http://sandalaudio.blogspot.com/2015/05/ifi-audio-idsd-micro.html
2015年7月24日にiFi Audio公式サイト(http://ifi-audio.com/)にて最新ファームウェア v4.10が公開されたので、これを導入してみました。
ほぼ1年ぶりの更新です |
前回の公式ファームウェア v4.06は2014年9月だったので、一年近く更新が無かったことになります。それだけv4.06が安定していたということでしょう。
個人的にはこれまでmicro iDSDのUSB DAC機能に多少の不具合を感じており、特にMacに接続するとフリーズしたり、サンプルレートが変更できないなどのバグが多発するなど、(最終的に完全に認識しなくなってしまったため)、メーカーにて交換修理した経験があります。
その後も何度かこのようなUSB関連のバグを経験しており、そのせいもあり最近はライバル商品のOppo HA-2を多用していました。
公式サイト(http://ifi-audio.com/micro-idsd-ifi-xmos-firmware/)の情報によると、v4.10での変更点は:
・DSDのDoP再生で、曲飛ばしのポップノイズ低減
・XMOS回路「Star-Clocking」技術の最適化
・XMOS回路(8コア)の負荷分散
・ミュート回路の最適化
・Mac OSでの互換性向上
・nano iDSD、micro iDAC2、micro iDSD、RETRO Stereo 50の共通ファームウェア化
・マイナーバグ修正
といった具体的で盛りだくさんの内容になっています。とくに、Mac OSでの互換性向上という部分に期待しています。
実はこのVer. 4.10ファームウェアは数ヶ月前からベータ版として一部登録ユーザー向けにHead-Fi掲示板などでテスト配布されていたのですが、正式版公開が延期を重ねていたため、なにか動作テストにて不具合でもあったのかと思い、今回の正式リリースまで待っていました。
iFi ファームウェアのインストール
インストール方法は至って簡単なのですが、Windows用プログラムのみ配布されているためMacでは不可能です。Windows用のiFi USBドライバをインストールしてあれば、
\Program Files\iFi\USB_HD_Audio_Driver\
フォルダ内に iFiHDUSBAudio_dfuapp.exe というプログラムが入っています。これを起動すると、現在USBに接続されているiFi Audio製品と、そのファームウェア・バージョンが表示されます。(micro iDSDであれば、多分v4.04 か v4.06と書いてあると思います)。
ファームウェア更新プログラムはドライバフォルダに同梱 |
Firmwareの「Browse...」ボタンを押して、公式サイトからダウンロードした最新ファームウェアファイル(iFi_XMOS_v4.10.bin)を選択してStartを押せば、数秒でアップデートが完了します。
アップデート後にはmicro iDSDをパソコンから外して、micro iDSDの電源スイッチを再起動することで、最新ファームウェアが適応されます。
英語ですがiFi Audioの公式サイトにスクリーンショットを含めた詳細な手順が記載されています。(http://ifi-audio.com/3-steps-micro-idsd-firmware-upgrade/)
最新ファームウェアでの動作
v4.10にアップデートしてから数日間テストを繰り返しましたが、今のところMac上でも今までのようなトラブルは発生していません。サンプルレート切り替えもAudirvana・JRiverともに問題なく実行できます。音質に関しては、個人的にはそこまでの変化は感じられませんが、Head-Fi掲示板などでは多少音質が向上したとの報告もあります。
今回のファームウェアで実際に音質に影響がありそうなのは、XMOS関係の最適化です。
XMOSというのは開発者が独自のプログラムを書き込めるマイクロチップのことで、用途によってはいわゆる「マイコン」や「DSP」などと言われているものです。
XMOSマイクロチップ |
iFi Audioを含めた多くのUSB DACメーカーでは、このXMOSチップをUSBやS/PDIF入力からDACまでの橋渡しのためのインターフェースとして活用しています。パソコンから送られてきたUSBデータはそのままではDACチップには入力できないため、一度変換する必要があります。
たとえばPCM音源の再生であればI2S信号、DSDではDSD信号をDACチップに送らなければなりません。このような適切なフォーマットに変換するのがインターフェースの役目ですが、高性能なXMOSチップを採用することにより、開発者の技能次第でたとえばPCMをアップサンプリングする、DSDに変換する、クロックのジッター低減を行う、などといった高度な処理をXMOS内で行って、DACチップにこれら処理済みの信号を送ることができます。
最近ではXMOS社自身がUSBオーディオ用プログラムがすでに書き込まれたxCORE-AUDIOというチップを販売していますが、(XMOSのサイトではxCORE-AUDIOチップの広告にソニー PHA-2の写真を使っています:http://www.xmos.com/products/silicon/xcore-audio)、iFi Audioはこれに頼らず白紙状態のxCOREチップから開発することでさらなる音質向上を目指していることが、オーディオメーカーとしての技術力と独自性を表しています。
負荷が特定のコアに集中していると、その分増加した発熱や電流スパイクなどがオーディオ回路の電源部に影響してきます。とくにバッテリ駆動DACの場合は電源管理が音質に一番肝心な要素といっても過言ではないため、地味ですが技術力が要求されます。これができないオーディオメーカーは、たとえば高級DACチップやオペアンプを採用したなどで内容の薄さをごまかしていることが多いです。ようするに、料理人の腕を重視するか、高級食材を重視するかですね。幸いiFi Audioはどちらにおいても優れているようです。
もうひとつ、新ファームウェアでXMOS回路「Star-Clocking」技術の最適化が挙げられています。これもiFi Audioのセールスポイントとして取り上げられていますが、ようするにXMOS内での回路をマスタークロック分配方式にしているということです。
通常デジタル・オーディオ信号を処理する際には、前の手順から次の手順まで音声信号と一緒にクロック信号も手渡す、いわゆる数珠つなぎ・バケツリレー方式が一般的ですが、iFi Audioはマスタークロックから分配する手法を採用することにより、手順ごとに増加するクロックジッターの影響を抑えています。今回この回路が最適化されたということで、さらなる低ジッター化が望めるようです。面白いのは、iFi Audioの公式サイトでこの「Star-Clocking」についての解説でJVCのK2テクノロジーと似たような概念だと例にあげています。
実際この手のプログラム最適化が音質にどれだけ影響があるのかというと、きっと微々たるものなのでしょうけれど、肝心なのはiFi Audioの開発スタッフがデジタル・オーディオについて熟知しており妥協無き向上心があるという気持ちがユーザーに伝わることです。
外観ばかり豪華で中身は凡庸なブランド製品が増えてきたUSB DAC・ヘッドホンアンプ市場ですが、iFi Audioのように地道な努力を重ねているメーカーは少なからずユーザーの心を掴むことができるので、今後もブレーキを踏まずにそのまま突き進んで欲しいです。
micro iDSD用のUSBケーブル
人気商品であるmicro iDSDを所有しているユーザーの多くがUSBケーブルについて悩んでいるのではないでしょうか。micro iDSD付属のケーブルは太くて長いです |
このモデルでは一般的なA→B端子USBケーブルではなく、iPhoneやAndroidスマホとの連携を重視して、A→Aの延長ケーブルが採用されています。(こうすればAppleカメラコネクションキットやAndroid OTGケーブルが直付けできるため)。
しかし、USBオーディオ用の高品質ケーブルは主にA→Bタイプなので、オヤイデやFURUTECH、もしくは海外ブランドのAudioquestやWireworldなどを使いたくても無理です。変換アダプタを利用すれば可能ですが、その場合せっかく高品質ケーブルを使っているのに気持ちが悪いです。
ある程度の品質が保証されているUSB延長ケーブルというのを探しても、実はあまり見つかりません。(前回のレビューではBelkinが非常に良かったです)。
BelkinのUSB延長ケーブルはオススメです |
micro iDSDのようなポータブルDAC・ヘッドホンアンプでは、USBケーブルが音楽データと電源の両方を担っているため、ケーブルのクオリティは想像以上に重要です。とくに電源はパソコンから供給される不安定なUSBバスパワー5V電源はもとより、ノイズまみれのグランド線にすべてがかかっており、XMOSやDAC、そしてアナログのヘッドホンアンプ回路などに影響を及ぼします。
USBバスパワーの利便性は大きいので文句ばかり言ってられないのですが、せっかくの高性能DACですので、ケーブルにも少なからず気をつけたい気持ちになります。一部のマニアはmicro iDSD本体以上にお金をかけた高級USBケーブルやフィルタ、別電源回路などを活用しています。
実際、数年前のUSB DACは高級機でも電源周りがかなり稚拙なものが多かったため、仰々しい高級USBフィルタなどでのノイズ対策が必要不可欠でした。当時はアシンクロナス通信でもなかったですから、不安定な電源が音声クロックに直接影響してました。その辺りについては当時のStereophile誌などに詳細なデータがあります。micro iDSDを含めた最近のUSB DACではこれらの対策は十分に考慮してあるため昔ほど問題にはならないのですが、その頃を覚えているユーザーは当時の感覚でUSBケーブルにこだわりたくなるものです。
前置きが長くなりましたが、色々とmicro iDSD用USBケーブルを物色しており、いくつか良さそうなものが見つかりました。micro iDSDは同梱ケーブルはUSB 3.0なのですが、本体の端子はUSB2.0なので、あえてUSB3.0ケーブルを選ぶ必要はありません。
オーディオテクニカ AT7797 |
まずオーディオテクニカがAT7797というケーブルを販売しています。これはカーオーディオ用途で、いわゆるカーステレオにUSBメモリを接続するためのものだそうです。
ケーブル素材は金メッキOFC導体で、被覆は一般的なPVCですが、導体間にハネナイトとハイブラーという衝撃吸収ゴムを封入することで、振動によるケーブル間の干渉を防止しています。このあたりはカーオーディオ所以の着目点だと思います。価格は1mで25,000円とかなり高額です。
スープラ 1001908217 USB 2.0 A/F-A/M |
次に、高級ケーブルで有名なスゥエーデンのスープラ(SUPRA)が1001908217というUSB延長ケーブルを販売しています。導体は銀コートOFC材で、独自のツイストペア構造、アルミ箔、編みこみ銅など、外部ノイズからのシールドにかなり力を入れていながら1mで1万円程度とお買い得です。
ステレオサウンド誌別冊 |
スープラのUSBケーブルは2013年のステレオサウンド誌別冊「高音質USBケーブル×4 SPECIAL」で試供品の一つとしてフィーチャーされていたため、記憶にあたらしい方もいるかもしれません。残念ながらUSB延長ケーブルは代理店が通常在庫として扱っていないらしいので、一般的なA→Bケーブルよりも手に入りにくいですが、ぜひ試してみたい商品です。
Audioquest DragonFlyとDragonTail |
DragonTailはAudioquestのUSB DAC「DragonFly」に接続するためのアクセサリとして販売しており、ようするにUSBスティックタイプのDragonFlyをPCから離すためのTail(しっぽ)なのでDragonTailということです。最近発売されたNightHawkも然り、ネーミングセンスが中二臭いですね。
ノートパソコンの傍らには最適です |
長さが10cm程度なので用途は制限されますが、たとえばノートパソコンの傍らにmicro iDSDを配置するようなシーンでは、通常の1mケーブルでは手に余るので、これくらい短い方がシンプルです。ケーブル自体はAudioquest Carbonシリーズをベースに作られているらしく、導体が銀5%の銅合金、USB端子は銀メッキといった上質な素材です。
このDragontailが素晴らしいのは、米Amazonでの販売価格が$17(約2,000円)という超低価格なところです。残念ながら何故か日本のAmazonでは常に在庫希少なのですが、オーディオショップなどで見かけるので、この価格なら冷やかし程度に購入してみるのも面白いかもしれません。
安いくせにしっかりしたパッケージ |
Audioquest Carbonと同等の銀メッキ端子 |
カバー付き延長端子はmicro iDSDにぴったりです |
まとめ
iFi Audio micro iDSD用に使えそうなUSBケーブルをいくつか挙げてみましたが、ほかに良さそうなものがありましたら、ぜひ教えて下さい。これらのケーブルによる音質の変化については、あまり強く語れるほどの差があると思えませんが、ケーブル選定において一番肝心なのは「良いケーブルは無いけれど、悪いケーブルはある」という格言です。つまり良いケーブルであればあるほど、音質への貢献が少なくなり、逆に悪いケーブルほど音色などに影響が出てきます。
試しに100均のUSBケーブルと上記の高級ケーブルを比較すると、音の定位感やフォーカスがかなり違います。悪いUSBケーブルであるほど音がにじみ、ぼやけた感じになる傾向だと思います。逆に、上記に挙げたような上質なケーブルであれば比較してもあまり違いは出ないように思えますので、単純に太さや取り回しやすさなどで選んでも良いかもしれません。