2015年10月17日土曜日

AKG K3003 のニセモノについて

今回はしょうもない話なのですが、ヘッドホンのニセモノについてです。

昨日、とあるミーティングで会った方がK3003を使っていたため、話題をふってみたところ、「実はこれ、ニセモノなんだ」と衝撃の事実を打ち明けられました。

なんでも、定価の半額以下で売っていたから、ニセモノかも知れないけど興味本位で買ってみたら、案の定ニセモノだったそうです。下記の写真は、私の所有している本物と、この人が持っていたニセモノを並べてみたものですが、みなさんはどちらが本物だかわかるでしょうか?

どちらかがニセモノです・・・



何事も、ブームになると模造品やパチモノといった製品が登場するのは仕方がないことで、たとえば高級腕時計からハンドバッグ、iPhoneからエアージョーダンまで、いわゆる「ルックス」が重要な要素となっているファッションアイテムにおいては、模造品が流通すること自体が、その商品の知名度やブランド力を物語っているようで、社会的な意味合いも持っていると思います。

一見してニセモノだとわかるような低レベルなコピー商品はもはや過去の話で、最近では中国などの製造工場もかなりスキルアップしているため(そもそもK3003自体が中国製ですし)、ニセモノのレベルも上がってきています。

もちろん、ブランドロゴや商標登録などを精巧に模したニセモノ商品は違法なので、それと知った上で売買した場合は、販売者はもとより、購入者も責任を問われる場合があるわけですが、実際にネットオークションや中古ショップなどの場合は販売者が必ずしも悪意を持っているわけではなく、「知らなかった」場合もあるので、なかなか判別が難しいケースもあります。

ブランドロゴを模した高級ハンドバッグなどでしたら、それを承知のうえで使っている方も多いと思いますが、ヘッドホンやイヤホンの場合はデザインはもとより内部の構造や音質が重要なので、たとえ形状がソックリに真似てあるとしても音が悪ければどうしようもありません。

しかし、一応ヘッドホンらしく音さえ出ていれば、実際に本物と聴き比べてみるまでは、本人はそれがニセモノだとは気がつかないため、本物と信じてニセモノヘッドホンを愛用している人は、実は結構多いみたいです。

とくに、正規代理店ではなく、格安商品や型落ち品、中古などをネットオークションやマーケットプレイスで物色しているユーザーは、ニセモノを掴まされる確立が高くなります。怖いのは、購入した大多数の人間はニセモノだという事実に気がついていないため、たとえばeBayなどの購入者レビューは概ね良好なケースが多いということです。「正規ショップとくらべて、こんなに安く買えて嬉しい」と思っているわけですから、ショップ評価が5つ星になるのは当然ですね。

たとえば、中古品を扱うショップも、ニセモノが転売されたりしないように、買い取り査定の段階で入念な注意が必要になります。

私自身も、これまで何度もニセモノヘッドホンに遭遇した経験があるのですが、それらは大抵、知人や友人が持ってきたものを確認して見るとニセモノだった、という状況が多いです。

思い出せば、たしか最初にニセモノの存在を知ったのは、かれこれ10年以上前にAKGのK12Pというイヤホンが安くて音が良い、ということで友達に勧めたところ、彼は後日「ネットショップで格安で買った」と喜んでいたのですが、いざ届いたものを確認したら、粗悪なブリスターパックに封入されているチープな模造品でした。あの1000円台の超低価格モデルであるK12Pにまでニセモノがあるのか、ど驚きました。また、K24PやQ460でも同様にニセモノを買った友人に遭遇しているため、AKGのストリート系製品はコピーされるケースが多いみたいです。

余談ですが、Q460の場合はニセモノだと気が付かなかったのですが、なんとステレオの左右が逆に配線されていたのでAKGに問い合わせたらニセモノだと判明しました。(詰めが甘いですね)。

また、一番有名どころでは、ゼンハイザーのイヤホンは、路地裏のパソコンショップやマーケットプレイスなどで売っているものはほぼニセモノなんじゃないかと思われるくらい多数見かけます。とくにCXシリーズやIE80などの売れ筋から、IE800のような高級モデルまで、精巧なニセモノが存在します。



今回のK3003についてですが、私自身も所有者に言われるまでは、これがニセモノだと気が付きませんでした。もし所有者が「格安で譲ってあげる」と言っていたら、喜んで買っていたかもしれません。

冒頭の写真で、正解は左がニセモノで、右がホンモノです。
細かく観察してみると、ステンレス製ハウジングの角部分の面取りなどが荒っぽいことがわかるのですが、それだけでは確証がもてません。AKG自体が何度が生産工場を変更している場合もありますしね。少なくとも、定価半額以下の価格で想定できるクオリティを凌駕しています。

実際に装着してみると、ニセモノのほうが若干キツめで、ゴツゴツしていました。もちろんニセモノも、本物同様に三種類のフィルタが付属しています。しかし、何故か本物とニセモノではフィルタのネジが若干違うようで、互換性が無いようです。

ここまで似ていると、じゃあニセモノでも十分なんじゃないか、と思われるかもしれませんが、やはり音が違います。

ニセモノも、意外と「ハイエンド」っぽい音色で、どちらかというとサラサラとした繊細な音色です。「高解像度」という言葉がぴったり合うような音作りで、なんとなくシングルBA型なんかを彷彿させます。このニセモノと比べると、本物はさらに音場が展開されて中高域に輝くような存在感を持ち、全体的に音楽性を象る要素が付加されたような印象でした。

本来であれば、模写で簡単コピーできるのであれば、その程度の簡単な商品だったということなのですが、正直このK3003の場合はあまりの精巧さに脱帽しました。

Head-Fi掲示板などでたまにニセモノ比較写真などが載っていることがありますが、本当に素人目では区別がつかないです。(例:http://www.head-fi.org/t/457420/warning-fake-ie8s-comparison-pictures-included)

ヘッドホンマニアの皆さんの大半は、ヨドバシやeイヤホン、フジヤなどの正規販売店で購入していると思うので、こういったニセモノと遭遇する機会は少ないと思います。万が一変なショップやサイトでニセモノを掴まされてしまった場合は、保証が効かずショップも雲隠れで、泣き寝入りといったケースが多いため注意が必要です。