2026年8月1日土曜日

Astell&Kern CA1000T DAPのレビュー

発売からちょっと時間が経っているモデルですが、Astell&Kern CA1000Tを手に入れたので感想を書いておきます。

AK CA1000T

2023年2月発売のモデルで、ポータブルDAPとは名ばかりの、およそ1kgの重量級プレーヤーです。2022年のCA1000の発展型で、今作はNutube真空管を搭載しています。

AK ACRO

私が普段使っているヘッドホンアンプはスピーカー用のオーディオラックに収まっているため定位置でしか使えないという縛りがあるので(ハイエンドに傾倒しすぎるとよくある贅沢な悩みです)、もうちょっとカジュアルに運搬できるオールインワン複合機を物色していたところ、試聴して気に入ったAK CA1000Tを手に入れることになりました。

バッテリー搭載のDAPです

2023年発売当初の価格は33万円という非常に高価なモデルなので、個人的にそこまで視野に入れていなかったものの、だいぶ時間が経ってから縁があって入手するに至りました。そろそろ一年ほど自宅で活用してきたので、忘れる前にブログに感想を書いておこうと思います。

Astell&Kernは高級志向のブランドなので、新品を買うのはなかなか覚悟が必要なわけですが、シャーシやオーディオ回路の作り込みに関しては価格相応に一級品なので、今回のように発売からちょっと時間が経ったモデルでもすぐには陳腐化しませんし、人気ブランドだけあって販売台数も多いため中古品なんかも狙い目です(メーカーとしては最新作を買ってもらいたいはずですが)。

そんなわけでAK CA1000Tですが、これはAstell&Kernの中でも卓上モデルを扱うACROシリーズに入っています。フラッグシップDAPのSP4000などはA&ultimaシリーズで、それらと比べて影が薄いACROシリーズですが、私自身デザインやコンセプトを結構気に入っており、これまでの自宅パソコン用にACRO L1000という2018年発売の据え置きDACアンプを長年使い続けてきました。(そちらは電源ボタンの反応が悪くなってきて、Micro-USBだったり4.4mmが無いなどの不便さも感じてきたものの、後継機も無いので、最近紹介したFiio K17に入れ替えています)。

長らく使ってきたAK ACRO L1000

ACROシリーズがヘッドホンマニア界隈であまり話題にならない理由として、スペックや機能面では業界最先端というほどでもないわりに値段はそこそこ高いという、なんとなくB&Oのようなライフスタイル系のイメージがあるからだと思います。

独自のFPGAアップスケーラーとか最高出力が何ワットといったスペックに注目する人はFiioやiBassoなどに行きますし、もっとラグジュアリーを追求するならLuxury & Precisionなどもあるので、それらのカテゴリーに当てはまらないACROシリーズはやはり中途半端でマニア受けしづらいです。

私はそこまでスペックやチップ銘柄とかにこだわっておらず、毎年買い替えるよりも十年使えるモデルの方に魅力を感じるので、そういう人にACROは合うのかもしれません。

それでも今回CA1000Tを実際に使ってみて、自分なり気に入った部分とは別に、「これはたしかにウケないな」と思えるポイントもいくつか見つかったので、そのあたりも含めて記憶に新しいうちに感想を書き留めておこうと思いました。

CA1000T

今作CA1000Tの前にCA1000という銀色のモデルがあり、基本的なデザインや使用感はほとんど変わっていません。このCA1000のシャーシをもとに中身のオーディオ回路を大幅に作り変えた後継機がCA1000Tになります。

旧モデルのAK CA1000

このブログでも2022年にCA1000を試聴して、そこそこ気に入ったものの、メインで使うDAPとしては面白みに欠ける印象があり、購入には至りませんでした。今回そこにNutube真空管回路が加わったことで面白さが増していると期待できます。

Nutube真空管

CA1000との最大の違いとして、オーディオ回路にNutube 6P1真空管を二枚搭載しており、さらにD/AチップはCA1000がESSのES9068ASだったところ、CA1000Tでは次世代のES9039MPROを二枚搭載しています。(ちなみにES9039MPROはES9039PROと同じチップで、MはMQAデコーダー内蔵版というだけの違いです)。

内蔵ストレージは256GBでマイクロSDカードスロットが一枚という基本的なスペックはAKのポータブルDAPとさほど変わりません。欲を出すなら、せっかくの大型シャーシを活かしてカードスロット二枚とかNVMeが挿せるくらいの差別化が見たかったです。

RS6+AK PA10とのサイズ比較

私が普段が使っているHiby RS6 DAPとAK PA10ポータブルアンプを合体させた状態と比較してみても、CA1000Tの方がだいぶ大きいことがわかります。

巨大なシャーシのほとんどがバッテリーにあてがわれており、10100mAhということで、たぶんSP3000の5050mAhバッテリーを二枚分詰め込んでいるのでしょう。Nutubeは電力を結構消費しますし、ヘッドホンに特化した強力なアンプとなると大型バッテリーは必須です。

本体重量は980gなので、さすがにカジュアルに持ち歩くことは想定していません。ポータブルといっても自宅で部屋を移動するとか車移動で持ち出すような使い方になり、実際私も昨年末に実家へ帰省した際に持っていき存分に活躍してくれました。

その前の年の帰省の際にはUSB DACとポタアンにケーブルやらACアダプターなどあれこれ荷造りしていたのが、これ一台で済むようになったのは想像以上に楽です。なんだかSteam Deckを買った時と同じくらいゴチャゴチャが減ることのメリットを痛感しました。

画面が起こせます

タッチスクリーンはチルト式になっており、大型のボリュームノブはアクセスしやすく、上面のトランスポートボタンはブラインドでも押し間違いなく、卓上で簡単に操作できるようによく考えられているデザインです。

画面チルトに関しては、一見取り外せるようにも見えますが、ヒンジ部分で固定されているので上の写真での角度が限界です。画面を起こしておいたほうが見栄えはカッコいいですが、私は完全に畳んだ状態で使うことの方が多いです。

シャーシ形状は意外と複雑です

アルミ削り出しのシャーシは重厚感があり、直線的フォルムでありながら横から見ると等高線のような横溝がアクセントになっており、頂点に丘陵のような三角形、そして上から見ると側面は中央が絞られるよう微妙にカーブしていることで側面の溝が立体的に屈折しているよう見えるあたり、さすがAKらしくシンプルに見せかけてかなり複雑かつ美しい立体造形です。

無意味な金銀装飾に頼らず、ビス穴やパネルの嵌合も徹底的に隠しているマッシブな造形は、実際に手に取ってみると確かな高級感があります。

AMPボタンでモード切り替え画面が呼び出せます

全体的に優れたデザインの中でも、とりわけ上面パネルのボタンの使いやすさに関心しました。十分な間隔が空いていて、カチッと確実な押し心地が嬉しいですが、さらにCA1000Tの目玉ギミックであるアンプモード設定メニューを呼び出すためのAMPボタンがあるのが便利です。

音質モード切り替えをセールスポイントとするDAPは多いものの、Android設定メニューの奥深くに潜んでいると積極的に変更する気が失せるので、こうやって専用ボタンで主張することは大事だと思います。

逆にChordのように謎のボタンの長押しで変なエフェクトが有効になるなど、初見で理解できない難解なインターフェースだと新規ユーザーを悩ませることになるので私はあまり好きではありません。(店頭試聴中ずっと低音ブーストがONになっているのに気が付かないとか)。

真空管モード

CA1000Tのアンプモードというのは、オペアンプ(ソリッドステート)と真空管モードの他に、それらの両方を五段階でブレンドできるハイブリッドモードというのが選べます。

アンプのモードによって本体上面ロゴパネルのLEDの色が切り替わるのは直感的で良いと思います。ちなみにハイブリッドモードが青色なのはわかりやすいのですが、ソリッドステートが赤で真空管はオレンジというのは判別しづらいので、できれば青から赤への段階的なグラデーションとかにしてもらいたかったです。

ソリッドステートからハイブリッドまたは真空管モードに切り替わる時のみウォームアップのため数秒のカウントダウンが入ります。その間も音楽は流れており、カウントダウン終了とともにカチッと音色が切り替わります。

真空管といってもNutubeはプリ管なので、D/Aチップからのライン信号経路に挿入される味付けエフェクトのようなものです。つまりヘッドホンをドライブするアンプの役割を真空管が担っているわけではありません。このあたりは多くの真空管搭載DAPと同じ要領です。エレキギターを使っている人なら、ギターアンプのプリ管と同じ感覚なのでわかりやすいと思います。

Nutube 6P1とサブミニチュア管JAN6418

余談になりますが、数年前はNutube搭載DAPが各社から色々と出ていたものの、最近はJAN6418サブミニチュア管を採用するDAPの方が増えてきました。(AKでもSP2000TがNutubeで、SP3000TがJAN6418でした)。

JAN6418の方が単価がだいぶ安く、Nutubeの1/10くらいの値段で調達できるという理由もありますが、それよりもNutubeは物理的なスペースをとり、消費電力もそこそこ高く、振動に弱いためシャーシを叩くと出力にノイズが乗ってしまい、電磁ノイズに弱くシールドが必要など、周辺設計の配慮に色々と手間がかかります。それを踏まえると、真空管の風味を加える程度ならJAN6418で十分という判断も納得できます。

Nutubeも周辺設計の作り込みを徹底すれば音質面では素晴らしいので、最近だとCayin C9iiやLuxury & Precision EA4など最高級クラスのポタアンに採用される例が多く、ただしシャーシサイズはどうしても大きくなってしまうため、今回のCA1000Tのような巨大なモデルこそNutubeを活用するのにうってつけというわけです。

実際にCA1000Tの公式解説を見てもNutubeの振動対策にかなり力を入れているそうで、同じくNutube搭載のAK SP2000Tなどと比べても振動や電磁波ノイズはだいぶ低減されている印象です。

カッコいいボリュームノブ

フロントパネル

ボリュームノブは大きなデジタルエンコーダーで、軸の剛性がしっかりしているおかげで高級感があり、わずかにカクカクとデテント感もあるため細かな調整が可能です。ノブが外に飛び出す部分だけわざわざフレアして広がる形状や、シャーシとの隙間の狭さでノブにガタが無いことの自信を見せたり、こういった細かい部分で高級感を決定づけています。

前面にはヘッドホン出力端子が並んでおり、4.4mmバランスの他にもAKらしく2.5mmバランス、さらに3.5mmとは別に6.35mmも用意されているのは嬉しいです。一昔前のヘッドホンは6.35mm端子のモデルが意外と多いので、変換アダプターを探さなくてもよいのは助かります。

個人的な要望としては、基板レイアウト的に厳しいのかもしれませんが、2.5mmはもう不要なので4ピンXLRバランス出力端子が欲しかったです。(ACRO L1000にはありました)。

充実した背面パネル

背面にマイクロSDカードスロットが一枚、USB Cは充電とデータ用の二つに分かれています。光と同軸デジタル入力があるのは据え置き機として便利ですし、4.4mmバランスでアナログライン入力があるのも意外です。これだけ揃っていてS/PDIFは入力のみで出力が無いのが意外です。

XLRライン出力

CA1000からの変更点として、ライン出力にはRCAの他にミニXLRバランスも用意されています。ラインケーブルは付属していませんが、ミニXLRコネクターなら安価で自作しやすいので助かります。

ためしにバランスラインケーブルを作ってみたところ問題なく使えました。余談ですが個人的にミニXLRはREANよりスイッチクラフトTA3Fの方がしっかりしていて好みです。ちなみにRCA端子の方は左右の間隔がそこそこあるため、直径15mmくらいのプラグまで干渉しないのはありがたいです。

入出力選択

CA1000T専用の入出力選択画面が用意されています。フロントパネルのヘッドホン出力ジャックは接続時に自動検知してくれるものの、背面の入出力は手動で選択する必要があります。

普段のAK DAPには無い画面なので、これに気が付かないと、ラインケーブルを接続したのに音が出なくて焦ってしまいます。

インターフェース

ファームウェア

それ以外のOSインターフェースは一般的なAK DAPと同じもので、私は使い慣れているのでスムーズに活用できました。これを書いている時点でファームウェアは1.20です。初期のファームウェアだと一部使えない機能などもあったので、アップデートすることをおすすめします。

デジタルフィルター

ESSのD/Aチップを搭載しているので、デジタルフィルターの選択肢もESSの仕様通りです。近頃は独自の復元フィルターとかNOSモードなどを導入しているDAPも多いですが、CA1000Tはそういうのが一切無く、極めてオーソドックスな構成です。

私はフィルターモードをあれこれ切り替えたりするのはそこまで興味が無いので、むしろこれくらい真面目な方が安心して使えます。そういえば最近のAK DAPに導入されているDSD・DXDアップスケーリングモード(DAR)は今作には搭載されていません。CA1000ベースなので基礎設計が古いのでしょうか。同様にSP3000以降のアップデートで追加されたAndroid Google Play機能も今のところ非対応です。

クロスフィード

AK自慢のクロスフィード機能は搭載しているので嬉しいです。単純なON/OFFだけでなく、かなり細かく調整して自己流のプリセットとして保存できます。スピーカーと交互に聴き比べて追い込んでいくのも楽しいかもしれません。私はAK PA10のクロスフィード機能の方が感覚的に好みなのですが、こちらも悪くないです。古いジャズなど、左右にハードパンされているステレオ録音を聴きやすくするのに重宝します。

謎の仕様や欠点

CA1000TはいつものAK DAPを据え置き用として拡張したような、かなり実用的な製品だと思いますし、私の普段の使用範囲では不満もありません。しかし購入を考えているなら知っておくべき不思議な仕様や欠点もいくつかあるので、そのあたりをここでまとめておきたいです。

筐体のわりに画面が小さいです

まず最初に、タッチスクリーンが前作CA1000と同じ4.1インチの720×1280なのは据え置き機としてかなり見劣りします。本体面積と比較して画面が小さいのは一目瞭然ですが、他社の現行DAPがどれも1080×1920以上の高解像度なのに、AKはCA1000に限らずSP3000Mなどそこそこ高価なモデルでも720×1280を採用しているのは第一印象で損をしています。解像度が低いとアルバムブラウザーで一画面に表示される情報が少ないためスクロールする頻度が増えるという実用上の弱点もあります。

さらにSoCの処理速度が他社DAPと比べると遅いようで、最近のスマホのようなサクサク動作に慣れているとスクロールなどナビゲーションの読み込みの遅さが目立ちます。画面の狭さと合わせて操作中は常に意識してしまう部分なので、なおさら欠点として目立ちます。

オーディオ回路へのノイズや負荷を減らすためにあえてSoCのパフォーマンスを落としているという主張もありそうですが、それにしてもそろそろ他社と比べて厳しくなってきました。

ラインDACプリとしても優秀ですが

公式のブロック図

次の欠点はライン出力です。ボリューム固定と可変で切り替えられるので、ラインプリとしても活用できるのは便利なのですが、公式のブロック図を見てもわかるとおり、D/Aチップ出力からそのままライン出力を引いているため真空管モードが一切使えません。

真空管を通さない方がライン信号としてピュアなのは理解できますが、回路的には真空管ラインバッファーからヘッドホンアンプに送る手前でライン出力を引くことも難しくなかったはずです。せっかく真空管をセールスポイントにしているモデルなのだから、真空管ラインプリとしても活用できれば楽しみの幅が広がると思うと残念です。

ちなみにブロック図ではライン出力は「Volume Controller」という回路ブロックを通っていないのに実際はボリューム調整ができるというのも謎です。

バッテリー

バッテリーについて、AK DAP全般に言える事だと思うのですが、スマホや他社DAPと比べてバッテリー残量表示が不正確だと感じる事が多いです。

独自のTeraton Alpha電源管理ICを搭載していることで、Android OS側から観測しきれていないのでしょうか。

完全放電からフル充電のキャリブレーションを何度か行っても減り具合の表示があまり安定しません。数曲聴いたらもう60%だったり、10%くらいから一向に減らず何時間も再生しつづけるなど参考になりません。

実測ではスペックどおり約11時間再生というのも間違っていないと思うのですが(もちろん画面を点けっぱなしとかならもっと減りますが)、SP3000でも同じようなバッテリーの挙動不審が目立つので、AK DAPにありがちな問題のようです。たとえば上の写真のようにモバイルバッテリーや外部電源を接続して使っていると、フル充電になった後もモバイルバッテリー側をグングン消費するなど挙動が予測できないのが困ります。

一つ意外な長所として、背面ライン出力のみで使う場合はバッテリーの再生時間がだいぶ長くなります。ヘッドホンを接続しないことでアンプ回路に電力を消費しないからでしょうか。

ゲインSuper

Superのボリュームリミット

外部電源で150まで上げられます

バッテリー保護モード

バッテリーに関してもう一つ、これは実用上どうでもよい事なのですが、CA1000TはUSB給電時のみ「Superゲイン」モードの上限をアンロックする事ができます。充電ケーブルを外すとボリューム数値が最大150のうち125までに制限され、警告表示が出ます。

そしてそれとは別に、CA1000Tにはバッテリー保護モードという機能があり、これはバッテリー過充電による寿命低下を防ぐため85%までしか充電しないという機能です。設定画面でオフにできます。

つまり、感の良い人なら想像できたと思いますが、バッテリー保護モードがONの状態でSuperゲインモードを選んでいると、バッテリー85%で充電が止まりケーブルが外されたと勘違いしてボリュームが制限され、ちょっと経って充電が再開すると制限解除されるという変な挙動が起こります。

もちろん現実的にはSuperゲインで最大ボリュームを使う状況は考えられませんが、今回私が最大出力を測ろうとしてもボリュームが125以上に上がったり上がらなかったりで困惑しました。

出力

いつもどおり0dBFSの1kHzサイン波を再生しながら負荷を与えて歪み始める(THD > 1%)最大出力電圧(Vpp)を測ってみました。

CA1000Tはアンプのモードが多いので、まずソリッドステートモードにてゲイン設定を変えてみたグラフです。青がバランス、赤がシングルエンドで、それぞれ高い方からSuper・High・Mid・Lowの四段階があります。

バランス接続のSuperゲインでは42Vpp(15Vrms)とかなりの高電圧を出しており、電流リミットに差し掛かる50Ω付近では3.9Wくらいの出力を発揮しています。

ただし、グラフの右側を見るとわかる通り、バランス接続で負荷が50Ω以下ではSuperよりもHigh、そして20Ω以下だとLowの方が高出力になります。ようするにソフトウェア的なリミットではなく実際にアンプ回路が変化するようです。

注意点として、これは同じボリューム数値でHighよりもLowの方が音量が大きいという意味ではなく、ボリュームを上げていった際に信号が歪みはじめる限界点が、インピーダンス20Ω以下の場合はLowの方が余裕があり、Highを選ぶと歪みやすいという意味です。

さらに、バランスとシングルエンドを比較すると、30Ω以下からはシングルエンド接続の方が高出力を得られることがわかります。電源回路やアンプの限界でこのような逆転現象が起こることはよくあるので必ずしもバランス接続の方が高出力とはかぎりません。

もちろん高出力だから高音質という保証はないので、実際に音を聴いて判断するしかありません。どちらにせよ実際ここまで高出力が必要なヘッドホンはそうそうありません。

次に、ゲインSuperにて、アンプモードをソリッドステート、ハイブリッド、真空管で切り替えてみました。

ご覧の通り、モードを変えてもアンプの基本特性は変わらないものの、ソリッドステートモードは音量が若干高くなるので試聴の際にサウンドの違いを正しく評価するのが難しくなります。

さらに背面のライン出力も確認してみたところ、こちらは前述のとおり真空管の手前で出しているためアンプモードの影響を受けませんでした。

同じ1kHzサイン波を再生しながら無負荷時に1Vppにボリュームを合わせて負荷を与えてみたグラフです。

アンプのゲインや真空管モードなどに関わらず、出力インピーダンスは1-2Ω付近で一定のようです。ライン出力のみシングルエンド3Ω・バランス8Ωあたりですので、ヘッドホンアンプを通さない純粋なライン信号のようです。

ソリッドステートのバランス接続Super・High・Mid・Lowのみで、旧作CA1000と比較してみました。青がCA1000Tで緑がCA1000なのですが、グラフがピッタリ重なったのでアンプの基礎設計は同じようです。

ちなみにCA1000の測定を行ったのが2022年の3月だったので、およそ4年経った今CA1000Tのデータと比較してここまでピッタリ一致したのは、測定手法の誤差が少ないということで一安心しました。

参考までに、他のDAPやヘッドホンアンプと比較したグラフです。どれもバランス接続で最高ゲインモードでのグラフです。CA1000Tのみ、低インピーダンスではSuperよりLowゲインの方が優れているので両方掲載しました。

AKの製品は他社と比べて出力スペックにそこまでこだわっていないので、ほかのメーカーと比べると非力に見えることが多いです。他社と同じくらい高出力にするのも難しいわけではないので、昔からあえてそうしていないのは音質面でのポリシーがあるのでしょう。

身近にあった据え置きDACアンプのFerrum ERCOとFiio R9はどちらもコンセント電源が必須なだけあって、低インピーダンス負荷の方まで圧倒的な出力です。CA1000Tもバッテリー駆動としては健闘していますが、50Ω以下で一気に落ち込み、それ以降はSP3000TやKANN Ultraと似たようなカーブになるので、AKらしいアンプの基礎設計に準じているのでしょう。その点ではAKでもPA10のみ異質です。ちなみに高出力なはずのKANN Ultraがずいぶん低いのは、グラフの左端の100Ω以上で一気に上昇していくからです。しかし最近のヘッドホンは100Ω以下が多いため、その点では扱いづらいモデルになります。

個人的に気に入っているCayin C9iiは最大電圧という点ではそこまで目立たないですが、10Ω以下の負荷では非常に優秀なので、IEMイヤホンなどに最適化されていることが伺えます。

こうやってグラフで比較すると明確な優劣があるように見えてしまいますが、実際のとこころ、Fiio K9やM17ですら高出力すぎて持て余すくらいですから、実際にボリュームノブを全開にしても音量が足りないというわけでなければ、最高出力と音質評価は分けて考えたほうが良いです。

音質とか

CA1000Tを試聴するにあたり、ヘッドホンを駆動するためのパワーは十分にあるとして、IEMイヤホンはどうなのかというのは個人的に気になるポイントです。

UE Live

結論からいうと、ほとんどのイヤホンでは問題ありませんが、SP3000と比べるとUE Liveなど感度が高めのモデルでアンプのバックグラウンドノイズが聴こえます。

これは前作CA1000でも同様に気になったポイントなので、アンプの基礎設計が共通しているのでしょう。ボリュームノブ、アンプのゲイン設定、真空管モードなどに関わらず一定の潜在ノイズが聴こえるので気になる人もいるだろうと思います。ただし再生を停止するとノイズもミュートされる仕組みになっているので、確認するためには無音の楽曲ファイルを用意する必要があります。

大型ヘッドホンに特化した据え置きモデルということでノイズフロアが高いのは仕方がないのかもしれませんが、シャーシサイズには十分な余裕があるので、IEM用に低ノイズなモードを用意するのも可能だったはずです。それさえあれば正真正銘の万能DAPとして絶賛できたので惜しいです。

実際のところ私が普段使っているMadoo Typ821などのイヤホンは感度がそこまで高くないのでノイズが気になることもないのですが、たとえば新作イヤホンを試聴する際にCA1000Tを使うのは気が引けます。

そんなわけで、一部の高感度IEMイヤホンではもっと低ノイズなポータブルDAPを使った方が良いとして、続いて肝心の大型ヘッドホンを鳴らしてみます。

これで結局ヘッドホンの駆動が貧弱で、やっぱり本格的な据え置きアンプを買ったほうが良いなんてことになったら、中途半端で役に立たないモデルになってしまいます。私も普段はViolectricやSPLなどのコンセント電源式ヘッドホンアンプを活用しているため、それらと比較して遜色ない水準なのか気になります。

ATH-ADX3000

ATH-AWKG

少し前にオーテクのATH-ADX3000やATH-AWKGを試聴した際にFiio K17やFerrum OORなど手近にある据え置きDACアンプを色々と試してみたところ、最終的にCA1000Tで鳴らすのが良い感じで落ち着きました。こういう難しいヘッドホン駆動においてCA1000Tはかなり優秀な部類だと思います。

とりわけオーテクの開放型と密閉型という水と油のような両極端をどちらも満足に駆動できるということは、相性に振り回されず幅広いジャンルのヘッドホンに対応できる安心感が持てます。

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Harmonia Mundi新譜でAdam Laloumのシューマン集を聴いてみました。

ここ数年ソロと伴奏の両方でフランス系レーベルの顔になってきているLaloumですが、今作シューマンはスタインウェイでパリのガヴォー室内楽ホールでの録音ということで、音質が極上に良いです。1907年の完成以降ラヴェルやドビュッシー他多くの初演が行われた伝統を持つ小ホールなので、普段のスタジオ収録とは違った趣があり、Laloumの落ち着いたタッチも引き立てられます。


CA1000Tをまずはソリッドステートモードで聴いてみます。AK DAPの中でもSP、SE、KANNシリーズとは根本的に違う系統のサウンドなので、既存のAK DAPをそのまま大型化した感じではなく、しっかりと棲み分けができています。

全体的なサウンドの印象は、音量のダイナミクスが大きく、高音の爽快感があり、ストレートでカチッとした鳴り方です。アタックの尖りや余韻の響きが少ないため背景まで見通しが良く、音源に含まれるコンサートホールの情景を忠実に再生して、グランドピアノの迫力に負けじとヘッドホンをしっかり駆動できている実感が持てます。

AK ACROシリーズなのでもうちょっとマイルドなライフスタイル系かと想像していたところ、ここまでクリアでダイナミックなサウンドということに驚きました。細かいディテール描写も優秀でありながら軽く浮き足立つような感じではなく、低音が正確に制動できているあたりは電源回路に余裕があるおかげでしょうか、CA1000Tのマッシブで直線的なシャーシデザインから連想されるにふさわしいサウンドです。

とくに前作CA1000と比べると音量の強弱のコントラストが増して、音楽の土台の安定感や迫力をさらに引き出せているような実感があります。CA1000の方が無難で気が抜けたような印象があり、長く付き合っていると物足りなくなりそうな不安がありましたが、CA1000Tは実際に数カ月間使ってからもまだ飽きる気配がありません。

CA1000Tはこれまで聴いてきたヘッドホンアンプの中でもだいぶ解像力が高くハッキリとした性格のサウンドだと思います。とくに先日紹介したFiio K17のような温厚で豊かなサウンドとは正反対で、どちらかというとRMEなどのオーディオインターフェース系が好きな人に向いています。

あくまで感覚的な話ですが、RMEなど優秀なオーディオインターフェースとCA1000Tが共通している特徴として、「正確な瞬間スナップショット」が体感できるところだと思います。

どういう意味かというと、どのタイミングで切り出しても、その瞬間に聴こえるべき音が正確に把握できている感触です。これが下手なアンプだと、立ち上がりの鈍りや響きの間延びなどで時間軸方向が曖昧にぼやけている感じがします。

映像で例えた方がわかりやすいかもしれません(音楽はポーズすると無音ですが、映像ならポーズした状態でも静止画が見えるので)。鮮やかな4K動画でもHEVCやAV1で圧縮を強めるとキーフレーム以外は時間軸で差分補間しているので、ポーズした静止画を見ると意外とぼやけて濁っています。CA1000Tではこのような時間軸方向での濁りが少なく、瞬間の連続を正しく描画できている実感があります。

真空管モードはロゴがオレンジ色になります

つづいて真空管モードに切り替えてみます。サウンドの変化はそこそこわかりやすいので、楽曲との相性で切り替えて使う楽しみがあります。

ソリッドステートと真空管モードの具体的な違いは、まずソリッドステートモードはカチッとしたモニター系サウンドにAKらしい音の迫力や高音の広い空間描写が加わったような感じなので、空間を縦に分割するなら、中高域が上八割、低音が下二割といった感じに展開しています。

そこから真空管モードに切り替えると、低音が下五割くらいまで占めて、厚さや重さが増す一方で、高音の伸びやかさは犠牲になり奥行きや解像感も損なわれます。ロールオフしているというか、天井が低くなったような感じで、とくにコンサートホールの空気感に注目すると、高音だけが遅れて足を引っ張っているような感じで、タイミングが合わないようなもどかしさもあります。

ようするに、ピアノリサイタルやオーケストラなど高音質ハイレゾクラシック録音を聞く場合には、真空管モードにすると失う部分が多いため、あまり私の好みに合いません。しかし逆にそれ以外の楽曲では真空管モードの方が向いている場合もあります。たとえば60年代のアルバムを聴くとして、アナログテープノイズや空気感の整合性の悪さといった耳障りな高音成分が背景に隠れて控えめになり、当時の再生機器と同じくらいの狭いレンジに凝縮された力強いサウンドが楽しめます。

ハイブリッドモードが意外と良いです

数カ月間あれこれ聴き比べた結果、現在はハイブリッドモードで使うことが増えています。これは自分でも意外だったので驚いています。

これまでAKの真空管DAP SP2000T・SP3000Tを試聴した際には、ハイブリッドモードだけはどうしても苦手で敬遠していました。ソリッドステートと真空管の二系統の信号がそのままミキサーで合成されているような、二重の質感が聴こえる違和感があります。それらと比べてCA1000Tのハイブリッドモードは明らかに良いです。

回路的になにか変わったのかは不明ですが、ソリッドステートと真空管モードの良いところを絶妙にブレンドしたような扱いやすいサウンドが実現できており、明確な弱点もありません。これまでのAK DAPと比べてCA1000Tはモニター寄りのサウンドだからこそ、二つのモードを重ねても濁りが少なく、むしろちょうどよく感じるのかもしれません。

ハイブリッドモードではソリッドステートの高音の広がりやタイミングの正確さが真空管の低音の押し出しと見事に融合しており、スリルと力強さによる聴き応えが増します。オーテクのヘッドホンでもしっかりした低音の土台が生まれますし、Dan Clark Audioなどの平面型で眠くなることもありません。ひとまずハイブリッドモードから始めて、必要に応じてソリッドステートや真空管モードを試してみるという使い方で満足できています。

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Cellar Liveから新譜でDavid Blake Quartet「Radio Casual」を聴いてみました。ジャケットはシンセフュージョンのように見えますが、実際はジャズギターがリーダーのカルテットで、Blake自身の作曲はどれも親しみやすいです。

アンビエントな雰囲気とスゥイング感を上手く融合できており古臭くも感じません。ピアノも入っているので混雑する不安がありましたが、どちらかというとベース中心のアンサンブルで、ピアノはソロ以外では左右に広がる空間音響的な使い方に留まります。このあたりのバランスの良さはさすがブルックリンBunker Studioらしいです。

このアルバムはソリッドステートと真空管モードのどちらで聴くのが正解か迷います。リーダーの演奏はジャズギターの伝統的な丸いクリーントーンなので、真空管モードによる音の変化がわかりやすく、真空管モードだと真空管ギターアンプを通したような質感が増幅されるようで、とくにエレキギターを触ったことがある人なら瞬時に違いが感じ取れると思います。

ギタートーンとしては真空管モードの方が充実感があるものの、ドライブ感が強まり、デラックスなどのジャズらしいブリリアントなトーンからはちょっと離れてブルースっぽくなってしまう感覚もあります。ピアノやドラムの高音が頭上に広がる感じもだいぶ控えめになるので、やはり真空管モードは主役を強く引き立てる効果に特化するようです。今作のような最新ジャズ録音の場合はソリッドステートと真空管のどちらも異なる魅力があるため、色々迷って結局ハイブリッドモードに落ち着いています。

そんなわけで、パワフルでしっかりしたアンプを中心に真空管とハイブリッドモードで表現の幅も広いCA1000Tですが、汎用性という点では好き嫌いが分かれるタイプのサウンドだとも思います。

真空管とソリッドステートどちらのモードを選んでもCA1000Tの根本的な性格としてモニター風の硬さがあるので、冒頭で言ったようにFiio K17などの柔らかい響き豊かなサウンドは引き出せず、カジュアルなリラックスした体験とは言い難いです。

ジャズアルバムを聴いていて、K17がハーフテンポのフィールやグルーヴ感で体が左右に流れるようなリズムの取り方だとすれば、CA1000Tはダブルタイムというか、力強く高解像な映像がスピード感を持って迫ってくる、まるで高速で運転しているとか、高リフレッシュレートのゲーミングモニターを凝視しているようなスリルがあるため、背筋を伸ばして音楽を真剣に聴き込むハイエンドオーディオ的な探究心がある人に向いています。

そんなCA1000Tのサウンドに慣れてしまうと、例に挙げたK17のようなリラックスした温厚系のアンプだと、ピラミッド的と言えば聞こえが良いけれど、低音のフォーカスが甘く広がって散漫で緊張感が足りないと思えてしまいます。CA1000Tに戻るとベースとドラムがグイグイと前に進める推進力を発生させており、聴いている演奏自体は同じなのに、まるで一寸のミスも許されない研ぎ澄まされたナイフのようなパフォーマンスに思えてきます。

食卓の優雅なBGMとしてのジャズにCA1000Tは向いていませんが、試聴に使ったDavid Blakeの卓越したギター技巧であったり、ショーターやコルトレーンのように精神統一で魂を吹き込むような演奏では、CA1000Tの方がピリピリした空気感やプレッシャーも含めた音楽体験を提供してくれます。

同様に冒頭シューマンのピアノ曲集でも、収録曲のノヴェレッテやクライスレリアーナのような溌剌とした若さを感じる演目はCA1000Tの得意とするところですが、もっとシューマンの牧歌的、幻想的な方向を求めるには向いていません。たとえば子供の領分とかでここまで研ぎ澄まされていると困ります。その点ではショスタコーヴィチとかが好きな人に良さそうです。

優れたヘッドホンアンプの中には、まるで繊細な風景画のように空間のスケールを大きく描くものや、逆に油絵具で厚く塗ったような描き方のタイプもありますが、それらと比較するとCA1000Tは白い半紙に力強い筆の一文字を描く書道のような感じで、とくにポータブル環境ではなかなか得がたい体験です。

ライン出力DACとして

CA1000Tで大型ヘッドホンをカジュアルに楽しむという本来の目的ではだいぶ満足できており、実際に自宅で数ヶ月使ってみたところ、さらに「ライン出力DAC」としての優秀さに気が付き、その用途で活用する機会が増えました。

Austrian Audio Full Score One

例えば上の写真のAustrian Audio Full Score Oneのような据え置きアナログヘッドホンアンプと合わせれば、それだけでシステムが完結するため使い勝手が良いですし、音質も素晴らしいです。

音質の良さについては、他のAK DAPと違って背面ライン出力端子から純粋なライン信号が出せることのメリットかもしれません。たとえば同じAKでもSP3000をライン出力モードで使った場合や、私が普段ラインDAPとして重宝しているHiby RS6と比べても、CA1000Tのライン出力の方が優秀だと感じます。

透明感があるものの線が細すぎず、脚色が薄く扱いやすいサウンドのおかげで、アンプとの相性に悩まないサウンドです。ヘッドホンアンプだけでなくスピーカーシステムのラインソースとして組み込んでも私が普段使っているChordやdCSのDACと互角に戦えるサウンドが得られます。CA1000T自体が味付けや個性を押し付けず音源の魅力を届ける純度を保っているのと同時に、音痩せしない丁度良い塩梅を確保できています。最近はEversoloなどのNAS-DACプリを導入する人が増えていますが、それらほどシャーシが大きくなく一台で完結するラインソースとなると意外と選択肢が無いので、CA1000Tがそのニッチを埋めてくれます。

CA1000Tのライン出力はD/Aチップからラインバッファーを経てそのまま出しているだけの至ってシンプルなデザインなので、それならわざわざCA1000Tでなくとも良いのではと思うかもしれませんが、不思議なもので、似たようなスペックのベーシックなDACとは明らかに違うAKらしい艷やかさと力強さを持った絶妙の仕上がりです。電源管理や基板実装レイアウトなどの部分が貢献しているのでしょうか。

先ほど解説したとおり、ライン出力はソリッドステート固定で、真空管モードは選べないため、CA1000Tの中身の半分くらいが有効活用されていないのはもったいない気持ちもありますが、実際に音を気に入っているので文句は言えません。真空管を通さないならCA1000でも良いのではと思ったのですが、それでもCA1000Tの方が明らかに良いです。D/Aチップの差や、他にも細かな変更点があるのでしょうか。

さらに意外なボーナスとして、ライン出力のみだと真空管やヘッドホンアンプ回路が働いていないためかバッテリーの持続時間がだいぶ長くなります。

このライン出力の優秀さのおかげで、たとえば友人宅にこれだけ持参して、むこうのアンプに接続するといった用途で当初の想定以上に活躍しており、買って良かったという気持ちが倍増しました。

おわりに

AK CA1000Tは1kgのポータブルDAPというニッチなジャンルの製品なので誰にでもお薦めできるわけではありませんが、デザインと品質の高さ、そしてもちろん音質は非常に優秀なので、用途に合えば満足度の高い製品です。

セールスポイントのNutube真空管は確かな効果がありますし、ハイブリッドモードの鳴り方が意外と良かったのと、真空管を通さないライン出力モードも優れています。

ヘッドホン用だけでなくスピーカーシステムのトランスポートDACプリとして、実家帰省時や友人宅に持っていくなど活躍する場面が多いです。色々できると中途半端な印象を与えるかもしれませんが、下手な据え置きDACを用意するよりも音が良くて満足できています。

AKというブランドの信頼感も大事な要素です。友人宅の高価なオーディオシステムに接続するとなると、たとえばモード切り替えや曲間でバチッとノイズが入るなどの不具合があってはいけません。最近は中華系メーカーもハイエンドな価格帯に参入しているものの、このあたりの完成度や作り込みがまだ不十分な印象で、トータルデザインにおいてAKの存在意義は健在です。

冒頭でも言ったように、私自身はAK ACROシリーズが好きなので、今後またユニークなモデルが出ることを期待しています。

余談になりますが、先日私の友人がそろそろインテグレーテッドアンプを買い替えたいということで、ショップをまわって色々と試した結果、AKと同じく韓国メーカーのHIFI Rose RS520に決定しました。音質面では他にも良さげな候補がいくつか挙がったのですが、友人いわく画面が大きくて使いやすいのと、端子類が全部備わっているのが決め手だったそうです。

そんなエピソードを踏まえて今回CA1000Tでの不満点を思い返してみると、画面が小さく解像度が粗い、4ピンXLRが無い、真空管ライン出力が無いなど、それぞれは些細な点であっても、私の友人みたいにあれこれ気にする性格の人は購入を踏みとどまる理由になってしまうだろうと思えて、CA1000Tの中途半端な立ち位置を体現しているようでした。

どれもAKにとって技術的に難しい課題ではなく、たぶん初期デザインスケッチの段階でなんとなく決めた仕様なのでしょう。もし今後AK ACROシリーズで似たような後継機が出るのなら、音質やシャーシの造形美はもちろん最優先ですが、明らかにポータブルDAPと一線を画す、卓上機だからこそ実現可能なユーザーインターフェースの充実を推し進めてほしいと思いました。


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