T51pとDT1350はどちらもほぼ同じ形状をしており、ベイヤーダイナミックの誇る「テスラテクノロジー」というドライバー技術を投入したポータブル用ヘッドホンということで、「あのベイヤーの音を外出先で楽しめる」といったセールスポイントが特徴的な製品です。
2011年にT50pとDT1350というバリエーションで二機種が発売され、2014年にT50pの後継機であるT51pが発売されました。その中で、現在自分が所有しているDT1350とT51pを簡単に比較してみようと思います。
ベイヤーダイナミックはドイツの名門オーディオ機器メーカーで、会議室用マイクやインカムなど業務用のコミュニケーションデバイスを作る一方で、優秀な音楽用ヘッドホンも豊富にラインナップしている会社です。
同じドイツのヘッドホンメーカーということで名門ゼンハイザーとライバル関係のような扱いを受けますが、ベイヤーダイナミックはゼンハイザーの10分の1くらいの規模の非常に小さな会社で、いまだにベイヤーさん一家の同族経営という古風な体制です。また、ゼンハイザーはドイツ北部のハノーファー付近にあるのですが、ベイヤーは南部のシュトゥットガルトあたりに本社を構えているので、結構住み分けが明確になっています。
ゼンハイザーは長年スポーツモデルやファッションモデルなど手広くいろいろなジャンルのヘッドホンを販売していますし、家電量販店でもよく目にする大手ブランドですが、ベイヤーダイナミックといえばプロ用スタジオヘッドホンで、オーディオショップよりもミュージシャンが足を運ぶ楽器店などで購入する印象が強いです。最近はベイヤーダイナミックもヘッドホンブームに便乗してちょっとコンシューマーに媚びた商品を展開していますが(Custom Oneとか)、それすらなんとなく真面目な中小企業が健気に頑張っているような雰囲気を感じます。
私は個人的にベイヤーダイナミックのヘッドホンをひいきにしており、特にテスラドライバーと聞くとついつい気になってしまいます。15年くらい前にベイヤーダイナミックDT880-600というモデルを購入して、その時から同社のファンになりました。
テスラドライバーより前のベイヤーダイナミックのスタジオヘッドホンというと、密閉型の「DT770」、セミオープンの「DT880」、開放型の「DT990」というわかりやすい三兄弟で、それぞれにインピーダンスの異なるバリエーションがいくつかあります。
2009年にベイヤーダイナミックはテスラテクノロジーという理念に基づいた新開発のドライバを投入したフラッグシップモデルの「T1」を発売しました。当時15万円くらいだったと思いますが、個人的に同社のDT880をずっと愛用していたため発売と同時に購入しました。いまだにこのT1は個人的なナンバーワンのヘッドホンだと思っています。
テスラドライバーというのはドライバの磁石が1テスラ(10,000ガウス)という強力なものを使っているので、つまり音質がすごい、というよくわからないけれど説得力のある説明で、当時のヘッドホンの中でもかなり先進的な技術を投入した、まさしくフラッグシップモデルだったように思えます。
今振り返ってみると、同時期にゼンハイザーが発表したHD800のほうが写真映えする近未来的なデザインだったので、ベイヤーダイナミックT1は思ったほど脚光を浴びることができなかったのかもしれません。しかし個人的にはT1のほうが正統なヘッドホンの完成形といった感じで音質、外観ともに気に入っています。
じつはT1はドライバがハウジング前方に斜めに配置してあったり、強固なアルミ製のドライバシャーシや、メッシュ製の通気性ハウジングなど、HD800と非常に近い設計を行っているのですが、外観が古臭いDT880の部品を流用したようなデザインだったためイマイチその先進性がわかりづらかったかもしれません。
T51pとT1の比較 |
T1についてはまた後日レビューしたいと思っていますが、2009年にT1を購入した翌年の2010年に、「あのT1のテスラドライバー技術をポータブルで」ということで登場したのがT50pとDT1350でした。当時の売値がどちらも3万円くらいだったので、あの10万円超のT1の音が、と思うと安く感じました。(実際の音は似て非なるものだったのですが・・)。
このポータブル機は、発表当初からT50pとDT1350という二機種が同時展開されていましたが、具体的な違いは
- 音が違う
- T50pは音楽鑑賞用、DT1350はスタジオモニタリング用
- T50pは両出しケーブル、DT1350は方出しケーブル
- T50pは固定ヘッドバンド、DT1350は回転二分割ヘッドバンド
当時どちらを購入するか悩んでそれぞれ比較試聴した結果、T50pはどうもヌケの悪くてこもった音だったので、キレのあるスタジオモニターっぽいドライな音色のDT1350を選びました。
後述しますが、このDT1350は買ったのはいいものの、どうも形状や使用感、音質などいろいろな面で難があったため、結局数ヶ月使っただけでお蔵入りになりました。
時は流れて2015年になったのですが、じつは最近までこのT50p・DT1350はあれっきりの商品だと思っていたところ、後継機「T51p」の存在を友人に指摘されて、「音が良くなった、問題が解消された、絶対気に入る」と勧められて試聴したところ、確かにT50pともDT1350とも違う、双方の良い所取りのような素晴らしい音質だったため、その場で衝動買いしてしまいました。
このT51pは2014年に発売されたモデルで、2010年のT50pに見られた音質の問題点を克服した新開発テスラドライバーを投入したという意欲的な商品です。見た目がT50pとそっくりなため、ノーマークで全然気が付きませんでした。
箱を開けるとキャリーケースが |
付属キャリーケース |
ケースは結構使いやすい |
キャリーケースはカメラバッグのような生地のかなりしっかりとしたもので、ヘッドホンの形にモールドされた特製品です。大抵のハードケース系は大きすぎて実用的でないものが多いですが、これはかなり良く出来ていると思います。DTシリーズの巨大なスポンジの棺桶みたいなやつとか、T1のアルミケースのような室内保存用ケースではなく、ポータブルを意識した利便性の高いケースです。
ケースを開くとそのままヘッドホンが入っており、付属品は3.5→6.25mm変換プラグ、飛行機アダプタと説明書・保証書のみです。
T51pとDT1350ケースの比較 |
ちなみにケースはDT1350のものと全く一緒です。
T51pの外観 |
ハウジングを回転させた状態 |
前後90度に回転できる |
回転機構はリベット |
ヘッドバンドのスポンジ |
左:DT1350 右:T51p |
ちなみにT50pとT51pはドライバが変更されたのみで外観はほぼ同じデザインです。
じつはDT1350を購入した際には方出しケーブルのほうが便利そうで魅力的だったことも理由の一つでした。実際に使ってみると、DT1350はヘッドバンド調整部分にケーブルが露出しているので多少気を使います。DT1350のケーブルは右側のドライバまでヘッドバンドを通しているため、ヘッドバンドには黒いプラスチックが覆ってあります。
左:DT1350 右:T51p |
装着感は想像以上に良好ですし、それなりに強い側圧ですが、あまり圧迫感はありません。ほぼHD25と似たようなフィット感ですが、こちらのほうがハウジングが小さいため、耳にフィットする感じは高いと思います。とはいってもやはり1時間くらい使っていると耳たぶの裏の部分が痛くなってきました。定期的にハウジングの位置をずらせば痛さを回避できますが、耳との相対位置で音も結構変わってしまいます。
側圧については、ヘッドバンドが金属なので多少力を入れると広げることが可能ですが、壊さないように注意が必要です。ちなみに写真でDT1350のほうが若干ハウジングが離れているのは、長年の使用によるものか、元からこれくらいだったのかはわかりません。
イヤーパッドは両面テープで強固にハウジングに接着されているので、今回は外してドライバを確認することはできませんでした。一応交換部品でスペアのパッドは販売しているので、パッド交換の際には思いきって両面テープを剥がす必要があります。(スペアのパッドに新しい両面テープがついています)。つまりDT1350にT51pのパッドを購入して取り付けることも可能なようです。
ヘッドバンド調整機構 |
T51pのヘッドバンド形状は固定されています |
T51pにはMade in Germanyの印刷が |
個人的には目盛りが一番大きい位置から2〜3段小さくした位置がベストフィットです。ケースに収納する際は目盛りを4段目くらいに移動しないとうまくフィットしないのがちょっと面倒です。ただ目視で調整位置が簡単に確認できるのは便利です。
DT1350のヘッドバンド調整機構 |
DT1350のヘッドバンドはHD25のように開いたり回転したりできる |
DT1350の回転ヘッドバンドは非常に厄介で装着が難儀です |
写真のようにとんでもない形状になってしまい、たとえば片手で装着するのは不可能に近いですし、リスニング中もなんとなくグラグラして不安になります。HD25の場合はヘッドバンドがプラスチックのため摩擦抵抗がありますし、ハウジングは左右に回転しないので可動部位は制限されますが、DT1350はメタルなのでクルクルと回ります。印象としては、オーディオテクニカのATH-M50シリーズと同じ煩わしさがあります。
普段使いではやはりT51pのほうが気軽に装着できるのでおすすめです。
3.5mmプラグ 上:DT1350 下:T51p |
ケーブルは両方とも1.5mくらいなのでポータブル使用ではちょうど良いくらいです。DT1350のほうが約10cm長いですが、どちらも線材は細くてあまり癖が付きにくいタイプです。DT1350はケーブル表面がサラサラしているので擦れるようなタッチノイズがあるのですが、T51pはツルッとした表面で若干タッチノイズが軽減されていると思います。
コネクタはどちらも3.5mmですが、T51pがL字のコンパクトな形状で、DT1350は6.25mmアダプタ用のネジが切ってある大きなタイプです。
ちなみにDT1350には発生モデルで「DT1350 CC」という、3mカールケーブルのバージョンもありますが、ポータブルリスニング用途でそれを選ぶ人はいないでしょう。T50pからT51pではドライバが変更されましたが、DT1350とDT1350CCは同じドライバで音質的には一緒だそうです。
T51pとHD25(Amperior)の比較 |
ハウジングサイズはかなり違う |
最後に、明らかなライバルモデルということでゼンハイザーのHD25(Amperior)との比較です。
ご覧のとおり、HD25のほうがハウジングもヘッドバンドも全て一回り大きいです。プラスチックを多用しており、交換型ケーブルなど、無骨におもちゃのように作られているのがHD25で、繊細に精密機械のように作られているのがDT1350・T51pだと思います。
個人的にHD25シリーズは非常に気に入っているのですが、自分の頭にどうしてもヘッドバンドが合わず、ハウジングの下部分が耳から浮いてしまうためフィット感に問題があります。また、ヘッドバンド調整部分が勝手に移動してしまいピッタリと位置に定まらないので困ります。DT1350・T51pはそのような問題が無いため、フィット感の心配をせずに安心して音楽を楽しめます。
音質についてですが、新モデルのT51pを聴いてみて個人的に感じたのは、T51pはT50pのリニューアル版ではなく、じつはDT1350の改良版だというふうに思いました。
まずDT1350についてですが、このヘッドホンは極めて個性的な音質チューニングであり、高音が非常に強調されていて中低音がスカスカというとても使いづらい特性です。ある特定の周波数からそれ以下が、急激なハイパス・フィルターを通ったかのような具合にバッサリと切られており、たとえば女性ボーカルは明朗なのに男性ボーカルが吸い取られたかのように貧弱になっているような不可解なチューニングだと思いました。
実はDT1350の音質について評価する際には注意が必要です。数年前にHead-Fi掲示板で「DT1350の音質を語ろう」みたいなスレがあり、その中でユーザーの評価やレビューが投稿されていたのですが、みんなのレビューがあまりにもバラバラで一致しないため、あるユーザーがDT1350を数台集めてダミーヘッドで測定したところ、特性がバラバラだった、といったエピソードがあります。
精密機械の印象があるベイヤーダイナミックにおいて、ここまで同一モデルで音質に差があるというのは意外ですが、実際最上位ヘッドホンのT1なんかも人知れず何度もマイナーチェンジが行われているので、さほど驚くべきことでもありません。
このDT1350においては、Head-Fi界隈で「俺のは高音強調型」とか「僕のはフラット型」とか、どうやら数種類に区分されているようで、製造時期や使用しているパーツに由来するのか詳細は不明ですが、ともかく何種類かバリエーションがあるっぽいです。私のDT1350は初期型で高音強調タイプと言えるかもしれません。
DT1350とT51pは両方とも高音が素晴らしいのですが、具体的には純音の素直さというか、歪みや破綻の無いスムーズな出音が印象的です。例えばギターやピアノなどのアコースティック楽器から一音が鳴り響いた際に、多くのヘッドホンでは周波数帯ごとに鳴り方が違うため、音に濁りや不安定さが現れるのですが、このヘッドホンの場合は周波数帯の上から下まで綺麗に揃った、素直で澄みきった音色になります。この澄んだ音色という表現は、実際に聴いて体験してみないと理解が難しい現象かもしれません。
比較として、たとえばHD25の場合はどうしても荒っぽく粒の粗い印象を受けるので、一音一音のピュアな感じは出せません。B&W P5 Series 2も手元にあったので比較してみましたが、B&W特有の芳醇で濃厚な音色は、ベイヤーダイナミックと比較すると、ハウジングからの共鳴による擬似的な厚みのように感じ取れます。
高音が素晴らしいというとオーディオテクニカのATH−ESW9LTDが印象的ですが、オーディオテクニカの場合は響きや付帯音といった要素にリアリティあふれる臨場感を感じ取れます。ベイヤーダイナミックでは響きや付帯音といったものではなく、音色の直接音そのものがピュアで素直だと思いました。
この高音の特性については、DT1350とT51pの両方に感じられたことで、この部分だけを見ると、音場感や響き方、ドライブ力など、聴感上はどちらもほぼ一緒だと思います。
DT1350とT51pの大きな違いは中低域の量感です。DT1350が不得意だった周波数帯をT51pではかなり思いきって持ち上げています。低域が増すことによって勿論ベースやドラムなどの迫力が増し、ポピュラー音楽でも十分に体感できるようなエネルギーを感じられるのですが、T51pの場合はさらに幅広い帯域でバランス調整されているため、中域のリアリティも増す効果が得られます。
DT1350で頼りなかった100~500Hz付近が濃厚になったため、男性ボーカルやチェロのような楽器が際立つのはもちろん、ヴァイオリンやピアノなどの高音域にまで、奥深い味わいのようなものが楽しめます。これまで高音域だけだったピュアで純度の高い音色が、さらに低い方まで拡張されたので、リスニング向けという観点ではとても適切なチューニングだと思いました。
ここで一つ重要なポイントは、T51pがポータブル用途のヘッドホンだということです。理解していないユーザーも多いと思うのですが、家庭やスタジオなどの静かな環境で使うヘッドホンと、外出先でポータブルとして使うヘッドホンでは根本的なチューニングから変えていることが多いです。
通勤など環境騒音の多い外出先では、ヘッドホンやイヤホンを装着することによって高音の騒音を遮断してくれるのですが、低域の騒音はたとえ密閉型ヘッドホンでもああり低減することはできません。そのため音楽の低音域が聞き取りづらいため、わざと低音を強調したヘッドホンの音作りにする必要があります。
つまり、T51pのようなポータブル用途のヘッドホンを静かな環境で試聴して「低音が強すぎる」というのは見当違いです。そういった環境にはT1やDT880のようなチューニングが最適化されています。T51pは通勤や散歩などの騒音の多い外出先で楽しむことを想定しているため、そのような環境での音質、フィット感、快適さなどを総合的に評価すると、かなり良好なヘッドホンだというふうに思えました。
T51pは中低音が強調してあるということで、では前モデルのT50pと同じではないかと思われるところですが、肝心なのは、T51pではDT1350ゆずりの高音域が健在しているということです。このすばらしい素直な音色は決してT50pでは得られなかったので、たとえばDT1350をベースにT51pにたどり着くのはそこそこ容易でも、T50pからT51pに改良するのは不可能ではと思えました。製品開発とはそう安直なものではないと思いますが、そういった理由からT51pはT50pではなくDT1350の改良版だというふうに感じられました。
この音色の素直さ、ピュアな出音というのはフラッグシップの高級ヘッドホンT1に通じるものがあるので、音をストレートに表現できるテスラドライバーの最大のメリットかと思います。
いろいろと良いことづくめのようなT51pですが、悪い問題点もいくつかあります。
まず一番の問題点は、小型密閉型ポータブルという形状のために、空間的表現や音と音の間の余裕が乏しいです。とくに、大型ハウジングを有するT1などと比較すると、ここがT51p一番の弱点だと思います。三次元的な距離感が無いのにもかかわらず、全ての音を余すことなく鳴らしているので、とてもうるさくて余裕のない、聴き疲れしやすいプレゼンテーションです。
密閉型でももう一回り大きい、たとえばオーディオテクニカATH−MSR7やソニーMDR-1Aなどは、耳とドライバの距離やハウジング内の空間容積などを上手に駆使して各楽器の距離感を表現出来ています。その点、強力なテスラドライバーを耳の間近に配置してあるT51pは、どの楽器も至近距離で鳴っている印象です。決してヌケが悪いわけではないのですが、音がなかなか遠ざからず、常に耳を攻撃しているような音圧感はゆったりとBGM的にリスニングするのには適していません。
もう一つの問題は、耳障りな低域です。これは空間が狭いことにも由来するのですが、常に低域の楽器が鳴っているような演奏の場合は、これらを聴いている際に低域が常に自己主張して非常に耳障りです。反響が響いているというよりは、本来遠くで静かに鳴っている低域楽器が、他のリード楽器やボーカルと同じ位置で力強く鳴っているため、邪魔な存在になってしまいます。たとえばジャズでオルガンのペダルベースや、ピアノの左手コード、クラシックの大編成オーケストラにおけるコントラバスなど、常になにかしら低域が鳴り続けている場合それがメイン楽器を覆ってしまい悪影響を及ぼします。
同じ楽曲を他の密閉型ヘッドホンで聴いた場合、それらの低音楽器はT51pで聴くよりも音量が小さいか、遠くで別の空間位置で鳴っているため、音楽に邪魔しない程度に調整してあるように感じられます。その辺はT51pのチューニング次第なのかハウジングサイズのせいで仕方がないのかわかりませんが、非常に残念に思えます。
ようするに、楽器編成が少なく、低音が抑制されているような楽曲であれば、T51p特有の素直でピュアな出音が効果を表しますが、もっと複雑な楽曲になると手に負えなくなるという、かなり曲を選ぶヘッドホンだと思いました。ポップスやEDM、ヒップホップなど空間表現を気にする必要がなく、低音楽器がしっかりと管理されている楽曲ならこのような問題は感じさせません。
総合的に見ると、T51pはこの価格帯においてはトータルバランスは優れていますし、装着感やデザインも良好、そしてテスラドライバーならではの独特の繊細さや素直さを体験できる、非常に良いヘッドホンだと思います。
今回問題として指摘した空間や低域についても、これらを克服しているようなヘッドホンがあったとしても、必然的にハウジングが大きなサイズのものになってしまうと思うので、T51p特有のコンパクトな形状は失われてしまいます。さらに、たとえ大型のヘッドホンと比較しても、T51pの良さである高域の特性で勝てるのは同社のT1くらいしか無いと思っています。
DT1350については、T51pが発売されたことによって、あえて購入するメリットは無いと思います。DT1350は個人的にはあまりにも中低域不足だと思いますし、スタジオユースということに特化した場合、もう一回り大きめの、例えばT70やT90といった製品が視野に入ってきますので存在意義に疑問を感じます。使っていて感じたのは、DT1350は音楽作成というよりも、アナウンスやラジオなどの音声を扱う現場で使うべき製品ではないでしょうか。
色々と振り返ってみると、T1やT51pに使われているベイヤーダイナミックのテスラドライバーの特性というのは、本来たとえば平面駆動型ヘッドホンが得意としている要素を全て有しているように思えました。歪みが少なくピュアな出音、きれいな高域など、Audez'eやOPPOの特徴と似ています。そういったメリットに更にダイナミック型ならではのパワー感を持っており、ベイヤーダイナミックの技術力にあらためて感心しています。