SONY WH-1000XM3 & BOSE QC35 |
これまでずっと歴代BOSEを使っていたのですが、ようやくソニーに乗り換える気になりました。個人的にちょっとしたターニングポイントです。
WH-1000XM3とQC35
これを書いている2018年12月の時点で、ワイヤレス・アクティブノイズキャンセリング(NC)ヘッドホンを買うとなったら、この1000XM3とQC35の二択になると思います。私もこのジャンルに興味があって各社新作は色々と試してみているのですが、やはりアクティブNCというのは長年の開発技術や特許などが関わってくるため、ソニーとBOSEの二強に匹敵するメーカーは不在のようです。一昔前であれば、NCの騒音カット率を「90%」とかよくわからない数字で競い合っていたのですが、最近では消費者も利口になってきたので、メーカーももっと総合的な使いやすさや完成度の高さで勝負するようになってきました。
とくに、アクティブNCが珍しかった時代からもう十年以上が経ち、多くのユーザーは、すでに二台目・三台目の買い替えに差し掛かっている頃だと思います。そのため、製品選びにも慎重になり、結果として下手な商品が通用するスキがありません。長時間使用での快適さなど、実際にヘッドホンを何ヶ月も使ってみて初めて理解できるようなポイントはたくさんあります。
BOSE QC35は現在マイナーチェンジ版のQC35 IIになりましたが、私が使っているのはQC35の方です。Google Assistant機能が追加された以外では、新旧に大差無いと思います。
ほとんど同じです |
1000XM3は255g、QC35は240gということで、サイズ的にはほぼ同じです。どちらも似たようなヘッドバンドや楕円形イヤーカップなど、装着感はほとんど違いはありませんでした。
双方とも軽量化のために、ほとんどの部品がプラスチックなので、写真で見るよりも実機はチープな感じがしました。とくにソニーの方は初代1000XからXM2になってかなり安っぽくなりましたが、XM2からXM3へはデザインに大きな変更は無いようです。
XM3のワンポイントとして、ロゴなどがシルバーからローズゴールドっぽい色に変更されたので、ぱっと見ただけでXM2とは違うのが一目でわかって優越感に浸れます。
パッケージ |
収納ケースと本体 |
30時間再生・「SBC・AAC・aptX・aptX HD・LDAC」対応など、機能面では1000XM2とXM3はほぼ同じなのですが、一番肝心なアクティブNC回路がソニー独自の新設計チップに変更され性能が上がったことと、さらにこの新型NCチップにDACとヘッドホンアンプ回路をも内蔵してしまうことで、音質も向上したとのことです。
このあたりは、ソニー公式サイトに開発者インタビューがあり、非常に参考になります。単純にXM2とXM3のスペック表を見比べるだけでは数字として現れないので、実際に使ってみてはじめて違いに気がつくものです。
使用感
私自身は、普段ブログで紹介しているような高音質イヤホンやヘッドホンを主に使っているのですが、旅行で長時間移動するときは、アクティブNCを持っていく事が多いです。飛行機など騒音下で音質にこだわってもしょうがないのと、長期の出張であまり高価なヘッドホンを持ち歩きたくないので、スーツケースに投げ込んでも良いものを選びます。真面目な音楽鑑賞というよりも、適当に動画を見たり寝たり、騒音カットの快適さが重要です。
もう十年近くになりますが、BOSEは2010年発売のQC15から、QC20、QC25、QC35と、歴代モデルが発売されるたびに、いち早く購入してきました。唯一、最新のネックバンドイヤホン型QC30だけは、自分の用途に合わないので買っていません。2016年からは、長旅はQC35ヘッドホン、荷物の余裕がない時はQC20イヤホンと使い分けていました。
どのモデルも、二年ほど旅行で酷使していると、イヤーパッドとかプラスチックハウジングがボロボロ・ガタガタになってきますが、その丁度良いタイミングで新作が出るので、つい釣られて買い替えてしまうというループです。BOSEは音質はパッとしませんが、アクティブNC技術と装着感に関しては最高峰のブランドだと思います。
ソニー1000Xシリーズも、2016年の初代からQC35のライバルとして気になってはいたのですが、何度か友人から借りて使ってみても、1000X・XM2とも気に入らず、結局QC35を使い続けました。アクティブNC効果はQC35と互角なのですが、音質面ではキツめの高域が目立ち、あからさまにハイレゾっぽさを演出する感じで、何時間も使っていると疲れてきました。その点BOSEは地味でBGM的にずっと聴いていられる無難さが、とくに映画とかをダラダラ見るのに適しています。
今回も、普段どおりBOSE QC35をカバンに入れて出張に行ったのですが、空港の売店で1000XM3が平積みになっており、暇つぶしで試聴してみたら、NC・音質ともにかなり良い、しかも隣に置いてあるXM2試聴機よりも圧倒的に進歩していると感じたので、その場で衝動買いしてしまいました。
機内で比較 |
電車で比較 |
1000XM3を買ったものの、旅先でQC35を捨てるわけにもいかず、両方を持ち歩く事になってしまい、不本意ながら飛行機と電車で長時間の比較試聴レビューができる環境を作ってしまいました。
収納ケース |
ほぼ同じです |
付属収納ケースはBOSEとソニーでほとんど同じサイズで、ジッパーで開くセミハードケースに、ヘッドホンの折りたたみ方も、そっくりです。どちらも有線接続用3.5mmヘッドホンケーブルと、USB充電ケーブル、機内用アダプターが付属しています。BOSEはロゴが入ったカッコいいアダプターですが、ソニーはごく一般的な100均で買うようなやつです。
どちらも収納は手軽ですし、不必要な付属品が散乱することもなく、完成された使いやすいデザインです。ソニーはケースのジッパーもローズゴールドになっているのが上品で良いと思いました。
ソニー1000XM3のボタン類 |
BOSE QC35のボタン類 |
操作系は、個人的にはBOSEの方が好みです。とくに電源ONがスライドスイッチなのが明確で良いです。ソニーは物理ボタンが電源と「NC/AMBIENT」の二つのみで、ポーズや曲飛ばし、ボリュームなどは右ハウジング表面のタッチセンサーで行います。
AMBIENTモードというのは、NC ON・OFFの中間の状態で、定在しているノイズ(エンジンのゴーッという音とか)を低減しながら、周囲の人の声などは強調するモードです。電車のアナウンスとか、機内サービスで会話するときなどに便利です。
私はこのブログで事あるごとに「タッチセンサーが大嫌い」だと何度も言っているのですが、このソニーも例外ではなく、使っていて本当にイライラさせられました。ちょっとウトウトしたら、ハウジングが肩に触って音楽が飛ばされる、とか、曲を止めてヘッドホンを肩にかけたらタッチが反応して再生が再開してしまう、なんて想定外の挙動が多く、物理ボタンの確実性と比べると「百害あって一利無し」でした。唯一、ハウジング全体を手で覆うとAMBIENTモードになるという機能は便利でしたが、それ以外はかなり信頼性が低くて嫌いです。
もう一つ、ソニーで嫌だったのは「モード巡回」「長押し」を要求することです。「NC/AMBIENT」ボタンは一回押すごとにNC ON・AMBIENT・NC OFFを巡回するのですが、さらに同じボタンを長押しすることでNCのキャリブレーションが行われます。こういうのが、マニアやエンジニアは気が付かない、初心者に嫌われるデザインだと思います。BOSEのスイッチ式と比べると、手にとった時点で現状がわからないため、たとえば店頭試聴機がNCではなくAMBIENTモードになっていて「なんだソニーのNCって、たいしてノイズカットしないじゃないか」と早合点する客も多いかもしれません。使い方を熟知しないと「不本意な状態」になっているかもしれないというのがダメなところです。
1000XM3・QC35のどちらも、共通する不満があるとすれば、充電中はBluetoothとアクティブNCが使えないという点です。USBケーブルを挿した時点で、ヘッドホンの電源が落ちて充電モードに入ります。(一応、有線でNC OFFなら充電中も音は鳴ります)。
そんなわけで、バッテリーの再生時間というのはかなり重要です。スペックで10時間くらいのやつは、長いフライトは持たないですし、空港でコンセントを探してウロウロすることになります。
QC35は20時間再生・2.2時間充電、1000XM3は30時間再生・3時間充電ということで、この差は結構大きいです。さらにソニーは残量が少なくなると、10分充電で5時間再生という急速充電を行ってくれるのも助かります。
今回の旅行は、飛行機+乗り継ぎで26時間と、その後電車で3時間で、片道29時間ほどんど使いっぱなしだったのですが、1000XM3はちゃんと充電せずに最後まで乗り切りました。アプリ上でもまだ20%残量があると書いてあります。
帰路も同じような感じで、一回継ぎ足し充電したのみで、バッテリーの心配はありませんでした。やはり30時間というのは心が落ち着きます。
ちなみにQC35はマイクロUSB、1000XM3はUSB-Cです。最近はスマホ、ノートパソコン、任天堂Switchとも身の回りがほとんどUSB-Cになったので、ようやくごちゃごちゃと各種充電器やケーブルを袋に入れて持ち歩く生活から開放されつつあります。私は全部Macbook用のApple 30W USB-C Chargerというので充電しています。
スマホアプリ
ソニーの専用アプリは必須ではありませんが、本体操作だけではできない細かい設定や調整ができます。多機能で、結構しっかり作られていると思いました。BOSEにも同様のものがありますが、あちらはソニーほど多くの機能はありません。
ちなみに買った時のファームウェアバージョンは忘れましたが、アプリ経由で2.0.0にアップデートされました。適当にアプリのスクリーンショットを貼っておきますが、かなり多機能な事がわかると思います。
外音コントロールでNCの効き加減を調整できますが、基本的に最大(左端)で使います。
アダプティブサウンドコントロールというのは、スマホの加速度計を参照して、静止・歩行・移動中などを把握することでNCの効き方を調整するようです。デフォルトではOFFで、私はそれでも全く問題を感じませんでした。
圧縮音源の失われた帯域を補完するDSEE HXも搭載しています。SBC・AAC接続時のみ有効で、AptX・LDACなどでは自動的に無効になるようです。
その上にある「音質モード」というのは「音質優先モード」と「接続優先モード」が選べるのですが、接続優先を選ぶと強制的にSBC接続に固定されるので、AptX・LDACを使うには必ず音質優先を選ぶ必要があります。
ちなみにこのアプリとは別に、私のXperiaスマホの場合、LDACでペアリングすると似たような音質優先とかを聞かれれるのですが、こちらはLDAC接続での通信設定のようなので、別物のようです。
ヘッドホン本体の「NC/AMBIENT」ボタンをGoogle Assistantを呼び出す機能に割り当てることもできます。
それよりも嬉しいのは、本体の自動電源オフまでの時間を設定できることです。音楽を再生せずに、ただNC効果のために装着していると、パワーセーブのために勝手に電源が切れてしまうというのが問題だったのですが、それまでの時間を5分・30分・1時間・3時間の中から選べます。NC ONで寝ていたら急に電源が切れてゴーッという爆音で目覚めるというのが何度かあったので、これは嬉しいです。
NC最適化は本体「NC/AMBIENT」ボタン長押しで開始できるので、アプリで行う必要はありませんが、調整時の気圧の情報が書いてあります。ためしに機内で行ったら0.8気圧でした。最近の大型機はキャビン加圧がしっかりしているので、昔の747とかと比べると耳が不快になったりすることはありませんが、NCシステムは気圧に合わせて補正を変えているようです。
他にもバーチャルサラウンド的な機能もついているのですが、これをONにするとSBC固定になるので、あまり使いませんでした。さらにイコライザーもついています。
NC効果
肝心のアクティブNC効果ですが、私が使った範囲では、BOSE QC35よりもソニー1000XM3の方が優れていると思いました。買い替えを決断したのも、これが最大の理由です。絶対的な消音効果はそこまで大きく変わりませんし、どちらも静かな環境ではサーッというホワイトノイズが聴こえるので、ちょっと試してみただけでは、あまり違いは無いように思えます。しかし、1000XM3の方が優れていると思えた点が主に二つあります。
まず、騒音下でNCが活発に働いている際に、1000XM3では残留するノイズ成分が「無作為なホワイトノイズ」に近く、無害な音として、耳障りにならず、あまり気になりません。一方QC35や、他社のアクティブNCの場合、外来ノイズと、それを打ち消す逆位相信号との干渉が、不自然なうねりや共鳴のような、位相の乱れたコームフィルター的ノイズを生み出してしまいます。そのため、アクティブNCは気持ち悪いとか酔ってしまうという人が多いですし、長時間使用すると耳が詰まっているような閉鎖感があります。1000XM3はそれが大幅に改善されているため、NCが効いているということをあまり気にせずに、5時間・10時間とずっと使っていられます。
もう一つ1000XM3が優秀な点は、衝撃や振動で挙動が乱れない事です。これも一般的なアクティブNC特有の致命的な問題です。じっとしている時なら優秀なのに、いざ徒歩や電車・バスなどで振動が加わると、「ボスッ」と低音が圧迫するような挙動を起こすヘッドホンが多いです。とくに徒歩だと一歩ごとに靴の振動で「ボッボッ」と音がして使い物にならないヘッドホンもありました。QC35はそこまでヒドくないですが、それでもちょっとした振動で空気圧が耳を圧迫するような感覚があり、とくに音楽がぐにゃぐにゃと乱れてしまいます。1000XM3は徒歩でも全く乱れを感じず、散歩する時でも快適に使えました。
これら二つの優れた点は、1000XM2からXM3への進化としても同様に当てはまります。旧モデル1000XM2は、BOSE QC35と同じように、NC残留ノイズの「コーッ」といううねりや、振動で音が乱れるような効果が感じられました。そのため「あんまりQC35と変わらないな」と感じたので、買い替えませんでした。今回1000XM3は、XM2・QC35のどちらから見ても大きな進化だと思います。
音質とか
私自身はアクティブNCヘッドホンにそこまで高音質を期待していないのですが、ソニーはハイレゾとかをからめて音質の良さをずいぶん押し出しているので、じっくり音楽を聴いてみました。たしかに1000XM3は音質面でも、QC35はもちろんのこと、1000XM2と比べてもずいぶん良くなっていると思います。
肝心なのは、3万円台のヘッドホンとして、どうなのか、という点です。ヘッドホンマニアとしてはもっと10万円もするようなイヤホン・ヘッドホンと比較したがりますが、結局1000XM3と同じような3万円の価格帯で、密閉型、コンパクトハウジングといった条件では、たとえ有線でNC非搭載のヘッドホンでも、そこまで良いものは少ないです。
ソニーの場合、まさにその条件にピッタリのMDR-1AM2という優れたヘッドホンがあるため、それと比較すると1000XM3は分が悪いです。それでも旧モデルXM2と比べてXM3でずいぶん良くなったと思えたからこそ購入を決断しました。
まず驚いたのは、アクティブNCヘッドホンとしては珍しく、中高域の色彩が豊かで、楽器ごとの音色に厚い味わいがあります。つまり同じ音程でも、楽器ごとに倍音成分が異なるのですが、それがアクティブNCだと上手くいかずに、結局中域が薄いドンシャリサウンドになりがちです。1000XM3はそこが改善しており、女性ボーカルやアコースティックギターなどの音色が綺麗に出てくれます。MDR-1AM2ではここに更に空間の奥深さがあるのですが、1000XM3では立体感が損なわれます。
さらに、中低域がしっかりしているため、XM2で感じたような浮足立った神経質さがありません。派手に高音質っぽさを演出していたXM2から、より本当の意味で良い音に近づき、ちょっと大人になったと言えるかもしれません。
個人的に1000XM3でとくに良かったのが、Bluetooth接続がかなり安定している事です。これまではせっかくaptXやLDAC対応機器でも、音飛びが頻発して、結局SBCに戻さざるをえないヘッドホンが多かったのですが、1000XM3は徒歩でスマホをポケットに入れていても、LDACでほぼ音飛びはありませんでした。
やはりSBCやaptXと比べてLDACは良いと思います。1000XM3を強制的にSBC接続にしてみると、周波数の両端が地味になり、QC35ほどではないものの、色気の無い音色になります。高域もフィルターでマスクされているような息苦しさがあるため、楽器音の倍音が消極的で、鮮やかさに欠けています。aptXは悪くないですが、ちょっと高音寄りでホットな感じです。LDACはそれらと比べて全体的な色艶が濃く、なんとなく過剰にしているようにも感じますが、悪くないです。これは他のLDAC対応機器でも感じたので、コーデック特有のクセのようです。
1000XM3の音質は完璧というわけではなく、低音の量が多すぎるという点だけはかなり不満でした。カジュアルユーザー向けの密閉型ヘッドホンでも、昔と比べて最近のトレンドはもっと自然なスタイルが好まれると思っていたので、1000XM3の低音の多さは意外でした。しかもリアルな質感のある低音ではなく、いわゆるサブウーファー的にボンボン響く低音です。聴いていたのはEDMとかではなく、ジャズカルテットのウッドベースとかでも多めに出過ぎるので、これは不自然だと思いました。リアルに出せないなら、無理に盛らないでほしいです。
イコライザーでカットすれば良いのでは、とも考えたのですが、ここでちょっと困ったのが、低音の量はNCの効き具合と関係しているようです。つまり自宅の静かな環境とかでは、そこまで低音が暴れず、そこそこバランスの良い音で楽しめるのですが、外に出て、大通りの雑踏の中とかでアクティブNCの働きが強くなるにつれて、音楽の低音がどんどん不自然にボンボンと鳴るようになってきます。
これはNCアルゴリズム的になにか問題があるのか、それとも意図的にそういったチューニングにしているのかは不明ですが、この低音だけはかなり気になりました。映画とかを見る分には良いと思います。
おわりに
ソニーはこれまで独自のアクティブNCヘッドホン技術を着々と進化させてきましたが、今回WH-1000XM3で初めてBOSEを全面的に乗り越えることができたと思いました。長年BOSEを使ってきた私の率直な感想です。BOSE QC35が登場したのが2016年ですから、また近々なにか凄い技術革新を投入した新作が出るかもしれません。しかし少なくとも今の所はWH-1000XM3の方が一歩進んでいます。近頃のBOSEは安眠音波が出る就眠イヤホンとか、音が出るサングラスとか、なかなか個性的なジャンルに開発を専念しているようなので、QC35はひとまず安泰と思っていたところにソニーがグイグイ追い上げてきたのでしょう。
QC35は今でも十分実用的ですし、消音効果も抜群です。私自身も2年間ずっと愛用してきたくらい優れたNCヘッドホンです。しかし、業務用のアクティブNCヘッドホンを試聴した事がある人ならわかると思いますが(BOSEショウルームとかでパイロット用のものがテストできます)、これ以上絶対的な消音効果を突き進めても、結果的に耳を圧迫するシビアなものになってしまうようです。
1000XM3は、そのようなガチガチのNC効果でQC35を圧倒するのではなく、もっと別の方向で、つまり普段使いの様々なシチュエーションでも破綻しないような快適なNC効果を狙ったことが、我々カジュアルユーザーにとっては大きな進歩だと感じられるのだと思います。
音質面ではNC ONの状態で低音の強さには改善の余地があると思ったのと、タッチ操作が気に入らないという点以外では、3万円でほぼ理想に近いです。
1000XM3が登場したことで、旧モデル1000XM2 が安売りの処分価格で手に入るようになりましたが、今回はかなり大きな進化が感じられたので、価格差を踏まえた上でも、XM3を選ぶべきだと思いました。初代1000XやXM2のユーザーでも、XM3に買い換える価値は十分あります。
ところで、あとは、もっと携帯性の良いイヤホンも、なにか新型を期待したいです。最近は左右個別のワイヤレスイヤホンが流行っていますし、中でもソニーWF-1000Xは優秀だと思いますが、バッテリー持続時間が致命的に悪いので、個人的にまだ買う気になれません。
ソニーは2015年のMDR-EX750NAが良かったのに、上級モデルのフォローアップも無しに廃番になってしまいましたし、BOSEもQC20でストップしています。このあたりももうちょっと頑張ってくれると嬉しいのですが、これだけ世間でワイヤレスイヤホンがブームになっていると、有線NCイヤホンを作っても見向きもされないのでしょう。
「アクティブNC」と「ワイヤレス」という二つのキーワードで昨今のヘッドホン業界はめまぐるしく進化しており、2019年にはまた新たなスタイルが続々登場するのは必須だと思いますが、とりあえず2018年末の時点では、1000XM3を選んで間違いないと思います。