今回は2020年に個人的に気になったヘッドホンオーディオ新製品をまとめてみたいと思います。前半はイヤホン・ヘッドホンで、後半はDAPやアンプなどです。
あくまで自分が聴いてみた範囲のみの話で、全てを網羅しているわけではありません。2020年はイベントなどで新製品を試聴する機会が減ってしまいましたが、それでもいくつか良い製品に巡り会えた一年でした。
ワイヤレスイヤホン
まず最初に言っておきますが、今回Bluetoothワイヤレスイヤホン製品は一切取り上げていません。
個人的に興味が無いわけでもないのですが、あまりにも新製品の数が多くて手に負えないのと、そういった売れ筋モデルの情報は多方面で豊富に手に入るので、このブログであえて取り上げるまでも無いという考えです。
定番のソニーWF-1000XM3 |
Air Podsの登場で完全ワイヤレスイヤホンが大流行した2018-2019年と比べて、2020年は画期的なイノベーションのようなものはあまり感じられず、むしろ購入層の裾野が広がった事でスペックの平均化とコストパフォーマンス競争に移行したように思えます。
人気モデルの情報サイトを見ても、音質に直結する要素よりもDSP・耐水性・バッテリーなど、いわゆる「補聴器」と同じようなメリットを前面に押し出しており、ユーザーもそっちの方が気になるようです。つまり私みたいな古典的オーディオマニアがあれこれ言っても見当違いでしょう。
令和最新版の熾烈な争いは続きます |
また、ちょっと前までは「令和最新版」とか「商品写真に稲妻」なんて笑いのネタにされていた中国発の無名格安モデルも、今となっては多くのレビューサイトなどで取り上げられるようになり、立派な一大ジャンルへと成長しました。単なる「安かろう悪かろう」ではなく、良いものは残り、悪いものは淘汰される市場だということです。そもそも大手メーカーのOEM開発元であったり同じ工場で作っていたりするので、開発費やブランド料を差し引いただけコスパが高いのは当然です。
ただしAmazonなどの偽レビューは未だに未対策で横行していますし、あいかわらずYoutubeステマや、ギフト券を送るから星5レビューを書けと購入者に依頼が来たり、中国版TwitterのWeiboではメーカー自身が複数の偽レビュワーアカウントを作って情報を流すなど色々と問題になっています。無節操なグローバルシェア争いの戦国時代ではあるので、そのあたりはちゃんと深読みできる事が求められます。
あと、細かい事ですが、eイヤホンでは「完全ワイヤレスイヤホン」、フジヤエービックは「フルワイヤレスイヤホン」といった具合で検索しにくいので、ジャンルの名称を統一してもらいたいですね。
Noble Audio Falcon Pro & Sennheiser Momentum True Wireless 2 |
ベテランメーカーでは、ゼンハイザーMomentumやCXシリーズといった定番イヤホンもワイヤレスに姿を変えて存在感を維持していますし、ハイエンドイヤホンメーカーNoble AudioのFalconシリーズがヒットしているのを見るのも嬉しいです。生半可な商品では見向きもされないジャンルの中で生き残っているのは、それだけ優秀だという事でしょう。
JVC各種 |
日本国内だと、ここへ来てJVCの巻き返しが印象的です。これまでイヤホン市場が安物と超高級品に二分割されていたところ、完全ワイヤレスという新ジャンルが「ちょっと贅沢をしたいコンシューマー」が出せる1~5万円の価格帯に収まったことで、そのあたりの戦略が得意なJVCの本領発揮といったところです。私も誰かにプレゼントするなら変にオーディオマニアっぽいのよりもこういう安心メーカーを選ぶと思います。
Bluetoothワイヤレスについて、2020年も私の感想は以前とあまり変わっていません。まず、ワイヤレスだからといって有線よりも音質が悪いと思っているわけではなく、Bluetoothでも据え置き送受信機であれば音質劣化も少なく、悪くないと思います。
やはり完全ワイヤレスイヤホンの根本的な問題はD/AコンバーターやヘッドホンアンプICなどの電子回路が全てイヤホン本体に詰め込まれて、豆粒のようなバッテリーで動いている事で、このボトルネックはどうあがいても解消できません。価格帯が5万円くらいで止まっていて超高音質モデルが出せないのもこれが根本的な原因です。どれだけ高級モデルを作ろうとしても搭載できるICチップ類は市場にあるものに限られてしまいますし、長時間再生の省電力設計も考慮すると、あのサイズの回路で優れた駆動力を望むのも無理があります。
もう一つ、低遅延AptX Low Latencyや高音質LDACなど、用途ごとに様々な高性能コーデックが登場しているにも関わらず、未だにiPhoneはSBC・AACのみ、PS5やSwitchも中途半端な独自規格で未対応、最新M1チップ搭載Macbook ProはAptX廃止、といった具合に、大手コンシューマー機器メーカーがこの状況ですから、結局特定のAndroidスマホやUSBドングルとかを使わないとメリットを享受できません。
とくにコンシューマーゲーム機やパソコンで肝心な低遅延化やサラウンド対応などの積極的な提案が無いあたり、イヤホンメーカーの努力とは裏腹に、送信する側の認識や優先順位の低さが目立ちます。たとえばソニーの360 Reality Audioみたいな新たな独自規格もBluetoothヘッドホン・イヤホンメーカー側との連動が見えません。2021はこのあたりの改革が無いとBluetoothは停滞したままになってしまいそうです。高音質と低遅延を両立した共通コーデックの登場、そして全てのプラットフォームでライセンス無料のオープンソース実装できるようにならないと、今後の進展は難しいかもしれません。(今のところLDACとAptX HDの送信側がオープンソースになっています)。
2020年の動向
2020年はコロナウィルスのせいで自宅勤務・リモートワークが増えた事で、世界的に据え置き型ヘッドホンオーディオが再注目されました。完全ワイヤレスイヤホンなどのポータブル機ばかり注視していたメーカーにとっては想定外の事態です。
オーテクとゼンハイザーはこういうのが強いです |
特に海外オンラインショップを見ると、Youtubeの影響か、学生を中心にゲーミングヘッドセット系のヘッドホンが好評に売れているようで、高性能マイクを搭載していてオンラインミーティングに使える事が重宝されているようです。ゲームと学校のリモート授業に使えて一石二鳥ですし、せっかく買うなら良い音で、ということと、親に買ってもらえる口実というのもあるようで、店頭でも親子連れをよく見ます。
近頃は子供でも学校や友人間の顔出しビデオチャットが公私ともに増えたので、イヤホン・ヘッドホンは画面に映りこむアイテムとしてカーストやヒエラルキーっぽい意味合いもあるようで、どのモデルが良いという口コミも大人以上に広まっているようです。
そうなると、昔からそっち方面で頑張ってきたオーテクやゼンハイザーはあいかわらず強いですが、たとえばベイヤーダイナミックなんかも数年前にゲーミングに手を広げた事が思いのほか功を奏しています。そもそも老舗メーカーはヘッドホンそのものの素性が良いので、ちょっとしたゲーミングっぽさを加える事で、下手なゲーミングブランドの陳腐なヘッドホンと比べて優位に立てます。
また、大人でも「巣ごもり需要」で家族に迷惑をかけないヘッドホンオーディオが求められ、いわゆる熟年スピーカーオーディオユーザーがようやくヘッドホンにも手を出すようになり、客単価が高いシステムが売れるようになったのも大きいです。
世代的にも安心の国産ブランドが人気なのは当然ながら、ネットで詳しく下調べする人も多いらしく、意外とマニアックな海外ハイエンド機が売れたり、もしくはスピーカーブランドとして知名度があるFocalやB&W、B&Oなどを指名買いする人も多いようです。
さらに、リモート会議の自撮りウェブカメラ用と称して高級デジカメか売れているそうですが、それと同じような理由から在宅オフィス整備の口実で高級ヘッドホンシステムやレコーディングマイクを揃える人も見かけます。私もいつか会社経費でそういう贅沢ができるような身分になってみたいものだと密かに願っています。
個人的には、各国オーディオイベントがキャンセルになったのが一番ダメージが大きいです。これまでは色々と足を運んで新作や試作機を試聴してみたり、新興メーカーを発掘したりなどの機会があったのですが、今年はショップ入荷した製品や友人のツテで借りられるものに制限されてしまいました。
そのため、新しいメーカーの話など耳にしても試聴ができず、もどかしい一年でした。それでもいくつかの新作をブログで書く事ができましたが、自分としてはもうちょっと新興ブランドなどで冒険してみたかったです。
個人的な話ですが、コロナの関係で仕事が意外と忙しかったため、まだ試聴の途中でブログに掲載できていないモデルが結構たくさんあります。速報ではなく単なる日記のようなものなので適当にやっていますが、そのへんは後日に回して、今回はひとまず2020年のまとめを書くことにしました。
イヤホン
価格コムで2020年発売の新作イヤホンに絞り込んでみたら、およそ300モデルほどあり、さらにワイヤレス型と数千円のカジュアルモデルを除外すると、私みたいなオーディオマニアが興味を持つようなモデルは30個くらいが該当しました。
Shure Aonic 5 |
まず大手メーカーの2020年新作では、ShureがAonicシリーズというコンシューマー向けモデルを展開したのが印象に残ります。ユニバーサルIEMイヤホンの原点とも言えるSE535やSE846などは今でも定番モデルですし、業務用としても定評があるため、それらはあえて手を付けず別ラインにしたのは賢明な判断です。
Aonic 3・4・5の三機種が2~5万円の価格で登場し、サウンドもプロ用の硬派なチューニングから一変して温厚で聴きやすい感じになっています。ビジュアルの派手さは無いので話題性は薄いですが、ロングセラーになりそうな予感がします。同時にアクティブNC搭載ヘッドホンAonic 50も登場して、そちらもShureらしい真面目なサウンドで気に入りました。ちょっと大きくて持ち運びづらいのが難点です。
Campfire Audio Vega & Dorado 2020 |
同じく米国のCampfire Audioはコロナ被害をもろともせず、続々と新作をリリースしています。そもそも少量ロット生産なので、売り切ったモデルを再生産するくらいなら新しいアイデアを盛り込もうという考えなのかもしれません。
3月にSolaris Special Edition、7月にはAndromeda 2020、Ara、Solaris 2020、そして11月にはVega 2020、Dorado 2020と、どれもマイナーチェンジに留まらない大きな変身を遂げたアップデートモデルで、特にVegaとDoradoは久々にセラミックハウジングが復活したのが嬉しいです。(まだブログに上げてませんがすでに試聴しました)。
それらを含めた個人的な感想としては、Campfire Audioはモデルごとにジャンルや方向性を変えるのではなく、一つの明確なゴールに向かって新たなアイデアが浮かぶたびに実践してみるという考え方のようです。そのため、10万円のVega 2020から24万円のSolaris SEまで一貫した独自のチューニングを共有しているので固定ファンが多いのだと思います。デザインもあいかわらずカッコいいです。
Noble Audio M3とABMドライバー |
米国Noble AudioはワイヤレスイヤホンFalconのヒットで安泰のようですが、それ以外でも9万円のM3、17万円のTUX5、そして36万円のSultanといった面白い新作を出しています。そもそも高級マルチBAイヤホンで有名になったメーカーですが、それらはひとまず保留にして、他社とは違う画期的な技術を目指しているようです。
特にM3は新たにABMという平面振動板を搭載しているユニークなモデルで、私も気になって買ってみました。かなりシャープですがイヤホンとしては異例なほどに開放的で爽快なサウンドなので、今後の発展を期待したいです。
JH Audio Roxanne AION |
もう一つ米国の老舗ブランドJH Audioも健在です。2020年はユニバーサル上級モデルRoxanneが進化してRoxanne AIONというモデルになり、さらに限定モデルで12BAを7BAにしたJimi AIONも登場しました。それぞれ21万と16万円です。
ハウジングがカーボン削り出しと3Dプリンター立体音響チャンバーの組み合わせになり、さらにケーブルもこれまでのバイワイヤ4PINコネクターから新型7PINケーブルへと進化しています。Roxanneといえば高級イヤホン技術の指標として伝説的なモデルですから、それが大きな躍進を遂げたのは注目に値します。
64Audio Nio |
個人的に高級イヤホンで2020年の最高傑作だと思ったのは64Audio Nioでした。8BA+1DDのハイブリッドで、残念ながら24万円と高価なので購入できていません。最近の64Audioはノズル内に高音BAを詰め込むTiaという方式を導入するようになり、どうも高音が場違いに感じられて好みに合わなかったのですが、このNioでようやく満足できる仕上がりになりました。Apexモジュール交換でセミオープン具合を調整できる仕組みは健在なので、最高音質とカスタマイズ性を両立している素晴らしいイヤホンです。
iBasso IT07 |
一転して中国もあいかわらずIEMイヤホンが盛況で、新興ブランドが続々登場しており、大手も順当に成長しています。中国国内のイヤホンユーザーも、昔なら海外の有名モデルに手が届かない人が安価な中国ブランドを渋々買うという感じだったのが、今では同等の存在になってきています。
Moondrop S8 |
特に、これまで低価格路線だったブランドが高級モデルを出すようになり、たとえばiBasso Audioの新作IT07は10万円、MoondropはS8とIlluminationとそれぞれ10万円弱といった具合です。とくにMoondropは大昔からAliexpressとかで数千円のイヤホンを沢山出してきて、最強コスパ中華イヤホンとかのランキングでは必ず出てくるようなブランドだったので、久々に名前を聞いて嬉しいです。
iBasso IT07の方は結構長い間試聴してみたので、またいつか感想を書くかもしれませんが、やはり物は悪くないものの10万円となるとライバルも多く、独自性が薄いので評価が難しいです。
QDC Blue Dragon |
中国の高級モデルといえば、QDCのBlue Dragonというモデルがネットニュースなどでも話題になりました。宝石を散りばめた200万円のイヤホンです。高級腕時計と同じで一定の層にはウケるでしょうし、Forbes記事になるなど話題性はありますが、こういうのをやってしまうとハイエンドオーディオが馬鹿にされる原因にもなるので、やはり中身勝負で頑張ってもらいたいです。(もちろん試聴していないので、とんでもなく高音質な可能性もありますが・・・)。
newspring NSE100 |
日本国内も輸入代理店のおかげで新たな海外勢力が流通するようになったり、国産の新しいブランドもちらほら登場しています。こういうのこそイベントで試聴できなかったのが惜しいです。
個人的に試聴できず残念だったのがnewspring NSE1000という18万円のダイナミック型イヤホンです。ベテランOEMメーカーによる独自ラインということで、フォステクスとDENONの関係とかと似てますね。JVCの似たようなイヤホンだと高級機は必然的にウッドになってしまうので、そうではないハイエンドイヤホンだとどう仕上がるのか、個人的にHA-FWやHA-FDなど色々持っているので、チューニング方向性もどれくらい変わっているのか聴いてみたいです。
ADV M5-12D |
他には、大手楽器卸売の宮地楽器MIDが自社ブランドでADV M5-6D・M5-12Dという結構凝ったマルチBAイヤホンを発売したりなど、面白そうな新製品はそこそこ登場しています。
どのメーカーも力作揃いで、開発に数年はかかるものですから、デビューがコロナと(さらに完全ワイヤレス普及と)被ってしまったのはタイミングが悪いとしか言いようがありません。
Acoustune |
個人的にはAcoustune HS1657CU・HS1677SS・HS1697TIを試聴してみて気に入りました。香港メーカー開発・日本で製造だそうです。中でもチタンのHS1697TIが良かったので結局購入してしまいました。価格も6~10万円とそれほど高価ではありませんが、サウンドチューニングのセンスが良く魅力的な鳴り方なので、ベイヤーT9iEやDita Dreamなどと肩を並べるトップクラスのダイナミック型イヤホンです。年末には同じ技術を用いた3万円くらいのモデルも登場しています。
final × DITA SHICHIKU.KANGEN |
シンガポールのDita Audioからは2020年新作はありませんでしたが、日本のFinalとのコラボモデルが2021年2月に発売するという事で、こういった頂点クラスでの合同企画というのは心が踊ります。糸竹管弦という名前の和テイストなイヤホンで、数量限定で約30万円という事なので、価格的にちょっと手が出せませんが、今後もこういう企画がもっと増えてほしいです。
FAudio Project Y |
香港からはFAudioが日本でも正式に販売されるようになったのも良いニュースです。Unique Melodyと同じように日本市場向けにミックスウェーブとの共同開発という事で、約4万円で1DD+1BAのScaleと6万円で3BAのChorusなど、比較的買いやすい価格帯です。さらに限定フラッグシップモデルとして1DD+4BAにさらに二基の高音用静電ドライバーを搭載したProject Yというモデルも年末に登場しました。価格は30万円だそうです。
Unique Melody MEST |
同じくミックスウェーブが扱っているUnique Melodyは個人的にMavis IIという古いハイブリッドモデルをずっと愛用しているのですが、2020年には17万円のMESTという奇抜なモデルが登場しました。1DD+4BA+2静電ドライバーに、さらに骨伝導ドライバーを搭載するという画期的なアイデアです。ほんの数分しか試聴する機会が無かったのですが、確かに骨伝導のメリットに説得力がありました。
Unique Melody Maverick TI |
さらに定番モデルMaverickが新たにチタン3DプリンターハウジングのTiモデルとして生まれ変わりました。13万円で面白そうなのでMavis IIから買い換えようかと考えたのですが、比較的刺激的なMaverickにさらにチタンの金属っぽさが加わり、ちょっと好みと合わないので断念しました。温厚なMavisの方がTiになるくらいでちょうど良いのにと思いましたが、私が好きなだけで不人気モデルのようなので、出そうにないですね。
ここ数年のIEMイヤホンのトレンドを追ってみると、日本やアメリカなどの大手メーカーではBAドライバー数やドライバー径といった数字のスペックのみで競い合う時代は終わり、3Dプリンターや新素材を用いたハウジング内部空間の音響設計が重要視されるようになってきました。つまりカタログスペックだけで安易に語れない実力勝負になってきたわけです。冒険心のあるメーカーからはダイナミックでもBAでもない新型ドライバーが参入してきています。
しかし、実機が試聴できないネット中心の社会になってしまうと、未だにドライバー数で競い合ったり、振動板がカーボンだベリリウムだといった表面的な情報や、単なる周波数スウィープ測定グラフだけで批評する人が多いため、メーカーもセールス的にはそちらに力を入れる事になってしまい、実際に音を聴けている人との認識の隔たりが顕著になりがちです。コロナの影響で日本も地方都市での新作試聴会とかがめっきり減ってしまったので、今後このようなネット中心の売り方になってしまうのかという懸念はあります。
ケーブルについて
2020年は新たなイヤホンケーブル用コネクターを提案するメーカーがちらほら現れはじめたのは特筆すべきです。
AcoustuneのPentaconn Ear |
UEのIPX |
数年前にオーディオテクニカが率先してA2DCコネクターを採用したのが記憶に新しいですが、私が今年買ったイヤホンではAcoustuneがPentaconn Ear、Ultimate EarsがLinum IPXと、それぞれ新しいタイプだったのが象徴的です。
既存の2PIN・MMCXケーブルと互換性が無いため、多くのメーカーや消費者が二の足を踏んでいるかもしれませんが、それらの故障やトラブルを何度も見てきていると、メーカー側がそろそろどうにかしたいと思うのにも納得できます。
また、そもそもアップグレードケーブルという概念自体、昔のイヤホンは付属ケーブルがゴミだからケーブル専門メーカーのものに買い換える、という流れだったわけですが、近頃はイヤホン付属のケーブルも良いものが増えてきており、以前ほど社外品ケーブルにこだわる必要も少なくなりました。
ケーブルが断線したら純正保守部品と交換できる、という本来のメリットは新コネクターになっても問題無いわけですし、コネクター単品でも手に入るのでDIYもしくはケーブルメーカー次第で今後はどうにでもなりそうです。
また、アンプ側はすでに4.4mmバランスプラグがヘッドホンとイヤホン両方の代用になったように、イヤホン・ヘッドホン側の着脱コネクターをこの機会に共通化できれば理想的です。ケーブルメーカーやショップも多数のコネクターごとの在庫を抱える必要がなくなるメリットがあるので、どうにか率先して共闘体制をとってもらいたいです。
従来の2PINタイプは回転できないため耳掛けが耳に沿わずフィットが難しい事と、信号ピンそのものの圧入で保持されているので、曲げ負荷で万が一ピンが折れたら一巻の終わりです。
MMCXは無抵抗にグルグル回転してしまうので、中心の信号ピン接点が摩擦で劣化しやすく、そもそも電子基板用(無線アンテナとか)なので耐水性も無く過酷な用途に適していません。また、2PINとMMCXのどちらも信号ピンがケーブル側にあり、規格が曖昧なため、社外ケーブルでピンが若干太いものを一度でも装着してしまうと、イヤホン側の接点が広がってしまい、以前のケーブルでは緩く接触不良を起こしてしまうトラブルも多発しています。
センターピンがイヤホン側かケーブル側かは重要です |
次世代のA2DC、Pentaconn Ear、IPXなど、どれを見ても、信号ピン以外でケーブルを固定するバネ機構があり勝手にクルクル回らない点、そして信号ピンがイヤホン側にあるため、ピン径が異なるケーブルを無理に装着してもイヤホン本体がダメージを受けない、というように、メーカーは違えど、どれも同じ理想を持って開発されていることがわかります。
Ultimate Earsはミュージシャンのコンサートステージ用として、汗対策のためIP67防水設計になり、以前よりも細く目立たないよう、アーティスト目線での配慮から生まれたコネクターです。
ゼンハイザーIE500 PRO |
Pentaconn Earはゼンハイザーがプロ用イヤホンIE400 PRO・IE500 PROでも採用したので今後の普及が期待できます。ただしゼンハイザーのコネクターは段差があるのでAcoustuneのケーブルが入らないという互換性問題があります。こういうのはしっかり共通してもらいたいです。
なんにせよ、各メーカーの新たな試みは歓迎しますし、こういった進歩を惜しみなく実践できてこそ、業界をリードするメーカーなのだと思います。
とくにゼンハイザーはソニー以外で4.4mmバランスを採用するのが誰よりも早かったですし、今回も率先してPentaconn Earを採用するなど、大手メーカーなのにフットワークの軽さはさすがだなと関心します。
中国メーカーなど、既存パーツを大量に買って組み立てる手法では、未だに2PINやMMCXが安価に手に入るので変化の兆しは伺えません。やはり中国を取り込むには安価なダンピングでシェアを握る事が大前提なので、そのあたりはどうなるのか見ものです。
ただし4.4mm登場初期のように、規格サイズと微妙に違う非純正コネクターが出回ったせいで接触不良トラブルになったりするリスクはあります。(偽物4.4mmプラグを無理矢理挿入したせいでNW-WM1Z本体ジャックを壊してしまった人を知ってます)。
このあたりはコネクターや線材メーカーなどと密接した交流や技術共有、そして業務用プロ現場からのフィードバックといった、業界内外の横と縦のつながりを持っているメーカーの強さが明らかになります。
近頃は自称高級ブランドが乱立して、どれを買っていいかわからない、という人も多いと思いますが、こういった部分で一流メーカーとしての力量や実績が計り知れるのだと思います。
ヘッドホン
2020年、イヤホンと比べるとヘッドホンは静かな一年でした。2020年1月~12月でリストアップしても新作は数個なので、本当にこんなに少なかったのかと驚くほどです。
コロナの影響で開発や発表が遅れたメーカーもあったかもしれませんが、そもそも大型ヘッドホンは商品の息が長く、モデルチェンジは3-5年に一度というのが当たり前の世界です。たとえば2016年発売のHD800Sとかもまだまだ現役で、そこまで最新型にこだわることなくロングセラーが売れ続けているので、新作が少ないといっても問題視するほどでもありません。
Apple AirPods Max |
ヘッドホン市場では、特に年末AppleがAirPods Maxを発売したのが話題になりました。しかも約7万円と、ソニーやBoseなどのライバルと比べてもかなり高価です。サブブランドBeatsの人気が落ちてきた頃合いでAppleブランドに切り替えたのは懸命な判断だと思います。
あまりオーディオマニアには縁の無いモデルかもしれませんが(昔iPod HiFiが高級オーディオを凌ぐ高音質と言ってたのを未だに覚えてます・・・)、しかしあれだけ完全ワイヤレスイヤホンを推しているAppleでさえもフルサイズヘッドホンを出す必要性があり、しかもあのAppleでさえも、しっかり作るとこれだけ重く大きくなってしまう、というのは象徴的だと思います。さすがに384gというAudeze並の重さは日本人には厳しいですが(ソニーWH-1000XM4で254gです)、値段に見合ったラグジュアリー感があります。
B&O H95 |
同時期にB&Oも最高級プレミアムヘッドホンH95を発売し、800ユーロなので10万円くらいと、ようやくB&Oの本領発揮といった具合です。これまで地道に売れ筋の価格帯で技術力を高めてきたB&Oですが、やはりこれくらい高価であってこそブランドイメージに合っていて、本来のB&Oファンも興味が湧くと思います。
有線ヘッドホンに話を移すと、市場大手のソニーやゼンハイザーからは目立った動きは無く、特にソニーはMDR-Z1RやMDR-1Aなどの真面目な音楽鑑賞モデルが発売から5年目に差し掛かってきたので、話題性という意味でもそろそろ新作を期待したい時期です。
HD560S |
ゼンハイザーはあいかわらずHD800SやHD660Sが好評だったり、HD25の75周年記念カラーが出たりなどありましたが、2020年は意外にもHD560Sが欧米を中心に圧倒的な大人気で、ショップが在庫不足で対応に追われる一年でした。
HD560SはHD599などと同じシリーズの最新作で、価格は3万円程度、音質はそこまで特筆すべきものではなく、私も何度か試聴したもののあえてレビューするほどでもない(というか、書くことが思い浮かばない)という無難なヘッドホンです。
元をたどれば英語圏のYoutube界隈でバズり、ネットレビューを読み耽っているような人たちに大ヒットしたようで、「超高級モデルを凌ぐ最強コスパヘッドホン」みたいな、よくありがちな触れ込みで人気に火がついたようです。
日本だと数年前にHD598・HD599のアマゾン限定版がPrime Dayセールで話題になったように、そもそもHD500シリーズは装着感も音質も素晴らしい失敗のないヘッドホンなので、初心者にヒットする理由は納得できます。
ただゼンハイザー自身もHD560Sがここまでヒットするとは想像していなかったようで、その煽りを受けてか、日本での正規販売は延期になるなど、よほど海外で売れていることが伺えます。話題性で言えばヘッドホン業界全体で2020年最大のヒット商品だと言えます。
Beyerdynamic Manufaktur |
同じくドイツのベイヤーダイナミックも面白い一年だったと思います。2017年に外部から新CEOを迎えて、それまでの地味なプロオーディオブランドから一気にカジュアル路線に方向転換したわけですが、その頃から注力しはじめた若者向けゲーミング系ブランディングがコロナの自宅用途に上手くはまったようで、こちらも英語圏のYoutubeなど口コミを通じて名前が知られるようになりました。色を自由に組み合わせられる特注品サービスも以前からありましたが、新たにハウジングに任意の画像を印刷できるようになり、ゲーミングのチームロゴを入れるなどの用途で大きな需要を見出しています。
TEAM TYGRパッケージ |
DT770・880・990といったベテランモデルもパッケージを変えて買いやすい価格帯になったことで、ゲーミングや動画制作界隈で再評価を受け、まだまだ現役で売れつづけています。
2019年にこれらをベースにインピーダンスを下げ低音を増強したTYGR 300Rというモデルをマイク同梱セットで発売したところ、2020年には徐々に人気を獲得し、特に私みたいなオーディオブログとは縁が無いゲーマーレビューサイトなどでよく見るようになりました。
すでに飽和状態で市場拡大が望めない音楽鑑賞ユーザーではなく、ゲーマーやクリエイター市場を開拓するというのは頭の良い戦略です。2020年はデジカメ市場でYoutubeビデオブログ用カメラが話題になったのと似ています。
また、ゲーマーといっても日夜ゲームばかりするわけではなく、それこそ音楽や動画鑑賞がメインで、ゲームでも満足に使えて、いつの日かYoutubeミュージシャンやコンテンツプロデューサーに、という若者の理想のライフスタイルを包括したモデルが今回のコロナ自宅待機での需要が表面化しているようです。店頭でも試聴の際に愛聴盤とかではなく自分の声の録音やFPSの足音とかを念入りに聴いている人が結構いるので、実はオーディオマニアよりもシビアな判断条件で選んでいるのではと思ったりします。
そう考えてみると、ソニーとかはこの手の妥当なモデルやブランディングが思い浮かびません。せっかくPS5やαカメラを作ってるメーカーなのに、ゲーミングやクリエーター向けヘッドセットとなるとベイヤーなどの足元にも及びません。
T1 & T5 3rd Generation |
このような昨今のベイヤーダイナミックの動向はブランド認知度という点では嬉しいのですが、個人的には新作に恵まれない一年でした。2020年は最高級モデル開放型T1と密閉型T5pがモデルチェンジして、それぞれ3rd Generationに生まれ変わりました。初代T1は2009年、2nd Generationは2015年で、私はどちらも愛用してきたので今回も期待していたのですが、私が普段聴くジャズやクラシックではむしろ旧型の方が好みのサウンドだったので、買い替えは保留にしました。ポップスなどは旧型では刺激的すぎるという人も多かったようなので、その場合は新型の方が気に入ると思います。
やはり2017年以降サウンドチューニングのターゲットが大きく変わってきたようなので、それ以前に発売したモデルとは区別しなければならないようです。特に2015年発売のDT1770PROというヘッドホンは個人的に職場で日々愛用しており、これを超えるヘッドホンは今後登場しないのかと思うとちょっと残念な気もします。
昔はゼンハイザー・ベイヤーダイナミックと並んで御三家の一つだったAKGは、2020年はあまり目立った動きはありませんでした。一昨年サムスンに買収されて本社工場が取り潰しになってから、今後の動向が気になっていたのですが、現時点ではK701やK240など過去の有名モデルを復刻という形で低価格リメイクするくらいで、同じくサムスン傘下JBLと合流したベーシックなモデルがいくつか出たのみです。もうちょっとAKGブランドを活かして何かやってくれるかと期待していたのですが(N90Qの路線を進めるとか)、飼い殺しで消滅するのでしたら残念です。
Philips Fidelio X3 |
似たような境遇にいるフィリップスも、色々あった末に身売りした米ギブソン社が倒産して散々でしたが(オンキヨーと似てますね)、結局は昔からフィリップスTVやモニターを作ってきた香港TPV社がオーディオブランドも取得したことで、2020年には久々に新製品が見られるようになりました。
好評のまま消えてしまったFidelioヘッドホンが新たにFidelio X3として再登場したのは嬉しいニュースです。思い返すとFidelioシリーズや大昔の定番モデルSHE9700など、商品自体は優れているのに経営がとにかく不安定でなかなか見通しがつかない可哀想なブランドです。同じくオンキヨーやパイオニアなども以前の活気を取り戻してもらいたいです。
Austrian Audio Hi-X55 |
AKG繋がりでは、旧AKG本社社員一同が新たに設立したAustrian Audioも日本で正式に発売したのも嬉しいニュースです。ヘッドホン第一号機Hi-X55・50は3~4万円のプロ用密閉型モニターヘッドホンなので、リラックスした音楽鑑賞にはあまり向いていませんが(それでも買いましたが)、技術力は高いので、今後K712・K812を凌ぐような開放型ヘッドホンを作ってもらいたいです。
HEDD Audio HEDDphone |
ヨーロッパで新興ブランドというとHEDD Audio HEDDphoneも忘れてはなりません。超巨大な長方形ヘッドホンは一目見たら忘れられないでしょう。ELACやADAMなどスピーカーで使われているリボンツイーター(いわゆるハイルドライバー)をヘッドホンに転用しようという事で、昨年ADAM AudioがFocusrite傘下に入ったタイミングで技術者が独立したようです。こちらも何度かじっくり試聴してみたのですが、なかなか考えが定まらずブログに上げるのは断念しました。リボンらしく高域は素晴らしいですが中低域はハウジング依存が強く(分厚いイヤーパッドで予想できます)、良く言えば臨場感あふれる、悪く言えば風呂場のカラオケみたいな濃い響きです。しかもケーブルを非純正に変えると凄く音が変わるので、なかなか本性が把握できない不思議なヘッドホンでした。せっかくのリボンですからSTAXみたいに軽く開放的な方が良かったと思います。
Focal Radiance |
ヨーロッパだとフランスFocalが地道に頑張っています。五年ほど前にスピーカー大手Focalがヘッドホンを出すと言った時は、単なるトレンドに便乗しただけの一時の気の迷いかと思ったのですが、今では一大勢力に成長しています。
2019年の密閉型Stelliaには非常に関心しましたが35万円という価格はなかなか手が出せません。一方ベーシックな密閉型Elegiaは典型的な密閉型らしい弱点が目立ち、あまりパッとしたモデルではありませんでした。それらを踏まえて2020年末には新たに16万円の密閉型モデルRadianceが登場したので期待できそうです(まだ試聴できていません)。ちなみにベントレーとのコラボということでベントレーロゴが側面に入ってるのはちょっとおっさん臭いというか、フェラーリの香水みたいな感じで、できれば無かった方が良いと思いました。
HIFIMAN HE-400i & DEVA |
欧州から離れて中国は思ったほど勢いが無かったです。やはり時代は完全ワイヤレスイヤホンということで、大型ヘッドホンを作る余裕は無いのでしょうか。
とくに平面駆動型ヘッドホン大手HIFIMANからはそろそろ凄い新型が出るかと期待していたのですが、2020年はエントリーモデルHE-400iのヘッドバンドが変更されたのみでした。
あとはエントリーモデルDEVAというのも登場して、3万円でしっかり平面駆動型なのは嬉しいです。色が合ってなくてちょっと不格好ですが、付属Bluetoothモジュールを接続できるというのがセールスポイントです。初期の主任開発者が数年前に会社を去って以来、ハイエンド機開発の探究心か技術力が失われてしまったようで、ちょっと迷走感というかドライバー以外の手直しで食い繋いでる感じもします。
HIFIMAN HE-R10 |
HIFIMANで一つ話題になったニュースとえば、ソニーMDR-R10を「オマージュ」したHE-R10でしょう。MDR-R10は1989年にソニーが発売した高級ヘッドホンで、銘機として語り継がれています。著作権とかがなんであれ無許可のパクリなので日本だったら恥ずかしい行為ですが、中国では普通の事なのでしょうか。
私の意見としては、ソニーのヘッドホン音響技術は1989年当時と比べて大幅な進化を遂げているので、いまさら引き合いに出すのもどうかと思います。測定グラフを比較して完全復刻なんて自信満々でしたが、1989年当時のサウンドを真似て満足している程度で良いのでしょうか。そもそも本家MDR-R10の価値は熟練職人の技工による精巧な組み上げや、希少木材の美しさといった細部のクラフトマンシップのプレミアム感にあったので、形だけコピーしても仕方がないような気がします。
Grado The Hemp Headphone |
アメリカGradoはニューヨーク・ブルックリンに本社工場があるためコロナの影響が直撃したようで、年間を通して既存モデルが品薄な期間が続きました。そんな中でも6万円の限定モデルThe Hemp Headphoneが登場して、私も興味本位で買いました。Gradoらしからぬ厚く緩いサウンドが印象的です。
さらにワイヤレスヘッドホンGW100が密かにBluetooth 5.0にマイナーチェンジしていたり、完全ワイヤレスイヤホンGT220も出すなど、古いようでしっかり時代に合わせているメーカーです。
実は私も今年は自宅でビデオチャットを行う機会が多く、そのたびにGW100を使いました。ハイエンドヘッドホンをたくさん持っていても、いざマイク付きで軽量快適な開放型ワイヤレスヘッドホンというと意外と手元に無いもので、GW100が大活躍した一年でした。
アメリカは他にもAudezeやDan Clark Audio(旧Mr Speakers)などの名門ブランドがあるものの、どこも目立ったニュースなど無かったようなので、やはり各社とも苦労している事が伺えます。
JVC Exofield Theatre XP-EXT1 |
日本のメーカーも静かな一年だったようです。オーテクやフォステクスは大型ヘッドホンでは現役で優秀なモデルが揃っているので、まだ新作を期待するには時期尚早でしょう。
一つだけ面白そうな話題としては、JVCがExofield Theatre XP-EXT1というホームシアターサラウンドヘッドホンを発売したことです。コンセプトとしてはソニーMDR-HW700DSと似たような感じのHDMI入力 7.1.4ch Dolby AtmosやDTS:X対応ヘッドホンで、サラウンド効果もソニーより凝った感じです。個人的にHW700DSの後継機を探していたので気になる存在なのですが、約10万円と結構高いので、いつか安くなったら買おうとカートに入れっぱなしで放置しています。
2020年の大型ヘッドホンについて総括すると、やはりここ数年で各メーカーから優れた音楽鑑賞用ヘッドホンが出揃っており、どこも一長一短の僅差で争っているので、なかなか新興ブランドが参入する余地も無さそうです。優れた性能を持ったヘッドホンを作るには、音響素材や工作精度などの事情から、しっかりした量産体制を持ったメーカーでも10万円くらい、少量のガレージメーカーなら20万円以上になってしまうようなので、現状では大幅にコストダウンすることは難しいようです。
今のままでも不満があるわけではないのですが、今後の期待としては、現在のHD800級のサウンドを5万円以下くらいで実現できるような技術革新を待望しています。一方10万円超のハイエンド機の分野ではなにか画期的な新しいドライバー方式の登場を期待したいです。その点たとえばHEDDのリボンドライバーなんかはポテンシャルがありそうですし、STAXのような静電型も忘れてはなりません。多くのハイエンドヘッドホンユーザーはすでに強力なアンプを持っているはずなので、能率や感度は犠牲にしてでも、さらなる高音質を目指す土台は出来上がっています。
長くなってきたので、ポータブルDAPやヘッドホンアンプなどについては後半に続きます。あと2020年に私が個人的によく使ったモデルなんかについてもそちらでまとめます。