B&W P5 Series 2とP7 |
どちらのヘッドホンも高級志向のデザインで、ポータブルでありながらプレミアムな音楽体験を味わえるというハイエンド商品です。全国のアップル系店舗で展示販売されているので、この手の高級ヘッドホンの中では比較的よく目にする商品だと思われます。
デザインだけではなく音質も素晴らしいので、この二機種を比較してみようと思います。
B&Wは英国でオーディオスピーカーを作っているメーカーで、およそ50年もの歴史を誇る老舗です。英国といえばKEFやTannoy、Spendor、ProAc、Harbethなど名前を挙げればきりがないほど無数の名門スピーカーブランドが存在しますが、その中でもB&Wはハイエンドからカジュアルなホームシアター目的まで幅広く商品を展開している大手メーカーです。
B&Wというとオーディオマニアが関心を持つのは最上位の800シリーズというスピーカーで、部屋のサイズに合わせて巨大なモデル800や802から、小型スタンドマウントの805まで、それぞれ数年サイクルでマイナーチェンジを行って現在に至っています。
この800シリーズは個人的な好き嫌いはあると思いますが、世界中でプロ・アマチュア問わずスタンダードとして使われており、まさに「レファレンス」というタイトルにふさわしいスピーカーです。とくに英国やヨーロッパでは数多くのレコーディング・マスタリングスタジオでB&W 800シリーズが使われており、たとえばクラシックのステレオやサラウンドアルバムを聴いているのであれば、それらの過半数はB&Wの800シリーズを使って作成されたと言っても過言ではありません。また、日本や海外のオーディオメーカーにおいても、自社のアンプでB&Wの800シリーズを正確に鳴らしきることがひとつの到達点として、デモルームなどで活用されています。
このような歴史とプライドを持つB&Wが、2009年に同社初のヘッドホンを投入するというニュースを聞いた時には、オーディオマニアたちは喜びと同時に、「ついにあのB&WもiPodやBeatsの波に乗って低価格オーディオに手を出してしまったか」「どうせ他社設計のOEMだろう」などといった否定的な意見もあったと思います。
2009年に第一号として発売されたのは「P5」という3万円台のオンイヤー型ヘッドホンで、デザインは非常にユニークで上質なものだったのですが、音質がモコモコしていて、あまり評判が芳しくなく、自分も試聴してがっかりしました。ターゲットとしている客層が「スーツの似合うアップルストアで買い物する紳士」といったイメージだったのもシリアスなオーディオマニアにとってはマイナス要素だったようです。
B&Wは着々と、2011年にインナーイヤー型のイヤホン「C5」、2012年にはP5の小型版であるヘッドホン「P3」を市場に投入しましたが、これらはどちらも2万円台と低価格層を狙っており、音質に関してはとやかく言えるような位置付けの商品ではありませんでした。
B&Wのヘッドホンがオーディオマニアから真剣に注目されだしたのは、2013年に登場したフラッグシップモデルのヘッドホン「P7」です。このP7は5万円超という高めの価格設定でありながら、これまでのデザイン要素を継承しながら全体的にサイズが大型化され、新規ドライバーとアラウンドイヤー形状のイヤーパッドを採用したモデルです。
このP7の音質が非常に良いということで雑誌レビューやユーザー掲示板などで高く評価されるようになり、初代ヘッドホンのP5から苦節4年、ようやくヘッドホンメーカーとして胸を張れるポジションに到達できたように思えました。
好評だったヘッドホンP7の成功を元に、肝心の要素であるP7用新開発ドライバー技術を下位モデルのP5に移植したのが、後継機にあたる「P5 Series 2」というモデルで、P7発売の一年後の2014年に登場しました。パッケージに小さく「Series 2」と書かれているのですが、パッと見ただけでは従来のP5とそっくりなので気が付かなかった人も多いようです。(よく見ると、じつはハウジングがシルバーからブラックに変更されました)。
ちなみに2014年にはイヤホンのC5も改良されて「C5 Series 2」になりました。
このようにB&Wのヘッドホン開発歴を振り返ってみると、決して手当たり次第というわけではなく、一年に一回といったペースで市場の評価を上手にフィードバックして、堅実に新製品や改良品を投入しているのがわかります。また、どのモデルもデザインに統一感があり、現行モデルの後継機であれば形状やパッケージなどの変更にも消極的なのが老舗スピーカーメーカーらしく好感度があります。
ちなみに2015年現在日本では、B&W製品はDENONやマランツブランドを所有するD&Mホールディングスが輸入代理店業務を行っているので、国内ではDENONのヘッドホンラインナップと若干競合するような位置付けになっています。オーディオフェアなどの試聴デモでは、DENONのアンプにDENONのヘッドホン、マランツのアンプにB&Wのヘッドホン、といた組み合わせで展開しているのが面白いです。
というわけで、B&Wのヘッドホンラインナップをまとめると、あまり音質の評判が良くない第一世代のP5とP3、そして新開発のドライバを導入した第二世代のP7とP5 Series 2、というふうに分けることができます。今回はこのP7とP5 Series 2について詳しくスポットを当ててみようと思います。
左:P5 Series 2 右:P7 |
デザインにおいても、クラシカルでありながら古臭く感じない巧みなフォルムです。パリっとしたスーツのビジネスマンに合うデザインということで、オーディオマニア的には若干気後れしてしまうというか、デザイン重視で購入したと思われがちなため敬遠されているように思います。また、アップルストアで販売されているということも、BeatsやBose、B&Oなどと同類のカジュアルな「意識高い系」のイメージがマイナスに働いているようです。しかし実際に手にとってみると、その作り込みや品質の高さは圧巻です。
上:P5 Series 2 下:P7 |
P5 Series 2 |
P5 Series 2のハウジング |
P5 Series 2 |
P5はオンイヤータイプなのですが、イヤーパッドはレザーの質感と厚めのスポンジのおかげで、あまり圧迫感はありません。オンイヤーヘッドホンというと一般的には耳たぶの上をリング状に押さえつけるような印象がありますが、このP5は枕のように耳穴付近も均一に押さえる感触で、圧力が分散されているように感じられます。
オンイヤーなのでやはり長時間つけていると耳の裏が痛くなってきますが、例えばHD25などと比較すると、同じような側圧でもあまり不快感は感じられません。レザーのおかげで肌に吸い付くような質感で装着時の安定感は良好です。
P7のハウジング |
イヤーパッドは四角い独特な形状をしており、思ったよりクッションが硬いため耳周りがスポっと覆われる、往年のラジオ技師やパイロットが使っているようなデザインです。密閉度が非常に高く遮音性も悪くないですし、深いクッションのおかげでドライバが耳から遠く感じます。ちなみにP7は左右のイヤパッドがかなり離れており、首に掛けた際にあまり首を締め付けないのが嬉しいです。個人的に所有しているヘッドホンの中で、首掛けが一番快適なのはこのP7かもしれません。
P7のイヤーパッドは硬くて密閉度が高いため、長時間の使用は厳しいかと思いましたが、実際は非常に快適で、圧力の分散と耳周りの空間的余裕のおかげで、蒸れたり痛くなったりすることなく、2〜3時間は快適に音楽を楽しめました。自宅で長時間リスニングをする場合にはP5 Series 2よりもP7のほうが痛みや不快感は少なかったです。ただし、どちらのヘッドホンもイヤーパッドがあまり柔らかくないためメガネ着用時ははあまり密着度は良くないと思います。その辺りはメガネ人口の多い日本で開発されたソニーMDR-1Aなど、国産ヘッドホンのほうが上手に考えられて設計されていると思います。
左:P5 Series 2 右:P7 |
P5 Series 2のヘッドバンド最長時 |
P5 Series 2のヘッドバンド最短時 |
P7のヘッドバンド最長時 |
P7のヘッドバンド最短時 |
アーム長は若干短めで、私の場合は最大から1cmほど戻した状態がベストフィットでした。長さ調節はスムーズにスライドするタイプですが、しっかりとした摩擦抵抗があるので、勝手に伸縮することはありません。
P5 Series 2のヘッドバンド |
ヘッドバンドは厚めのスポンジが入っているので装着感は良好です。頭頂部が痛くなることはありませんでした。
P5 Series 2のイヤパッドを外した状態 |
イヤパッドは取り外し可能で、外した状態だとケーブルを着脱できるという意外な構造になっています。イヤパッドは強力なマグネットでハウジングに取り付けてあり、左右にあるガイドピンで位置決めされるためズレる心配は皆無です。
P5 Series 2のイヤパッド内部には緑色の低反発ウレタンのようなものが入っており、小さな穴の開いているプラスチックプレートで固定される非常に凝った設計です。ドライバはメタルグリルで覆われており周辺にはフェルトが貼ってあるという古風ながら計算し尽くされたような意気込みを感じさせます。
ドライバは大口径の紙コーンスピーカーのようなデザインで、電話機やラジオのスピーカーのようなレトロな形状です。最近のオーディオテクニカCCAWやAKGのXXLドライバなどハイテクなドライバを見慣れていると、このような古典的な外観でありながら高音質だということに驚きを感じます。
P5 Series 2のケーブルを外した状態 |
ケーブルの着脱には2.5mm 4極プラグが使われており、ハウジングのジャック側が若干外側に飛び出るギミックのおかげで容易に着脱できます。プラグボディが斜めに曲がった特殊な形状でハウジングの溝にはめ込むデザインなので、リケーブルする際にはコネクタサイズにかなり制限があると思います。
ちなみに初代P5とP5 Series 2ではプラグ形状がかなり違うため、過去に販売されていたオヤイデ電気PEC/P5などのP5用アップグレードケーブルは流用できないようです。2015年1月にはオヤイデ電気からP7用アップグレードケーブルPEC/P7が発売されたので、P5 Series 2用のものもそのうち登場するかもしれません。(追記:2015年5月にP5 Series 2用アップグレードケーブル「PEC/P5S2」が発売されました。ちなみに以前から販売されていた「PEC/P5ver2」は名前が似ていますがSeries 2用ではないですので、注意が必要です。)
P7のイヤーパッドを外した状態 |
P7のケーブルを外した状態 |
イヤーパッド比較 左:P5 Series 2 右:P7 |
ドライバ比較 左:P5 Series 2 右:P7 |
それぞれのイヤーパッドを比較してみるとサイズの違いが確認できます。ハウジングの大きさも倍くらい違うのですが、よく見るとドライバのサイズは同じようなので、P7のドライバを移植したP5 Series 2というセールスポイントはあながち嘘ではないようです。しかし、たとえドライバが同じだとしてもP7のほうがハウジング内部の空間容積が大きいため、余裕を持ったチューニングが施されていると思います。
P5 Series 2付属のソフトケース |
ケースにはクロムのロゴバッジがついており高級な手触り |
P5 Series 2はポータブルオンイヤーヘッドホンでありがちな、ハウジングをフラットに回転させるタイプで、薄いカバンなどに収納できるような形状になります。
付属されているソフトケースはキルト加工のされている光沢のある布地で、フタがマグネットで優しく閉じるようになっています。クロムのロゴバッジもついており、上品な化粧品メーカーのギフトのような感じで実用性と美しさが両立した良いケースだと思います。日本のメーカーもありきたりなヒモつき合皮巾着袋を止めて、こういったおしゃれなケースを付属して欲しいものです。
一つだけ気になるのは、ハウジングからケーブルが出る部分がソフトケースに収納時には圧迫されるため、断線が心配です。
P7の右側ハウジングを回転した状態 |
P7の回転ヒンジは美しく高品質です |
折りたたまれたP7と付属しているケース |
P7を付属ケースに収納した状態 |
P7の構造上、ヘッドホンを折りたたんだ状態で長期間保管していると、左右のイヤーパッドとハウジングが押し当てられている状態なのでイヤーパッドに跡がついてしまいます。
ケース収納時の比較 左:P5 Series 2 右:P7 |
ケース収納時の比較 左:P5 Series 2 右:P7 |
P5 Series 2とP7のをケースに収納した状態で比較してみると、さほど外寸は変わらないです。やはりP7のケースのほうが厚いため持ち運びには苦労しそうですが、ケースそのものはヘッドホンをちゃんと保護してくれそうで安心して使えます。
音質についてですが、P5 Series 2、P7のどちらも他社のヘッドホンと違いB&Wならではの独特なチューニングが施されているように感じました。
まず両方のモデルに共通した特徴は、濃厚でエネルギッシュな中低域の演出です。とくに男性ボーカルのような音域では迫り来るような迫力のある表現をしてくれるため歌手の熱意やパワーを十分に感じ取ることができます。センターでスポットライトを浴びているシンガーやソロギターなど楽器の存在感が強いため、よくモニター系のヘッドホンでありがちな細部のディテールや伴奏がうるさすぎてメイン楽器が聞き取りにくいといった問題がありません。ポップスなどでシンガーの歌声を十二分に味わいたい、ジャズでサックスの演奏をじっくり聴きたい、などといった音楽的な楽しみ方をするには最適のヘッドホンだと思います。
どちらのヘッドホンも、中域の明瞭感がとても良いのですが、高音域もあまりこもったり金属的になったりせずに、綺麗に表現されていると思います。高域に関しては、スピーカーに例えるとリボンやメタルドームではなくシルクドーム・ツイーターのような柔らかくも聴き取りやすい印象を受けます。ただし、密閉型ですし遥か高くまで伸びゆくというよりは、確実に鳴らしているといった感じの高域だと思います。そういった意味では、最近のスピーカーよりも一昔前のヴィンテージスピーカーのような箱鳴り調の演出です。
中域が前に出るというとGradoなどを想像しますが、B&Wのほうが中低域重視で、Gradoのような圧倒される生々しさや、切り裂くような派手な高域はB&Wには無いため、どちらかというと古いロックなど劣悪な録音状態でも楽しめると思います。へんな言い方かも知れませんが、B&WのヘッドホンはなんとなくKoss Porta Proのような、スペックとは無縁の普遍的な音楽性があるように思えます。
ここからは各ヘッドホンの違いについてですが、まずP5 Series 2はかなり低域が盛ってあるため、多少聴きづらいと思うこともありました。これは騒音環境でのポータブル向けのチューニングということで納得できるのですが、それにしてもかなり分厚い低域に圧倒されます。ただし、こもったり圧迫感を感じるような低域表現ではなく、アタックが鈍くドスンと来るような低域なので、他社の低音重視ヘッドホンとはかなり違う傾向だと思います。
とくにP5 Series 2は非常に小型なハウジングなので音場感は皆無に等しいため、低域が支配的になるケースも多いです。このへんは聴いている楽曲にもよると思いますが、ハウス系などパンチのあるキックドラムを楽しみたい人には、逆にメリットになると思います。
P5 Series 2の充実した中域と低域について色々と考察してみたところ、このヘッドホンの音質の特徴はメタルハウジングによる反響のように思えました。他社のいろいろなヘッドホンと聴き比べてみるとだんだん気になってきたのですが、P5 Series 2の独特な出音は非常に特徴的で、楽器のアタック部分がつねに二重の厚みを持っているようなふうに聴こえます。これはハウジングからの反射が微妙に遅れて耳に到達することが原因かもしれませんが、エコーやリバーブのような遅い残響ではなく、出音そのものに被さるような二重の音色が、独特の音の厚みと存在感を出しているのかもしれません。
ポップスやジャズなどではこの厚みがポジティブな音楽効果を発揮して、一般的なヘッドホンよりもパワー感のあふれる音楽体験を得られるのですが、音楽のジャンルによっては破綻しているように思えることもありました。具体的な例ですとクラシックのヴァイオリン・ソリスト演奏などで、普段他のヘッドホンで聞き慣れているヴァイオリンの音色が、P5 Series 2を使うと不自然に厚みをもったチェロのような響きをするため、本来のヴァイオリンの空を舞うような軽涼な音色が台無しになってしまうように聴こえます。このようにあえて軽快で颯爽とした楽器や演奏も、極端に太く厚みを持たせてしまうのが、P5 Series 2の個性であり欠点でもあると思います。これを他社と差別化する個性と見るか、問題とするかで意見が分かれそうです。
次に、上位機種のP7についてですが、このヘッドホンの素晴らしいところは、P5 Series 2のような厚みをもった濃い音色でありながら、サウンドステージがものすごく広くなった、驚くべきチューニングです。
用途にもよりますが、ハウジングの大きささえ許容できれば、P5 Series 2よりもP7を購入したほうが絶対に良いと思います。
とくにP7のサウンドステージの広さは特筆すべきで、楽器の分離や距離感などにおいてはAKG K701やゼンハイザー HD650など大型開放型ヘッドホンに引けをとらないくらいで、しかもP7は密閉型、ポータブル、ということを踏まえると、今まで自分が体験したことのない空間表現の面白いヘッドホンだと思いました。
P7は遮音性もかなり良好なので、他社モデルと比較してもトップクラスのポータブルヘッドホンではないでしょうか。サウンドステージは開放型のものとは違い、密閉型ヘッドホン独特の外部から遮断された閉鎖感の中で、各楽器が絶妙な距離感で鳴っているといった感じです。
K701などの開放型ヘッドホンは一般的に周囲の環境騒音なども拾いながら、まるでヘッドホンを着けていないかのような自然な日常空間から音楽が流れてくるようなイメージですが、B&W P7は逆に、自分専用の無響室やリスニングルームの中にいるような、独立した空間を形成してくれる感じです。
ポータブルで密閉型というとベイヤーダイナミックのT5pやOppoのPM-3などがありますし、家庭用でしたらソニーのMDR-Z7やオーディオテクニカATH-W1000Zなども候補に入ってくる価格帯ですが、このB&W P7にはそれらでは決して得られない独特の個性があるため、軽い気持ちでショップで試聴して、惚れ込んでしまう人も多いと思います。
例えばベイヤーダイナミックT5pの場合は、たとえ密閉型とはいっても遮音性はそこまで高くないのでT90・T1のようなクリアなサウンドを目指したヘッドホンだと思えますし、Oppo PM-3はもっと耳に近いところでダイレクトに音が鳴っている、密閉型らしい音質です。個人的には、音の傾向と空間表現から、P7はなんとなくゼンハイザー HD650やフィリップス Fidelio X1に似た感じのディープなサウンドに、さらに遮音性がプラスされたようなヘッドホンだと感じました。
P7の欠点についてですが、まず音質面では、P5 Series 2と同じように若干厚すぎる中低域です。厚化粧というわけではないのですが、普段聴き慣れているサウンドよりも色濃いので戸惑います。サウンドステージは確かに広いのですが、伸びゆく開放的な空気感というよりも、広めのスタジオに点在している音像といった感じが強いです。これは生演奏を聴いているというよりも、ステレオのスピーカーリスニングに近いと思うので、B&Wの意図している感覚どおりなのかもしれません。ただしスピーカーリスニングといっても、B&Wの800シリーズというよりも古典的なタンノイとかの印象です。
P7のもう一つの欠点はやはりポータブル用途には大きすぎるサイズです。付属のケーブルが1.2mと短いため延長ケーブルを別途購入しないと据置アンプでのリスニングには向いていません。つまりメーカー自身がポータブル向けオンリーと割り切った商品なのですが(家庭ではB&Wスピーカーを聴けということでしょうか・・・)、それにしてはサイズがネックになります。ヘッドホンマニアにありがちですが、旅行に行く際に持っていくヘッドホンを選ぶ際に色々と悩むのですが、自分も毎回P7を持って行こうと思いながら、実際トランクに入れてみると場所を取り過ぎるので断念してHD25クラスのコンパクトヘッドホンを持っていくことになります(最近はベイヤーダイナミックT51pを持っていきます)。個人的な感想ですが、P7は出先で移動中に使うには威圧感が強すぎますし、ホテルなどで使うなら開放型やセミオープンでもいいかな、とも思えます。
P7についてもう一つ気になったのは、新品を開封後、ものすごい薬品臭がして装着していられないくらい臭かったです。多分レザーを使っているせいだと思いますが、開封後、手元に置いてあるだけで刺激臭で頭が痛くなってきました。この匂いが消えるまで1周間ほどかかったので、ギフトなどで贈呈する際には注意が必要かもしれません。過去何十種類ものヘッドホンを開封してきましたが、ここまで臭かったのは初めてです。
色々と書きましたが、P5 Series 2 とP7はどちらも個性的なヘッドホンなのでぜひ真剣に試聴してもらいたいです。とくにモニター系ヘッドホンしか使ったことがない方なら面白い体験かもしれません、どちらもB&Wらしいスピーカーリスニング的なサウンドチューニングを達成できた意欲的な商品です。
P5 Series 2とP7を比較した場合、個人的には少し値段が高くても上位機種のP7のほうが全体的におすすめですが、カジュアルに散歩中に使うならばP5 Series 2は良きパートナーになると思います。どちらも高級万年筆やエスプレッソ・マシンのような粋な落ち着いた紳士的デザインなので、男性・女性ともに、スーツで通勤中などに上質な音楽鑑賞のひとときを楽しみたい人におすすめな、すばらしいヘッドホンです。
将来的に、ポータブル用途にこだわらずに、P7のハウジングやドライバ技術を応用した開放型ヘッドホンなどを開発してくれると面白いかと思います。また、個人的な要望ですがスピーカーメーカーというノウハウを活用して、往年の銘器AKG K1000のような巨大イヤースピーカーなんか、作ってくれませんかね。