2.4インチ画面です。どちらもAndroid非搭載のベーシックなファイル再生用DAPで、インターフェースの機能面はほぼ同じです。

そうなるとアルミで大画面のEchoの方が高価かと思いきや、どちらも約1万円というの同価格帯で揃えてきたのが不思議です。

パッケージ

デザイン

裏面

ちなみにカラーバリエーションはMiniがTitanium Gold/Black/Cyan/Pink、EchoがBlack/Sky Blue/Orange/Greenの四色から選べて、どれもセンスが良くて迷うのですが、私はMiniをCyanでEchoはOrangeを選びました。

エッジの効いた直線的フォルムや、窓の下のテープヘッドメカに相当する部分だけ厚く盛り上がっているデザインは、1979年の初代ソニーウォークマンよりも、1980年代末期のWM-150あたりをオマージュしているようです。カセットウォークマンも、ここから時代が進んで1990年代になるとプレス成型やポリカーボネートの丸みを帯びたデザインが主流になっていきます。

Echoの方は、Sky BlueとOrangeを選ぶと背面が銀色で、BlackとGreenでは同一色になっています。Miniの裏面に見えるバッテリーパネルは偽物ですが、良いデザインアクセントになっています。

サイズ比較

サイズ比較

並べてみると厚さはほぼ同じで、ボタンの配列や間隔も共通しており、どちらも手で持って扱うのにちょうどよいサイズ感です。ただし、Miniが55gでEchoが85gと、実際に持ってみるとEchoのアルミシャーシはズッシリと重く感じます。

同じ値段ならアルミ製のEchoの方が断然良いと思うかもしれませんが、プラスチックのMiniも塗装や質感は良好で、そこまで安っぽくは見えないので、ポケットに入れたりストラップホールで吊ってカジュアルに使いたいのなら軽量なMiniの方が有利です。

基板はだいぶ違います

裏面

D/Aチップとオーディオ回路

兄弟機といえど、サイズに合わせて基板設計がけっこう違うのがFiioの開発力の強さを見せつけてくれます。オーディオ回路の部分はUSBドングルDACと同じような構成で、そこに画面OSやバッテリー管理ICなどが追加されているような感じです。1100mAhの小型バッテリーは共通しています。

D/Aチップはどちらもシーラスロジックで、MiniはCS43131、EchoはCS43198をそれぞれ二枚積んでいます。

チップ単価や性能はほぼ同じなので、どちらが優れているというほどでもないのですが、シーラスロジックとしては、CS43131の方はチップ内にバッファーアンプ回路を内蔵しており、そのままヘッドホンを駆動できるため、ワンチップのドングルDAC用途に向いており、CS43198はアンプを内蔵していないため、基板上に別途アンプ回路を用意する場合に有利です。

それにしても、これらD/Aチップは少量ロットだと一枚2,000円くらいする高価な部品なので、たとえFiioが大量発注でそこそこ安く調達できたとしても、それを二枚も搭載して、バッテリーに画面にSoCにシャーシも含めて一万円で販売できるというのは驚異的で、これでは日本のメーカーは絶対に敵わない強烈なコスパだと感心します。

サイズ比較

Fiio Q15と比較

Hiby RS6と比較

身近にあったものと並べて比較してみました。iBasso DC07PROドングルDACやAK HB1 Bluetooth受信機と比べると大きいですが、単独で利用するDAPとしては、画面サイズを考えるとやはりこれ以上小さくすると操作が厳しくなるギリギリのサイズだと思います。

ヘッドホン出力

カードスロットとUSB-C

ヘッドホン出力は4.4㎜バランス端子も用意されているのが嬉しいです。ステレオD/Aチップを二枚搭載していることからもわかるとおり、ちゃんとしたバランス出力で高い電圧ゲインが得られます。

バランス接続の方が高音質という保証はありませんが、近頃は有線イヤホンを買うと4.4㎜バランスケーブルしか付属していないことが増えてきたので、余計な変換アダプターを探す苦労を防げるのはありがたいです。

反対側にはマイクロSDカードスロットとUSB Cのほかにストラップホールがあるのも懐かしくて良いです。ストラップにじゃらじゃらとチャームを付けたいのですが、今でも売っているのでしょうか。

機能とインターフェース

EchoとMiniの基本的なスペックはほぼ同じで、まず内蔵ストレージはどちらも8GB(実質7GBほどの空き)、マイクロSDカードはカタログスペックでは256GBまで対応と書いてありますが、Sandiskの400GBを入れたら問題なく使えました。バッテリー再生時間はEchoが14時間、Miniが15時間です。

パソコンにUSBで接続するとストレージモードとDACモードが選択できます。ただしUSB DACとしてはUAC 1.0の48kHz/16bit固定で、UAC 2.0のハイレゾ再生には非対応です。

Bluetooth送信機としても使えるものの、コーデックはSBC固定ですし、受信機としては使えません。無線LANも非搭載ですし、ストリーミングアプリなどももちろん使えません。

そんなわけで、SDカード内のファイル再生という原始的なDAP用途以外の使い道はかなり限定的だと割り切った方が良いです。

とくに個人的にはUSB OTGトランスポートとして使えるかと淡い期待を抱いていたのですが、残念ながらMiniとEchoのどちらも外部DACを接続しても無反応です。

あまり需要は無いのかもしれませんが、コンパクトでUSBトランスポートに特化したDAPを作ってもらいたいです(他社だとxDuoo DP-10とかありますが、あれだとちょっと大きすぎます)。

どのみち粗いので、画面サイズの差はそこまで感じません

インターフェースについて、まず最初に触れておきたいのは、Miniと比べてEchoの方が画面が大きいものの、Miniが2インチ170×320、Echoが2.4インチ222×480と、どちらにせよ画素数が粗く発色も悪いので、そこまで大画面の恩恵は感じません。昔のFiio X1とかのOSをアレンジしたようなシンプルなもので、もちろんタッチスクリーンではありません。

SDカードに大量に楽曲を入れていると処理が遅くなる点だけは注意が必要ですが、それ以外の操作性はそこそこキビキビしており、上面の物理ボタンでカチカチと操作するデザインは慣れれば使いやすいです。

起動も10秒くらいで完了しますし、戻るボタン長押しでメインメニューに飛べるのと、システム設定とサウンド設定が分けてあるのも延々とスクロールする手間が省けて助かります。

ボタンの向きを反転できます

ところで、MiniとEchoのどちらも、初期設定の状態では曲送り/曲戻りとボリューム上下ボタンの動作が私の想定とは逆向きで、かなり混乱させられたのですが、幸い設定で反転させることができるので助かりました。

ちなみにボタンの形状や方向はISO 7000/IEC 60417で制定されており、当然ながら曲送りは再生ボタンの矢印と同方向、曲戻りは逆方向であるべきなのですが、なぜかMiniとEchoのどちらも初期設定が逆向きになっているのが不思議です。

ジャケット表示もできます

ライブラリー選曲

フォルダー選曲

再生画面はジャケット表示もできます。さすがに粗いですが、どのアルバムを聴いているか識別できるくらいには有用です。

一旦カードをスキャンすると、タグでのライブラリーが構築されて選曲できるあたりは一般的なDAPと同じです。さすがに画素数が少ないので観覧に手間取りますが、応答速度はそこそこ速いので、カチカチと押す物理ボタン操作の確実性もあって、慣れればそこそこ快適に活用できます。

ちなみに私の持っているファイルではDXDファイルが再生できませんでしたが、これは公式スペックでも192kHzまでと書いてあります。

カセットテープ風

カセットプレーヤー風の再生画面はMiniの方がセンスが良いと思います。実際のカセットテープと比べてサイズは小さいものの、昔ポータブルレコーダーや留守番電話で使われていたマイクロカセット規格を彷彿とさせてくれる愛嬌があります。

シャーシに対してカセットの縮尺が変です

一方Echoの方が画面サイズが大きいわけですが、こちらは本体に対して画面のカセットテープが奇妙な縮尺になっているので違和感があります。

EchoのシャーシはソニーWM-150のような本体下部ヘッドメカ部分が盛り上がっているデザインを模倣しているのに、画面にカセットの下半分が描かれているのが意味不明です。

これはたとえば自動車の絵を描くときに、窓から運転手の上半身だけでなく足まで全身が見えているようなセンスの無さです。

たぶんシャーシを設計したスタッフと、インターフェース開発スタッフの意気込みが違うのでしょう。一度でも本物に触れたことがある人なら、画面を見た瞬間になにかおかしいと気がついて作り直しを要求すると思います。

ソニーを見習ってもらいたいです

このあたりもソニーの秀逸なデザインセンスに脱帽します。2019年のNW-A100TPSでは、DAP本体の画面にカセットテープ全体を正しい縮尺の高解像で表示して、テープのラベルには再生中の曲が表示され、さらにウォークマン風ケースのカバーを閉じると、テープ確認窓のように、画面上のテープ回転のアニメーションと再生曲のラベルが見えるという、実用を兼ねた粋な計らいです。さらにPCMやDSDなどフォーマットによって画面上のカセットのグレードが自動で変わるというのもソニーらしいこだわりです。

レトロデザインというのは、こういった知的センスや遊び心が求められるため、カセットテープ風と言いながらカセットプレーヤーについてこだわりの無い人が作った印象を受けると興ざめです。

Echoのスペアナ表示

EchoのVU風表示

ところで、Echoのみ大画面を活用してスペアナとVUメーター風の表示にも変更できるのですが、あまり実用的ではありません。

先ほどのカセットテープ風画面でも、再生中はテープがクルクル回っているようなアニメーションになるのですが、フレームレートが低すぎて、まるでコマ送りのストップモーションのようにカクカクしています。多分4fpsくらいでしょうか。

スペアナやVUメーターではこれがさらに致命的で、音楽と連動しているとは思えないくらいカクカクしています。

スペアナは本来グラフィックイコライザーと併用して、音楽再生中に周波数スペクトルを見ながらイコライザーで調整を行うためにあるはずなのですが、これでは役に立ちませんし、見栄えも悪いです。

VUメーターの方は、Echoのカクカク表示でも一応ピークホールド的な見方はできるのですが、針の上昇下降の動きが見えないため、こちらも見栄えしません。

どちらもフレームレートを下げてバッテリー消費を抑えたいのは理解できますが、Echoのショボさを強調する逆効果になっている気がします。

スタイル変更

他には、画面表示の配色スタイルも選択できるのですが、Miniは五種類に対してEchoは白と黒の二種類しかありません。今後増えることを期待しています。

ファームウェア

アップデートは公式サイトからダウンロードしたIMGファイルをUSB接続経由で本体のルート(SDカードではなく)にコピーして再起動することで、勝手に検知してアップデーターが実行されます。

ファームウェア

これを書いている時点での最新ファームウェアはMiniがV.3.4.0、EchoがV.1.3.0です。ここからもわかるとおり、MiniとEchoは異なるファームウェアで動いており、機能面でも細かい違いが結構あります。

たとえば先程のスペアナ・VU表示はEcho限定ですし、逆に配色テーマはMiniの方が選択肢が多いです。Echoの方はまだ発売したばかりなので、今後アップデートで新たなモードなどが追加されるかもしれません。

Mini 3.40の仕様

ところで、ひとつ不満を挙げるなら、現時点でMiniのみファームウェア3.4.0にてボタン操作の仕様が変更されてしまい、これが個人的にかなり使いづらく、ひとつ前の3.3.0に戻りたくなります(ロールバックは可能です)。

これまではEchoと同じく「Fast Forward Functionality」という設定があったところ、Miniだけ3.4.0で「Button Switching」Mode A/Mode Bという設定に変更されました。

従来は、ボリュームボタンを短くタップするとボリューム調整、長押しすると曲送り・曲戻しという単純明快な操作でした。Fast Forward Functionality設定をオンにすると、曲送り・曲戻しの代わりに曲中の早送り・早戻し動作になります。

これがMini 3.4.0のButton Switchingに変更されてからは、Mode Aだと短くタップでボリューム、長押しで早送り、ダブルタップで曲送り、Mode Bだと短くタップで曲送り、長押しで早送り、ダブルタップでボリューム、という方法になりました。

ようするに、曲送りと早送りを両方活用できるようにという試みだと思うのですが、実際に使ってみると、ボリュームボタンをカチカチと二回タップすると曲送りされてしまうなど、シングルとダブルタップのタイミング間隔をかなり意識した使い方が求められてしまいます。

今後アップデートでEchoの方も同じ仕様に変更されたら最悪ですし、Miniも設定で元の仕様が選べるように選択肢を増やしてもらいたいです。

アルファベット順でないのが気になります

現時点でMiniとEchoの両方に共通する不具合としては、フォルダーのリストがアルファベット順でなく謎のランダム順になっており、目当てのアルバムを見つけるのが面倒です。

上の写真でもDebussy、Mahler、Schnittke、Chaussonと変な並びなのに加えて、Debussyの中でもRogéとBermanの順番も逆です。

もうひとつ、トランスポート操作でちょっとした不満点があります。曲戻しボタンを押すと、今聴いている曲の冒頭に戻るのではなく、ひとつ前の曲の冒頭に飛ぶという仕様です。たとえばアルバムの一曲目を聴いていて、戻るボタンを押すと、アルバム最後の曲の冒頭に飛んでしまうという変な動作になります。

Fiioに限らず意外と多くの中華系DAPがこの挙動なので、中国人ユーザーがそれを求めているのかもしれませんが、CDプレーヤーの時代からiTunesやTidalに至るまで、戻るボタンを押すと現在再生中の曲の冒頭に戻るのが一般的な動作なので、できれば今後アップデートで挙動を選べるようにしてもらいたいです。

出力

いつもどおり0dBFSの1kHzサイン波を再生しながら負荷を与えて歪みはじめる(THD < 1%)最大出力電圧を測ってみました。

EchoとMini、バランスとシングルエンド接続で、実線がハイゲイン、破線がローゲインモードです。

こうやって比較してみると、Miniと比べてEchoの方がだいぶ高い最大電圧が得られます。ただし40Ω以下くらいからはどちらも同じような特性に収束するので、低インピーダンスなイヤホンを鳴らす場合での最大音量には大差無いようです。

公式スペックによると、バランス32Ωでの出力電圧はMiniが2.8Vrms (8Vpp)、Echoが2.9Vrms (8.2Vpp)とあるので、実測とだいたい合っており、双方の微妙な差も正しく表現しています。

同じテスト信号で無負荷時にボリュームを1Vppに合わせて、負荷を与えて電圧の落ち込みを確認してみました。

EchoとMini、バランスとシングルエンドで特性がピッタリ同じ、綺麗な横一直線なので、どちらかが出力インピーダンスの面で不利というわけでもなく、IEMイヤホンでも気兼ね無く使えそうです。

バランス出力のハイゲインモードのみで、最大出力電圧を他の機器と比較してみました。Fiioの大型DAP M15Sはさすがに群を抜いてパワフルなのがわかりますが、それ以外に選んだ機器は最大電圧がほぼ同じなのが面白いです。

ドングルDACのiBasso DC07PROやBluetooth受信機のHiby E4はどちらもシーラスロジックのチップ搭載なので納得できますが、Fiio M23は旭化成AK4499EXとFiio独自のTHX AAA78+ヘッドホンアンプ回路を搭載しています。バッテリーとの兼ね合いで、11Vppくらいに落ち着くのが定着しているのでしょう。

ようするに、高インピーダンスの大型ヘッドホンを鳴らす場合には、他のドングルDACや低価格DAPと比べてEchoが格別劣るというわけではなさそうです。

ただし60Ω以下の負荷になるとEchoのみ出力の落ち込みがだいぶ激しいので、むしろマルチドライバーIEMとかの方がダイナミクスの面で不利になるかもしれません。

音質とか

低価格なDAPだからと侮るのも申し訳ないので、普段メインで使っているMadoo Typ821イヤホンを4.4mmバランス接続で使ってみました。

このイヤホンは平面駆動型なので、一般的なマルチBAやダイナミック型イヤホンと比べると若干音量を出しにくいのですが、インピーダンスが安定しているおかげで相性問題が起きにくく、DAPの音質を評価しやすいです。

Madoo Typ821

Amazon

Alphaレーベルから新譜でLawrence Foster指揮モンテカルロ管弦楽団のベンジャミン・ブリテン作品集を聴いてみました。

有名だけれど最近は録音が少ない「青少年のための管弦楽入門」から始まり、Julie Rosetのソプラノを入れた「レ・リュミノアシオン」、続いて「グロリアーナ」から組曲、そして最後は日本とのいわくつきの「シンフォニア・ダ・レクイエム」と充実した一枚です。

ブリテンというと精神的に重圧なオペラや戦争レクイエムなどが有名ですが、今作では技巧の手広さを見せてくれます。特に「青少年の・・・」は様々な楽器が短時間で出番交代するのでオーディオ機器のテスト用にも役に立ちます。


まず第一印象から、EchoとMiniのどちらもホワイトノイズが目立つとか音が歪むといった不具合もなく、普通に不満のない高音質が得られますし、ハイレゾPCMでも問題なく再生してくれます。このあたりFiioは昔から信頼が置けます。ただし曲の移行はギャップレスではなく、曲間にわずかなプチっというギャップがありますし、設定メニューでもギャップレスのオンオフはありません。

音量に関しては、MiniよりEchoの方が若干音が大きくなりますが、Typ821イヤホンではハイゲインでボリューム45/120あたりが私の適正音量で、まだまだ余裕があります。

音質面では、EchoとMiniの違いよりも共通点の方が多く、だいぶよく似た傾向です。どちらもそこまで悪くありませんし、変なクセも無く聴きやすい仕上がりなのですが、正直なんとなく低価格だとわかるようなサウンドであることは確かです。

同じシーラスロジックのチップを積んでいるDAPやドングルDACにもピンキリあり、その中でも一万円あたりのUSBドングルDACなどでよく聴き慣れた音の印象です。さすがにこの価格帯だと、どのメーカーが作ってもテンプレートなサウンドに落ち着き、音作りに個性や色気を出すのは難しいのでしょう。もっと上の価格帯の、たとえば三万円台のiBasso DC07PROの方が明らかに音のグレードが高いと実感できます。

テンプレートな低価格サウンドとは具体的にどんなものかというと、二つポイントが思い浮かびます。まず一点目は、ダイナミクスというかコントラストのメリハリが乏しく、左右の広がりや奥行きの分離も限定的です。二点目は、歌唱や楽器の音色が素朴で、音そのものにあまり魅力がありません。

音源はしっかり解像できているのに、不思議と演奏の展開に乏しく、時間の流れが遅く感じます。つまらないYoutube動画を見ている時のように、ただ情報を陳列しているだけで、プレゼンターの魅力や内容の視野や視点の深さに乏しいため、進行が遅くてもどかしい、あの感覚といえば伝わるでしょうか。

データの列というと言い過ぎかもしれませんが、目の前を情報が流れていくような淡々とした表現なので、体感や没入感、いわゆるエンゲージメントが希薄で、なんとなく聴き流してしまいます。逆に言うと刺激や不快感は少ないので、良い意味で睡眠導入やBGMに最適です。

散々悪く言いましたが、音自体は真面目に鳴ってくれているので、普通にカジュアルに使う分には問題ありません。最近は数千円の低価格で高性能なイヤホンが色々と手に入るわけですが、それらと合わせて胸ポケットに入れて音を鳴らせるデバイスとしては最適です。ただし、そんな数千円のイヤホンでも、もっと上質なDAPやドングルDACで鳴らした方が良い音を引き出せるとも思います。

具体的には、まず私が使い慣れているiBasso DC07PROに切り替えてみると、高音側のレンジと繊細さが飛躍的に良くなり、演奏が遠方の空間へと広がっていく感じや、その情景の空気感みたいな、音楽を取り巻く雰囲気がだいぶ充実します。そのため、同じ場面を切り出しても、脳内で情景を再構築するための情報が増えるため、Echoで指摘した時間の流れが遅いというのとは真逆で、まさに聴きごたえがあるという表現が当てはまり、確かに価格相応のアップグレードが実感できます。

この高音の繊細さ以外の部分ではEchoとDC07PROはそこまで大きく変わらないのですが、さらにそこから、私が普段使っているHiby RS6 DAPやFiioQ15・M15Sといった上位モデルになると、今度は弦楽器の鮮やかさ、金管の輝かしさといった色艶の部分が現れるようになってきます。ここまで来ると、歌手の一声、楽器の一音が鳴り響いているだけでも、引き込まれるような魅力が感じられ、作曲の展開や進行とは全く別の、音楽の本質的な魅力が引き出せています。Echoで聴いた楽曲をもっと優れたヘッドホンアンプで聴き比べてみると、こんな音があったんだと発見できて嬉しいです。

そういった段階的な奥深さがオーディオの世界の面白さなのですが、その反面、値段はもちろんのこと、サイズもどんどん大型化して、カジュアルなポータブル用途には使えなくなってしまうので、生粋のオーディオマニアでもEchoのような小型機に回帰する魅力を感じるわけです。

オーディオというと大きくて重い方が高価という先入観がありますが、正直多くのオーディオマニアは、もしEchoと同じサイズで最高音質が得られるモデルがあるなら、たとえ十万円でも買いたいだろうと思いますが、残念ながら電源や回路規模の都合から現実的でないというのが現状のようです。

Fostex T60RPmk2

続いてEchoとMiniのサウンドの違いについて、もうちょっと詳細に聴き比べてみます。

まず鳴らしにくい大型ヘッドホンの例としてFostex T60RPmk2を使ってみました。写真ではバランス接続ですが、シングルエンド接続でもハイゲインのボリューム80/120程度で楽しめます。

同じボリューム数値ではMiniと比べてEchoの方が音量が若干大きいものの、どちらも適正音量に合わせて聴き比べると音質面ではそこまでの違いはありません。

ちなみに音量の差が感じられるのは80/120くらいまでで、たとえば古いクラシック音楽録音など録音レベルが極端に低い楽曲で、さらにボリュームを上げる必要があると、90/120あたりからEchoとMiniのどちらも同じくらいの音量で頭打ちになる感覚があり、サウンドもだいぶ耳障りになってきます。

出力の弱いドングルDACなどでよくある現象で、音量は十分に出ているように感じるけれど、持続した出力が持たないため、息切れするような軽薄な鳴り方で、無理に叫んでいるようにダイナミクスが潰れてしまいます。

T60RPmk2のスペックは28Ω、96dB/mWということで、最近のヘッドホンはこれくらいインピーダンスが低いモデルが増えていますが、たとえば250Ωのベイヤーダイナミック初代DT1770PROとかで試しても、どちらにせよ頭打ちするのでEchoとMiniの差はあまり感じられません。

もちろんリスニング音量は人それぞれですが、私の場合は大型ヘッドホンで使うなら小音量のBGM用途に限定して、過度な期待は持たないようにします。

EchoとMiniの音質差が明確に表れるのは、むしろ低インピーダンスのハイブリッドマルチドライバーIEMとかの方です。

64Audio NioやVision Ears VE10などを鳴らしてみたところ、MiniよりもEchoの方が低音に芯があって、ビートが力強く感じます。低音の量が増すというよりも、キックドラムなど一音ごとの打撃が明確になる感覚です。Miniは低音の打撃が時間軸方向で緩く滲んでいるため、たとえイコライザーで低音を盛ってもEchoと同じような感覚は得られず、ただ不快になるだけです。

ジャズのベースラインやEDMの四つ打ちキックなど、リズムをしっかりと感じたいのならEchoの方が有利なようです。ただし、他に優れた再生機器を持っていて、あくまでBGM用のサブ機として検討しているなら、EchoとMiniの違いはどんぐりの背比べ程度なので、サイズやデザインの好みで選んだ方が良さそうです。

おわりに

Fiio Snowsky Echo と Echo Miniを購入したわけですが、実際に私が好んで使うのはEcho Miniの方に落ち着きました。

後発でアルミ製のEchoに乗り換える気満々だったところ、いざ使ってみるとMiniの圧倒的な軽さというメリットの方が上回って、結局Miniばかり使っています。数字での軽さ以上に、胸ポケットに入れたりストラップで吊るす場面での取り回しの良さが際立ちますし、アクシデントで落とした時のダメージも少なそうなので、気兼ねなく扱えます。

Echoの方が低音の表現でわずかに優れているのと、画面が大きいというメリットがあるものの、そこまで大差ありません。

現時点でMiniのファームウェア3.4.0で新たに導入された、ミスを誘発しやすい難解なボタン操作だけが嫌なので、私は3.3.0にロールバックして使っています。今後アップデートで新旧両方の操作方式を選べるようにしてもらいたいです。

Fiio X3もまだ持ってます

EchoとMiniのどちらも、あくまでレトロ風ガジェットとして割り切れば価格的にも悪くないと思いますし、とやかく文句を言うのも申し訳ないのですが、ひとつだけ不満を挙げておきたいです。

私自身Fiioの最初期からのファンで、2013年の初代Fiio X3というDAPを大事に持っているのですが、今回久々に電源を入れてEchoと比較してみたところ、画面や操作インターフェースに関してはX3からEchoまでの16年で全く進歩が見られなかったことが残念でした。音質面でもX3は全然悪くないです。

起動時間やボタン操作のレスポンスの速さ、画面描画の見やすさなどはX3の方が優れていますし、USB DACとしても、X3はUAC 2.0の192kHz/24bitハイレゾ対応なのにEchoはUAC 1.0のみと、むしろ退化している部分すらあります。

インターフェースにコストをかけず、過去のプログラムを流用したいという気持ちもわかりますが、Echoが使っているRockchip Nanoプロセッサーはもう十年選手の年季が入ったARM M3 SoCなので、現行のARM M7などの高速汎用SoCに移行する労力を惜しんで、思考放棄の惰性で使い続けている印象を受けます。カッコいいいシャーシデザインに惹かれていざ使ってみると、2026年に見合わない古臭いUIで(これもレトロ風と言えるかもしれませんが)、Fiioのやる気の無さにネガティブな印象を植え付けてしまうようにも思います。

それでは、Echoを買うべきか考えると、もうちょっと機能重視で15,000円のHiby R1とかもライバルに思い浮かびますが、こちらも音質やインターフェースは価格相応に不満が残るので、日々の音楽鑑賞のメインで使うのならもうちょっと上を目指したほうが良いですし、5万円以下で音質優先ならUSBドングルDACの方が断然コスパが良いと思います。

Echoはどちらかというとサブ機として、たとえば車載やBGMの無限ループ再生とかヘッドホンのエージング用途などが思い浮かびます。

私の場合だと、オーディオアンプを修理する際のテスト信号や、修理後に回路を一晩バーンインする時など、自分のメインDAPやパソコンが占拠されないためのサブ機としてFiio X3をだいぶ重宝してきたので、そろそろEchoに交代することにします。

もうひとつ私が思いついた用途としては、メインのDAPは毎週新譜チェックの入れ替えで忙しいので、それとは別にEcho用に32GBくらいの安価なSDカードを数枚買って、ドラムンベースベストとかヒップホップベストみたいなノスタルジックな固定ライブラリーを作っておいて、作業BGMや睡眠導入用に活用しています。

本格的なDAPだと、それ相応の高音質音源を聴くべきという強迫観念を感じることもあるので、それとは別腹で、たとえば昔リッピングしたCDを溜め込んでいる人なら、それらを数百枚まとめたところで大したサイズにならないので、Echoで今一度カジュアルに振り返ってみれば、懐かしい気分に浸れるかもしれません。

そんな懐メロのミックステープ的な使い方であれば、Echoのカセットプレーヤー風デザインで物理ボタンをカチカチと操作するのも趣がありますし、同じくFiio Snowskyのスポンジヘッドホンと合わせてみたり、買ったけど使ってないPortaProとかを引っ張り出す機会にもなります。

自分が学生の頃に散々聴いた名盤の数々を、あらためて振り返ってみると、自分にとって音楽鑑賞やオーディオの意義を再確認する良い機会になるかもしれません。少なくとも私の場合、中学生の頃は今のような高音質機器ではなく、Echoくらいの音質で満足できていました。それこそSnowskyレトロデザインの狙いにピッタリと合致しているのかもしれません。


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