Audioquest Jitterbug |
Audioquestはそもそもオーディオ用高級ケーブルのメーカーだったのですが、低価格USB DACのDragonflyを皮切りに、最近ではハイテクヘッドホンNighthawkなど、なにかと話題性の高い商品を展開しています。ケーブルメーカーとしては大きなシェアを誇っているのですが、とにかく面白そうな商品を作ろうという意気込みが感じられる、フットワークの軽い企業のようです。
JitterbugはUSBメモリ程度の大きさのデバイスで、USBケーブルの間に接続することによりパソコンからのノイズを除去するという、いわゆる「音質向上アクセサリ」です。こういった商品はオカルト系のものが多いのですが、このJitterbugは一万円以下の手頃な価格なので、興味本位で試してみるのも面白いかもしれません。その効果のほどを調べてみます。
USBオーディオについて
前回、個人的なUSB DACのトラブルについて書き留めましたが、その中でも特に電源配線に大量のノイズが混入していることについて触れました。
↓こちらです
http://sandalaudio.blogspot.com/2015/09/dacusb.html
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このUSB電源(いわゆるバスパワー電源)のノイズ量は、パソコン、マザーボードの品質にもよりますし、同じUSBバスを利用している他のデバイスにも依存します。
たとえば、最悪の場合、USBマウスを動かすと音楽からプチプチとノイズが発生するといった問題も経験しています。
ノートパソコンの場合はデスクトップPCとくらべて電源対策が貧弱な場合が多く、ハードディスクが動くたびに音楽に「ピー」というノイズが入るというのはよくあります。また、あまり知られていないことですが、パソコンに内蔵されているウェブカメラやBluetoothアンテナなども、じつは内部的にUSB機器として接続されているため、それらを使うことでUSBのノイズが増える場合もあります。
たとえば、最悪の場合、USBマウスを動かすと音楽からプチプチとノイズが発生するといった問題も経験しています。
ノートパソコンの場合はデスクトップPCとくらべて電源対策が貧弱な場合が多く、ハードディスクが動くたびに音楽に「ピー」というノイズが入るというのはよくあります。また、あまり知られていないことですが、パソコンに内蔵されているウェブカメラやBluetoothアンテナなども、じつは内部的にUSB機器として接続されているため、それらを使うことでUSBのノイズが増える場合もあります。
Aurorasound BusPower-Pro |
USB電源の問題については、たとえばパワードUSBハブを使うといった対策もありますし、有名なところでは、Aurorasound社のBusPower-Proという、USB+5V電源だけを分離して別系統から供給するような装置もあります。
BusPower-Proは私自身も所有していますが、ノイズに弱かった従来のUSB DACでは重宝しました。
BusPower-Pro |
BusPower-Proの内部 |
BusPower-Proの内容は極めてシンプルで、USBデータ配線はそのままスルーして、+5V電源のみ絶縁、外部ACアダプタから9Vを入力、それをLCフィルタと三端子レギュレータで5Vに落として供給するといった仕組みです。構造は簡単ですが効果は確実で、しかも値段は1万円以下ということで良心的な商品だと思います。
BusPower-Proの一番の問題は、外部の9Vアダプタが必要なため、ポータブル利用に適さないということです。
Audioquest Jitterbug
本題のAudioquest Jitterbugですが、同社の小型USB DAC「Dragonfly」に直列接続するのが想定されているようです。残念ながら私自身はDragonflyを所有していないのですが、個人的に常用しているUSB DACのiFi Audio micro iDSDにて使ってみようと思います。
Jitterbug(ジターバグ)というのはジャズ・スイング系ダンスの一種で、Jitter(揺れる)とBug(虫)を合わせたスラングです。オーディオ的なジッターと、Audioquest Dragonfly(トンボ)に通づるバグ(虫)という意味で、巧妙なネーミングだと思います。
パッケージはDragonflyと同様に光沢のある黒い紙ボックスで、中身は簡素なダンボールに説明書類が入っています。ところで、ボックス側面にAudioquest社の関連商品が紹介されているのですが、その中でまだ未発表の「Audioquest Firefly」なる商品があります。Dragonflyが赤い筐体になったようなので、もしかすると今後発売される上位機種なのかもしれません。
説明書を見ると、Jitterbugは一個では飽きたらず、複数個購入して、パソコン上のあらゆるUSBポートに接続しても効果があると書いてあります。確かに不要なUSBポートや、プリンターやハードディスクなど、USB DAC以外の機器にもJitterbugを接続すれば、それらからの混入ノイズを低減されるメリットはあると思いますが、Audioquest社は商魂たくましいですね。
説明書以外では、オンラインのハイレゾオーディオショップ割引券が入ってました。
Jitterbug本体はチープなプラスチック製で、Dragonflyのように高品質なゴム処理ではありません。単純にUSB A端子の入出力があるだけで、本体はグラグラとしています。いくら安いと言っても7000円はする商品なので、もうちょっとクオリティを高くして欲しいです。Audioquestのケーブル類は非常に高品質なので、なぜJitterbugだけこんなにチープなのか疑問に思います。
Jitterbugの内部 |
内部パーツを見てみると、意外としっかりしています。電源ラインはグランドのCRフィルタと+5Vの大型チョークでフィルタされており、USBデータ線もAurorasound BusPower-Proのようなスルー直通ではなく、コモンモードチョークでデータのノイズを除去するような仕組みです。外部電源を使わない単純なフィルタとしては、かなり理想的なデザインだと思います。
Jitterbugのテスト
今回のテストには、WindowsパソコンとiFi Audio micro iDSDを使いました。
USBケーブルを接続した状態で、micro iDSDの基板上のUSB +5V電源とグランド間の電圧ノイズ観察してみます。USBケーブルはSupraの1mケーブルを使用しました。検証のためFURUTECHのUSBケーブルも使ってみましたが、測定上あまり違いは出ませんでした。
USB電源ノイズ(音楽停止時)(Jitterbug無し) |
ちなみに、パソコン上のUSBポートはUSB2.0、USB3.0ポートなどいくつか試してみましたが、ノイズ成分はあまり変わりませんでした。
トリガした電源ノイズ成分は、USBデータと同期しています |
興味深いのは、パソコンで音楽を再生すると、ノイズが飛躍的に悪化することです(456mV)。再生する音楽ファイルのサンプルレートが上がるに連れてノイズ量が増えたため、確認のためノイズ成分をトリガして観察してみたところ、USBデータ信号が電源線に飛び移っているようです。
もちろんこれらのノイズは高インピーダンス信号なので、直接的に回路に悪さをするほどのエネルギーは無い場合が多いですが、省電力設計のUSB DACの場合は、微小な電流でも回路に影響を与えます。そもそも、今回の測定グラフはmicro iDSDを接続した状態での観察なので、通常使用時と同様の負荷(50mA程度)がかかっている状態での測定ということです。
Audioquest Jitterbugを接続した状態での測定グラフを見ると、電源ノイズの違いは一目瞭然です。ノイズ成分の最大振幅は106mV、DSD音楽再生時でも112mVと、劇的に下がっています。唯一問題だと思ったのは、平均電源電圧が本来ならば4.84Vあったところが、Jitterbugを接続すると4.73Vに下がってしまったことです。つまりもともと電圧が低いUSBポートの場合はJitterbugを接続することでUSB DACを駆動できなくなるかもしれません。
XONAR X7電源ノイズ(192kHzPCM再生時)(BusPower-Pro無し) |
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比較対象として、先ほど紹介したAurorasound BusPower-Proを使用した際のグラフです。こちらはmicro iDSDではなく、ASUS XONAR X7というUSB DACを使ってみました。BusPower-Pro未使用時はXONAR X7との間で膨大な量の電源ノイズが発生していますが、BusPower-Proを接続することでクリーンになっています。
そもそもこのBusPower-Proの場合、パソコンからの+5V電源は配線自体がカットされており、代用の+5Vを別途ACアダプタから持ってきているので、電源の品質はACアダプタの性能にもある程度依存します。
そもそもこのBusPower-Proの場合、パソコンからの+5V電源は配線自体がカットされており、代用の+5Vを別途ACアダプタから持ってきているので、電源の品質はACアダプタの性能にもある程度依存します。
このようにグラフを比較してみると、Audioquest Jitterbugは、外部のACアダプタを必要とせずに、BusPower-Proと同等のUSB電源フィルタリング性能を発揮していることがわかります。
回路への影響
さて、USB電源のフィルタに絶大な効果があるAudioquest Jitterbugですが、実際にUSB DACの音楽回路的にはメリットはあるのでしょうか。
実際はUSB DAC内で電源のクリーニングがされています |
USB DACに入力された+5V電源は、本体内部でフィルタやレギュレータなどを通過してから、DACチップやオペアンプなどの電源として使用されます。ようするに一般的な高級なUSB DAC製品の場合、そもそも本体内部にJitterbugと同程度のフィルタ回路がすでに組み込まれている場合が多いです。
具体的には、たとえばiFi Audio micro iDSDの場合は、USBのバスパワー電源はフィルタ回路を通って、内蔵バッテリーを介してからDAC・アンプ回路に給電されます。中でも肝心なのはDACチップとオペアンプへの供給電源ですが、これらの入力電源ノイズを、Jitterbug無しと有りで比較してみると、ほぼ違いがありません。つまり、micro iDSDの場合は、内部的にJitterbugと同程度のフィルタリングを行っているため、直接的な駆動電源は大差が無いことになります。
もちろん他の部分で放射ノイズなどの影響はあるかもしれません。USB DACの基板設計が下手で、回路配線が入り組んでいたりシールドが不十分だと、電源のノイズがDACチップやコントローラにアンテナのように飛び移って、アナログやデジタルデータに異常を及ぼす場合もあります。
たとえばオーディオ鑑賞中に携帯電話が鳴ると、スピーカーからブツブツといったノイズが発生するのと似たような現象です。
もちろん他の部分で放射ノイズなどの影響はあるかもしれません。USB DACの基板設計が下手で、回路配線が入り組んでいたりシールドが不十分だと、電源のノイズがDACチップやコントローラにアンテナのように飛び移って、アナログやデジタルデータに異常を及ぼす場合もあります。
たとえばオーディオ鑑賞中に携帯電話が鳴ると、スピーカーからブツブツといったノイズが発生するのと似たような現象です。
手持ちの安物スコープではデータ線観測は不十分でした |
せっかくJitterbugはUSBデータ配線にもチョークフィルタを装備しているので、電源配線だけではなく、データ配線も観察したいのですが、残念ながら手持ちのスコープでは速度不足でシグナルが潰れてしまい、まともな評価はできませんでした。
とはいっても、USBのデータ配線は規格上90Ωの差動入力インピーダンスが指定されているため、同相、逆相ともにノイズの混入は電源線ほど過敏ではないと思います。そして、USBデータ配線はすぐにXMOSなどのUSBインターフェース・レシーバーに入力されるため、電源配線のように回路内の各所に回りこむ心配は少ないです。
とはいっても、USBのデータ配線は規格上90Ωの差動入力インピーダンスが指定されているため、同相、逆相ともにノイズの混入は電源線ほど過敏ではないと思います。そして、USBデータ配線はすぐにXMOSなどのUSBインターフェース・レシーバーに入力されるため、電源配線のように回路内の各所に回りこむ心配は少ないです。
USBケーブル問題
前回のブログ記事で、私のmicro iDSDについての不具合を報告しました。
↓こちらです
http://sandalaudio.blogspot.com/2015/09/dacusb.html
3メートル程度のUSBケーブルを使うと、パソコンのマザーボード上の特定のUSBポートに接続すると再生中にエラーが発生するといった症状です。色々と検証してみたところ、デバイスマネージャ上で、「Intel USBルートハブ」経路のUSBポートに接続するとエラーが発生して、「ASMedia USBルートハブ」のUSBポートだと問題が発生しませんでした。理由は不明です。
実は、このAudioquest Jitterbugを利用することで上記のトラブルが解消できるかと期待していたのですが、実際Jitterbugを使ってみたところ、なんと今まで問題なく使えていたASMedia USBルートハブ上でもmicro iDSDがエラーで止まってしまいました。
つまり、Audioquest Jitterbugは、こういったUSB関連のトラブルを確実に解消するような魔法のアクセサリではないということです。ユーザーごとにパソコンのUSBポートとUSB DACの接続状況や相性が異なっていると思うので、各自動作確認が必要かもしれません。
↓こちらです
http://sandalaudio.blogspot.com/2015/09/dacusb.html
3メートル程度のUSBケーブルを使うと、パソコンのマザーボード上の特定のUSBポートに接続すると再生中にエラーが発生するといった症状です。色々と検証してみたところ、デバイスマネージャ上で、「Intel USBルートハブ」経路のUSBポートに接続するとエラーが発生して、「ASMedia USBルートハブ」のUSBポートだと問題が発生しませんでした。理由は不明です。
実は、このAudioquest Jitterbugを利用することで上記のトラブルが解消できるかと期待していたのですが、実際Jitterbugを使ってみたところ、なんと今まで問題なく使えていたASMedia USBルートハブ上でもmicro iDSDがエラーで止まってしまいました。
つまり、Audioquest Jitterbugは、こういったUSB関連のトラブルを確実に解消するような魔法のアクセサリではないということです。ユーザーごとにパソコンのUSBポートとUSB DACの接続状況や相性が異なっていると思うので、各自動作確認が必要かもしれません。
まとめ
Audioquest Jitterbugは、電源ノイズをフィルタリングするという用途においては、非常に安価ながら優れた製品だと思います。すでにパソコンとUSB DACを活用したオーディオシステムを構築しているユーザーであれば、ぜひ試してみる価値はあると思います。
Audioquest Dragonflyや、Geek、Meridian Explorerなど、小型バスパワーDACを所有しているのであれば、DAC内蔵のフィルタはあまり期待できないため、Jitterbugを経由することでクリーンなUSB信号と電源を供給することができ、音質向上効果があると思います。
大型の据置型USB DACを使っているのであれば、それらの内部にすでに高水準なUSBアイソレータやフィルタが内蔵されていると思うので、Jitterbugは僅かな効果しか得られないと思いますが、7000円程度なので、ネタとして買ってみてはいかがでしょうか。
先月の英国Hi-Fi News誌で、Jitterbugの精力的なレビュー記事がありましたが、試聴レビュワーはすさまじい音質アップだと絶賛していました。同誌の測定上でもAudioquest Dragonflyと併用することで、微小ではありますが実測できるジッタ低減効果を確認できていました。個人的には、良質なUSBケーブルさえ使っていれば、Jitterbugによる音質的な効果はあまり感じられませんでしたが、USBケーブルの信号がクリーンになるのは気分が良いです。