2018年7月4日水曜日

Beyerdynamic Aventho Wired のレビュー

ベイヤーダイナミックからポータブルヘッドホン「Aventho Wired」を買ったので、感想とかを書いておきます。

Aventho Wired

テスラテクノロジーを搭載したコンパクトモデルということで、T51pの後継機のような存在です。

BluetoothワイヤレスバージョンのAventho Wirelessは日本でも発売しているのですが、それの有線版であるWiredは、まだ米国と欧州でしか売っていないようです。Wirelessの方も検討したので一応それについても触れますが、私はWiredの方を買いました。


Aventho

ベイヤーダイナミックと言えば、DT880やT1、T5pなど、ドイツのメーカーらしい実直な「アルファベット+数字」のネーミングで長年通してきましたが、近頃はXelentoから始まり、AmironやImpactoそして今回のAventhoなど、モデルごとに奇抜な名前をつけるようになりました。

Aventho Wired

数字型番&愛称とかなら覚えやすいですが、現状だとAmironとAventhoとか、どっちなのか混乱しやすいです。ちなみにどれも既存の商標登録に引っかからないカッコいい造語のようで、大した意味は無いみたいです。Momentumみたいに意気込んで命名したのに海外では登録済みで使えなかった(米国ではHD1)なんて事にならないようネーミングには苦労しているのでしょう。

なんにせよ、ベイヤーダイナミックといえばもうじき創立100周年を迎えるプロオーディオ機器の老舗で、このAventhoを含めて、未だにドイツ本社工場でヘッドホンを製造している真面目なメーカーです。

ドイツのヘッドホンメーカーというと、他にもゼンハイザーとUltrasoneがありますが、ゼンハイザーはどちらかというと手広くやっているグローバルな大企業で、Ultrasoneはマニアックな偏屈の巣窟みたいなイメージがあるので、それに対してベイヤーダイナミックはいまひとつ垢抜けないけど真面目な中小企業みたいな印象で、個人的に贔屓にしています。ちなみにライバルとしては隣国オーストリアにAKGがありましたが、最近サムスンに買収されて話題になりました。欧州のスタジオモニターヘッドホンというと、フランスのFocalも力をつけてきたので侮れませんが、まだまだヘッドホンでは実績が浅いです。

そんな感じで、ベイヤーダイナミックといえば保守的なイメージがありますが、実は近年のヘッドホンブームに上手に乗っている、意外とやり手でもあります。ブームのかなり初期からAK T5pなどAstell&Kernとのコラボモデルに乗り出したのも異例でしたし、その流れから、大型スタジオヘッドホン専門のイメージから一転してAK T8iEやXelentoといった優れたIEMイヤホンを作り上げるに至ったのは、会社の行動力と技術力の高さを象徴しています。

ベイヤーダイナミックのヘッドホンというと、30年以上続く伝統的なロングセラーDT770・880・990などのラインナップとは別に、2009年に登場したT1から始まる新世代テスラテクノロジーシリーズが好評を得ています。

ドライバーに磁束密度が1テスラという強力なマグネットを搭載することで、強靭な駆動を実現したことからテスラテクノロジーと呼ばれており、このドライバー技術を応用したモデルを次々とリリースし、大型ヘッドホンの初代T1からT5pやAmiron Home、IEMイヤホンのXelentoまで、ベイヤーダイナミックといえばテスラテクノロジーが代名詞になりました。実際に磁石が1テスラかどうかという事ではなく、ドライバー全体の設計概念なので、一貫したドライバー技術がここまでブランドイメージとして浸透した例というのは稀だと思います。

T50p(T51p)と、DT1350

そんなテスラテクノロジー型ドライバーをポータブル・コンパクトヘッドホンに搭載するというアイデアは、初代T1の翌年2010年からすでに登場しており、リスニング向けのT50pと、プロフェッショナル用のDT1350 PROという二種類のモデルが発売されました。

これらは明らかに名機ゼンハイザーHD25を意識したモデルのようです。とくにプロの映像制作では、スタジオのデスクで使う大型ヘッドホンと、撮影現場でアクティブに使うコンパクトヘッドホンの両方が必要です。(日本のTVロケとかでもHD25を使っているシーンをよく見ます)。

趣味のオーディオマニアにとっても、ポータブルでテスラドライバーのサウンドが味わえるということで注目を集めました。そもそもT1は10万円を超える価格で、鳴り物入りでデビューした高級ヘッドホンでしたから、そのドライバー技術を応用したヘッドホンが3万円台で買えるというのは魅力的でした。

私自身も、当時T1を気に入って愛用していたので、DT1350にも手を出して、ベイヤーダイナミック色に染まっていきました。ちなみに当時のT50pとDT1350は、ヘッドバンドやケーブルなど外観上の違いのみでなく、サウンドチューニングが異なっており、私はT1のサウンドに近いと思えたDT1350を買いました。その後2014年には、T50pのチューニングが修正されたT51pが登場し、私はこれもかなり気に入って購入しました。

それらの違いを簡単に表現すると、T50pはモコモコ、DT1350はシャカシャカ、T51pはドンシャリといった感じで、それぞれかなり個性的でした。必要最低限の小さなハウジングにドライバーを無理やり詰め込んだだけのようなデザインなので、音質は個性的です。ただし、軽量・コンパクトなことを考慮すれば十分すぎるほど音が良かったので、旅先に気軽に持っていくポータブルヘッドホンとしてはまさに理想的で、とくにT51pは出張旅行などで重宝しました。

そんなわけで、長らくT51pを愛用してきたこともあり、もうちょっと値段が高くてもいいから、T51pの高級版、進化版があればいいのに、と常々思っていたところに登場したのが今回のAventhoでした。とは言っても、ヨーロッパ公式価格でWiredが€329、Wirelessが€429と、T51pと比べて値段が予想以上に高かったので、とりあえず試聴してみることにしました。

Wireless

私はWiredを買うことになりましたが、Aventhoはワイヤレス版が主力商品のようなので、そっちも試してみました。こちらは日本でも販売しており、2017年12月の発売価格が67,000円くらいで、現在は5万円台で流通しています。

個人的に、オーディオマニアだからといって別にワイヤレスを目の敵にしているわけではなく、とくに今回はポータブルという事で、もし買うならどっちを選ぶべきか、実機を使ってみるまで決めかねていました。

ワイヤレスには興味はあるのですが、各社モデルを色々試してみても、音飛びやペアリング不具合、タッチセンサーが使いづらいなど、実用面でことごとく不満があり、半ば諦めている状態です。

AK70 MKIIとaptX HDでペアリングしました

Aventho Wirelessの基本情報としては、モダンなBluetoothワイヤレスヘッドホンで、aptX・aptX HD・AACに対応しており、本体重量は238g、バッテリーは最大30時間、そして1.2mの片出しケーブルで有線使用にも対応しています。

有線モードのケーブルは片側出しです

タッチセンサー

USB Cです

ハウジング側面のタッチセンサーで操作、充電はUSB C端子、といった感じに、最近のトレンドは全部押さえてありますが、アクティブノイズキャンセリングは非搭載です。

ちなみに同時期に、大型ヘッドホンのAmiron Wirelessというのも登場しました。こちらはいわゆるフルサイズのベイヤーヘッドホンなので、ワイヤレスといえど外出時というよりは、自宅のリビングでパソコンやAVアンプなどとペアリングして、ソファーでカジュアルに音楽や映像を楽しむ用途に適していると思います。

実際このAmiron Wirelessヘッドホンも試してみましたが、密閉型といえど遮音性はあまり無く、むしろ環境騒音がハウジング内で結構響きます(茶碗で耳を覆っているかのようです)。遮音性というよりも音漏れ防止として、家族に迷惑をかけずにリスニングできると割り切るべきでしょう。

自分専用のSound Profileを作るアプリです

まず年齢を聞かれます

Aventho Wireless・Amiron Wirelessのセールスポイントに、MIYというスマホアプリを使って聴覚テストを行い、その結果に応じてヘッドホンをフラットに補正してくれるという機能があります。

これはちょっと興味があったので、とりあえずどんな物か試してみたくなりました。

ドイツでの発売当初に試聴機を借りた時点では、この補正アプリはiPhoneのみで、Android版は未完成でした。その後Android版がリリースしても、私のXperiaスマホでは誤動作して使えず(テスト信号が聴こえませんでした)、最近のアップデートでようやく修正されて使えるようになりました。

アプリの聴覚テストは結構時間がかかり(5分くらい)、微小信号を聴き分けるという仕様上、完璧に静かな環境でないといけません。徐々にフェードインアウトするピヨピヨピヨみたいなテスト信号が聴こえたら画面のボタンを押して、聴こえなくなったらボタンから手を離す、というのを何度か繰り返すだけの、シンプルな方法です。

実際にやってみた感想として、コンセプトは理解できますが、実用上はまだ未熟さが残る印象でした。(今後改善されるかもしれません)。

まず、信号音が聴こえるか判断するのが結構アバウトというか、環境騒音やスマホのボリューム設定に大きく依存するため、あまり正確とは言えません。IEMイヤホンとかと比べると、Aventho、Amironともに遮音性はあまり良くないので、エアコンの音とかでも障害になってしまいます。

また、テスト後の補正プロファイルは毎回上書きされることや、実際にどのような補正をするのか特性グラフ的なものを見せてくれないこと、そして、左右を別にやるのでバランスの狂いが心配になる事など、オーディオマニア的には不満要素が多いです。

理想的には、テスト終了後に評価グラフを見せてくれて、それを他人と比べたり、クラウドにアップロードしたり、イコライザーで自分好みに修正できたりとか、もっと自己診断クリニック的な面白さがあれば楽しめたと思うのですが、現状では裏で何が行われているのか不安なまま、テスト終了後はヘッドホンの音が変わるだけというのみです。

さらに根本的な話ですが、これまでブログで何度か指摘してきたように、ヘッドホンにおけるフラットな特性という定義自体が存在せず、各メーカーごとに解釈が異なるので、一体何を基準に補正しているのか不明です。

私の耳が完璧かどうかという話ではなく、他の高音質ヘッドホンと聴き比べてみると、補正適応後のAventho Wirelessは、ズンズン響く中低音が増強された、今風のカジュアルチューニングでした。それがフラットかどうか以前に、自分なら補正OFFの方が音が好みです。そのへんをアプリ上で任意に調整できないため、補正の定義に疑問を感じました。

また、感覚的な話ですが、Aventhoほどの超小型ハウジングに、ワイヤレス回路やバッテリーをゴチャゴチャ詰め込んだヘッドホンで、アプリのDSP補正で完璧なフラットサウンドが得られるのだとしたら、あえてベイヤーダイナミックを買う必要は無いのでは、とも思えてしまいます。

少なくとも私の場合は、ベイヤーダイナミックの音のファンだから商品に興味があるわけで、アプリ補正された音をフラットと言われて買いたいわけではありません。

たとえば、遊び半分でも良いので、測定結果をもとにDFなど音場補正カーブを切り替えたり、歴代ベイヤーのDT880、DT48、DT100、T51p、T1、なんてアプリで選んでエミュレーションできたら、ネタとしても面白いと思いますし、話題も盛り上がります。

つまりDSP補正というアイデア自体にポテンシャルは色々あると思うのですが、現状として真面目に検討する価値があるかというと、ヘッドホンマニアにとっては、そこまで魅力が感じられず、購入には至りませんでした。

Aventho Wirelessはドイツでは449ユーロ、日本では約67,000円です。音質補正アプリが珍しいといっても、アクティブノイズキャンセリング非搭載のBluetoothヘッドホンとしては値段がかなり高いと思います。とくに最近はソニーWH-1000XM2やB&W PXなど、そこそこ高音質なアクティブノイズキャンセリング機も増えていますし、T51pの存在もあるので、Aventhoは高級モデルという印象を打ち出しにくいと思います。

そういった理由もあり、私自身はAventho Wirelessはちょっと使いどころが難しく、購入しませんでした。

Aventho Wired

そんなわけで、結局Aventho Wiredを買ったのですが、アプリのあれこれよりも決定的だったのは音質差です。Wiredなら内蔵アンプに頼らず高出力DAPでしっかり鳴らせますし、Wirelessを有線で使った場合と比べても音質が優れていると思いました。そのあたりは後述します。

Aventho Wiredのブラウン

ブラウンとブラックが選べますが、先程のWirelessデモ機はブラックで、私が買ったのはWiredのブラウンです。ベイヤーといえば硬派なブラックのほうが似合っているとも思いますが、せめてもの遊び心としてカラーバリエーションを投入してきたベイヤーに敬意を払って、あえてブラウンを買いました。

色違いなのはイヤーパッドとヘッドバンドのみで、イヤーパッドは別売でブラックと入れ替えできますが、ヘッドバンドは固定です。

T51pと比較

シンプル軽量で信頼性の高いデザインです

T51pと共通するパーツが多いですが、ハウジングやハンガー部品などのデザインは更新されています。

ステンレス板を曲げただけの軽量コンパクトな構造に、リベット留めの回転ヒンジなど、一見貧弱そうに見えますが、数あるヘッドホンの中でもかなり耐久性が高い事はT51pを長年使って経験しているので、安心して購入できました。

ハウジングはT51pなどのドーム状から大きく変わり、円筒・円錐っぽくなって、内面積が増えたようです。ロゴ周辺の銀のリングは、装着時に手で触れる部分ということで、ギザギザのローレット加工されたアルミで作られており、こういった凝ったエンジニアリングを意識させるデザイン要素は嬉しいです。

ヘッドバンド調整

Made in Germany

ヘッドバンド調整部分もT51pと同じで、上下にカチカチとスライドする仕組みです。私の頭だと、上から4番目の目盛りでちょうど良いくらいでした。ちなみに、ハンガー裏側の隠れた部分に、ひっそりとMade in Germanyと書いてありました。

T51p(左)とAventho(右)

イヤーパッドはT51pよりも若干厚くなっていますが、オンイヤー型なのでクッションは薄く、耳にピッタリ張り付くような装着感です。装着時には潰れたどら焼きのように見えます。

イヤーパッドを外した状態

イヤーパッドは引っ張ると簡単に外すことができ、手で押し込むだけでプラスチックのツメがパチンとはまるので着脱が楽です。ドライバーには和紙のような薄い紙が貼ってあり、その周辺に白いポートが二つあります。

Aventho Wiredは公式スペックでは210gということで、174gのT51pと比べるとかなり重くなっています。ハウジングが大型化されたので、音響設計のために重量が増えたと考えられます。たとえばゼンハイザーHD25は166g、HD25 Aluminiumは222gなので、両者の関係性に近いかもしれません。

装着感はT51pとほぼ同じ感触で、スムーズに移行できました。オンイヤー型なので、正しい装着位置に慣れるまで、最初は4-5時間くらいで耳が痛くなってきました。通勤通学とかの1-2時間くらいなら問題無いと思いますが、それ以上長時間使うなら、T5pなどアラウンドイヤー型を使う方が良いと思います。

HD25の場合は、YAXIの厚い低反発パッドに交換すれば痛くなりにくいですが、逆にあそこまで厚いパッドだと音質がかなり変わってしまいます(ドライバーと耳のあいだに空間が生まれるので)。Aventhoも同様に、ベイヤーが意図したサウンドを味わうためにはイヤーパッドは薄い方が良いのが難しいところです。

ケース

Aventhoにはグレーの綿素材バッグが付属しています。以前T51pなどに付属していたガッチリしたナイロンセミハードケースと比べる簡素ですが、どっちが実用的かは好みが分かれるところです。

付属バッグ

ケーブル収納ポケット

一見ただの巾着袋ですが、素材は厚手でしっかりしており、内部にはケーブルを入れるポケットもあります。さらにバッグの底に硬い板が埋め込んであるので、バッグがフラットに潰れず、ヘッドホンを圧縮から保護してくれるのは気が利いています。

ベイヤーロゴのレザーパッチや、ドローコードのロックボタンなど、細部のデザインにもこだわっており、意外と真面目に設計されているのがベイヤーらしいです。

DT1350・T51pのケース

Aventhoも入ります

個人的には、以前のT51pに付属していたケースは「使いやすさ、軽量コンパクト、堅牢さ」と満点に近く、とくに出張でトランクに放り込むなど、余計な心配がいらず信頼できる事が気にっていました。Aventhoも入るので、状況に応じて使い分けようと思います。

私だけかもしれませんが、外出時にどのポータブルヘッドホンを持っていくか決める時は、ケーブル断線の心配が無く、軽量堅牢なケースがあることが最重要ポイントになります。ベイヤー以外のヘッドホンメーカーも、プレミアム路線を目指すなら、そういった実用上の設計をもっと頑張ってもらいたいです。

ケーブル

Aventho Wiredを買う決め手になったのが、ケーブルが左右両出し着脱可能で、T1 2nd・T5p 2nd・Amiron Homeと互換性があるという点でした。

T1 2ndなどと同じ3.5mm両出しです

Aventho Wirelessは片出しですし、これまでもDT1350は片出し、T50p・T51pは両出しでも着脱不可でした。それらと比べるとAventho Wiredはまさに願ったり叶ったりです。

T1 2ndなどと同じTRS 3.5mmで「信号・グラウンド・グラウンド」配線でした。スリーブが斜めにグッと奥まって挿入されるので耐久性があり、ポータブルでも安心して使えます。

これが優れたデザインというものです

さらに関心したのは、ハウジングをフラットに回転させると、ちょうどケーブル端子が飛び出したり衝突しない絶妙な角度に設計されており、そのまま収納バッグに入れても断線の心配がありません。

このあいだCampfire Audio Cascadeを買ってみて、この部分のデザインが最悪だったせいでポータブル用途を断念したので、他社もベイヤーの優秀設計を見習って欲しいです。

付属ケーブル

それはそうと、Aventho Wiredに付属しているケーブルはスマホ用リモコンマイク付きで、細くて質感が安っぽいです。

米国公式サイトにアクセサリーが掲載されてました

せっかく着脱式なのですし、どうせマニアしか買わない価格帯なのだから、オマケに高品質な2.5mmバランスケーブルくらい付属してくれたほうが話題性があったのに、なんて思っていたところ、米国公式サイトに「Audiophile Connection Cable」という名称で、アップグレード用OCC 7N線材ケーブルが別売されていました。(つまりAudiophileな人は付属ケーブルを使うな、という意味でしょうか)。

3.5mmアンバランス・2.5mmバランスのどちらも1.4mです。2.5mmバランスの方は、T1 2nd用として売っている物と同じ写真なので、同じ商品かもしれません。

残念ながら、このアップグレードケーブルは手に入らなかったので、ひとまずT1 2nd用のXLRケーブルを接続してみたところ、音質が劇的に向上しました。ケーブルによる音質変化については懐疑的になるべきですが、それにしてもこれはかなりわかりやすく変わる例です。

自作ケーブル

せっかくなので、銀メッキOFCケーブルで自作してみました。T1 2nd同様、3.5mm端子スリーブの一部がハウジング奥に挿入されるので、外径に制限があります(外側が約7mmで、先端付近は5mm程度)。穴の中にゴムパッキンみたいな物があるので、あまり太いスリーブを無理やり挿して壊さないよう注意が必要です。

自作ケーブルでも、T1 2nd用XLRケーブルと同様に、飛躍的な音質向上が感じられます。要するに、なんであれAventhoを試聴する際には付属ケーブル以外を使ってみるべきだと思います。

あくまで個人的な感想ですが、標準付属ケーブルがショボい、というのはベイヤーダイナミック以外でも、ゼンハイザー、Ultrasone、AKGなどもそう思う事が多いので、ドイツ圏メーカーに共通するなにかがあるのでしょうか。せっかくの優秀なヘッドホンが、ケーブルによって制限されている気がして勿体無いです。

理想的には、あれこれ社外品ケーブルを付け替えて、味付けの違いを体験してみるのも、趣味としては面白いですが、最終的に「やっぱり標準付属ケーブルが一番良い」と言えるくらいのクオリティに達して欲しいです。個人的にはたとえばフォステクスはそう思える事が多いです。

音質とか

今回の試聴では、ポータブルDAPのQuestyle QP2RとPlenue Sを主に使いました。

Aventho Wiredを購入してから一ヶ月くらい色々な場面で使ってみましたが、スマホなどでも十分駆動できるくらい能率が高いので、そこまでDAPやヘッドホンアンプのパワーにこだわる必要はなさそうです。もちろん真面目な音楽鑑賞には高性能DAPやヘッドホンアンプがあったほうが有利ですが、スマホやパソコンで動画を見たりなど、気軽に使いやすいヘッドホンだと思います。

ケーブルについては上記の通り、あえて付属ケーブルではなくT1 2ndのものや、自作品を使いました。色々な線材を試してみましたが、それらの僅かな味付けの差よりも、付属ケーブルとそれ以外との差の方が大きいです。とくに低域の解像感が出るようになります。付属ケーブルだと中高域など特定の音域だけ情報量が多く、あとはベタッと潰れたように曖昧になっていたのですが、それを別のケーブルに変える事で、低音の方まで奥深く見通せるようになります。

インピーダンスと位相

インピーダンスを測ってみました。公式スペックでは32Ω・105dB/mWということですが、500Hz~1kHz付近は32Ωで合っています。それ以外は密閉型ダイナミックらしくアップダウンがありますが、可聴帯域内は30~40Ωくらいのあいだに収まっているので、駆動が難しいというほどではなさそうです。

T51pとDT1350

ついでにT51pとDT1350とも比較してみました。DT1350のみ高めのインピーダンスに設計されているのがわかります。

なんとなく予想どおり、T51pは中低域の100Hzに共振点があるようで、一方DT1350は中低域の位相が圧倒的にフラットな代わりに2-3kHz付近に急激なピークがあります。このあたりがシビアなモニターヘッドホンらしい傾向です。それでも位相変動は非常に少ないのが優秀です。

これらを見比べると、Aventho Wiredは基本的にコンシューマーモデルとしてT51pをベースとしながら、よりコントロール性を高めるようなチューニングに仕上げたように思えます。


Criss Crossレーベルからの新譜で、サックスのTim Warfield 「Jazzland」を聴いてみました。相変わらず良いアルバムを出し続けているレーベルなので、新譜は欠かさず買っています。

WarfieldのサックスとTerell Staffordのトランペットというだけでも期待が高まりますが、今作ではPat Bianchiのハモンドオルガンがフィーチャーされており、普段のCriss Crossとは一味違うセッションになっています。ファンキーというよりはグルーヴィーといった感じで、60年代プレスティッジのようなカッコいいアルバムです。


まずAventho Wiredを初めて試聴した時の第一印象は、モコモコした厚いサウンドで、あまり良い印象はありませんでした。中低域が太く、空間が狭く、T51pの派手なサウンドと比べるとパッとしません。

しかしこのヘッドホンの凄いところは、楽曲との相性が良ければ、じっくり聴けば聴くほど音の良さにだんだんと気が付きはじめ、最終的に一曲目を聴き終わったくらいで、その虜になってしまいます。

これがもし悪いヘッドホンだったら、第一印象は高音質だと思えても、聴いているうちに弱点や耳障りな点が気になりだして、一曲を聴き終わるまでもなく、音楽を止めたくなってしまいます。

Aventho Wiredのサウンドを一言で表現するのは難しいのですが、高解像と高密度を両立している、演奏のリアリズムがハッキリ体感できるサウンドです。T51pはキラキラ広がる高音にサブウーファー的な低音が追加されたような、ヘッドホン由来の味付けが強かったですが、Aventhoではそのような整合性の悪さが解消され、高音、低音ともに、中域の音色とタイミングがぴったり合った一貫性があり、率直に楽器の実在感や熱量が伝わってきます。

ただし、空間展開はとても狭いです。最近は密閉型ヘッドホンでも広大な距離感が味わえるものが増えてきていますが、Aventhoは逆に、全ての音像が至近距離で鳴っているような感覚です。それでもAventhoが優秀なのは、間近で厚みのある音色なのに、各楽器がお互いの邪魔をせず、はっきり聴き分けられることです。

変な表現ですが、このアルバムだと、右目の裏側あたりにドラムが鳴っていて、眉間にトランペット、左の頬のあたりにオルガンがいる、みたいな感じです。そのため、外出先の喧騒の中であっても、外の世界から隔離された、自分だけの高密度な世界に没頭できるような充実感があります。

サックスやトランペットは堂々とした重みを持っており、一番高い音から低い音まで一直線に音像の輪郭が揃っています。不満があるとすれば、テナーサックスの一番低い音域が、それ以外の音域と比べると輪郭が滲む印象です。ハウジングの共振点でしょうか。

ちょっと実験してみたところ、ハウジングをグッと押して耳に近づけると、この帯域もクッキリ浮かび上がる感じになったので、ドライバーから耳までの距離が影響を与えるようです。経年劣化でパッドが潰れると聴こえ方も変わってくるかもしれないので、こういうのも含めてのエージングなのかもしれません。

ちなみにAventho Wirelessの方も、有線モードでは概ね似たような音作りなのですが、全帯域でこの滲む感じがうっすらと感じられ、Wiredと比べるとバシッとフォーカスが定まらずにもどかしいと思いました。ハウジング内部に電池や回路基板などが入っているので、響き方がちょっと雑になるのかもしれません。無線モードだと歯切れよくパンチが強くなるのですが、今度は全体の音圧が高めに維持されるので、ちょっと暑苦しく感じます。これは無線だからというよりは、内蔵アンプでドライバーを駆動しているので、高性能DAPで駆動するのと比べると分が悪いのだと思います。WiredでもDAPではなくスマホやノートパソコン直挿しで駆動すると似たようなダイナミクスが制限された暑苦しさを感じました。

Aventho Wiredで特に凄いのがオルガンで、パーカッシブなアタックのメロディから、重低音のベースラインまで完璧に演じきっており、この充実した音色だけで延々と浸っていたいくらい素晴らしいです。オルガンというのはヴィブラートとコーラスエフェクトのため位相が複雑に絡み合う楽器なので、ほとんどのヘッドホンでは不安定に宙を舞って耳障りになってしまうのですが、Aventhoでは理想に限りなく近い、ノリの良い骨太なオルガンサウンドが味わえます。

さらに、このアルバムにはパーカッションも入っているのですが、コンガの音を聴くだけで、Aventhoが優秀だと一瞬でわかります。ヘッドの革を叩く打撃音と、そこから胴体の豊かな響きが生まれる音色の表現がリアルなので、サックスやトランペッドだけでなく、こういった楽器ごとの情報量の多さがテスラテクノロジーらしいところです。

テスラテクノロジーらしさというのは、アタックの鋭さなのですが、金属的な刺激を後付けしているのではなく、ドライバーそのものの瞬発力というか剛性の高さでタイミングを正確に再現している感覚です。つまり「勢い」があり、生の楽器に体感がとても近いため、刺激的なのに不快感が一切ありません。

ここが旧世代のDT880などから大きく進化した点で、またHD25などと比べてもAventhoが有利な点です。たとえ周波数バランスが似ているヘッドホンでも、このアタック部分のレスポンスが甘いと、どの楽器も無個性になり、音楽としての表現力に欠けてしまいます。


新たに発掘されたコルトレーンの未公開スタジオ・アルバムということで、話題になっている「Both Directions at Once」を聴いてみました。

1963年タイナー、ギャリソン、ジョーンズとのカルテット演奏で、有名な「John Coltrane and Johnny Hartman」の前日にヴァン・ゲルダースタジオにて録音されたものだそうです。アルバム用として全曲録音されたものの諸事情によりリリースされず、マスターテープが破棄されたと思われたところ、当時コルトレーンが元妻に送ったモノラルコピーテープが残っており、それをリマスターしたそうです。モノラルながら音質はかなり優秀で、よくある中途半端な練習テイクの継ぎ接ぎではなく、アルバムとして真っ当な構成なので、数あるコルトレーン発掘音源の中でもレベルが高いです。

ジャズのスタジオセッションということで、Aventho Wiredで聴いた感想は、世代は違えど先程のCriss Crossレーベルのアルバムで思った事とほとんど同じなのですが、あえてこのアルバムを紹介したかったのは、Aventho Wiredとの相性が凄く良いと思ったったからです。

コルトレーンのサックスは主役として堂々とした存在感がありますが、Aventhoの凄さは、アンサンブル全体の見通しの良さや、インタープレイの迫力です。

63年のコピーテープによるモノラル音源、という不利な条件でありながら、Aventhoで聴くと、各楽器が明確に聴き分けられるだけでなく、四人のメンバーそれぞれが圧倒的に引き立っています。タイナーのピアノは小気味よい指さばきからドラマチックなブロックコードまで全貌が伝わってきますし、ジミー・ギャリソンのベースは重く深く沈み込み、一音ごとの音色が美しく、メロディをしっかり追えます。さらに凄いのがエルヴィン・ジョーンズのドラムで、ヘッドホンを通して、怒涛の大迫力を余すこと無く顔面で浴びているような爽快感です。ハイハットは硬質ながら必要以上に刺さらず、スネアやトムのドッシャンガッシャンという打撃音が本物さながらに刺激的です。グイグイと引き込まれて、聴いているだけで笑みが溢れるような体験でした。

コルトレーンのカルテット演奏の(というかモダンジャズ全般の)何がそんなに凄いのか理解できないという人もいると思いますが、Aventhoで聴けば、なにか伝わってくるものがあるかもしれません。

実際、どんなに高級なスピーカーやヘッドホンでも、ジャズの凄さというのがどうしても伝わらないオーディオ機器も意外と多いです。「押し出し」が良い・悪い、なんていう表現も使いますが、レスポンスの悪いオーディオで聴くと、まるでテレビの歌謡曲のように、主役コルトレーンのサックスだけがピーヒャラパラパラと延々と吹いているだけにしか聴こえず、意味不明で面白くありません。

一方、Aventhoで聴くと、メンバーそれぞれが並行して様々なインタープレイを行って、お互いが意識しあい変化を生みだし、音楽の流れを組み立てている状況が手に取るようにわかります。コルトレーンがピロピロと同じメロディを延々と繰り返していると、ギャリソンのベースがコード進行を止めて、ジョーンズのドラムがどんどん高揚感を増していき、極めつけにタイナーのピアノがバシッと新たなコードを叩くと、コルトレーンのメロディが動き出す、みたいな息の合ったリアルタイムな展開が、Aventhoだと非常によく伝わってきます。

Aventhoとジャズ相性が良いというのは、このアルバムだけの事ではなく、コルトレーンなら翌年の名盤CrescentやA Love Supremeなどでも同様に凄いプレイが味わえますし、ジャズに限らず、ロックでも電子音楽でも、良い音楽というのは、カラオケ的な「主役と伴奏」というシンプルなものではなく、複数のメンバーの息の合った音楽展開、という楽しみ方がよくあるので、Aventhoはそういったシーンでの構成力が高く、凄い実力を発揮してくれます。


フルニエとケンプのベートーヴェン・チェロソナタ集がハイレゾリマスターで発売されたので、試聴に使ってみました。フルニエというと、同じくドイツ・グラモフォンでグルダとの59年スタジオ録音が名盤として有名ですが、これは65年パリでのライブ録音です。

ライブとはいえ当時の公式録音なので、音質は優秀ですし、演奏面でも引けを取らないので、新旧どちらが良いか聴き比べるのも楽しいです。

このアルバムは、Aventho Wiredとの相性が悪いようで、弱点がはっきりと現れてしまいました。これまで散々持ち上げてきて、最後に落とすというわけではないのですが、やはりコンパクトなオンイヤー密閉型ヘッドホンという事で、完璧というわけにはいかず、上手くいかなかった例として、あえてこのアルバムを取り上げました。録音が悪いわけでなく、他の多くのイヤホン・ヘッドホンでは良好なのに、Aventho Wiredでは問題がありました。

これまで聴いてきたジャズアルバムは、スタジオ録音ということで、響きが抑制されたスタジオルームで、各演奏者の音を近接マイクで拾い、それをエンジニアが上手に組み立てあげた、いわば入念な創作芸術です。

一方このベートーヴェンは、コンサートホールでのライブ録音で、マイクの距離も遠く、配置や音響調整も限られています。そのため、チェロとピアノという二つの楽器と、ホールの豊かな音響が複雑に絡み合っています。

Aventhoは空間展開が狭く、さらに中低域もしっかり豊かに鳴らしてしまうため、楽器とホールの音響が間近で思い切り重なりあってしまい、大混雑で不明瞭になってしまいます。さきほどサックスの中低域が若干滲むと言ったのと似たような事で、それがライブ録音だとさらに強調されます。

もしこれを例えばT1やT5p 2nd Genなど大型ヘッドホンで聴けば、奥行きや距離感が遠くまで展開してくれるので、楽器の音色と、その背後に広がる広大なホール音響がちゃんと分離してくれます。Aventhoはそれが上手にできません。

スタジオ録音であれば、こうならないようにちゃんと響きを管理しているのですが、クラシックなどの響き豊かなライブ音源特有の問題だと思います。

もちろんピアノの高音のクリアさや、チェロの弓がグッと弦を擦るアタック感などはAventhoの得意とするところで、それらは問題ありません。また、低音はコンサートホール内でそこまで響きませんし、Aventhoもハウジングで過剰に響かせたりはしないので、低音が膨らむという感覚はありません。単純に、録音されている中域のホール残響が前後不覚になって、Aventhoの許容範囲を超えてしまったようです。

クラシックのピアノ・ソロアルバムなんかでも、90年代くらいまで主流だったクリアで鮮やかなオンマイク録音ならAventhoとの相性が良いですが、最近増えてきた、自然でフワフワした録音だと、Aventhoでは響きが多すぎて楽器音を覆ってしまい、不明瞭になります。

おわりに

そんなわけで、Aventho Wiredは、音楽ジャンルや録音スタイルによって、相性の良し悪しが出やすいヘッドホンだと思いました。コンパクトヘッドホンの宿命でしょうか。

ロックやジャズなど、クッキリしたスタジオセッションであれば、録音の年代を問わず、アーティストを身近に感じられるような充実したサウンドを繰り広げてくれます。とくに楽器ごとの質感を正確に表現してくれるポテンシャルの高さは、さすがテスラテクノロジーらしいです。よくJBLスピーカーとかで言うような、こういうのが「音楽性が高い」というのでしょうか。

一方、メリハリの薄い、フワフワした自然なライブ録音を広大なスケールで楽しみたいという場合は、Aventhoでは力不足で、さらに上のDT1770やT5p 2nd Genなど大型ヘッドホンを使う方が良いと思います。そうなるとポータブルではなくなってしまうのが難しいところです。

Aventhoは一見T51pの後継機かと思わせておいて、実は大幅に音作りの方向性を変えてきたところが面白いです。これを進化と見るかどうかは意見が分かれると思いますが、私自身は、ポータブル密閉型っぽいわざとらしいドンシャリサウンドを一蹴して、より演奏のリアリズムを重視した、音楽ファンとして正しい方向に進化したと思えました。

ひとつ不満点があるとすれば、付属ケーブルはあまり良くないと思ったので、試聴する機会があれば、ぜひ純正アップグレードケーブルなども試してみる事をおすすめします。

WiredとWireless、どちらを買うかというのは私も悩みましたが、高性能DAPを使う前提であればWiredの方がワンランク上のサウンドが引き出せますが、普段スマホで音楽を聴くのならWirelessを選んだほうが良いと思います。アプリの聴覚補正もギミックとしては面白いですし、必要でなければOFFにすればよいだけの話です。

実際Wiredの方は、海外の公式サイトにはあるのに日本ではまだ発売されていないようですし、そのあたりの流通の事情については、部外者からすると、いまいち不明です。


ところで、DAPやポータブルオーディオというと、最近はIEMイヤホンがどんどん高音質になってきたので、Aventhoのような小型ポータブルヘッドホンというのは昔ほど主流でなくなり、近頃のヘッドホンブームの中でも、選択肢が少ないジャンルだと思います。

ある程度の価格帯までは家電量販店でも沢山売っていますが、Aventhoレベルのものはなかなかありません。候補として考えられるのはゼンハイザーHD25やB&O H8、B&W P5、Ultrasone Edition M、オーディオテクニカATH-ESW950とかでしょうか。その中でもAventhoは高価な部類ですが、サウンドの完成度はトップクラスだと思います。

私が近頃思っているのは、どのヘッドホンメーカーも、もはや「超高級・大型・家庭用・開放型ヘッドホン」というのは完成形になっており、各社で微妙な味付けの差を競い合っているような状況だと思います。それ自体は悪いことではありませんが、家庭用開放型なら安くても良い音のものは沢山あるので、値段と音質が直結していない、とも言えます。

その一方で、密閉型の方が次のトレンドとして注目が高まってきているように思います。ゼンハイザーHD820が良い例ですが、フォステクス・DENONやソニー、Ultrasoneなど、密閉型を得意とするメーカーごとに独自色が強く、音響の好き嫌いが分かれることから、趣味性が高いです。

とくにAventhoのようなコンパクト・ポータブルとなると、音響設計の難しさはもちろんのこと、堅牢で軽量な、使い勝手の良いデザインも含めて、ベイヤーダイナミックほどの優れたヘッドホンメーカーでこそ挑戦できるジャンルだと思います。偏見かもしれませんが、超プレミアム価格な開放型ヘッドホンを作っているメーカーの多くは、まだコンパクト密閉型を作れるほどの技術力を持っていないと思います。

ベイヤーダイナミックというメーカーの凄いところは、伝統的な定番モデルの焼き直しに甘んじておらず、ニューモデルが出るたびに、着実に一歩先に進んだサウンドを披露してくれる事です。初代T1以降、Xelento、T5p 2nd、DT1770・1990・Amiron、そして今回のAventhoと、新作を聴くたびに驚かされ、十分な説得力があるため、つい購入する気分になってしまうのが恐ろしいです。