Hibyの新作DAP RS2 IIを試聴してみたので感想を書いておきます。
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| Hiby RS2 II |
小型機ながらフラッグシップRS8 IIのDARWIN R2R DAC技術を転用した高音質モデルということで、2026年10月に約8万円で発売しました。同じR2R技術を搭載しているRS6というモデルを個人的に長年メインのDAPとして使ってきたので、今作もチェックしてみようと思いました。
Hiby RS
中国HibyのポータブルDAPラインナップはR8やR6といったメインストリームのRシリーズとは別に、独自開発のディスクリートR-2R D/A変換を搭載しているRSシリーズがあり、それぞれ数字が大きいモデルの方が上位になります。
2021年にRS6、続いて2022年にはRS2とRS8という順番で登場しており、2025年にはRS8がRS8 IIになり、今回はRS2がRS2 IIに更新されたわけです。
中国などでは2026年10月に発売されており、今回試聴に使ったのはそちらになりますが、日本では11月末に約8万円で発売予定のようです。
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| RS8 IIと比べるとだいぶ小さいです |
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| 前作RS2は画面が上半分だけでした |
前作RS2は本体上半分のみの2.45インチ画面でしたが、今回RS2 IIでは全面タッチスクリーンになり、3.55インチに拡大されました。それでも非常にコンパクトなシャーシサイズで機能面は極めて限定的なのは変わりません。
上位モデルのRS6やRS8がAndroid OSでGoogle Play経由のストリーミングアプリなどをインストールして使えるのに対して、RS2やRS2 IIはWi-FiやBluetooth入力は非搭載、Androidアプリにも非対応で内蔵ストレージも無し、あくまでマイクロSDカードからのファイル再生に特化した独自OSを採用しています。
いわゆるスマホ的な機能を排除することでコストを下げながら、オーディオ回路はハイエンド相当のものを投入しているため、8万円という値段はそこまで安くはありません。
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| Hiby W4, R3 II, R3Pro II, RS2 II |
私の勝手な感想ですが、RS2やRS2 IIは名前で損をしている気がします。Hibyに限らず、多くのDAPメーカーの小型機というとオモチャのようなチープなデザインで、肝心のオーディオ回路もUSBドングルDACに毛が生えた程度のモデルが多いので、RS2 IIもそれらと同類かと勘違いしそうです。
Hibyのラインナップで比べても、上の写真のW4、R3 II、R3PRO IIなどがある中で、見ただけではRS2 IIの位置づけがわかりにくいです。
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| しっかり作られています |
しかしRS2 IIを実際に手に取ってみると、かなり精巧で重厚感のあるデザインは明らかに上位モデルだと実感できます。
ちなみに今回試聴に使ったのは緑色のアルミシャーシ通常版で、後続して金色の銅シャーシ限定版も出るそうです。アルミ版は前作RS2と同じ156gなのに対して、銅シャーシ版は240gということです。シャーシの材料が違うと音も変わるかもしれませんが、数量限定だそうなので、試聴できるかわかりません。
肝心のオーディオ回路について、まずDARWINというのはHiby独自のディスクリートR-2R回路のブランドネームで、前作RS2はRS6と同じ初代DARWIN Iという回路を搭載していたのに対して、今回RS2 IIでは現行フラッグシップRS8 IIと同じ最新世代のDARWIN IIIを採用しているそうです。
さらに、R-2RといってもNOSだけでなく独自のオーバーサンプリングフィルターや倍音構成を変化させるHarmonicsスライダーなどDSP演算にも力を入れており、多彩なサウンドが楽しめます。
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| RS6と同じくらい高品質です |
本体シャーシはHibyらしい角ばったデザインで、ボリュームエンコーダーが電源ボタンも兼ねています。側面はトランスポートボタンのみで、DAPらしいシンプルな形状です。アルミですし、そこまで尖っていないので、そのままポケットに入れても問題無さそうです。
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| 意外と多機能なスライドスイッチ |
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| スイッチの用途を選べます |
本体上面にあるスライドスイッチがちょっと面白いです。誤動作防止のホールドスイッチなのですが、それ以外にも、たとえば画面を180°回転させるなど、設定画面でいくつかの機能から選べるようになっています。
上面のヘッドホン出力端子は、3.5mmと4.4mmのどちらも設定でライン出力モードに変更できます。
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| カードを二枚挿せます |
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| 裏面パネルもカッコいいです |
底面にマイクロSDカードスロットが二つあるのは前作RS2と同じで、高級DAPでもなかなか見ない珍しい機能です。内蔵ストレージが無く、Wi-FiやBluetooth入力も使えないため、せめてSDカードの方は強化しようという試みでしょうか。
たとえば一枚に自分の厳選ベストコレクションを入れておいて、もう一枚には頻繁に入れ替える新譜を入れるなんて使い方ができそうです。
バッテリーは3800mAhでおよそ8時間再生、USB CはUSB DACとトランスポート用にも使えます。
さらに公式スペックによるとスタンバイ時間が32日間と非常に長いです。Android系DAPだと常駐プロセスが多いためスリープ状態でもどんどんバッテリーを消費しますが、DAP専用のシンプルなOSのおかげで無駄な消費が少ないため長持ちするのでしょう。Android採用以前のソニーウォークマンとかも同じ理由からスタンバイ時間が長いことで重宝されていました。
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| 画面は意外と悪くないです |
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| V1.0のホーム画面 (V1.2で変わります) |
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| 設定項目 |
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| MSEB |
インターフェースOSはファイル再生のみに特化しているので、昔懐かしいMP3プレーヤー的な感じですが、前作RS2と比べて画面サイズが大きくなったことで選曲ブラウザー画面などは見やすくなりました。
それでも画面解像度は480×800しかないので贅沢は言えません。大画面が欲しければRS8 IIを買えということですし、このあたりのコスト削減のおかげで低価格を実現しています。
Hiby独自のMSEB機能も搭載しています。イコライザーなのですが、周波数帯ではなくBass extensionやFemale overtonesといったキーワードごとに調整できるようになっているため、直感的にわかりやすいです。
使い勝手と問題点
Hibyを含めた中華系メーカーのレビューをするたびに毎回言うことになるのですが、今回のRS2 IIも例外でなく、音質設計は素晴らしいのに、UIファームウェアの作り込みがあまり良くないのが非常に残念です。
問題点の多くは後日アップデートで対策できるのかもしれませんが、今私が書いているように、発売当時のインプレッションレビューが消えることはありませんし、私もアップデートのたびに試聴機を手に入れて書き直すわけにもいきません。Wi-Fi非搭載なので、勝手にOTAでアップデートしてくれず、ユーザーが自主的にバイナリをダウンロードして行うのもハードルが高いです。
とくにHibyはもう何年もDAPを作り続けているベテランメーカーなのに、私が今回試聴機を使いはじめて30分でトラブルの連続だったので、発売前に一体誰がテストしているのか疑問に思います。
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| ファームウェア 1.2 |
今回も店頭で最初に使ったがのファームウェアV1.0で、続いてV1.1、V1.2と短期間でアップデートが入り、そのたびにそれまで書き留めた不具合点をチェックしなおすという面倒な作業になりました。
現在V1.2でこれを書いており、それでも残っている問題点や不満点を挙げていますが、今後またアップデートで改善されるかもしれません。
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| かなり待たされます |
まず最初に、SDカードのアクセスが非常に遅いです。Wi-FiやBluetoothを搭載しておらず、ファイル再生に特化したDAPとして、これはかなり致命的です。
私が普段AKやiBasso DAPなどで問題なく使えているSamsung Evo PlusやSandisk Extreme Proなどのそこそこ速いカードでも、RS2 IIに入れるとデータベース読み込みに時間がかかり(128GBで15分くらいで、その間操作できません)、ライブラリー画面のジャケット画像も一秒に1-2枚のゆっくりなペースでポツポツと表示され、二画面分ほどスクロールするとバッファーが消えてしまい、戻るたびに毎回読み込みが入ります。
極めつけに、DSD256など転送データレートが多い楽曲だと再生が追いつかず、Extreme Proなど最速クラスのSDカードを使っても数秒に一回音が途切れてしまいます。カードのアクセスが追いついていないのでしょうか。DAPの根幹である音楽再生に支障があるのは困ります。(USB DACとして使う場合はDSD256も音飛びせず聴けます)。
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| No music found |
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| 再生中に急にバグってジャケット絵が消えることもあります |
スキャンせずにフォルダーブラウザから選曲すればよいと思ったのですが、ここでもトラブルに遭遇しました。今回四枚のカードをテストしたうち(どれもPCや他のDAPで問題なく使えています)、二枚はアルバムフォルダーまでは表示するのに、それをクリックするとファイルが表示されるのではなくNo music foundと表示され、先に進めませんでした。
これらのトラブルは、十年前だったらまだプログラミングが甘いとかSoC演算速度やメモリーが足りないからと諦めがつきましたが、2026年にもなって処理が甘いのは困ります。I/Oのフェッチやデータベース構築周りのプログラミングが古いままで、現行SoCの並列処理に最適化できていないのかもしれません。
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| ショートカット |
スマホのような画面上部のスワイプダウンショートカットもありますが、こちらも長押しで設定画面に飛べないのが地味に面倒です。つまりフィルターやMSEBイコライザー変更などを行いたい場合、毎回選曲ブラウザーの階層を遡って設定画面に戻って行うことになります。こちらも昔なら我慢できたところですが、スマートウォッチなどのデバイスに慣れている現代の人にとって、ここまで古いシステムUIはさすがに違和感があります。
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| V1.2で追加されたUSB DACボタン |
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| 押すとモードが選べます |
DAPとして使うのがダメならUSB DACとして使おうと思ったのですが、こちらもまた厄介です。
実はこの部分が初期ファームウェアで最大の問題で、V1.2の主な変更は、これまで設定画面のリストに埋もれていたUSB接続モード選択を、ホーム画面のアイコンとして大きく見せるようにした事です。それでも根幹の問題は解消されていないようで、USB接続に苦労します。
ホーム画面のUSB DACボタンを押すと「USB Charging」「USB does not charge」の二つが表示され、これらのどちらかを押すことでUSB DACモードに移行します。
ちょっと英語がわかりにくいですが、スマホに接続するなら「USB does not charge」を選べばスマホのバッテリーを無駄に消費しないというわけです。
接続に関してはちょっとコツがいります。私がテストした中では、現行iPhoneだと初回接続時は問題なく音楽が聴けるのに、一旦切断すると、再度接続してもiPhone側で検知せず、RS2 IIを再起動することでまた使えるようになります。これはiPhone 三台で同じ挙動でした。古めのiPhoneだと音楽再生が一瞬始まるけれどすぐに切断、また接続、というループが繰り返すことが何度かありました。原因は不明です。
Androidだと、AK DAPから接続する場合は普通のUSB C-Cケーブルでも問題なかったのですが、一部Androidスマホだと、アップルの白いアダプターやAudioquest Dragontailなど、CCピンに5.1kΩフラグのあるOTGアダプターケーブルを正しい方向で接続すると検知しました。逆向きだと動きません。一部OTGアダプターではUSB C端子の表裏も影響します(片側しか5.1kΩフラグがないので)。
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| 動くときはちゃんと動きます |
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| DACモードでは設定画面が開けません |
ようやくUSB DACとして接続できると次の問題が現れます。USB DACモードではRS2 IIの画面が固定されて設定メニューが呼び出せないため、肝心のNOSモードやフィルター、イコライザーなどが変更できません。
とくにDARWIN R2R DACはフィルターやHarmonics、NOSなど自分の好みに調整するのが楽しみのひとつですし、HibyといえばMSEBイコライザーも有名なのに、それらを変更するにはUSBを切断してDAPモードで設定して再接続する必要があります。
とくにiPhoneの場合、一旦切断すると(USBケーブルを外すか、RS2 II画面のDACモードから抜け出すと)、再接続が上手くいかずRS2 IIを再起動する必要があるため、かなり面倒です。
RS2 IIはDAPとして限定的なので、USB DACアンプだと割り切って使うにも、万全とは言えないのが厳しいです。このあたりのシステムをもうちょっと作り込んでいたら絶賛できていたので、非常に残念です。
冒頭でも言ったとおり、今後アップデートで改善する可能性はありますが、現時点で検討している人は実機で確認してからの方がよいと思います。
DARWIN R2R DAC
Hiby RSシリーズは独自のDARWIN ディスクリートR2R DACを搭載しており、RS2 IIには第三世代のDARWIN IIIを採用しています。
近頃はほとんどの中華系メーカーがディスクリートR2R DACに着手していますが、メインストリームなDAPに導入したのは2021年のHiby RS6が初出だったと思います。
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| DARWIN R2R DAC初出のRS6は画期的でした |
私自身、RS6発売当時に興味本位で試聴したところ、その独特な音の良さに感心して長年愛用してきました。5インチの比較的小さめなサイズも普段使いに最適です。
余談になりますが、私のRS6はすでに電源周りの故障で数回Hibyに修理に出しているのですが(途中で金色が入手不可になってグレーに交換されています)、また現在もバッテリーの充電が不安定になり、修理に出そうかと思ったらすでに生産終了ということで、惜しくも現役から引退しました。Androidバージョンが古すぎてアプリがインストールできないという理由もあります。RS8やRS2は後継機が出ているのに、なぜか肝心のRS6は新作が出ていません。
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| RS2とRS2 IIIの比較 |
ところで、DARWIN DACの音質が良いといっても完璧というわけではなく、詳細は後述しますが、私にとっては真空管アンプとかと同じような用途で、あまり高音質と言えないような楽曲でも良い音色に仕上げてくれる脚色能力の濃さに魅力を感じています。
ESSや旭化成など最先端D/Aチップが測定機材の限界を上回る性能を安価に実現できているのに対して、わざわざ古風で高価で技術的な問題が山積みのディスクリートR2Rを選ぶのは、そこに独特の音色のメリットがあるからです。
中華系DAPメーカーの中でもHibyはそんなディスクリートR2R特有のメリットを実感できる音作りを個人的に高く評価しています。
ちなみにDARWIN DACの弱点として、一部DSDファイルを再生すると無音時にチリチリとノイズが発生するという問題があり、(録音には存在しないノイズなので、DARWIN以外のDACで聴けば無音です)これにはRS6の頃からずっと悩まされており、RS8 IIでも対策されておらず、今回RS2 IIも例外ではなく、またチリチリノイズが聴こえます。
このノイズがあるせいで、私にとってHiby RSシリーズはレファレンスDAPになり得ないのですが、DSDファイルを普段聴かない人は気にしなくてもよいです。
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| デジタルフィルター |
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| NOSモード |
RS2 IIはこれまでのRSシリーズと同じくノンオーバーサンプル(NOS)以外にオーバーサンプリングデジタルフィルターも選べます。上の画像はいくつか代表的なものを44.1kHz/16bitのパルス波形で比較したものです。
オーバーサンプリングフィルターの中にも「0th order hold NOS」という疑似NOS的なフィルターがあり、純粋なNOSモードとよく似ています。それ以外では「Darwin Default」は前後対称の一般的なもので、「Darwin Ultra」はプリリンギングを減らしたタイプですが、注意点として、Darwin Ultraはエネルギーが分散して振幅が大きく減っているため、音量もだいぶ小さく感じるのが上の波形でも確認できます。
44.1kHz/16bitのサイン波でオーバーサンプリング(Default)とNOSモードを比較したものです。NOSモードではしっかり16bitの階段が見えますが、アナログアンプの特性か角がそこそこ丸くなっています。
出力
いつもどおり0dBFSのフルスケールサイン波信号を再生しながら負荷を与えて歪みはじめる(THD > 1%)最大出力電圧(Vpp)を測ってみました。
赤がバランス、青がシングルエンドで、それぞれゲインが三段階、さらに薄色の線はライン出力です。
公式スペックによるとバランス接続で最大出力電圧が4.5Vrmsつまり12.7Vpp、最大出力は630mWと書いてあり、実測では最大13.4Vpp、20Ω付近で650mW程度出せているため、ほぼピッタリ合っています。
システムの設定でライン出力モードを選ぶと、4.4mmと3.5mmのどちらもちゃんとしたライン出力信号に切り替わります。ヘッドホンアンプを通さない高インピーダンス信号なので、RS2 IIをUSB DACとして活用できるのは嬉しいです。
同じ信号で無負荷時にボリュームを1Vppに合わせてから負荷を与えたグラフです。バランスとシングルエンドのどちらも同じような出力特性で、出力インピーダンスはそれぞれ2Ω、1.3Ω程度です。
ライン出力はレベル固定なので1Vppに合わせられなかったのですが、冒頭のグラフで見てわかるとおり出力インピーダンスは高く、約180Ωと90Ωくらいです。
バランス出力の最大ゲインモードのみで他のHiby DAPと比較してみると、RS2 IIはRS6とほぼ同じような出力特性のようです。
最上位のRS8 IIは電圧ゲインも高負荷時の余裕も明らかに優れていますが、RS2 IIもコンパクトながら、ベーシックモデルM500と比べてそこそこ高電圧が得られます。さらに前作RS2は電流バッファーが非力で、IEMイヤホンの低インピーダンス負荷に向いていなかったところ、RS2 IIはそのあたりがだいぶ強化されています。
私自身RS6を長年使っていて、普段パワーに不満を感じたことは無かったので、RS2 IIも問題ないと思います。どうしても難しいヘッドホンを鳴らしたい場合は、RS6と同様にライン出力モードが用意されているので、ブースターとしてアナログポタアンを装着するのにも向いています。
音質とか
今回の試聴では、普段から聴き慣れているMadoo Typ821やゼンハイザーIE900イヤホンなどを使いました。RS2 IIはRS6と同じくらいパワーがあるDAPなので、ほとんどのイヤホンやヘッドホンを問題なく駆動できると思います。
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| Madoo Typ821 |
冒頭でも言ったとおり、RS2 IIのサウンドはかなり良いです。「低価格コンパクトDAPの中では」といった前置きもいらず、最高級クラスのDAPと比べても遜色ありません。ディスクリートR-2R DACに期待されるような音色の濃さや太さが見事に実現できており、リラックスした雰囲気の中で声や楽器の鮮やかな表現が素晴らしいです。
さらにRS2 IIではNOSモードがだいぶ進化していることに驚きました。従来のRS6やRS2だと、NOSモードはちょっと粗っぽく限界が感じられるため、オーバーサンプリングフィルターのスムーズな仕上げ方との使い分けが求められたのですが、RS2 IIでは基本的にどの音楽もNOSモードのみで十分満足でき、フィルターをあれこれ切り替える必要がだいぶ減りました。
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| Amazon |
GringoltsといえばBISレーベルなどで活躍するヴァイオリンの名手ですし、今作は古楽中心の学術肌Arcanaレーベルからのリリースというのが面白いです。
私自身クラシック音楽はオーケストラよりもこういった室内楽の方を好んで聴いているのですが、今作のようなピリオド志向の録音はちょっとカジュアルに聴きづらい側面もあります。Gringoltsの1718 "ex-Prové" ストラドヴァリウスはガット弦を張っており、Gerzenbergが弾くのはグラーフ1819年フォルテピアノのレプリカです。
現代的な金属弦とスタインウェイグランドピアノでの演奏が濃厚魚介豚骨だとすれば、この手の古楽器演奏は元祖中華そばの再現みたいなもので、やはり帯域やダイナミクスのレンジが狭いですし、細かいニュアンスを拾う味覚センスが求められます。そのために精細で高解像なオーディオ機器を駆使して、精神統一して坐禅を組むように演奏と向き合うというのが本来のオーディオマニア的な聴き方になると思いますが、もっとカジュアルに楽しもうと思っても、ヴァイオリンはキーキー、ピアノはモコモコ、薄味の軽い音が鳴っているだけで、飽きてしまいます。
その点RS2 IIは素晴らしいです。ヴァイオリンとフォルテピアノの両方に充実した厚みが加わると同時に、澄んだ輝かしさも表現できており、派手な押し付けがましさもないおかげで、流れに任せてずっと聴いていられます。雰囲気としては、カーゾンとかカッチェンなど60年代のデッカLPを聴いているような感覚といえば、クラシックファンには伝わるでしょうか。演奏風景の空間構成とか抽象的な精神性の内面みたいなものを引き出すのが得意というわけではなく、あくまでカジュアルに、楽器が鮮やかでスムーズに鳴ってくれて、わかりすく良い音だと実感させてくれます。
ピリオド楽器以外でも、たとえばモンテヴェルディやシュッツなど古楽も好きで結構聴くのですが、他のDAPで聴いていると、演奏の進行が淡々としすぎて、なんだか盛り上がりを逃して終わってしまうことがよくあります。ところで英グラモフォン誌の2026年アルバム・オブ・ザ・イヤーが先日発表されましたが、ルイ・クープランのチェンバロということで、せっかくだから聴いてみようと思ったものの、案の定寝てしまいました。そういう時にRS2 IIが活躍してくれます。聴きはじめて数分で「あれ、なんだか意外と面白いぞ」と思えてきて、無意識に音楽に集中できている自分がいます。オーディオ機器として、測定スペックとか多彩なモード変更なんかよりも、この方が重要ではないでしょうか。
冒頭でRS2 IIのDARWIN R2R DACは真空管アンプを通すのと似ていると言いましたが、ちょっと違う点もあります。最近は真空管プリを搭載しているDAPやポタアンが増えており、それらの多くは、音源の周辺情報を低減して音色本体の響きを増すことで浮かび上がらせる、コントラストを増す効果が感じられます。家電量販店のテレビのデモ用モードみたいな感じでしょうか。たしかに有効ではあるのですが、どの楽曲を聴いても同じ色眼鏡を通しているような、音源よりも再生機器の効果という感覚が強いです。
一方RS2 IIの方はデジタルデータの段階から太く濃い線で(悪く言えば大雑把に)描いているような印象で、アナログドメインで追加効果を付与している感じではないため、しみじみとした渋味みたいなものが維持できています。古いデッカレコードのように感じるというのも、そのためでしょうか。
もちろん真空管アンプでも、パワー管も含めた本格的な据え置き機なら音作りの幅が広がって高いポテンシャルが得られるのですが、ポータブルに限定するとRS2 IIのような落ち着いた渋味を得るのは困難です。
もっとレファレンス寄りで繊細かつ分析的な体験をしたいなら、そういうのが得意なオーディオはいくらでもありますが、カジュアルに聴いていて満足できるという点でRS2 IIを上回るDAPはなかなか思い浮かびません。私の好みとしてはRS6やRS8 IIよりも好きです。RS8 IIは高価なフラッグシップDAPに相応しい解像力や空間を広く展開する能力が上かもしれませんが、私がDARWIN R2R DACに求めているサウンドの理想はRS2 IIの方に近いです。
RS6とは個人的に付き合いが長く、RS2 IIとの共通点も多いのですが、音を鳴らした瞬間に「良い音色だな~」と感じるのはRS2 IIの方が上です。RS6はどの楽曲を聴いてもそこそこ上手く仕上げてくれる性格なのに対して、RS2 IIの方がもっと積極的に、普段は聴きづらいシビアな楽曲や、古くて録音品質があまり良くない楽曲をだいぶ楽しめるように仕上げてくれます。RS6やRS2の初代DARWIN R2Rと比べて、DARWIN IIIでは抵抗の補正や細部の高品質化によってノイズや歪みが低減したと書いてありましたが、そのあたりが効いているのかもしれません。
とくに前作RS2と比べるとRS2 IIの進歩は明白です。RS2は少し荒っぽい傾向があり、大人なRS6と元気なRS2という対比がありました。ところがRS2 IIはそのどちらよりも優れていると思えるような進化が実感できます。初代DARWIN R2Rの限界がRS2では見え隠れしていたところ、それを上手く調整して仕上げたのがRS6であれば、RS2 IIのDARWIN IIIではその必要が無く素で出せるようになった感じです。
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クラシック音楽を聴く人なら共感してもらえる話だと思いますが、Eloquenceレーベルなど昔の録音の復刻全集ボックスの安さに釣られて、セール中に買ったはいいけど消費しきれないというのがよくあります。懐かしく思って手に入れたものの、新譜と比べてそこまで高音質という程でもなく、そのうち聴こうと思って結局聴かずじまいというわけです。
RS2 IIはそういった復刻リリースを楽しむのに最適なDAPです。オーディオマニアに傾倒しすぎると、どうしても最新の高音質音源ばかり優先して聴きたくなる悪い癖がついてしまうのですが、RS2 IIはノイズの多い60年代アナログ録音やギラギラした80年代デジタル最初期盤なども良い感じに仕上げてくれるため、積極的に聴くきっかけになってくれます。
上で挙げたようなベートーヴェン交響全集なんて何種類持っているかわかりませんが、やはり演奏を聴き比べたくなってしまいます。RS2 IIで聴くことで、古めのステレオ録音にありがちな空間位相の捻じれやスポットマイクの整合性の悪さ、低音の歪みや高音のノイズカットの息苦しさといった不具合が気にならない程度に馴らしてくれて、フラットな目線で指揮や演奏の上手さを堪能することができます。
Hiby RSシリーズに共通するサウンドの特徴として、昔のCDプレーヤーで聴いているような土台の安定感があり、RS2 IIはその感触が極めて強いです。スイングアームメカとTDA1541Aを搭載したフィリップス・マランツの初期CDプレーヤーは今でも熱心なファンが多いのですが、RS2 IIはそのあたりの雰囲気を一番手軽に味わえる方法です。
ちょっと生ぬるいと思っていた44.1kHz/16bit音源でも、RS2 IIのNOSモードで聴いてみると、意外と充実した体験が得られるので、音質の良し悪しで楽曲を選ばず、音楽体験の幅が広がります。また普段は録音の不備が目立ってしまうようなシビアなイヤホンやヘッドホンでも、RS2 IIを通せばそこまで過敏にならずに楽しむことができます。
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| RS8 IIと比較 |
いくつかアルバムを通して聴いてみたところ、普通に音楽を楽しむという点では、個人的にはRS8 IIやRS6よりもRS2 IIの方が好みに合うようです。
RS6からRS2 IIへはDARWIN IIIへの進化という理由に説得力がありますが、RS8 IIとの具体的な差というと、やはりアンプ回路の違いになるのでしょうか。RS8 IIはハイエンド機相応にパワフルでレスポンスが高いサウンドなので、アンプ回路の作り込みに相当力を入れていることが実感できるのですが、むしろそれが楽曲との相性や気難しさに繋がるかもしれません。
RS8 IIはスケールの大きなオーケストラやオペラなどの楽曲を広大な空間に分散して顔面で浴びるような聴き方に向いており、とくに低音側の広がりが優秀なので、録音にもそれに見合うポテンシャルが求められます。それとは対称的に、RS2 IIは乱雑でまとまりのない楽曲でもスッと落ち着いた雰囲気に落とし込んでくれて、聴くべき音色を美しく提示してくれます。
どちらが高級ハイエンドDAPっぽいサウンドかと聞かれたら多分RS8 IIを選びますが、シンプルに音の魅力という点では断然RS2 IIです。
RS8 IIも設定次第ではRS2 IIと同じようなサウンドが得られるのかもしれませんが、実はそこに落とし穴があります。RS8 IIはカスタムプリセットやクラスABスライダー、Sankofa AIなど、ものすごく多くのサウンド変更機能が詰め込まれているため、RS8 IIの本質的な音というのが結局よくわかりません。また、RS2 IIのようなサウンドに近づけようとしても、サウンド変更機能がバラバラに動作するため、どこから着手していいのかわかりません。
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| Austrian Audio Full Score One |
RS2 IIの音の良さを実感したことで、その理由がDARWIN III R2R DACにあるのか、それともヘッドホンアンプ回路の方にあるのか気になります。
RS2 IIはライン出力モードが用意されており、それを使えばヘッドホンアンプ回路を通らないR2R DACの純粋なライン出力が得られるので、据え置きアナログヘッドホンアンプAustrian Audio Full Score Oneに接続して聴き比べてみたところ、それでもRS2 II特有の鮮やかな鳴り方が実感できます。
つまりRS2 IIの音の良さは主にDARWIN DACの方にあり、内蔵ヘッドホンアンプ回路はできるだけそれを崩さずに高純度で届けるような役割であることがわかります。
RS2 II単体でもだいぶ満足できたものの、Full Score Oneを接続することでさらに音質が良くなります。つまりRS2 IIはポータブルDACアンプとしてだけではなく、ラインソースとしても極めて有効ですし、先程感じたように、RS8 IIとRS2 IIの違いはやはりヘッドホンアンプ回路にありそうです。Full Score Oneではなくて、もっと別のアンプを接続すれば、RS8 IIっぽいサウンドに寄せることも可能かもしれません。
優れたヘッドホンアンプを通すことで大型ヘッドホンも余裕で駆動できるようになるのはもちろんのこと、音場の安定感や空間の広がりが向上しながら、RS2 IIの本質であるリラックスした音色の鮮やかさは損なわれません。DAC由来の限界の低さを感じさせず、システムとして上手くまとまってくれるのもRS2 IIの強みだと思います。
ヘッドホンに限らずスピーカーシステムでも、普段は高解像レファレンス系のDACをソースとして使っている人なら、その代わりにRS2 IIを使うことでまったく異なる音楽体験が実現できます。ハイエンドなオーディオシステムを組んだけれど、普段聴くのは最新ハイレゾクラシックとかではなく往年の名盤が多いのなら、RS2 IIをDACに使ってみる価値があります。
おわりに
今回Hiby RS2 IIを実際に使ってみて、やはりいつもと同じような結論に至ってしまいました。サウンド面での作り込みは抜群に良いけれど、インターフェースOSの安定性や完成度が低いため、安易に絶賛することができません。とくにスマホとのUSB接続を検討している人は、自身のデバイスで確実に動作するかテスト必須です。
中華系メーカーの新作が見切り発車なのはいつもの事なので、発売直後ではなく、もうちょっとファームウェアが安定するのを待ってからレビューするという手もありますが、実際それがいつになるのかもわかりませんし、私が挙げた不満点も実用上問題ないという人もいると思うので、とりあえず感想をまとめてみました。
またHibyはどうかわかりませんが、多くの場合、日本の輸入代理店はこのあたりも踏まえて、ファームウェアが安定するまで日本国内での発売タイミングを遅らせることがよくあります。海外製品が国内に入ってこないとか発売が遅いと不満に思っている人はそのあたりも考慮する必要がありますし、逆に個人で並行輸入する際にはそれなりのリスクがあります。
RS2 IIに話を戻すと、音質はとにかく素晴らしいです。ハイスペックなAndroid DAPをすでに持っている人でも、これくらいの価格とサイズならサブ機として購入するのも良いと思いますし、機能面には目をつぶって、純粋に音質だけに注力したオーディオ機器というのはやはり魅力的です。
ひとつ難しい点としては、数年前とくらべてファイル再生に専念できる人はだいぶ少なくなっていると思います。私みたいにBandcampなどでFLACを買っているのは少数派になり、サブスクリプションストリーミングのみの人が増えています。
そのため各社DAPはGoogle Playアプリ対応で大型化を余儀なくされていますし、スマホと連携するUSBドングルDACやBluetoothヘッドホンアンプが人気です。そんな中で、RS2 IIがいくら音が良いからといって、わざわざFLAC楽曲を買ってカードに入れて聴く人はどれくらい残っているのでしょうか。
そうなるとRS2 IIはポータブルUSB DACアンプとして割り切って使うのも良いのですが、そのためには、USB接続の確実性が低いのと、DACモードで設定変更など画面操作が一切できないという二つの課題が障害になっています。今後ファームウェアアップデートでこれら二つが実現できたら、かなりお薦めできる製品になりそうです。
最後に、個人的には長らくRS6を使ってきたので、そろそろ後継機を期待したいです。RS2 IIのコンパクトさは魅力的ですが、RS6の5インチサイズ程度なら十分ポータブルとして許容できます。
今回RS2 IIを試聴して、あらためてHibyのオーディオ回路の音の良さを実感できたので、もし今後RS6の後継機が出るのであれば、できればRS8 IIのようなDSPギミック盛り沢山で付加価値を高めるのではなく、むしろRS2 IIのシンプルさに見習って、曲を選んで再生ボタンを押すだけで良い音だと感じるようなDAPであることを願っています。
アマゾンアフィリンク
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| HiBy FC5 with Display Black |
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| HiBy FC4 with Display Silver |
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| HiBy W4 Orange |
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| HiBy Cu4 バランス イヤホンケーブル |
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| HiBy WG01 イヤホンチップ |
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| HiBy UC10 USB-C - 同軸 S/PDIF デジタルオーディオコンバーター |











































