2015年2月23日月曜日

AKG K7XX Limited Edition レビュー

AKGのヘッドホン、K7XXが届きましたので早速試聴してみます。



ヘッドホンマニアの方ならご存知かと思いますが、アメリカのMassdropというサイトでの限定モデルです。




Massdropというのはいわゆるコミュニティ購入サイトというやつで、特定の商品を購入したい人が規定数以上集まるにつれて売値がどんどん下がっていく、というシステムです。基本的にメンバーの投票でどの商品を扱うかが決まるので、ヘッドホンやヘッドホンアンプ、メカニカルキーボードや万年筆など、いわゆる「ネット好きな男性の趣味」的な商品を多く扱っています。

数量と値段の設定は、Massdropの運営チームがメーカーや代理店と取引して決定するので、その流れで、このK7XXのような面白い商品も出てくるのがコミュニティの醍醐味です。AKGのような大手の商品だけではなく、胡散臭い中華メーカーのポタアンなんかも出てくるので、楽しいです。

ちなみに通常Massdropが扱う商品は、海外発送してくれるものが多いのですが、今回はAKGの代理店の関係でアメリカ国内のみの販売だったため、海外転送サービスを使ってみました。


このK7XXですが、Massdropオリジナル品とはいっても、そんなにたいそうなものではなく、カラーリングが真っ黒なK702といった感じです。細かな点で違いはあるので、その辺は写真で紹介します。

最大のポイントはその価格で、なんとUS$199です。購入時の為替では日本円で約23,000円なので、日本で現在K702が最安値32,000円、K712 Proが45,000円などと比較すると非常にお買い得な商品です。Massdropは「大量購入で単価を下げる」ためのウェブサイトなので、K7XXが特注品といっても高級志向に走るのではなく、単純に「K700系のヘッドホンを極限までコストを下げると、こうなりました」というコンセプトだと思います。





箱のデザインはかなり簡素で安っぽいです。同梱品はストレートケーブル1本と説明書のみです。さすがK712と倍くらい値段差がありますから、しょうがないですね。




まずご覧になってわかるように、ヘッドバンドが現行バージョンのいわゆる「コブ無し」タイプなのが非常にありがたいです。K702 65th Anniversaryから採用されたタイプのヘッドバンドですが、従来のコブ有りタイプと比べて非常に柔らかく快適です。本革マークが刻印されてます。

ヘッドバンドはコブ無しタイプ


もう一つ重要なポイントは、このK7XXは中国製だということです。K702も発売当初はオーストリア製だったものが後期版からは中国製造に変わりました。つまり現行のK702とほぼ同じクオリティだと思います。一応気遣いというか、Made in Chinaのシールは剥がせるようになっています。本来Made in Austriaなどと書いてあるエリアには、Limited Editionと書いてあります。







外観は完全にオールマットブラックです。上記写真のようにハウジングの外周部分がラメっぽく光っていたので、HD650っぽいと思っていたのですが、実は保護シールでした。シールを剥がすとマットブラックになります。

デザインはテキストの銀色と艶消し黒のコントラストが無機質な雰囲気です。なんとなくバットモービルのようなイメージがカッコイイと思います。他のK700シリーズが緑やオレンジなど結構奇抜な色合いなので、こういう落ち着いた色使いは逆に新鮮かもしれません。ちなみに「K7XX」のロゴはK712のような立体的なものではなく、ただの印刷です。

それと、ヘッドバンド内側にMassdropのロゴが入ってます。反対側はシリアルナンバーです。私のは2期目の販売ロットなので3,000番台です。




ラメ入りハウジングかと思ったら保護シールでした。

Massdropのロゴが入ってます。

漆黒のステルス戦闘機とかバットモービルみたいな感じ。

イヤパッドは低反発のドーナツ型で、3次元構造ではなく、厚みは均一です。ドライバユニット(カプセル)も見た感じではK712 Proのものとほぼ変わらないです。オーストリア製と中国製という違いがありますが、実際そのヘッドホンに使われるすべてのパーツを表記通りの国で製造しているわけではないので(たしか最終組立と、部品の50%以上を作っている国、とかそんなルールだったはずです)、たとえばドライバはすべて一国の工場で作られているという可能性もあります。実際はどうなんでしょう。少なくとも高価なモデルではペアの特性マッチングをしっかりやっているはずなので、ハズレを引く確率は低いのではないでしょうか。

イヤパッドの両面

スポンジリングとドライバ


K712 Proと比較してみたところ、形状はほぼ同じです。AKGロゴの配置などは若干違っていますが、全体的な仕上がりや部品構成などはこれといって違いがありません。K712 Proは梨地のようなプラスチックを使っている箇所があります。

ドライバやイヤパッドもそっくりです。イヤパッドの中にある薄いスポンジのリングは色が違います。K712 Proのほうが若干密度の高いスポンジを使っているようです。このスポンジは結構音に影響を与えるということで、気にしているユーザーも多いと思いますが、極端な違いは無いようです。








肝心の音質ですが、48時間ほどエージングしてみましたが、K712と同様、極端にエージングでの変化というものは感じられませんでした。K712と比較試聴してみましたが、音質はほぼ一緒だと思います。ブラインドテストだと違いがわからないかもしれません。

細かい点を上げると、K7XXのほうが低域に量感があり、パンチが効いています。そのせいか、全体的な音質も若干低域寄りに落ち着いており、耳疲れしないので、音楽を楽しむという点では、K712よりも優れているかもしれません。

それと、K712だと楽器と同じくらい環境音や付帯する空気感が聴き取りやすいので、若干風呂場でエコーがかかっているかのように感じられることもあるのですが、K7XXだと楽器以外の無駄(?)な音があまり目立たないです。極端に言えばK712が録音環境を聴くヘッドホンで、K7XXは音楽部分だけを聴くヘッドホンのようです。

とは言ったものの、音質の差は微々たるものなので、エージングや個体差かもしれない程度のものです。他のメーカーのヘッドホンなどと比べるほうが100倍違いがあると思うので、すでにK702やK712を所有しているなら、あえてこの廉価版であるK7XXを買う必要な無いかもしれません。実はK702やQ702は所有してないのですが、もしかするとK7XXと全く同じ音がするかもしれません。

K7XXは中国製造なので箱や梱包材のクオリティは低いですし、本体にキズも多く、全体的な質感も安っぽいので、限定モデルにありがちな所有感を満たすというような商品ではないですが、値段は安いので満足しています。限定と言っても音質は現行モデルとあまり変わらないですし、すでに4,000個以上作っているので入手は難しく無いと思います。ふたたびMassdropで再販される可能性もありますし、eBayやHead-Fiなどで見つけても、そんなにプレミアがつく商品ではないと思いますが、こういうマイナー企画に乗ってくれたAKGがの心意気に感謝します。