2020年10月27日火曜日

Shure Aonic 4 & Aonic 5 イヤホンの試聴レビュー

 ちょっと前にShureのワイヤレスアクティブノイズキャンセリングヘッドホンAonic 50について書きましたが、今回はそれと同じAonicシリーズのイヤホン「Aonic 4」と「Aonic 5」を試聴してみました。

Shure Aonic 5

ShureといえばSE215やSE535などのプロフェッショナルIEMイヤホンが有名ですが、今作はそれらとは別の新たなイヤホンシリーズです。

Shure Aonic

米国を代表するプロオーディオ機器メーカーShureはマイクロフォンやレコード針などの製造から始まり、その技術を応用したイヤホン・ヘッドホンを生み出し、世界中で好評を得ています。

これまでのモデルを見ると、ヘッドホンはレコーディングスタジオでのモニター用途、イヤホンはライブステージ上でのイヤモニ(IEM)といった具合に、主にクリエーター・パフォーマー側の視点からの商品展開でした。

ところが、それらは実は音楽鑑賞用にも良いという口コミが広がり、高級イヤホンブームの火付け役になったわけですが、当時はここまでコンシューマー向けに売れるとはShure自身も想像していなかっただろうと思います。

SE846

中でもSE215~SE846のIEMイヤホンシリーズは、それまで個人の耳型をとって特注してもらう「カスタムIEM」というスタイルが主流だったプロ業界において、シリコンイヤピースでも同じくらいのフィットや遮音性が得られるという画期的な商品であり、手軽に良好なフィット感が得られ、通勤通学などで使っても効果抜群ということで、大人気になったのも不思議ではありません。

SE215 Special Edition

ラインナップを見ても、1万円程度のエントリーモデルSE215でも決して侮れない高音質を誇っており、そこからSE425、SE535、SE846と、最高8万円台まで段階的にグレードアップできるため、まずSE215から手を付けて、Shureの中だけでアップグレードを繰り返して、結局SE846まで行ってしまったという人も多いだろうと思います。

音質の良さはもちろんのこと、Shureの魅力というのは、プロ機器メーカーだけあって、他社のような無闇なモデルチェンジを行わず、ずっと同じモデルを作り続けている事、つまり最初から設計の完成度が高く、信頼できる製品である、という点は大きいです。SEシリーズは2010年に生まれて、すでに10年間も変わらず売り続けているというのは凄い事だと思います。

また、SE215からSE846まで、全て統一されたMMCXケーブルコネクターを採用したことで、社外高級ケーブルアップグレードという一大ジャンルを確立しましたし、さらに、本体デザインを変えずにBluetoothワイヤレス化キットを同梱するなど、いつまでも古く感じさせない企画力もあります。

そんなわけでロングセラーとして好評を得ているSEシリーズイヤホンですが、そもそもの開発意図はステージもしくはスタジオでのモニター用途なので、コンシューマー向けとして本当に妥当なのかという疑問は常にありました。これは、たとえば家庭用スピーカーとスタジオモニタースピーカーの違いのようなもので、どちらが高音質かという優劣の差ではなく、用途に応じてサウンドチューニングが異なるという話です。

つまり、プロ用モニターは第一印象では凄い高解像で「全部聴こえる」という快感に魅了されるわけですが、長らく使っていると、下手な録音ではシビアに聴こえてしまい、常に「粗探し」をしているようで聴き疲れてしまいがちです。プロ用モニターのポテンシャルの高さは認めるものの、別腹でもっと「聴きやすい」モデルを購入して使っているという人も多いでしょう。

そこで、これまでのSEシリーズをコンシューマー寄りにアレンジするのではなく、全く別ラインとして登場したのがAonicシリーズです。Aonicシリーズの公式サイトを見ると、「Born in the Studio」つまり遮音性や耐久性といった部分はShureのプロスタジオモデルと同等で妥協せず、サウンド面においては音楽鑑賞用として、音楽に浸るリスニング環境、といったキーワードを重視しているようです。

Aonic 4は約3万円で、1×ダイナミックドライバー+1×BAの2WAYハイブリッド構成です。SEシリーズと比較してみると、シングルダイナミックのSE215が約1万円、2BAのSE425が約3万円なので、妥当な価格設定です。以前はこれらの中間に1BAのSE315というのがありましたが、廃番になったようです。

Aonic 5は約6万円で3BAタイプです。同じく3BAのSE535が5万円程度ですが、発売から10年経っている事を考慮すると、こちらも妥当だと思います。

他にも新作で、もうちょっと安い1BAのAonic 3というモデルもあるのですが、こちらは残念ながら試聴機を聴けていません。

また、SE215もコンシューマー向けとして大人気なので、Aonic 215という別パッケージ版も登場したようです。こちらは商品自体の型番はSE215のまま(SE215DYBL+UNI-A: Blue AONIC 215など)で、パッケージや付属ケースが違うようなので、楽器店向けと家電店向けで流通を分けるためでしょうか。

Aonic 4 & Aonic 5

Aonic 4とAonic 5のどちらもAonic 50と同じような筒状パッケージです。Aonic 50ではあまりにも巨大なパッケージやキャリーケースに困惑したのですが、今回はイヤホンということもあり、一般的なサイズに収まっています。デパート菓子とか、CD-Rのバルクスピンドルみたいなサイズ感といえば伝わるでしょうか。付属キャリーケースも従来のSEシリーズのものよりも若干大きいですが、十分携帯できるサイズです。

パッケージと付属品

付属品はシリコンイヤピースや低反発ウレタンイヤピース、6.35mmアダプターなどです。さらにAonic 5にのみ、後述する交換ノズルのための専用工具も付属しています。

Aonic 4

Aonic 4は黒と白の二色から選べるのですが、今回の試聴機は黒でした。外側はどちらもスモークっぽいクリアなので、内部のダイナミックドライバーがうっすらと見えます。サイズ的にはSE215よりも若干厚めの、Westone旧タイプとかに近い感じで、コンパクトにまとまっています。

Aonic 5


Aonic 5は赤・黒・クリアの三色があり、試聴機はクリアだったので、中のBAドライバーがよく見えます。マルチBAというと乱雑に絡まっているエナメル線が見えたりしますが、Shureはさすが大手だけあって、BAユニットがしっかりと黒い枠組みのようなものにモジュラーに組み付けられており、信頼性が高そうですし、個体差も少なそうです。

SE846と比較

見た目からもSE846の弟分なんて言われているそうですが、確かに並べて比べてみるとよく似ています。

SE535SEと比較

SE535と並べて比べてみると、Aonicの方がちょっと厚いくらいで、大体のサイズ感やノズルの長さ、角度などは同じようです。SEシリーズの装着感は大変優れているので、Aonicもあえて下手な事はせず、同じような形状を維持しています。

SE846とAonic 5

SEシリーズとの違いでいうと、MMCX端子の部品が変更されていますね。Shureに限らず、MMCXというのはラフに扱うと故障しやすく、必ずしも理想的コネクターではないので、Shureもきっと気を使っている部分だと思います。

余談になりますが、写真を見るとわかるように、MMCX端子の中心にある接点はカップ状になっており、大抵ここが故障しやすいです。たとえば精度の低い社外品ケーブルなんかを装着してしまうと、ケーブル側のセンターピンが太かったり、左右にグラグラしたりで、このカップが広がってしまい、一旦そうなると、純正ケーブルに戻してもピンとカップが接触不良を起こしてしまう、というのがよくあるパターンです。そのためMMCXケーブルはとくに信頼のおけるメーカー品のみ使うように注意してください。

ノズル交換と説明書

Aonic 5はSE846と同様にノズル部分が分解できて、サウンドが異なるノズルが三種類付属しています。このあたりもSE846の弟分と言えるポイントです。

また、Shureのイヤホンはノズルがソニーなどと比べて細いので、この部分が折れそうで心配だという人もいるようですが(実際に折れたのは見たことがありませんが)、高価なモデルだからこそ、万が一折れても自分で分解交換できるというのは安心感があります。

SE846とデザインが違います

Aonic 5に付属しているノズルはプラスチック製で、三種類で色が濃くなるにつれて高音がカットされるようです。ちなみに工具や固定ネジの仕組みはSE846と同じなのですが、ノズルの本体との嵌合部分の形状が違うので、両者で互換性はありません。

SE846はノズルが金属製なので金属っぽい音がすると想像するかもしれませんが、実は内部にプラスチックのチューブが入っています。

ケーブルを綺麗にまとめようとしても、こうなります

Aonic 4・Aonic 5のどちらも、ケーブルはSE215~SE535に同梱しているような黒いビニール線です。音が悪いとは思いませんが、かなり癖がつきやすく扱いにくいので、個人的にあまり好きではありません。私が持っているSE215やSE535はどちらも社外品に交換して使っています。

インピーダンス

Aonic 4・Aonic 5のインピーダンスと位相グラフはこんな感じです。

インピーダンス
位相

Aonic 4は低音側がSE215と重なっているのはダイナミックドライバーを搭載しているからでしょうか。中~高域にかけてはBAがあるのでかなり印象が変わります。最低インピーダンスは7Ω程度で、900Hz付近で発生します。

Aonic 5は同じく3BAのSE535と非常によく似た特性です。だからといって同じサウンドになるわけではありませんが、BAユニットやクロスオーバー帯域の選び方などの設計手法が似ているという事になります。こちらは最低インピーダンスの9Ωが5.5kHzに現れます。

どちらもクロスオーバー地点でインピーダンスが極端に下がるので、アンプの駆動能力・出力インピーダンスによってサウンドが影響を受けやすい点は注意が必要です。つまり優れたヘッドホンアンプを使うメリットがあります。このあたりはShureらしいというか、ライバルWestoneとの大きな違いです。

音質とか

今回の試聴では、あいかわらず普段から使い慣れているHiby R6PRO DAPを使いました。IEMイヤホンはこのようなDAPで鳴らすのが一般的でしょう。

Hiby R6PRO

イヤピースはSpinFitを使いました。Westoneイヤホンだと最近はコンプライのProfessional P-Seriesという特殊なやつを気に入って使っているのですが、ShureではどちらかというとSpinFitの方を使う頻度が高いです。

コンプライProfessional P-Series

Effect Audio Ares IIケーブル

ケーブルは付属品を主に使いました。自前のSE535ではEffect Audio Ares IIというケーブルを使っているので、それと交換してみたりもしましたが、中域の質感が若干綺麗な感じはするものの、全体の傾向が大きく変わるほどでもありません。むしろ取り回しやすさ重視で社外ケーブルを使っているようなものです。


まずAonic 4の方から聴いてみたところ、これはまさにSE215のサウンドにBAによる中高域の解像感が多少追加されたような、見た目そのままのサウンドです。

つまり、基本として温厚なダイナミックドライバーらしいサウンドが主体で、SE215ではちょっと物足りなかった切れ味やクリア感が、Aonic 4では上手に補われています。ただし、不快なほどに高音が派手になったり、シャリシャリしたりはしません。あくまでリスニング向けの仕上がりで、これがシングルダイナミックだと言われたら納得できる程度です。インピーダンスや能率もほぼ同じなので、音量も大体一緒で、DAPでも極端に鳴らしにくいとか、感度が高すぎてノイズが目立つという事はありません。

SE215自体が音質と扱いやすさの両方で非常に優秀なイヤホンなので、本質的に悪いわけがありません。むしろ、SE215が1万円台であれほど高音質なのだから、Aonic 4が3万円相当の価値を発揮してくれるのか心配だったのですが、ちゃんとそれを実現出来ているのでホッとしました。しかも、あえて同じ路線の上位互換というイメージをしっかりと打ち出していることも、価格相応のアップグレード感に十分な説得力があります。

そもそもSE215自体がプロ用というよりもむしろカジュアルに使えるコンシューマー向けの印象があったので、Aonicシリーズとよく似たチューニングであっても不思議ではありません。(実際、今回Aonicシリーズの登場に合わせて、SE215も「Aonic 215」という名前でも販売しています)。

Aonic 4はShureらしく全体的なバランス感が優れているので、ハイブリッド型にありがちなクロスオーバーの不自然さや、ダイナミックドライバーとBAが別々に鳴っているような違和感が無く、また、中高域はBAによって補われていると言っても、BAらしくスッキリ素朴に伸びていく感じなので、たとえば他社でよくあるような、ダイナミックドライバーにメタルハウジングやメタルコーディングを施してキンキンさせるような高音の載せ方ではありません。さらに、中堅価格帯のハイブリッドというと、他社ならもっと二種類のドライバーのコントラストを見せつけるために派手なドンシャリに仕上げたがるところですが、このあたりはさすがShureっぽく落ち着いた大人なチューニングに留めているあたりに関心します。

逆に言うと、他社ほど色艶や美音っぽさが出せず、ちょっと地味で温厚すぎるので、気楽に付き合うならそれでも十分ですが、同価格帯の中国ブランドとかと比べると派手さに欠けて、面白みは少ないです。単純にSE215の上位互換だと言うと、3万円はちょっと高くも感じるので、そのあたりをどう捉えるかで評価が変わってきそうです。良い意味で無難な定番モデル、といったところです。

SE535SEとAonic 4


次にAonic 5の方ですが、こちらは先程SE535 (赤SE)とインピーダンスグラフがよく似ていましたが、実際のサウンドは全く違います。インピーダンスグラフというのは鳴らしやすさやアンプへの要求を探るには有用ですが、それだけで音質を評価することは出来ないということを再認識できました。

Aonicシリーズ全体を通してのコンセプトとして、「中~低音が丸い」というのが、Aonic 5でもやはり感じられます。コロコロと転がるというか、尖ったり角ばったりする要素が一切無く、温厚でスムーズです。SE535とAonic 5でどちらが良いか、という話になると、音楽ジャンルによって正反対に分かれると思います。

とくに低音の表現に大きな差があります。Aonic 5は丸く豊かに盛り上がり、つながりが良く、明確なピークが無いため、自然な雰囲気や情景が得意で、上質なポップスボーカルなどでゆったりと味わうような聴き方が得意です。一方、SE535は低音の瞬間的なスピード感や、張りのある音圧が得意なので、ハウス・トランスなどのリズムはこちらで聴いたほうが圧倒的に楽しめます。そういうキックドラムをAonic 5で聴いても、量的には同じなのに、端切れが悪くてビート感が出ません。

このあたりは、冒頭で言ったような、スタジオモニタースピーカーと家庭用スピーカーの違いみたいなものが一番強く感じられる部分です。特に打ち込みのダンスミュージック系を聴く人は、一般的な家庭用スピーカーよりもアクティブニアフィールドなどのスタジオモニタースピーカーを好む人が多いように思います。実際のトラックメーカーもそのようなニアフィールドのDTM環境が主流ですし、瞬発的なパンチという意味ではクラブPAと近い部分もあります。

ようするに、Aonic 5とSE535は、同じ3BAでありながら、家庭用スピーカーとアクティブニアフィールドという二種類のリスニングスタイルをしっかり分けて表現出来ている、という点で、Shureのサウンドチューニングの上手さを実感できます。

SE846とAonic 5

Aonic 5は6万円程度ですから、もうちょっとで9万円台のSE846に手が届きそう、というのも悩ましい点だと思います。個人的な好みでいうと、ブラインドで両者を聴き比べてみると、やはり毎回必ずSE846の方が良いと思えました。(装着感はほとんど一緒なので、たまに本当にどっちを聴いているのか忘れてしまいます)。

SE846はSE535などと同系の切れ味やスピード感のあるサウンドですが、SE535やAonic 5などには無い特性として、全体的な空間の広さや、音像ひとつひとつの空間余裕といったスケールの大きさがあり、これのおかげで、どうしてもSE846の素晴らしさが際立ってしまいます。また、個人的に好きなShureヘッドホンSRH1540のサウンドに一番近いのもSE846だと思います。つまり高級イヤホンだからといって奇抜な濃い味付けには走らず、Shureの目指しているレファレンスサウンドに一番忠実に近づけているのがSE846です。ただし分析的でもあるので、多くの人にとっては、ちょっと聴き疲れするようなサウンドです。そのためShureのラインナップの中でもリスニング向けとしてAonic 5の存在意義が失われる事はありません。

ラインナップの位置付けで考えてみると、SE535に対してAonic 5があるわけで、今のところSE846に対するAonicが存在していない、という風にも捉えられます。もし今後Aonicシリーズの成功を踏まえて、最上位Aonicイヤホンなんかが登場したとしたら、それこそ10万円超の高価なモデルになるかもしれません。もしくはShureには静電型KSEイヤホンがありますから、それを買えという話なのかもしれません。なんにせよ、どのモデルも優秀で、ラインナップ上のポジショニングが的確、妥当だと思えてしまうところが、なんともShureらしいです。

ノズル交換

最後に、Aonic 5のノズル交換についてですが、これはかなり効果があるので、試聴の際にはもし可能ならぜひ試してみてください。

個人的な好みで言うと、試聴では主に中間のグレーノズルを使っていましたが、高音が一番カットされる黒いノズルでもちょうど良いくらいでした。聴こえ方には個人差があると思いますし、イヤピースなどでも印象は変わりますが、黒いノズルでSE846の中間ノズルと同じくらいの感覚だと思います。

中間のグレーノズルを使うとSE535と同程度か、むしろ、もうちょっと高音が出てるかな、という感じで、さらに高音が一番出る透明ノズルだと、あまりにも出すぎて、私では使う機会は無いと思います。

イヤホン本体が生み出すサウンド自体は変わらず、高音のみノズル内の綿の詰め物みたいなフィルターでカットするだけの仕組みなので、つまりそれだけAonic 本体は高音が大量に出ているという事です。それ以外の帯域はノズル交換の影響をあまり受けません。

Aonic 4でも言ったように、いわゆる金属でキンキン響かせるような二次的な高音ではなく、BAドライバーそのものから発せられている高音なので、鳴り方はスッキリしていますし、他の帯域への邪魔をしません。フラットな周波数特性の定義は人それぞれで曖昧なので、最初からあえて高音を多めに出るように設計した上で、フィルターで任意にカットするという方法はやはりShureらしいです。

三段階から選べるというのは柔軟性があって嬉しいですし、高価なイヤホンですから、買ったあとで後悔するリスクも少ないのは良いことです。私が使うなら黒かグレーのどちらでも満足できますが、クリアはちょっと刺激的すぎます。

ただし、どのノズルを使っていたかで高音の印象は大きく変わるので、ネットレビューなどではしっかり明記していないと参考にできない点には注意が必要です。(大抵は標準のグレーノズルだと思いますが)。

おわりに

温厚で丸みを帯びたAonicシリーズのサウンドは、これまでのShure SEシリーズでのイメージとは一味違うので意表を突かれましたが、新たなロングセラーを目指して丁寧に仕上げたという印象が伝わりました。同価格帯のイヤホンを色々と聴き比べて、多くの人の最終候補として残るような、不満の少ない、間違い無いサウンドです。

もちろん定番のSE535やSE846などはそのまま平行して販売されつづけるので、これまでのShureらしいサウンドが欲しければそちらを買えば済む話です。昨今、多くのイヤホンメーカーが統一感の無い奇抜な新作モデルを乱発する中で、Shureはこれまで10年をかけてSEシリーズの確固たる地位と評価を得たわけで、それらは今後も好調に売れ続けるでしょう。これから購入を検討している人にとっては、SEとAonicのどちらを買うべきか悩ましいところです。

Aonicシリーズの登場について、個人的な感想としては、二つの意義があると思います。まず、近頃続々と現れている新参イヤホンメーカーに対して、改めてShureのクオリティや完成度の高さを見せつけてくれました。特に何十万円もするようなハイエンドイヤホンにばかり目が行って、定番のShureを実は一度も聴いたことが無いというイヤホンマニアも増えてきているようなので、これを機会にAonic・SEシリーズともに多くの人に触れてもらえると嬉しいです。

もう一つ、よく聞く話として、SE215のサウンドが好きだけど、その上のモデルは趣味に合わないから、他のブランドに乗り換えた、という人が結構多いです。たしかにSE215はシングルダイナミック型の傑作ですが、Shureの中では異色な存在とも言えます。今回そこにAonic 4という上位機種が登場し、さらにAonic 5もマルチBAでありながらSE215ユーザーでも親和性を感じるようなサウンドに仕上がっているため、Shureのラインナップ上に明確な二つの道筋が生まれて、より多くのユーザーを取り込む事ができるようになりました。

ところで、SEシリーズではBluetoothワイヤレスアダプターの有無などで同じイヤホンでも複数のパッケージが存在していて、購入の際に混乱しがちですが、Aonic 4・Aonic 5は今のところ有線パッケージのみで、ワイヤレスアダプターは別売もしくは別箱セット販売になっているようです。

とくにShureは旧タイプのワイヤレスキットBT1が廃番になり、Bluetooth 5.0対応の新型BT2、そして新たなTrue Wireless Secure Fitアダプターと、短期間で色々な選択肢を出しているため、あえて同梱ではなくユーザーが好みで追加購入できるようになっているのはむしろありがたいです。Shureは人気ブランドだけあって偽物や保証の効かない並行輸入品とかも多いらしいので、購入の際には定評のあるショップで買うなど心がけてください。