世間は2017年になってしまいましたし、正月はヒマなので、前回の高音質アルバム紹介に続いて、2016年に私が試聴したりして気に入ったイヤホン・ヘッドホン・DAP・ヘッドホンアンプなどをいくつか思い出してみました。
色々と聴いた一年でした |
勝手な主観でダラダラと適当に書いただけなので、なんの目新しい内容もありません。
本当にヒマを持て余している時にでも読み流して、「そういえばそんな商品もあったな」なんて思って頂けると幸いです。時間の無駄だったと怒らないでください。
本当にヒマを持て余している時にでも読み流して、「そういえばそんな商品もあったな」なんて思って頂けると幸いです。時間の無駄だったと怒らないでください。
2016年のイヤホンとか
2016年は、マルチBA型IEMイヤホンにおいて画期的な進化が感じられた一年でした。2015年にもその片鱗が見られましたが、2016年は多くの新興ブランド勢が「第二世代モデル」とも言えるようなユニバーサルIEMを一斉に発売したおかげで、つねに毎週なにかしら新作イヤホンが登場しているような感じでした。
具体的に、なぜ近頃のモデルが「第二世代」と思えるのかというと、まず、ここ数年でバランスド・アーマチュア(BA)型ドライバそのものに大幅な更新がありました。
これまでは特許の関係で、補聴器用BAドライバのメーカーが製造を独占しており、IEMイヤホンメーカーというのは、既製品ドライバを買い入れて、ただプラスチックのボディに埋め込むだけの作業だったのですが、それが最近では特許の権利事情が変わったため、JH AudioやNoble Audioといった主要IEMブランドが、オーディオ用に特化した、自作もしくはカスタマイズされたBAドライバを開発できるようになりました。
多くのメーカーのカタログを注意して見ると、2016年のモデルから、「独自カスタマイズBAドライバ」といったセールスポイントが見られます。
これまでは特許の関係で、補聴器用BAドライバのメーカーが製造を独占しており、IEMイヤホンメーカーというのは、既製品ドライバを買い入れて、ただプラスチックのボディに埋め込むだけの作業だったのですが、それが最近では特許の権利事情が変わったため、JH AudioやNoble Audioといった主要IEMブランドが、オーディオ用に特化した、自作もしくはカスタマイズされたBAドライバを開発できるようになりました。
多くのメーカーのカタログを注意して見ると、2016年のモデルから、「独自カスタマイズBAドライバ」といったセールスポイントが見られます。
次に、ハウジング音響設計に大幅な進展がありました。これまではプラモデルのようなプラスチックシェルを接着剤ではめ合わせたものか、カスタムIEMのように、柔らかいプラスチックを溶かして流し込んだような形状が多かったのですが、最近ではたとえば3Dプリンタ技術の進歩により、内部空間の音の流れや、複数ドライバの距離や位置関係なんかも、より精密にスピーカーさながらの音響設計が実現できるようになりました。
音導管の設計技術も向上しています |
ハウジング素材の響き方も音質に貢献する要素として認識されるようになり、安価なプラスチックだったボディが、金属削り出しや粉末焼結など、響きの特徴を活かした素材選びを行うメーカーが増えました。ドライバから耳まで音を届ける音導管も、これまでのような無造作なプラスチックチューブではなく、各ドライバごとに長さを変えた金属管を接続するなど、より高度な設計が見られるようになりました。
さらに、これまでは複数のドライバをヘッドホンケーブルから直接配線していたところ、各ドライバごとに送る周波数帯域やタイミングを入念に調整した、電気クロスオーバー回路を登載したIEMが増えてきました。クロスオーバー回路を導入することで、各ドライバ間の干渉が抑制でき、よりクセや違和感の少ないフラットサウンドが実現できます。これもスピーカーでは当たり前の技術です。
このような様々な技術的な進展により、旧世代のIEMイヤホンと比べて明らかに実感できる、飛躍的な音質向上が実現できています。数年前の最高級IEMでも、2016年の最新モデル勢とくらべると、帯域の狭さや、ヴォーカル周波数が鼻つまみや拡声器のように聴こえるような、音色の違和感が感じられます。
「実際の生演奏と比べて違和感がある」と言ってマルチBA型IEMを毛嫌いしていた人達でも、2016年の新作モデルを試聴してみれば、そのイメージを少なからず払拭できると思います。
「実際の生演奏と比べて違和感がある」と言ってマルチBA型IEMを毛嫌いしていた人達でも、2016年の新作モデルを試聴してみれば、そのイメージを少なからず払拭できると思います。
納得の仕上がりのAK x JH Audio Layla II |
ハイエンドマルチBA型IEMメーカーのリーダー格として、JH Audioの存在感は、2016年も存分に感じられました。たかがイヤホンに40万円などと、価格が尋常でなく高い、という話題性もありますが、単なる見掛け倒しではない音質を備えています。
JH AudioはAstell & Kernとのコラボモデルとして販売している「THE SIREN SERIES」が有名です。2016年は、これまで究極のIEM候補として定評のあったRoxanneやLaylaといったモデルに抜本的なアップグレードが図られ、「Rosie」「Angie II」「Roxanne II」「Layla II」といった、8万円から40万円まで4ランクのモデルが一挙リリースされました。
どれも重厚な金属製ボディと、ユニークな音響設計のために導入された長い音導パイプが印象的ですが、意外にもフィット感が快適なことに驚かされます。それ以外でも、低音・高音ドライバで別のケーブルを使い、ダイヤルで低音レベルの調整が行えるギミックなど、他社とは一線を画する先進的テクノロジー満載のイヤホンシリーズです。
貧弱なアンプでは性能を引き出すのに苦労しますが、サウンドはどのモデルもダイレクト感溢れる力強さと明朗さが異彩を放っており、この魔力に一度惚れてしまうと、他のイヤホンはどれも物足りなさを感じてしまいます。
貧弱なアンプでは性能を引き出すのに苦労しますが、サウンドはどのモデルもダイレクト感溢れる力強さと明朗さが異彩を放っており、この魔力に一度惚れてしまうと、他のイヤホンはどれも物足りなさを感じてしまいます。
12月にはTHE SIREN SERIESのエントリーモデルとして、3BAドライバを搭載して価格を6万円に抑えた「Michelle」が登場し、単なる廉価版ではない上等な仕上がりに感心しました。また、AKとのコラボレーション以外にも、JH Audio単独名義で「TriFi」「Performance Series」といった独自ラインのIEMも出しており、2017年もその勢いはとどまることを知らないメーカーです。
ライバルのNoble Audioも、JH Audio同様に、2016年にユニバーサルIEMの全ラインナップを一新し、大幅なアップデートが図られました。これまでのNoble Audioというと、音は良いものの、あくまでカスタムIEM主体のメーカーで、ユニバーサルタイプは安っぽいプラスチックシェルの妥協モデルといったイメージがありました。
2016年のリニューアルで、シェルがアルミ削り出しとプラスチックを組み合わせた、音響的に優れた形状に一新され、これまで以上に違和感の少ない安定した高音質を実現できました。また、モデルごとに色が違うカラフルな貝殻のようなフォルムは、一目見てNoble Audioだとわかる秀逸なデザインだと思います。
2016年のリニューアルで、シェルがアルミ削り出しとプラスチックを組み合わせた、音響的に優れた形状に一新され、これまで以上に違和感の少ない安定した高音質を実現できました。また、モデルごとに色が違うカラフルな貝殻のようなフォルムは、一目見てNoble Audioだとわかる秀逸なデザインだと思います。
まず4月に、これまでのフラッグシップで10BA登載の「KAISER10」が、新フォルムのデビュー作として、およそ20万円で披露されました。ちょうどJH AudioのRoxanne II・Layla IIと同時期のアナウンスだったため、試聴機が出揃うと、どっちを買うべきか悩んだ人も多かったようです。
7月には、3BAの「TRIDENT」から6BAの「DJANGO」まで、全4タイプが、45,000円~10万円といった価格帯で登場しました。また、昨年登場して好評だった、7万円で「ドライバ数非公開」のSAVANTという特殊モデルも、「SAVANT UNIVERSAL II」として、新フォルムに更新されました。個人的に初代SAVANTをとても気に入っていたのですが、今回の新SAVANT IIはさらに広帯域でクセが少なくなり、より一層サウンドが進化したと思いました。
Noble Audio KATANA |
8月には、9BA登載の新作「KATANA」が登場しました。10BAのフラッグシップKAISER10とほぼ同じ20万円前後の価格だったので、一体なぜわざわざ作ったのかと疑問に思ったのですが、このKATANAから、BAドライバが「NOBLE DRIVER」という自社カスタム設計のものに変更された第一作目でした。つまり、これまで以上にNoble Audioが目指しているサウンドに近づいたという事です。
KATANAとKAISER10を交互に比較してみると、単純に9ドライバ・10ドライバといった違いでは説明できないほど、よりダイナミックでエキサイティングなサウンドのKATANAと、優等生的にフラットなスタジオモニターヘッドホン系のKAISER10といった風に、両者の表情は大きく異なります。
KATANAとKAISER10を交互に比較してみると、単純に9ドライバ・10ドライバといった違いでは説明できないほど、よりダイナミックでエキサイティングなサウンドのKATANAと、優等生的にフラットなスタジオモニターヘッドホン系のKAISER10といった風に、両者の表情は大きく異なります。
12月には、この新作NOBLE DRIVERを登載したモデルとして、SAVANT IIの後継機「SAGE」と、KAISER10の後継機「KAISER ENCORE」が登場し、ほんの数ヶ月前にデビューしたばかりの旧モデルがカタログから落とされてしまいました。確かにNOBLE DRIVERは優れたBAユニットだと思いますが、これほどまで短期間でラインナップを変更されると、買う側としても困ってしまいます。
64 Audio U-SERIES |
これまでカスタムIEMを中心に活動していた64 Audioからは、6月に待望の新作ユニバーサルIEMモデルU-SERIESが登場しました。2BAから12BAドライバまで幅広いラインナップを揃え、BA型でありながら耳への圧迫感の少ない開放的サウンドが得られるという、新機軸ADELモジュールが搭載された意欲的なシリーズです。
まず2月にカスタムIEMバージョンA-SERIESの受注が先行して、ユニバーサルタイプのU-SERIESは7月頃からようやく販売が始まったのですが、社内でゴタゴタがあったらしく、ほんの数ヶ月もしないうちに生産停止になってしまいました。ちょうど同時期にJH AudioやNoble Audioのニューモデルが続々店頭に並び始めた頃だったので、それらと正面対決する機会を失い、非常に残念な結果となってしまいました。
着脱可能なADELモジュール |
ADELモジュールというのは音導管の裏側に挿入するアルミ製の中空パイプで、この穴の大きさや内部のゴム部品形状によって、サウンドの音圧や音抜けがチューニングできるという物理的なフィルタです。指で引っ張ればそのままモジュールごと引き抜けるシンプルな構造なので、いくつかのバリエーションをオプション販売しており、ユーザーの好みにあわせて開放感の度合いを選べるというアイデアでした。
8月に64 Audio社の公式ブログに記載された社長の怒りの書き込みによると、ADELモジュールは別会社が製造しており、64 Audioは以前からの共同開発者としてそれを独占的に購入してU-SERIES IEMに登載できる段取りだったはずなのに、相手側が急に手のひらを反して、他のIEMメーカーに同じADELモジュールを優先的に供給するようになったそうです。しかも64 Audio U-SERIES生産分を満たす数のモジュールを出し渋ったため、これでは話が違う、ということで、早急にADEL登載をストップしたそうです。
もちろん相手側の言い分はわからないので、どこまでが真実かは不明ですが、変な契約事情で製造が停滞してしまったことは事実のようです。
APEXモジュールが登場しました |
結局64 Audioは急遽ADELの特許などに抵触しない範疇で同様の効果が得られる互換モジュールの開発を急がされ、10月に早速登場したのが、64 Audio独自のAPEXモジュールです。APEXはADELと同サイズのアルミチューブ内に、ゴムダンパーではなくメッシュ状のフィルタを登載した感じなので、双方を入れ替えてサウンドを比較してみるとかなり性格が変わります。
ADELとAPEXモジュールは互換性があり、IEM本体部分はどちらも同じです。実際ADEL版IEMを所有しているオーナーにも、差し替え用のAPEXモジュールが販売されていますし、逆に別のルートから現在でもADELモジュールが購入できたりします。
ADELとAPEXモジュールは互換性があり、IEM本体部分はどちらも同じです。実際ADEL版IEMを所有しているオーナーにも、差し替え用のAPEXモジュールが販売されていますし、逆に別のルートから現在でもADELモジュールが購入できたりします。
9月には、ADELモジュールの製造会社が、Empire Ears(旧Earwerkz)というブランドとパートナーシップを結んだという公式声明があり、それど同時に、このメーカーからADELモジュール登載IEMシリーズが続々登場しました。
とにかく色々あったみたいですが、私自身は2月頃に64 AudioのADEL U-SERIES試聴デモを聴いた時から結構気に入っており(とくにモニター調っぽいサウンドの5BAと10BAモデルが良かったです)、ユニバーサルモデルの発売を楽しみに待っていたのですが、APEXモジュール版も悪くないものの、チューニングが異なるため、まだしっかりとした印象がまとまっておらず、なんだかんだで待っている間にCampfire Audio ANDROMEDAを買ったりして、結局買うタイミングを逃してしまいました。
2017年早々には、最上位モデルの「Tzar」と「tia Fourté」が登場するらしいです。18ドライバを登載するTzarは順当なフラッグシップに位置付けられますが、一方tia Fourtéは独創的な革新技術を満載した意欲作で、tubeless in-ear audio (tia)の名前のとおり、極小BAドライバを音導管そのものに配置し(以前ダイナミック型ではJVCやヤマハでそんなのありましたね)、さらにAPEXを継承する大型パッシブラジエータを登載するという異色のリリースです。40万円くらいするそうなのですが、ここまでくると「BAドライバが何基」なんて比較できる次元ではなく、こういうのはとりあえず聴いてみたいです。
どんなサウンドか想像もつかない独創的な64 Audio tia Fourté |
2017年早々には、最上位モデルの「Tzar」と「tia Fourté」が登場するらしいです。18ドライバを登載するTzarは順当なフラッグシップに位置付けられますが、一方tia Fourtéは独創的な革新技術を満載した意欲作で、tubeless in-ear audio (tia)の名前のとおり、極小BAドライバを音導管そのものに配置し(以前ダイナミック型ではJVCやヤマハでそんなのありましたね)、さらにAPEXを継承する大型パッシブラジエータを登載するという異色のリリースです。40万円くらいするそうなのですが、ここまでくると「BAドライバが何基」なんて比較できる次元ではなく、こういうのはとりあえず聴いてみたいです。
個人的に贔屓にしているブランドの一つであるアメリカのCampfire Audioは、2015年に鳴り物入りでIEMイヤホン市場に参入して好評を得ましたが、2016年6月には待望の5BAドライバモデル「ANDROMEDA」が登場しました。私はこれを発売当時に購入してから、日々の通勤用イヤホンとして愛用しており、高い解像感と爽快なキラキラサウンドを両立した、昔のAKGなどを彷彿させる飽きのこない絶妙な仕上がりに満足しています。
独特のアルミやセラミック削り出しハウジングや、別売もされている優れた高品質MMCXケーブルなどで定評があるCampfire Audioですが、2016年は他社に先駆けてダイヤモンドライクカーボン(DLC)のダイナミックドライバや、アモルファス金属ガラス製シェルなどの次世代素材を続々と導入し、小規模メーカーだからこそ実現できる、F1レーシングカーさながらのハイテク技術を見せつけてくれました。その一方で、手作業の量産ペースが異常に遅く、需要に供給が間に合わず、「次期ロット入荷待ち」の多さがマニアックさを高めています。
ただ、Campfire Audioは音質に関して素晴らしい実力を持ったブランドだとは思うのですが、短期間に様々なモデルを出しすぎて、何がなんだかわけが分からなくなってしまいました。いくら「出せば売れる」というイヤホンバブル時代だとはいえ、ちょっと行き過ぎな感じはあります。
6月のANDROMEDAと同時期に、2BAドライバの「NOVA」が登場、11月には、2015年のダイナミック型モデルLYRAの後継モデル「LYRA II」、さらに上位ダイナミックドライバを搭載する「VEGA」、NOVAのマイナーチェンジ版「NOVA CK」、ダイナミックとBAのハイブリッド「DORADO」、12月には、2015年モデルの後継機「ORION CK」「JUPITER CK」と、この短期間で実に8モデルが登場し、その内の4モデルが、2015年モデルのアップデートという、Noble Audio同様の超ハイペースなモデル展開です。
少量のロット生産ですし、さすがにここまでくると、もう買い時とかは気にせず、試聴して気に入ったモデルを信じて直感勝負で買うしかないです。
6月のANDROMEDAと同時期に、2BAドライバの「NOVA」が登場、11月には、2015年のダイナミック型モデルLYRAの後継モデル「LYRA II」、さらに上位ダイナミックドライバを搭載する「VEGA」、NOVAのマイナーチェンジ版「NOVA CK」、ダイナミックとBAのハイブリッド「DORADO」、12月には、2015年モデルの後継機「ORION CK」「JUPITER CK」と、この短期間で実に8モデルが登場し、その内の4モデルが、2015年モデルのアップデートという、Noble Audio同様の超ハイペースなモデル展開です。
少量のロット生産ですし、さすがにここまでくると、もう買い時とかは気にせず、試聴して気に入ったモデルを信じて直感勝負で買うしかないです。
進化した強烈サウンドのMASON II |
日本限定のユニバーサルIEMモデルが好評を得ているUnique Melodyからも、年末には面白いリリースがありました。私自身は2015年発売のハイブリッド型イヤホン「Mavis」を購入しており、派手なパワーサウンドにとても満足しているのですが、2016年12月には、12BAドライバ登載モデルMasonの後継モデル「Mason II」、そして限定モデルですが、大好評Maverickのアップグレードモデル「Maverick+」も登場しました。
これら新型イヤホンからは、Unique Melody専用にカスタマイズされた新規BAドライバが登載され、ドライバからイヤピースにつながる部分(ビニールホースみたいだった部品)が、高精度の金属パーツに変更されるなど、他社同様、次世代への進化が見られます。
これら新型イヤホンからは、Unique Melody専用にカスタマイズされた新規BAドライバが登載され、ドライバからイヤピースにつながる部分(ビニールホースみたいだった部品)が、高精度の金属パーツに変更されるなど、他社同様、次世代への進化が見られます。
ベテランIEMメーカーも負けてはおらず、Westoneからは10月にフラッグシップの8ドライバ登載モデル「W80」が16万円で登場しました。Westoneらしく満を持しての慎重なリリースですが、不快な刺激を抑え、豊かな雰囲気を演出してくれるサウンドは、古典的なハウジングデザインからは想像できないようなスケール感を引き出しています。付属ケーブルがCampfire Audioイヤホンも作っているALO Audio社製というのも面白いコラボレーションです。
静電ドライバ登載で、専用アンプとセットのShure KSE1500 |
一方Shureからは、これまでの常識を覆す静電駆動型イヤホン「KSE1500」が1月に登場しました。約40万円という高価な価格設定ですが、専用のDACアンプがセットになったパッケージなので、そこまで法外な値段というわけでもありません。
静電型ヘッドホンStaxなどと同様に、静電ドライバを帯電させる高電圧回路が必要なため、専用アンプが必須で柔軟性が無い設計ですが、サウンドは非常にピュアで広帯域を実現しており、蒸留酒のような究極の透明感を感じさせました。ケーブルが太く固く、私の耳ではフィットが困難だったのが難点ですが、最近他社のマルチBAイヤホンが様々な進展を見せている裏で、老舗のShureはSE535やSE846を放置して、こんなマニアックなことをやっていたのかと驚かされました。あとは、SE215SPEにリモコンが付いたホワイトモデル「SE215m+SPE」が出たくらいですね。
静電型ヘッドホンStaxなどと同様に、静電ドライバを帯電させる高電圧回路が必要なため、専用アンプが必須で柔軟性が無い設計ですが、サウンドは非常にピュアで広帯域を実現しており、蒸留酒のような究極の透明感を感じさせました。ケーブルが太く固く、私の耳ではフィットが困難だったのが難点ですが、最近他社のマルチBAイヤホンが様々な進展を見せている裏で、老舗のShureはSE535やSE846を放置して、こんなマニアックなことをやっていたのかと驚かされました。あとは、SE215SPEにリモコンが付いたホワイトモデル「SE215m+SPE」が出たくらいですね。
年間を通して話題性があった海外ブランド勢と比べると、日本の大手メーカーは、どこも2~5万円の小粒なリリースが多く、たとえば2016年にソニーがMDR-Z1RヘッドホンとNW-WM1Zウォークマンで見せたような、「史上最強のサウンド」と自負できるステートメント的な意欲作がありませんでした。
最新技術満載なのに、あまりにも地味なXBA-N1 |
ソニーからは、10月の新型ウォークマンと合わせて、「XBA-N1」と「XBA-N3」という、3万円以下のハイブリッド型イヤホンが登場しました。同社ヘッドホンゆずりのLCP振動板や独自の広帯域BAドライバ、真鍮音導管、新作イヤピースなど、ソニーが誇る技術がこれでもかというくらい注ぎ込まれており、商品そのものの完成度は非常に高いのですが、なんだかプロモーションにあまり力を入れていなかった感じがあります。
2014年のXBA-Z5イヤホンを超える上級モデルはまだ出ていないのですが、私はさらに古いシングルダイナミック型のMDR-EX1000を今でも愛蔵しているので、その路線でも後継機がいつか出ないかと、密かに望んでいます。
オーディオテクニカから、4月には5万円の3BA型「ATH-E70」など、真面目なプロフェッショナルシリーズが登場しました。11月にはコンシューマ向けIEMイヤホンラインナップも一新され、6千円のダイナミック型「ATH-LS50」から、6万円の4BA型「ATH-LS400」まで、共通デザインで5モデルをリリースしました。
良い意味でオーテクらしさ満点のATH-CKR100 |
IEMシリーズとは別に、数年前からオーディオテクニカが頑張ってきた二つの大型ダイナミックドライバを表裏合わせて登載した「DUAL PHASE PUSH-PULL DRIVER」モデルの最新作「ATH-CKR100」が登場しました。
これまでのストリート系デザインから一新した、熟練オーディオマニアに喜ばれる落ち着いたスタイルが好印象ですが、サウンドも従来モデルの硬質なクセが解消され、ATH-AD2000Xなどを彷彿させる「まさにオーディオテクニカ」といったクリアで艶の乗ったサウンドが素晴らしいと思いました。
これまでのストリート系デザインから一新した、熟練オーディオマニアに喜ばれる落ち着いたスタイルが好印象ですが、サウンドも従来モデルの硬質なクセが解消され、ATH-AD2000Xなどを彷彿させる「まさにオーディオテクニカ」といったクリアで艶の乗ったサウンドが素晴らしいと思いました。
ウッドシリーズの新デザインHA-FW01 |
JVCからは、息の長いシリーズになっているウッドドライバーイヤホンの最新作「HA-FW01 WOOD 01 inner」が10月に登場しました。外観から見えるウッドハウジングのみならず、実際に薄い木材を振動板に使ったユニークなドライバは健在ですが、今回の新作は従来モデルから大幅なデザイン変更を行い、内部の技術向上だけでなく、よりフィットしやすいコンパクトなハウジングデザインになりました。
私自身は前作HA-FX1100を持っていますが、新作HA-FW01は、それよりもクリアでヌケの良いサウンド傾向になり、過去のウッド系がモコモコしすぎると思っていた人は、是非試してみる価値があると思います。
私自身は前作HA-FX1100を持っていますが、新作HA-FW01は、それよりもクリアでヌケの良いサウンド傾向になり、過去のウッド系がモコモコしすぎると思っていた人は、是非試してみる価値があると思います。
シングルBA型では、8月にEtymotic Researchから、往年の銘器ER4Sの後継機「ER4SR」と、低音を若干強めた「ER4XR」が、それぞれ4万円で登場しました。私自身はそもそもER4Sの低音が足りなすぎると思っていたので、ER4XRの方がより好印象でした。
同時期に、日本のファイナルオーディオデザインからも、シングルBA型デザインの魅力を極限まで凝縮した「F7200・F4100・F3100」という意欲的なモデルラインナップが、2~5万円の価格帯で発売されました。ファイナルオーディオらしい瑞々しい音色の響きは、硬派なモニターサウンドを維持しているEtymoticとは対称的な仕上がりでした。年末には砲弾型イヤホンの後継機FI-BA-SST35が13万円で登場しましたが、残念ながらまだ未聴です。
シングルダイナミック型イヤホンの代名詞ゼンハイザーは、あいかわらずIE60・IE80・IE800といった古典的ラインナップに変更がなく、とくにIE800は2012年にデビューしたので、もう4年選手になります。繊細で分解能の高いサウンドがあいかわらず人気なイヤホンですが、ケーブルやイヤピースが特殊で他社と互換性が無かったり、古いなりに不便なデザインでもあるので、そろそろ次世代のモデルが出てもいい頃だと思っています。
ゼンハイザーIE80の限定コラボ |
IE80は発売からもう5年も経っている今でも新品を購入する人も多く、2016年末には特殊デザインの限定モデルが出るなど、現役で頑張ってることに感心します。
ベイヤーダイナミックは2015年にAstell & Kernとのコラボレーション「AK T8iE」をリリースしており、私も当時これを購入しましたが、度重なる故障に見舞われて、残念ながら一年を通してあまり使う機会がありませんでした。
音質そのものは、ゆったりとしたダイナミック型ヘッドホンのようなスケール感で、数あるイヤホンの中でも特別な存在です。2016年7月には、対策モデルのような「AK T8IE MKII」が登場して、こちらは目立った不具合情報は聞いていません。
音質そのものは、ゆったりとしたダイナミック型ヘッドホンのようなスケール感で、数あるイヤホンの中でも特別な存在です。2016年7月には、対策モデルのような「AK T8IE MKII」が登場して、こちらは目立った不具合情報は聞いていません。
T8iEのAKじゃないバージョンXelento |
近頃、AKとのコラボレーションではなくベイヤーダイナミックのモデルとしてチューニングを変えた「Xelento」もデビューしましたが、発売は2017年中になるようです。
個人的な感想ですが、BA・ダイナミック型ともに、シングルドライバのイヤホンは、現状ではドライバ特性そのものの既存技術が限界に来ているような印象があります。JVCのウッド振動板や、オーディオテクニカのプッシュプル型など、各メーカーがそれぞれユニークなアイデアを頑張っていますが、まだハイエンドマルチBAに匹敵するような上級モデルは見えてきていません。
大型ヘッドホンのような巨大な大口径ドライバと自由なハウジング音響設計を実現するのは、コンパクトなイヤホンサイズでは限界があります。シングルドライバは複数のドライバが干渉する問題が原理的に存在しないというメリットは確かにあるのですが、その一方で、10mm程度の単独小型ドライバで実現できるフラットな周波数特性やダイナミックな駆動は限界があるので、どうしても「スケール感はあるけどモヤモヤして切れ味やパンチが足りない」か、「特定の音色は綺麗だけど、音楽全体を描ききっていない」といった不満が浮かびます。
世間一般のスピーカーが複数のドライバを登載しているのが当然なように、今後はイヤホンでもマルチドライバが主流で、シングルドライバというのは特殊な存在になっていくのかもしれません。
それか、今後さらに優れたドライバやハウジング設計によって、ソニーの16mm振動板のような、尋常でない大口径ドライバのイヤホンにも成長の可能性もあるのかもしれません。
平面駆動ドライバを無理矢理イヤホン化したAudeze iSINE |
極端な例では、平面駆動ドライバを耳元にフックで固定する、Audezeの「iSINE」なんかは、イヤホンの現状を打破する、面白いアプローチかもしれません。個人的には、90年代に流行ったネックバンド型イヤホン・ヘッドホンなんかは実は結構理想的かも、なんて思ったりもします。あれってなんで廃れたんですかね。
2017年は、これまでのような「マルチBAのサウンドはこう、ダイナミック型はこう」、といったステレオタイプから脱却して、主要メーカーから、より柔軟なモデルラインナップが期待できる一年になりそうです。とくに、BAとダイナミックドライバの両方を登載している「ハイブリッド」型にはまだまだ未開拓なポテンシャルが見え隠れしています。
かなり上等な仕上がりだったiBasso IT03 |
ソニーのXBA-N1もそうですが、たとえば、日本ではあまり流通していないiBassoからの新作ハイブリッドIEMイヤホン「IT03」は4万円程度ながら非常に完成度の高いサウンドですし、AKGも似たような価格帯でN40というハイブリッドIEMを出し、それも良好な仕上がりでした。
より高価なモデルでは、Campfire AudioのDoradoも上手に作られていますし、最近のハイブリッド型は、音響設計やクロスオーバー回路の入念なデザインのおかげで、一昔前のような「BAとダイナミックドライバが別々の場所から聴こえる」といった問題が徐々に改善されているように思います。
より高価なモデルでは、Campfire AudioのDoradoも上手に作られていますし、最近のハイブリッド型は、音響設計やクロスオーバー回路の入念なデザインのおかげで、一昔前のような「BAとダイナミックドライバが別々の場所から聴こえる」といった問題が徐々に改善されているように思います。
こういった技術は、安易にドライバ類をハウジングに詰め込んだだけでは実現できない高度な設計理念と、地道な試作・試聴テストの繰り返しが要求されるので、数年前のような、無名ブランドが適当なイヤホンを作れば売れる、といった無法地帯のような時代は終わりに向かっているようです。
また、これまで大手高音質イヤホンメーカーと言えばソニーやオーディオテクニカ、ShureやWestoneの事だった時代は終わり、2016では立場が逆転し、これまで新興ガレージメーカーと称されていたJH AudioやNoble Audioなどが注目を浴び、むしろ旧来のイヤホンメーカーが、それらに匹敵するような魅力と話題性のあるモデルを示せていないようです。
2016年のヘッドホンとか
2016年に私が一番多用した開放型ヘッドホンは、2015年から変わらずAKG K812でした。数ある開放型モニターヘッドホンの中でも独特のクセがあるサウンドなのですが、それに慣れてしまったというか、音源を選ばずリスニングに適した音色なので、あえて他のヘッドホンを使う気が起きません。
普段のリスニングはあいかわらずK812を使いました |
もちろん、気が向いたときには、気分転換がてらにGrado GH-1やPS500などを使うこともありますが、それらはK812以上に個性が強いサウンドなので、数日も使えば「もういいや」という気分になってしまいます。ゼンハイザーHD800やベイヤーダイナミックT1などは、優れたヘッドホンだと思ってはいるものの、年間を通して活躍する出番は少なかったです。
ベイヤーダイナミックDT1770 PRO |
密閉型ヘッドホンの方は、2016年発売のフォステクスTH610と、ベイヤーダイナミックDT1770 PROがどちらも素晴らしかったので、両方を購入してしまいました。普段どっちを使うか真面目に悩んでしまうほど、それぞれ優れたヘッドホンです。TH610の方が大型アンプ駆動で魅力が引き出せるタイプで、DT1770 PROはポタアンなんかでも楽しめる傾向です。現在DT1770 PROを職場のオフィスで活用しています。
個人的に、2016年で一番衝撃的だったのは、AKGについての一連のニュースです。まず9月頃に、AKG本社のあるオーストリア工場が閉鎖し、従業員が全解雇というニュースがありました。AKG社を所有しているハーマン・グループによると、時代の流れについていけてない、旧世代の体制だから、といった大企業らしい経営判断だったため、これまで長年にわたり音楽業界の中心で地道に頑張ってきたAKGも、やはり巨大な資本傘下に入ると結局はこうなるのかと、残念な気持ちでした。グローバル化のせいでローカル企業が潰れる、というのは、経営難とかよりも、むしろこういった上からの「目先の損得勘定」によるものが多いのでしょうね。
そして11月には、AKGを含むハーマン・グループ全体が、韓国サムスンに買収され、その傘下に入るというニュースがありました。US$8,000,000,000(約9千億円)という、オーディオ業界関連では過去最大規模の買収騒動でした。ハーマン・グループは、AKGの他にもJBLやマーク・レビンソンなど一流オーディオブランドを所有しており、それらが一気にサムスン傘下に収まる形になります。AKG閉鎖の記事でも、ハーマン・グループは今後自動車分野に専念したいというような事を宣言していたので、サムスンとしても、最近話題になっている自動車向けAV機器や自動化システムの開発に旨味があるようです。
アクティブチューニング機能を登載したN90QとEverest Elite |
そもそもここ数年のAKGは、N90QとJBL Everest Eliteヘッドホンの例で見られるように、最新技術の大部分をJBLブランドに移行していたので、AKGブランドそのものは、既存のプロ用ヘッドホンやマイクロフォンラインナップの継続に専念しており、あまり大きな動きが見られませんでした。2016年で唯一注目された新作は、低価格IEMイヤホンのN40と、K812の密閉型K872のみでした。
これまで長年にわたりオーストリア工場製を徹底してきたヘッドホンも、数年前からスロバキアや中国工場に移転しはじめていたため、もはやオーストリア本社工場というのは、最新ヘッドホンの技術開発と、初期製造ロットのみのための研究所的な意味合いが強かったのかもしれません。それでも、新聞によると200人以上が解雇されたと書いてあったので、多くのベテラン職人(とくにマイクロフォン関連)が失われた心配があります。
話が長くなってしまいましたが、その昔、私自身がヘッドホンに興味を持ちはじめる第一歩だったAKG K240やK271から、K601、K701、K712、K812など、購入したモデルは全て当たり前のようにオーストリア製だったので、それらの印象が強く、そんな縁のある工場閉鎖はノスタルジー的に残念な気持ちです。
今後サムスン傘下でAKGの処遇がどうなるのかわかりませんが、過去にこのような境遇になった一流ブランドを見る限りでは、サムスン製スマホやチープなOEMイヤホンに「Sound by AKG」とかのステッカーが貼られたりするのでしょうね。
AKGのライバルであるドイツのベイヤーダイナミックは、あいかわらず親族による個人経営で、ほぼ全モデルのドイツ自社工場製を徹底しているので、今後もそのポリシーを貫いてほしいです。
2015年のベイヤーダイナミックT1 2nd Generationから着々と進めているモデルラインナップの次世代化は、2016年も順調に進行しており、2月には密閉型ハイエンドの「T5p 2nd Generation」、6月には密閉型スタジオモニターDT770の進化型「DT1770 PRO」、そして9月には開放型スタジオモニター「DT1990 PRO」、11月は開放型家庭用ヘッドホンT90の後継「AMIRON HOME」と、着実に新モデルを出し続けており、活気がある一年でした。
とくにベイヤーダイナミックというと、2009年の初代T1から「テスラテクノロジー」という強力な大型磁石を登載したパワフルなドライバが有名でしたが、2016年のDT1770 PROからのモデルは、ドライバの軽量化と音質チューニングを進化させた、次世代のNEWテスラテクノロジードライバを登載しており、サウンドにより磨きがかかったように思います。結局私自身はDT1770 PROとDT1990 PROの両方を試聴した末に惚れ込んで、もうこれ以上大型ヘッドホンはいらないと思っていながら、ついついどちらも買ってしまいました。
最近ベイヤーダイナミックはカジュアル系ハイテクモデルにも興味を示しているようで、BluetoothワイヤレスイヤホンのByronを手始めに、オーディオショウの参考出展ではAPT-X HD対応の大型ヘッドホンなども披露していたので、2017年以降はどんなモデルが登場するのか気になる存在です。ただ、あまりコンシューマ分野に手広く展開するのも、AKGの運命を連想してしまい、一抹の不安があります。
大理石とイルミネーションが眩しいHE-1 |
精力的なベイヤーダイナミックとは対象的に、ドイツの最大手ゼンハイザーは意外と静かな一年でした。2016年の話題というと、超弩級ステートメントモデルHE-1という600万円のヘッドホンシステムが、各種オーディオイベントなどで展示されて物議を醸しました。
大理石のド派手なデザインは、各国の大富豪のために受注生産するそうです。ヘッドホン業界はまさにバブル景気ですね。日本のメーカーとかが、調子に乗って真似しないことを祈っています。HE-1は聴いてみるとたしかに優秀なヘッドホンだとは思いますが、600万円という値段があまりにも現実離れしていてコメントに困ります。もちろん、これの開発で会得した技術を今後普及クラスのヘッドホンに活かしてくれたら嬉しいです。
大理石のド派手なデザインは、各国の大富豪のために受注生産するそうです。ヘッドホン業界はまさにバブル景気ですね。日本のメーカーとかが、調子に乗って真似しないことを祈っています。HE-1は聴いてみるとたしかに優秀なヘッドホンだとは思いますが、600万円という値段があまりにも現実離れしていてコメントに困ります。もちろん、これの開発で会得した技術を今後普及クラスのヘッドホンに活かしてくれたら嬉しいです。
リスニング向けにチューニングされたHD800S |
ゼンハイザーの一番の目玉は、2009年から最高峰レファレンスヘッドホンの座を死守してきたHD800の進化型「HD800S」が、2月に登場したことです。外観が従来のシルバーからマットブラックに変更されただけでもインパクトがありますが、サウンドも若干低音が持ち上がった、現代風の音作りになり、HD800の後継機というよりは、リスニング向けにリチューンされた発生モデルといった位置付けで、同社のHD600・HD650の関係と似ています。値段はHD800の18万円から、22万円と若干上がったので、順当なアップグレードとして買い替えるべきかどうか、多くのHD800ファンを悩ませたと思います。
私自身は、初代HD800のサウンドはすでに完成されており、HD800Sでそこまで根本的に大きく変わったとは思わなかったので(というか、そもそもHD800をあまり使う機会が無いため)、わざわざ旧モデルを二束三文で処分してまで買い換える意欲は湧きませんでした。
あいかわらずプリンをつらぬくHD599 |
HD800S以外では、HD2.30や4.30といった一万円台の小粒なシリーズが追加された程度で、目立ったリリースはありませんでした。
11月には「プリン」で有名なHD598シリーズが更新され、HD599シリーズになりました。本体デザインの手触りや素材クオリティが若干良くなり、サウンドも現代っぽく低音がよりダイナミックになったので、あいかわらず1~3万円台という価格帯では、汎用性が高くトータルバランスの優れた推奨モデルだと思います。新品開封直後に試聴してみたのですが、なんだかエージングに時間がかかるようなサウンドだったので、あえてブログではとりあげませんでした。
11月には「プリン」で有名なHD598シリーズが更新され、HD599シリーズになりました。本体デザインの手触りや素材クオリティが若干良くなり、サウンドも現代っぽく低音がよりダイナミックになったので、あいかわらず1~3万円台という価格帯では、汎用性が高くトータルバランスの優れた推奨モデルだと思います。新品開封直後に試聴してみたのですが、なんだかエージングに時間がかかるようなサウンドだったので、あえてブログではとりあげませんでした。
2017年のゼンハイザーがどんな動きを見せるのか見当もつきませんが、そもそもこのメーカー最大の強さは「各モデルの息が非常に長い」、ということです。HD800はもちろんのこと、HD25やHD600、さらにイヤホンのIE60・IE80・IE800なんかが未だに好調に売れ続けているため、むやみなテコ入れは不要なようです。
個人的には、イヤホンの更新はもちろんですが、そろそろHD600・650の正統進化型を作ってもらいたい気持ちはあります。というのも、これらのヘッドホンは自作DIYの世界で様々なカスタマイズが施され、独自の進化を遂げています。そういったユーザーレベルでのノウハウの蓄積があるヘッドホンなので、ゼンハイザーとしても改良する余地が十分あるモデルだと思います。
また、もう一つ、忘れられたモデルとして、2012年発売のHD700というのもあるので、あれもそろそろ改良版を出してほしいです。私自身も所有しているのですが、デザインや装着感・サイズ感なんかは一級品なのに、サウンドがどうにもシビアで疲労感のある傾向なので、2016年の技術で再チューニングしてくれれば、かなり良いヘッドホンに仕上がる予感がします。あれっきりで見捨てるには実に惜しいヘッドホンだと思います。
忘れられたといえば、そういえばゼンハイザーのヘッドホンアンプHDVD800は、HD800とのセット販売で相当数が売れたみたいですが、HD800Sと同時に登場する予定だった、DAC部分が改良されたブラックバージョン(HDVD820?)はどうなったんでしょうかね。発表時の広報デモ以降、一向に出る気配がありません。HDVD800はたしかにDAC部分だけが音質・スペック・安定具合ともにショボくてどうにも困ったモデルだったので、ニューモデルには期待しています。
豪華な贅を尽くしたUltrasone Tribute 7 |
ベイヤーダイナミック、ゼンハイザーとくれば、もう一つのドイツ系ヘッドホンメーカーUltrasoneも忘れてはならないのですが、2016年はブルーメタリックのボディが眩しい超高級限定モデル「Tribute 7」が記憶に残った一年でした。
約40万円というUltrasoneらしく強気な価格設定なので、真面目に検討する気は起きませんが、Signatureシリーズは大好きなヘッドホンなので、そのデザインをベースとしたEdition 7のリメイクということで、魅力的なヘッドホンであることには代わりありません。イベントで試聴した限りでは、Signatureシリーズを基調に、より繊細で丁寧にした感じのサウンドだったので、響きのクセの強いEditionシリーズとは一味違った仕上がりが好印象でした。
約40万円というUltrasoneらしく強気な価格設定なので、真面目に検討する気は起きませんが、Signatureシリーズは大好きなヘッドホンなので、そのデザインをベースとしたEdition 7のリメイクということで、魅力的なヘッドホンであることには代わりありません。イベントで試聴した限りでは、Signatureシリーズを基調に、より繊細で丁寧にした感じのサウンドだったので、響きのクセの強いEditionシリーズとは一味違った仕上がりが好印象でした。
それ以外でも2016年は小出しのアップデートが多く、2月にはPro 900やPro 2900などのProシリーズがSignatureシリーズ相当の快適なヘッドバンドに更新された「i」バージョンが登場し、9月には、2015年の意欲作Edition Mのイヤーパッドを大型化した「Edition M Plus」が発売されました。
カッコいいのでとりあえず聴いてみたいEdition 8 EX |
年末には、Edition 8の進化型「Edition 8 EX」が28万円で登場しましたが、デザインが気になっているものの、残念ながらまだ試聴できていません。
そういえば、同時期に70万円超の「Jubilee 25 Edition」というEdtion 5ベースのヘッドホンも出たらしいですが、どんなもんでしょうね。Edition 5自体が変な個性的サウンドだったので、これはどんなものか一度は聴いてみたいです。2017年にはSignatureシリーズで久々の新作「Signature Studio」が出るらしいので、それにちょっと期待しています。Editionシリーズなどと違い、Signatureシリーズは「Ultrasoneに残された良心」とも言える万能ヘッドホンなので、もうちょっと積極的なアピールを狙ってもらいたいものです。
そういえば、同時期に70万円超の「Jubilee 25 Edition」というEdtion 5ベースのヘッドホンも出たらしいですが、どんなもんでしょうね。Edition 5自体が変な個性的サウンドだったので、これはどんなものか一度は聴いてみたいです。2017年にはSignatureシリーズで久々の新作「Signature Studio」が出るらしいので、それにちょっと期待しています。Editionシリーズなどと違い、Signatureシリーズは「Ultrasoneに残された良心」とも言える万能ヘッドホンなので、もうちょっと積極的なアピールを狙ってもらいたいものです。
ドイツから離れて、隣国フランスのFocalからは、10月には高級ヘッドホン「Utopia」と「Elear」が登場し、オーディオマニア勢から大きな注目を浴びました。どちらもリスニング向け開放型ヘッドホンで、価格は43万円と13万円という、高価なラインナップです。
Focalはフランスが誇るトップクラスのスピーカーブランドなので、音響やドライバ開発のノウハウを活かしたモデルということで、発売前から予約注文で完売するくらい、前評判がすごかったです。
Focalはフランスが誇るトップクラスのスピーカーブランドなので、音響やドライバ開発のノウハウを活かしたモデルということで、発売前から予約注文で完売するくらい、前評判がすごかったです。
Focalが数年前から展開しているヘッドホンSpiritシリーズは、2~5万円のDJ系密閉ポータブルタイプで、無難でパッとしない印象だったため、今回いきなりのハイエンド機にはあまり期待していませんでした。しかし、いざUtopiaを試聴してみると、その完成度は尋常でなく、スピーカーメーカーFocalの狙い通り、まさにFocal Utopiaスピーカーシリーズを体現したような絶妙なスピーカーサウンドでした。
下位モデルのElearも悪くないのですが、やはりUtopiaと比べると高域のクリア感や前後空間のスピーカー的音響が損なわれるので、なんだか両モデルを同時発売したせいで「Utopiaと比べると・・」と言われてしまうのがかわいそうです。Utopiaは別格ですが、ElearはHD650とかに近い傾向だと感じたので、そういうのが好きな人には面白いヘッドホンだと思います。
下位モデルのElearも悪くないのですが、やはりUtopiaと比べると高域のクリア感や前後空間のスピーカー的音響が損なわれるので、なんだか両モデルを同時発売したせいで「Utopiaと比べると・・」と言われてしまうのがかわいそうです。Utopiaは別格ですが、ElearはHD650とかに近い傾向だと感じたので、そういうのが好きな人には面白いヘッドホンだと思います。
意外にも派手サウンドなGS2000e |
他にも、海外ブランドでは、アメリカGradoからは大型木製ヘッドホンGS1000eの上位モデル「GS2000e」が9月に登場しました。13万円のGS1000eと16万円のGS2000eということで価格差もあまり大きくなく、ちょっとしたマイナーチェンジなのかと思いきや、GS1000eとは根本的に異なるパンチの効いた刺激的なサウンドに圧倒されました。小型サイズGradoの魅力を引き継いだサウンドだと思うので、SR325やRS1eが好きな人は聴いてみる価値があると思います。私自身はマイルドなGS1000eも好きなので、GS2000eへの買い換え事情でGS1000eの中古が安く手に入らないかな、なんて密かに狙っています。
イギリスB&Wから、2016年は定評のある密閉型ポータブルヘッドホンのラインナップが拡張され、従来モデルのBluetoothワイヤレスモデルが続々登場し、さらに11月にはトップモデルP7のさらに上を行くフラッグシップモデル「P9」が発売されました。B&Wらしくレザーや金属の豪勢なデザインは圧巻ですが、4万円台で手に入るP7と比べて、P9の発売価格11万円はかなり高価なので、もうちょっと価格がこなれてきてから再検討したいと思いました。
日本のメーカー勢も2016年は負けておらず、一年を通して多数の意欲的なヘッドホンが登場しました。
奇抜なツインドライバのテクニクスEAH-T700 |
1月には、テクニクスブランドの復興でオーディオ業界に再参入したパナソニックから、密閉型ヘッドホン「EAH-T700」が登場しました。大型50mmダイナミックドライバと、角度をつけて14mmツイータードライバを登載した2WAY構造、というのが珍しいデザインでした。サウンドはたしかに刺激的でメリハリのある高解像スタイルでしたが、個人的にはフィット感があまりしっくりこなくて正しい音響を得るための装着位置に合わせるのに苦労しました。
3月には、ファイナルオーディオデザインから、これまでのPandoraシリーズ改めSonorousシリーズで新たに「Sonorous II」「Sonorous III」という5万円以下の低価格モデルが発売されました。
進歩したチューニング努力の成果なのかもしれませんが、個人的には高価な上位Sonorousモデルよりも、これらエントリーモデルのサウンドの方が好みでした。もちろん価格なりの限界は感じますが、無駄にシャリシャリせず、しっかりとした味わい深い音色が楽しめるので、5万円クラスで個性的なクオリティ溢れる逸品を探している人は是非試聴してみることをお勧めします。
進歩したチューニング努力の成果なのかもしれませんが、個人的には高価な上位Sonorousモデルよりも、これらエントリーモデルのサウンドの方が好みでした。もちろん価格なりの限界は感じますが、無駄にシャリシャリせず、しっかりとした味わい深い音色が楽しめるので、5万円クラスで個性的なクオリティ溢れる逸品を探している人は是非試聴してみることをお勧めします。
JVCからHA-SW01と、2016年のモニターヘッドホンHA-MX100-Z |
JVCからは、2015年12月に登場したウッドドライバ登載のHA-SW01・02に続いて、6月には密閉型スタジオモニターヘッドホンHA-MX100-Zが発売されました。シンプルで至極地味なヘッドホンですが、こういうのが意外と良かったりします。25,000円という低価格にしては、サウンドの完成度が想像以上に高い万能ヘッドホンなので、真面目な音楽鑑賞から日々雑用に使い倒すなど、幅広い用途で重宝しています。
日本のヘッドホン最大手フォステクスも、1月にはフラッグシップモデルTH900をケーブル着脱可能にした「TH900 MK2」が登場しました。ケーブルはゼンハイザーHD600などと互換性があるタイプなのが嬉しいですし、純正XLRバランスケーブルも同時発売したことで本気度が伺えます。余談ですが、ケーブル交換を色々試してみた結果、フォステクスの純正ケーブルは音質がとても良く、生半可な高級アップグレードケーブルでは逆に音が悪くなることに気がつきました。
地味だけど音質はとても良いフォステクスTH610 |
6月にはTH600の後継機「TH610」が7万円台で登場しました。TH600は2013年の発売当時から優秀な密閉型ヘッドホンとして愛用していたのですが、マグネシウム合金ハウジングがTH610ではウォールナット木材に変更され、ケーブルも着脱式になりました。なんの変哲も無い地味なヘッドホンなのですが、そのサウンドチューニングの完成度に聴き惚れてしまい、購入してしまいました。アンプによってサウンドの表情が変わりやすいですが、現在一番よく使っているヘッドホンの一つです。
もう一つのヘッドホン大手オーディオテクニカは、2016年は従来機の更新よりもラインナップの拡張を目指していたようで、好評な密閉型ポータブルヘッドホンATH-MSR7の上位モデルATH-SR9が登場しました。価格は5万円台ということで、ATH-M50xやMSR7など2万円モデルからのアップグレードには魅力的です。また、同モデルのBluetooth版ATH-DSR9BTではDnote技術を登載してドライバをデジタル駆動するという意欲作です。
個人的に、オーディオテクニカにはそろそろ開放型モデルの更新を目指してもらいたいです。2015年には密閉型のA1000Z・A2000Z・ESW950といったモデルが登場しましたが、開放型ATH-AD2000Xシリーズ(あとウッドモデルW5000)は、結構古くなってきているので、現在の技術でどのようなヘッドホンが生まれるのか期待したいジャンルです。
Dnoteによるデジタル駆動といえば、いくつかのイベントでヘッドホンの参考出展があったクラリオンから、10月にようやくフルデジタルヘッドホン「ZH700FF」が登場しました。かなり大柄な密閉型ボディに、14万円と結構いい値段がするので、「知る人ぞ知る」といったマニアックなモデルなのですが、カーオディーオ業界の権威クラリオンが長らく開発を進めていただけあって、サウンドの完成度は上々でした。
ヘッドホンケーブルの代わりに光デジタルやUSBケーブルを接続する珍しいスタイルですが、単なるヘッドホン内蔵DACというわけではなく、D/D変換により、ドライバをデジタル信号ビットで直接ダイレクトに駆動するという、一番「フルデジタル」に近いヘッドホンです。ドライバもこのために新設計した、宙に浮く「エッジレス平面駆動ドライバーユニット」ということで、解像感がとても高く、無駄な濁りの無いサウンドです。録音の情報を余すこと無く届けるスタイルなので、劣悪な音源はシビアに聴こえることもありますが、最先端のヘッドホン技術を味わってみる価値があります。
ヘッドホンケーブルの代わりに光デジタルやUSBケーブルを接続する珍しいスタイルですが、単なるヘッドホン内蔵DACというわけではなく、D/D変換により、ドライバをデジタル信号ビットで直接ダイレクトに駆動するという、一番「フルデジタル」に近いヘッドホンです。ドライバもこのために新設計した、宙に浮く「エッジレス平面駆動ドライバーユニット」ということで、解像感がとても高く、無駄な濁りの無いサウンドです。録音の情報を余すこと無く届けるスタイルなので、劣悪な音源はシビアに聴こえることもありますが、最先端のヘッドホン技術を味わってみる価値があります。
10月には、日本メーカーの大黒柱ソニーから、待望のハイエンドヘッドホン「MDR-Z1R」が登場しました。2014年に5万円台で登場したMDR-Z7以来、久々の本格的ヘッドホンで、価格は一気に19万円という高級モデルなので、前評判の時点から各方面で大きな話題を呼びました。
家庭での音楽鑑賞用としては珍しく密閉型デザインで、サウンドもMDR-Z7をよりリファインしたような、大型ドライバによるゆったりとした音響の中にもキラキラした高音を魅せる、ソニーらしいハイレゾサウンドが圧巻でした。低音があいかわらず独特な鳴り方をするのがZ7に似ていますが、それ以外の部分は大幅に進化したヘッドホンです。個人的にかなり長期間試聴してみたのですが、数ある密閉型ヘッドホンの中でも唯一無二の完成度を誇る作品だと思います。また、新作ウォークマンNW-WM1Zとの4.4mmバランス接続によって、そのポテンシャルが飛躍的に引き出せたので、その辺はさすがソニーらしいなと思いました。
家庭での音楽鑑賞用としては珍しく密閉型デザインで、サウンドもMDR-Z7をよりリファインしたような、大型ドライバによるゆったりとした音響の中にもキラキラした高音を魅せる、ソニーらしいハイレゾサウンドが圧巻でした。低音があいかわらず独特な鳴り方をするのがZ7に似ていますが、それ以外の部分は大幅に進化したヘッドホンです。個人的にかなり長期間試聴してみたのですが、数ある密閉型ヘッドホンの中でも唯一無二の完成度を誇る作品だと思います。また、新作ウォークマンNW-WM1Zとの4.4mmバランス接続によって、そのポテンシャルが飛躍的に引き出せたので、その辺はさすがソニーらしいなと思いました。
ソニーは、ノイズキャンセルヘッドホンにおいても、3万円の普及モデル「MDR-100ABN」と45,000円の高音質モデル「MDR-1000X」の二段構えで、BOSEなどよりも音楽鑑賞を重視したいというユーザーから支持を得ています。
とくにMDR-1000Xの方は各種ガジェット系ニュースなどでのプロモーションが成功したようで、多方面でその評判を耳にしました。とくに私の身の回りでオーディオに興味の無い友人から、「今度ソニーから凄い高くて音が良いヘッドホンが出るんだって?」なんて話題を振られることが、二度三度とありました。MDR-Z1Rのことかと思ったらMDR-1000Xの事だったというオチで、発売後も「MDR-1000X買った方がいい?」と尋ねられる事が何度もありましたので,BOSE QC35からの脱却を狙うカジュアル層からはかなりの注目株のようです。私はアクティブノイズキャンセリングで音楽を聴くことはほとんど無いので、残念ながら買いませんでした。
とくにMDR-1000Xの方は各種ガジェット系ニュースなどでのプロモーションが成功したようで、多方面でその評判を耳にしました。とくに私の身の回りでオーディオに興味の無い友人から、「今度ソニーから凄い高くて音が良いヘッドホンが出るんだって?」なんて話題を振られることが、二度三度とありました。MDR-Z1Rのことかと思ったらMDR-1000Xの事だったというオチで、発売後も「MDR-1000X買った方がいい?」と尋ねられる事が何度もありましたので,BOSE QC35からの脱却を狙うカジュアル層からはかなりの注目株のようです。私はアクティブノイズキャンセリングで音楽を聴くことはほとんど無いので、残念ながら買いませんでした。
最後に、各社から、もはや独立したジャンルとして地位を得た感じのある「平面駆動型」ヘッドホンの新作を見ると、2015年末に登場した56万円のAudeze LCD-4に続き、2016年はMr Speakers ETHER・ETHER C・FLOWアップグレードモデルや、HIFIMAN HE1000 V2・Edition X V2マイナーチェンジモデルなど、20万円超のニッチで高価なヘッドホンの話題に欠かない一年でした。
その中でも、開放型ながら密閉感が強いAudezeやMr Speakersとは対象的に、開放感溢れるHIFIMANのサウンドが個人的に好みです。とくにEdition Xは「V2」バージョンへの進化で、より安定したサウンドが実現され、上位モデルHE1000の刺激と、下位モデルHE560のダーク感が融合されたような絶妙なチューニングが気に入っています。
ただし、平面駆動型ヘッドホンというジャンル全体を見ると、これまでの勢いから2016年はハイエンドの頂点に君臨するかと思わせぶりでしたが、やはりどのような高価なモデルであっても、空間表現の違和感という、駆動方式特有の弱点を克服できていない印象があり、HD800S、Utopia、MDR-Z1Rなど進化するダイナミック型に圧勝するほどの力量は体験できなかったのが残念です。
超ハイエンド機よりも、2016年はむしろフォステクスの新型T50RP・T40RP・T20RPの「MK3n」シリーズや、Audeze 「SINE」など、コンパクトな低価格モデルにて、平面駆動型の魅力が感じられたのが意外でした。
ラインナップがMK3に進化したフォステクスは、旧型よりもダイナミックな色濃さが増して、若干退屈っぽかったサウンドから脱却できたようで、2万円弱という価格でありながらリスニングにも十分活用できるヘッドホンだと思います。
一方Audeze SINEは、LCDシリーズゆずりの音質は優秀なものの、能率が低くてDAPでの駆動に苦労するため、ポータブルとしては難しいモデルだと思いますが、iPhone 7の登場に先行してLightning端子接続のDAC内蔵ケーブルを同梱した先見性には感心します。
ラインナップがMK3に進化したフォステクスは、旧型よりもダイナミックな色濃さが増して、若干退屈っぽかったサウンドから脱却できたようで、2万円弱という価格でありながらリスニングにも十分活用できるヘッドホンだと思います。
一方Audeze SINEは、LCDシリーズゆずりの音質は優秀なものの、能率が低くてDAPでの駆動に苦労するため、ポータブルとしては難しいモデルだと思いますが、iPhone 7の登場に先行してLightning端子接続のDAC内蔵ケーブルを同梱した先見性には感心します。