2021年10月21日木曜日

Beyerdynamic DT700 PRO X & DT900 PRO X ヘッドホンの試聴レビュー

 ベイヤーダイナミックから新作ヘッドホンが登場したので試聴してみました。DT700 PRO XとDT900PRO Xという名前からも想像できるように、ベイヤーが得意とする密閉型と開放型プロ用モニターヘッドホンです。

DT700 PRO X・DT900 PRO X

日本ではまだ発売していないようなので、今回は海外モデルを試聴しましたが、ヨーロッパでの価格設定はそれぞれDT770/DT990とDT1770/DT1990の中間に収まるような位置づけのようです。

ベイヤーダイナミック

今回の新作の原型となるベイヤーダイナミックのDT770・DT880・DT990という三兄弟は、それぞれ密閉型・セミオープン・開放型デザインで、登場からすでに40年が経とうという今でもベストセラーとして好評を得ている驚異的なヘッドホンです。

発売以来、数々のマイナーチェンジやバリエーション展開を経てきましたが、肝心なのは、今も昔と同じようにドイツの本社工場で丁寧に作られており、世界各国の一流レコーディングスタジオや放送局で愛用されている事です。

まさに伝説級のヘッドホンです

日本では一昔前まで渡来物という事でちょっとした高級ヘッドホンという扱いでしたが、ヘッドホンブームで海外メーカー勢が手に入りやすくなった事で、今では2万円程度で購入できるようになりました。ドイツ製で堅牢高性能なプロ用ヘッドホンがこの値段で買えるというのは凄いことだと思います。

以来ベイヤーはT1やT5pなどオーディオファイル向けのハイエンド機や、カジュアルなポータブル機など多方面に展開してきましたが、プロスタジオ用モデルとなると、やはりこれら三兄弟が業界で高い支持を得てきました。日本でいうところのソニーMDR-CD900STみたいな存在でしょうか。

DT1770 PRO・DT1990 PRO

2016年に上位機種としてDT1770 PROとDT1990 PROが登場、値段は一気に5万円超になり、オーディオファイル機のアイデアを取り入れた高性能ドライバーや着脱式ケーブルなど、価格に相応しいアップグレードモデルでした。私自身もベイヤーは色々と使ってきましたが、とりわけDT1770 PROは職場でのメインヘッドホンとして2016年の発売以来ずっと使い続けています。

そんなわけで、2万円程度でロングセラーのDT770・DT990と、5万円台で高級志向のDT1770・DT1990という二つのグレードに分かれていたところ、今回の新作DT700 PRO XとDT900 PRO Xは発売価格が249ユーロ、つまり約3万円台で、ちょうど中間に収まるような位置づけになっています。

今後もラインナップ全体の販売を継続するのか、それともこれから抜本的な見直しが行われるかは不明ですが、現時点での選択肢としては絶妙な価格設定だと思います。

ところで、音楽鑑賞メインのヘッドホンユーザーは、DT770とDT990なんて古臭いヘッドホンがそこまで言うほど人気なのか?、と疑問に思っているかもしれませんが、クリエイター用としては今でもトップクラスの存在感を放っています。

一昔前までなら、学校や職場は「黙々と無言で作業する」というイメージだったかもしれませんが、近頃は学生も社会人も文章や書類だけを扱うような作業は少なくなり、動画や音楽編集などのコンテンツを扱う機会が増え、必要に迫られてヘッドホンやマイクを購入するというような人も増えています。そんな中で、英語圏のクリエイター向けのバイヤーズガイドや、おすすめランキング動画なんかを見ると、必ずと言っていいほどDT770・DT990が上位にランクインしています。

もし私がランキングを作るとしても、低価格で広く流通しており、本格的な業務や音楽鑑賞に十分耐えうる音質で、長時間着用しても快適で、ヒンジなどが壊れにくく、交換部品も容易に手に入って、何十年も使い続けることができるヘッドホンとなると、やっぱりDT770・DT990を挙げるだろうと思います。最近はゲーミング向けにTYGR 300Rというバリエーションモデルも登場しており、そちらも好評です。

最近のヒット商品TYGR

そんなDT770・DT990ですが、やはり基礎設計が古いだけあって、ちょっとした不満点もあります。まずケーブルがハウジング直付けで着脱できません。高音質ケーブルにアップグレードするとかではなくて、実用上ケーブルが破損した時の事を考えると交換可能な方が有利です。一部モデルはコイルケーブルなのも好き嫌いが分かれます。

DT880 DT990 DT770 PRO DT880 PRO DT990 PRO

もう一つの不満点は、各モデルごとにバリエーションが多すぎて、さらに過去のラインナップも含めると手に負えません。ネットで画像検索してみると、過去に一時期だけ出していた全然見たこともないようなデザインなんかもあったり、現物を見ないでネットで買ったら型落ちロットだったりで、なおさら混乱します。

まずモデルごとに通常版とPRO版というデザインの違う二種類があり(PROはヘッドバンドがボタン留めされているので判別できます)、さらにドライバーも16, 32, 80, 250, 600Ωが存在しています。現行ラインナップでは、DT880とDT990通常版は32, 250, 600Ω版があり、どれもストレートケーブルで、一方DT880 PROとDT990 PRO版は250Ωのみで、3mコイルケーブルです。

バリエーションが多すぎます

密閉型DT770は現在PRO版しか販売しておらず、16, 32, 80, 250Ωがあり、それぞれケーブルやパッドが違うという、説明するだけでもややこしいラインナップです。

ショップ店員なら、ベイヤーを買うところまでは決意したのに、どのインピーダンスかで決めかねている客の光景を何度も見たことがあるでしょう。32Ωと600Ωくらいわかりやすければ用途で区別できますが、80Ωなんてのもあると中途半端すぎて逆に決意を鈍らせます。

DT700 PRO X・DT900 PRO X

今回の新作DT700 PRO X・DT900 PRO Xはどちらも(今のところ)インピーダンスは48Ωのみで、ケーブルも着脱可能(1.8mと3mストレートタイプが同梱)となっており、悩まずに選びやすくなりました。純粋に「密閉型ならDT700、開放型ならDT900」という選択肢だけです。製造は相変わらずドイツの本社工場製です。

上位モデルDT1770 PROとDT1990 PROはどちらも250Ωで、ケーブルは3mストレートと5mコイルケーブルなので、それらと比べると今作ではインピーダンスを下げてケーブルを短くすることでもうちょっとカジュアルに使えるように、ただしポータブルではなくて、あくまでプロ用、という絶妙なラインの配慮が伺えます。

DT700 PRO X・DT900 PRO X

ちなみにセミオープンのモデルは今のところ存在していません。個人的にセミオープンのDT880は結構好きだったのですが、やはり売れ筋はDT770とDT990なのでしょうか。

ところで、名前のPRO Xというのはベイヤーダイナミックが新たに掲げているシリーズの総称で、これらのヘッドホンの他にはダイナミックマイクのM70 PRO XとコンデンサーマイクのM90 PRO Xが合わせて登場しました。

PRO Xシリーズ

公式サイトによると、新作マイクのカテゴリーは「ホームレコーディングマイク」と書いてあるので、つまりPRO Xシリーズとは自宅で本格的なレコーディングを始めたい人のためのプロ入門機なのでしょう。ベイヤーダイナミックの現行ラインナップでも、大規模なコンサートステージ用マイクやカジュアルなポッドキャスト用マイクなどはPRO Xシリーズとは差別化されています。

実は私も先日、友人が合唱団に入っていて自宅でソロ歌唱の練習やデモのレコーディングを始めたいので、マイクとヘッドホンを一式買いたい、という問い合わせがありました。アマチュアといっても歌唱の経験は豊富な人ですから、安価なゲーミング用やポッドキャスト用のUSBマイク程度では不十分ですし、SM57など安価なステージ用マイクも用途が違いますし、高価なコンデンサーマイクを勧めるのも気が引けますし、こういうのが一番難しいです。(結局、定番のRode NT1セットを勧めて、それを買ったようです)。

ベイヤーのPRO Xというのは、まさにそのような人をターゲットにしているように思います。私も当時もしPRO Xが発売していたら友人に勧めていたかもしれません。

ボックス

パッケージは最近のベイヤーらしくプラスチックの片鱗も無いエコな紙箱です。ベイヤーというと白地に青の印象がありましたが、近頃は濃いグレーにオレンジがテーマカラーのようで、シンプルな共通ボックスにオレンジのテープを貼ってモデルを区別しているのは合理的でカッコいいと思います。

テープ

ちなみに底面でオレンジのテープを切らないと開封できないようになっています(写真はカッターで切った後です)。

細かい点ですが、ショップいわく使用済みのヘッドホンを箱に戻して新品未使用だとして返品したりオークションなどに出す人が多いらしく、それを防ぐためにもこういった開封シールは良いアイデアだと思います。

ボックス

ケーブル

内部の梱包も全て厚紙です。付属品は収納バッグとケーブルが2本同梱してあります。1.8mと3mのどちらも線材は同じストレートタイプで、3.5mmに6.35mmねじ込みアダプターです。写真にある謎のリボンはなんのためかわかりませんでした。

説明書類

説明書と一緒にステッカー類が入ってました。こういうオマケは嬉しいですね。

さらに説明書とは別にPRO X GUIDEという小冊子が同梱されており、PRO-Xシリーズ公式サイト(https://europe.beyerdynamic.com/pro-x)の方にも各モデルの用途の違いやマイクの選び方などの動画も載せたり、初心者サポートにかなり力を入れていることが感じ取れます。

意味不明な外注プロモ映像とかではなく、インタビューを中心に見ごたえのある実用的な解説動画ばかりなのがドイツらしいです。新しいシリーズを立ち上げるというのは、まさにこうあるべきだと思いました。

ところで、ヘッドホンに限らず、最近は説明書というとペラペラの注意事項のみしか入っていなかったり、実際に購入したユーザーの心情を甘く見ているメーカーが多いのは非常に残念です。ソーシャルメディアをやっていれば繋がっていると錯覚する弊害でしょうか。

特に今回のようなプロ入門者が買うようなヘッドホンの場合、このPRO Xのように、もうちょっと親身になって初歩的なセットアップ情報や活用法を紹介すべきだと思います。公式サイトを見ても、実際にユーザーが購入してからどう使うべきなのか、プロはどう使っているのか、という情報が欠落しているメーカーが多いです。その点ベイヤーはよく頑張っていると思います。

余談になりますが、ベイヤーと同じくドイツのメーカーで思い出したのは、最近Youtubeを見ていたら急にAdam Audioの広告(https://youtu.be/fgkqAfjrwCA)が入り、普段なら広告はすぐにスキップするところ、その動画の出来の良さに思わず最後まで見入ってしまいました。(ちなみに動画内ではヘッドホンはDT1770 PROを使っていたので、今回の話とも無関係ではありません・・・)。

著名なレコーディングプロデューサーが実際に録音セッションをしている風景を淡々と流しているだけなのですが、実際に市販している製品をプロはこういう環境で使っていて、配線とかマイク設置はこうやってるんだ、なんて見ながら知る事ができる、素晴らしい広告でした。オーディオブランドのプロモーションというのは個人的にこういうのが一番心に響きます。クラシック以外のジャンルも色々あるのでぜひご覧になってください。

デザイン

DT700 PRO X・DT900 PRO Xはどちらかというと上位モデルDT1770 PRO・DT1990 PROのデザインを踏襲して簡略化したようなイメージです。

ひと目でベイヤーとわかるデザインです

こうやって並べて比べてみると、ベイヤーらしいデザイン意匠はしっかりと継承していることがわかります。

簡略化というと安っぽいイメージがありますし、たしかに私も広報写真を見たときは、なんだか全体的にプラスチックっぽくてチープな印象があったのですが、実際に手にとって見ると、かなり良い感じです。

非常に快適なイヤーパッド

まず最初に言っておきたいのは、これら新型の装着感は個人的にこれまで使ってきたヘッドホンの中でもかなり上位の快適さを誇っていると思います。

T1やT5pなどと比べると、プロ用ということでしっかりした側圧がありますが、新しい円筒形の柔らかいイヤーパッドのおかげで負担を感じません。

DT770は277g、DT700は350g、DT1770は388gと、数字で見ると大した違いは無さそうですが、実際に普段DT1770に慣れていてDT700を装着してみると、その軽さに驚きます。

DT770のほうが軽いかもしれませんが、DT700の新型イヤーパッドがしっかりと耳周りをホールドしてくれるため、快適具合は断然DT700のほうが上です。単純に軽いというよりは、重量配分の大半がイヤーパッドとドライバーに集約されていて、ヘッドバンドなどの部品が大幅に軽量化されているため、一旦装着すれば頭の上に重い物が乗っているような感覚がありません。

開放型ハウジング
ヘッドバンド

ハウジングは一体成型のプラスチック製で、ヘッドバンドも同様にプラスチックのモールドです。このあたりでコストダウンと軽量化を図っているのだと思いますが、写真で見るのと比べて実物はプラスチックの素材や表面処理がとても良好で、安っぽく感じません。テカテカしておらず、工具に使われているプラスチックのような質感です。

私の勝手な憶測ですが、DT770やDT990は古い設計だけあって、プレス金属板やビニール、紙、綿などの古典的な素材を多用しており、安価な販売価格のわりに製造コストがかかる設計のように思えます。そもそも3D CAD設計が存在しなかった頃に生まれたヘッドホンです。

今回の新作ではそのあたりを最新の設計や高性能素材に置き換えて、モダンな製造設備に適応させるのが重要な課題だったように思えます。

スライダー

Made in Germany

Mini XLR

プラスチックっぽくなったと言っても、細かい部分を見ると、たとえばヘッドバンドの金属ハンガー導入部分はしっかりとネジ止めされたパーツになっていたり、ヘッドバンドクッションの端に三角形のゴムのタブがあり、これを引っ張ると簡単にクッションを外して交換できたり、ケーブルは上位モデルと同じ堅牢なMini XLR端子だったり、そういった細かい部分では一切妥協していないところが素晴らしいです。

他のヘッドホンメーカーのもっと高価なモデルを見ても、ここまで丁寧にユーザーに配慮した堅牢な設計を行っているメーカーはなかなかありません。

もちろん、実際に長期間使ってみないと、どんな不具合が起こるか想像できませんが、第一印象では、これまでベイヤーがプロに重宝されてきた要素に関しては一切妥協していない事が伺えました。

DT700 PRO Xはポートが見えます

密閉型のDT700 Xもほぼ同じデザインなので、側面のグリルを見ないとどちらかわかりません。注意して見ると、DT700 Xはハウジングのヒンジ付近に小さなポートが設けられています。完全密閉だと低音が出ないので、これでチューニングしているのでしょう。

DT700 PRO X

ハウジングに開放グリルが無いぶんだけ簡素に見えますが、やはりプラスチックの質感が良い感じです。

こういう細かい部分が丁寧に作られてます

どうでもいい細かい点ですが、メタルハンガーのヒンジ部品にはロゴ入りのプラスチックのボタンでアクセントを置いて、テーブルに置いた時に傷がつかないよう配慮してあったり、ヘッドバンドからのケーブル導入部分はピッタリとモールドされたゴム部品を使っていて断線を防ぐなど、こういった配慮のおかげでデザインに緩みのない「カチッとした」印象を与えてくれて、グラグラ、ギシギシする安っぽさがありません。他のメーカーも見習ってもらいたいです。

ちなみにヘッドバンドのヒンジは数年前に限定モデルDT177Xで回転範囲が改悪されていたせいで正しくフィットできなかった(耳の下に隙間ができる)苦い記憶があったので、今回も心配していたのですが、今作ではDT1770 PROと同じく十分に広い回転範囲があり、装着に問題はありませんでした。

クリップ式

新型イヤーパッドの質感をとても気に入ったので、DT1770 PROなどにも流用しようと思ったのですが、残念ながら取り付け方が変わっており、従来機との互換性は無さそうです。

しかし、この新しい取り付け方式は従来よりもかなり優れているアイデアだと思うので、あえて不満は言いません。

プラスチックのリングの位置決めノッチを合わせてから押し込むと、爪がパチンとはまる仕組みです。これまで延々とビロビロのビニールを引っ張って無理矢理装着していたのと比べると、この新型では数秒で簡単に交換できるようになりました。

外周リングとクッションを外す

DT900

せっかくなのでドライバーも確認してみました。さすが最新設計だけあって、ユニット全体がPCBソケットで着脱できるようになっていて驚きました。そうそう壊れるものでもありませんが、修理交換がますます手軽になります。

外周のプラスチックリングを外すのは従来と一緒ですが(スマホ分解用のプラスチックのヘラとかギターピックなどを使うと良いです)、中心のドライバーグリルが指でつまんで持ち上げやすい形状になっているため、そこを上に引っ張ると端子がソケットから抜ける仕組みです。

ちなみにこれらのドライバーはSTELLAR.45という新設計らしいのですが、DT1770PROなどのTesla 2.0ドライバーと違ってバッフルと一体化されたモジュールになっているのがユニークです。

DT700 PRO X

ドライバーは違うのでしょうか

念の為DT 700 PRO Xの方も確認してみましたが、ハウジングはどちらも簡素で、スポンジや綿などは詰められていませんでした。DT1770 PROなどでも思った事なのですが、こんなにシンプルなスカスカのハウジングで、どうやってここまで良い音を鳴らせるのか、いつも不思議に思います。こんなのを見た後では、複雑な音響チャンバーや高級木材とかで試行錯誤しているメーカーの立場がありません。

ちなみに両者のドライバーユニットはそっくりですが、番号が違うのと、DT900は50OHM、DT700は48OHMと印刷されているので、モデルごとにドライバーユニットの設計が違うのかはよくわかりません。今後交換部品リストなどが公開されれば判明するでしょう。

インピーダンス

公式スペックではどちらも48Ωということで、実際に測ってみるとこんな感じになりました。中域の最低インピーダンスはケーブル込みで51Ω程度なので、スペックにほぼピッタリ合っています。

インピーダンス

グラフの破線はそれぞれ実際に装着した状態で測定してみたものです。どちらも60Hz付近にピークがあり、装着具合でその付近が大きく変化するようです。特にメガネや帽子(最近だとマスク)を着用してイヤーパッドに隙間ができると、低音全般の響き方が変わりそうです。


上位モデルDT1770 PRO・DT1990 PROはどちらも250Ω仕様なので、そのままグラフに重ねてもあまり参考になりませんが、それでも全体的な設計の傾向はよく似ていることがわかります。高音側を見ると上位モデル(とくにDT1770)のほうが上下が激しいのが面白いですね。金属ハウジングだからなのか、それともドライバーの設計によるものでしょうか。

位相

上のグラフを電気的な位相で見るとこんな感じになります。低音と高音のプレゼンテーションに細かな違いがあるにせよ、どれも2kHz付近に合わせて肝心の中域はしっかりと管理しているあたりがモニターヘッドホンらしいです。

音質とか

DT700 PRO XとDT900 PRO Xのどちらも48Ω・100dB/mWというスペックなので、とりわけ鳴らしにくいというわけではありません。

ちなみにDT770 PROは96dB (/mW?)で、DT1770 PROは102dB/mWと書いてあるので、駆動能率はそれらの中間といった感じです。

これらのスペックから簡単に計算すると、100dB SPLの音量を鳴らすのに必要な電圧は、DT700 PRO Xでは約0.22Vrms、DT1770 PROでは0.5Vrms、DT770 PROでは0.28Vrms (32Ω)、0.44Vrms (80Ω)、0.79Vrms (250Ω) 1.22Vrms (600Ω) みたいな感じになるので、つまり同じアンプを使った場合DT700 PRO XはDT770 PROの32Ω版と同じくらいの音量になるようで、実際に聴いてみてもそれくらいの感覚です。

もちろんこれはスペック数値を参考にしているので、実際は音楽の周波数特性やアンプの特性によっても音量の感覚は変わると思います。

iFi Audio micro iDSD Signature

RME ADI-2 DAC FS

試聴にはいつもどおりiFi Audio micro iDSD SignatureやRME ADI-2 DAC FSなどを使いました。

micro iDSDのゲインスイッチはNormalモードで問題なく、ADI-2はLOWゲインで十分でした。250ΩのDT1770 PROとかになるとADI-2はHIGHゲインにした方が良さそうでした。


デンマークStoryvilleレーベルからEnsemble Edge 「Dimma」を聴いてみました。スゥエーデンの作曲家Jan Johanssonのトリビュート盤だそうで、メインはコンテンポラリーなコーラス・グループで、そこにジャズトリオとメインボーカルが入ってくるような作風です。

Johansson自身が北欧やロシア民謡などのアレンジで有名だった作曲家なので、今作もとても聴きやすいワールドミュージックっぽいアルバムに仕上がっています。

コーラス、ジャズ、ボーカルという複雑な音響要素を入念にミックスしている作品なので、特にモニターヘッドホンの性能が問われます。コーラスの広がり、ハイハットの質感、ウッドベースの空間定位、ボーカルの実在感など、一つのヘッドホンで全てを求めるのは困難です。

ベイヤーダイナミック本社はシュトゥットガルト近郊ということで、新設SWR SOによるインバル指揮ショスタコーヴィチ11番を聴いてみました。SWRらしくLiederhalleの自然音響を生かした力強い演奏です。

同作品の近年の録音ではDGGネルソンズのボストンの方がハイファイ的には派手で、どんなオーディオ環境でも楽しめるよう仕上げてありますが、このインバルは実際のコンサート体験の雰囲気に近く、作品自体の重厚さと鋭さを上手く表現できているものの、下手なヘッドホンだと音響の波に埋もれてしまってまともに聴くことすら困難です。

最近のデザインでもサウンドは全然違います

まずDT700 PRO XとDT900 PRO Xを両方聴いてみて驚いたのは、どちらも紛れもなくベイヤーのモニターサウンドだと瞬時に認識できた事です。そんなのは当然だろうと思うかもしれませんが、個人的に最近のベイヤーのチューニングというと中低音を盛って刺激を控えた無難な路線に向かっている印象があり、とりわけ今作は入門機という事で、たいそうモコモコしたサウンドだろうと諦めかけていたので、これはかなり嬉しい誤算でした。

TYGR 300Rなどの温厚なチューニングが悪いと言っているわけではなく、あちらはあちらでかなり太く厚い響きが出せるので、EDMのキックやパッドなどでは凄まじいエフェクト効果が味わえます。そういうリスニング用途なら私もTYGR 300Rを選びます。

一方DT700 PRO XとDT900 PRO Xの高音の緻密な解像感や、ボーカル帯域に脚色の無いストレートな表現はまさしくベイヤーっぽいです。本来音源に無いヘッドホン由来の余計な響きが少なく、中低域がスッキリとしているのが素晴らしいです。音楽鑑賞用としてはもっと芳醇な美音を演出するヘッドホンは他にいくらでもありますが、クリエイターやプロダクション用途で信頼がおけるヘッドホンというと、やはりベイヤーの存在意義は健在だと確信できました。

では、DT700 PRO XとDT900 PRO Xのどちらを買うべきかとなると、交互に聴き比べてみて、確かに鳴り方は違うものの、どちらか一方が明確に劣っているとは感じなかったので、用途に応じて選んで問題無さそうです。

密閉型DT700 PRO Xの方が全体的に音が締まっていてフォーカスがクッキリしている印象です。たとえばパーカッションの質感やコーラスの奥行きが掴みやすく、メインボーカルも輪郭が明確で前に出てきてくれます。逆に問題点としてはウッドベースなど特定の低音が強調されやすく、高音もエッジが効いています。

試聴に使ったアルバムくらい高音質の作品なら問題無いかもしれませんが、もっとコンプレッションが効いている作品や圧縮音源だと耳障りに感じるかもしれません。実際プロ用モニターヘッドホンというのはそういう不具合を判別するための道具ですから、そういった意味ではDT700 PRO Xはかなり優秀です。特に自分の声や歌唱を収録したい人は、このヘッドホンで聴けばマイクやマイクプリなど録音機材やセットアップの影響が明らかに晒されます。

音楽鑑賞用としてはちょっとシビアなので、聴きたい楽曲を音質の善し悪しで選ぶ事になってしまいそうです。

開放型DT900 PRO Xに切り替えてみると、全体的なバランスはそこまで大きくは変わらないものの、かなりリラックスした雰囲気に変わります。

DT700 PRO Xを聴き慣れてからだと、DT900 PRO Xは緩くてメリハリが弱いように感じてしまいますが、逆にこちらからDT700 PRO Xに替えると刺激的すぎて疲れます。ようするに慣れの問題なので、交互のAB比較というのはあまりアテになりません。たとえばショップの騒音下で数分だけ試聴した程度なら密閉型の方が断然良いと思うかもしれませんが、いざ購入して自宅の静かな環境で使ってみるとシビアすぎて使いづらい、なんて事はよくあります。

両者はパーカッションなどアタック成分の質感はよく似ていますが、DT900 PRO Xはメインボーカルが若干控えめで、背後のコーラスとブレンドするような感じです。さらに低音も間近で圧迫するような音圧ではなく、音楽の一部として存在しているため、より自然に聴こえます。オーケストラには良いかもしれません。ただし低音のレスポンスはDT700 PRO Xと比べるとワンテンポ遅れるようなタイミングの緩さが感じられるので、それが気になる人は注意して聴いてみる必要がありそうです。

密閉型と開放型のどちらを買うべきかというのは、極論を言うなら両方あったほうが良いです。

密閉型は音圧が強いので耳への疲労が大きいと感じるかもしれませんが、周囲の騒音が大きい場合に開放型を使うと、騒音に負けないように音量を上げてしまい、もっと高い音圧を耳に与えてしまいがちです。また、周囲に人がいる場合は開放型だと音漏れに配慮して無意識に音量を下げてしまうので解像感が悪く感じるなんていう心理効果もあったりします。

ただし、DT900 PRO Xの場合、開放型といってもゼンハイザーHD650のような完全な開放メッシュではなく、プラスチックハウジングの存在感がそこそこあるので、遮音性に関しては密閉型DT700 PRO Xと比べてそこまで大きな差があるようには感じませんでした。

ゼンハイザーなら、プロ用の開放型モニターといえばHD600/650で、密閉型モニターならHD25になり、それぞれデザインや用途が極端に分かれており、ベイヤーほど中立な汎用スタジオデザインではありません(コンシューマー機ならHD500シリーズがありますが)。これがベイヤーとゼンハイザーの大きな違いだと思います。

DT770 PRO・DT700 PRO X・DT1770 PRO

次はDT770・DT990と比較してみました。どちらも250Ω版です。

これらはさすがにロングセラーの定番モデルだけあって、値段が安いからといって目立った不具合があるわけではなく、中高域の質感などは意外なほど新型と似ています。

周波数特性で比較するなら単純に好みが分かれるだけで、新旧で優劣はつけがたいかもしれませんが、私はとりわけダイナミクスの表現力において大幅な進化を感じました。

新型ドライバーやイヤーパッドが威力を発揮しているのだと思います。DT700 PRO XとDT900 PRO Xでは無音から大音量へのコントラストがはっきりしており、特に楽器の実在感が向上して、パワフルな表現ができるようになりました。このあたりはむしろDT1770 PRO・DT1990 PROの鳴り方に近いです。

それと比べると、DT770とDT990は小音量での繊細な描写では十分に健闘しているものの、音量を上げてみると背景を含めた音楽全体がザワザワうるさくなるだけで、歌手や楽器が引き立ちません。このようにダイナミクスが狭く圧縮されたような感覚は昔のHD600やK601などでも感じるので、ドライバーの基礎設計の古さによるものなのでしょうか。

ベースなどの低音楽器に注目してみると、DT770やDT990ではそこまでクッキリと現れないので、小音量で聴くならこれらのほうがスムーズで、空間的にも自然な鳴り方のように聴こえます。しかし、いざ音量を上げていくと、ハウジング全体でランダムな残響が加わるようになり、楽器そのものの音像が明確に掴めません。頭内に音圧が響くだけみたいな感じです。

その点DT700 PRO XとDT900 PRO Xのどちらも低音がしっかりと鳴るようになり、特にDT700 PRO Xは量的にもかなり強めです。ジャズのウッドベースやキックドラムの70~90Hzくらいの重低音がちょっと強すぎるかなと思える場面もありますが、楽曲によって低音の質感が大きく変わるので、表現力は高いです。打ち込みで作曲している人などはリズムトラックの低音の質感へのこだわりが強いので、そういうケースではDT700 PRO Xは存分に活躍するだろうと思います。

最後に、上位モデルのDT1770 PROとDT1990 PROと比較してみたところ、やはり価格差なりの違いは感じられました。

まずハウジングがアルミかプラスチックという違いによるものだと思いますが、DT700 PRO XとDT900 PRO Xはどちらも中高域の特定の帯域がわずかにシュワシュワと響く感じがあり、DT1770 PROとDT1990 PROではこれがありません。具体的にはヴァイオリンや女性ボーカルの高音付近にあたり、直接音とは別に、ちょっとしたざわめきみたいなものが背後に感じられます。不快になるほどではありませんが、両者の違いとしてはこれが一番目立ちます。

ただし、プラスチックハウジングでも中低域の響きは目立たないようにスッキリと管理されている点は優秀です。特にTYGR 300RやT1/T5 3rdなど比べると、この部分に明確な差別化がされているようです。

サウンドステージはDT1770 PRO・DT1990 PROの方が全体的に整っており、帯域ごとの前後の凹凸が少なく、目前で横一直線に揃っているため、状況が把握しやすく、見通しが良いです。DT700 PRO X・DT900 PRO Xは上記の中高音や最低音の一部の帯域で耳周りの響きが感じられるので、ハウジングがそこにあることを意識します。

さらに、高音の鳴り方にも明らかな違いを感じます。DT1770 PRO・DT1990 PROは高級機から応用したTeslaテクノロジードライバーを搭載しており、これは特に高音に特徴があることで有名です。他社でよくある振動板の金属コーティングによる艶っぽさや輝きではなく、Teslaの場合はアタックのレスポンスが鋭く、スピード感があります。

一方DT700 PRO X・DT900 PRO Xの新作STELLAR.45ドライバーは、どちらかというとDT770・DT990のドライバーのレンジとダイナミクスを拡張したような印象があり、Teslaっぽさはあまり感じられません。

生のドラムパーカッションや管楽器の音色に集中して聴いてみると、Teslaの方が楽器ごとの過渡特性の違いや演奏者の表現の違いが掴みやすく、オーケストラのような大編成でも、高音というひとまとまりの鳴り方ではなく、多彩な音色の強弱や質感のレイヤーが体感できます。

高音が派手なヘッドホンは他にもありますが、それらの多くはヘッドホンが金属的な響きを付加しているため、楽器や演奏者の違いが塗りつぶされてしまい、どれも同じような質感になってしまいがちです。その点ベイヤーのTeslaはトランペットやフルートなど突き抜けるような高音のリアルさにおいてはトップクラスに優秀なヘッドホンです。

この高音の再現性の高さは、クラシックのハイレゾ録音など生楽器と自然なホール音響を扱うような場面では大いに活躍しますが、サンプリング音源などで高音の質感の変化に乏しい作風では(特にそれがシーケンサーで延々とループする場合など)、かなり硬質で耳障りに感じると思います。これがTeslaドライバーの好き嫌いが分かれる大きな理由だと思います。

つまり、予算的に可能ならば上を目指す価値は十分にあると思いますが、必ずしも必要というわけではありません。

さらに、DT1770 PRO・DT1990 PROの5~6万円台という価格帯に差し掛かると、他にもShure SRH1540/1840や最近紹介したAdam Audio SP-5、そしてもちろん開放型ならゼンハイザーHD600/650やオーテクATH-R70xなどの優れた選択肢が豊富にあります。これくらいになると、まずは信頼できるニアフィールドモニタースピーカーを中心に作業して、それの傾向に合ったヘッドホンを探す事が多くなり、ヘッドホンだけの一張羅で作業するというのは稀だと思います。

肝心なのは、一流トーンマイスターの作業現場とかを見ても、モニターヘッドホンはこれくらいの価格帯が一番普及しているようで、優れたモデルの選択肢もこのあたりに集中しています。(モニタースピーカーの方は際限なく高価になっていきますが)。

オーディオファイル向けの音楽鑑賞用ヘッドホンならもっと高価なモデルはいくらでもありますが、それらは原音以上に美しく聴かせるような演出効果も増していき、プロダクション用途には向いてないモデルも多いです。ボーカルの音色が美しいのは優れたマイクのおかげかヘッドホンによる脚色なのか判別できないと、作品の仕上がりにも影響してきます。

そんなわけで、新作DT700 PRO XとDT900 PRO Xのどちらも、ベイヤーダイナミックの既存ラインナップと比較してみると、価格と性能のバランスが良好で、プロ用途にも十分通用する、絶妙な位置に収まるように感じました。

おわりに

実は新製品ニュースを見た時点ではあまり期待していなかったものの、実際に聴いてみるとDT700 PRO XとDT900 PRO Xのどちらも、まぎれもなくベイヤーダイナミックのモニターサウンドを実感できる素晴らしいヘッドホンでした。

最近のベイヤーというと温厚傾向で凡庸すぎて「あえてベイヤーを選ばなくても、他のメーカーでもいいじゃないか」と思えるモデルが多かったので、私みたいに「ベイヤーのサウンド」が好きで愛用している人にとって、今作は原点復帰といった感じの嬉しさがあります。

ゲーミングやオーディオファイル向けのヘッドホンでは市場のトレンドにチューニングを合わせていったとしても、プロ用モニターでは絶対に譲れないポリシーがあるのかもしれません。

近頃のネットレビューなどを見ると、モデルごとの本来の開発意図や用途を無視して、周波数測定でスコアをつけるような安直な(初心者にもわかりやすい)評価が一般的になっており、そういうコミュニティとは縁が無いベイヤーは肩身の狭い思いをしていました。

コンシューマーモデルならば、ネットでのウケが良いようにチューニングした方が人気が出るので当然の判断ですが、特定の業務で使っているプロ用も同じ尺度で評価されるのは困ります。単純な測定では表せない耳周りの三次元的な響きの分布や、帯域ごとの立ち上がりや引き具合など複雑な要素は開発者とプロユーザーの対話から生まれて、開発には長年の勘と実績が頼りです。

ヘッドホンに限らず、最近のネットでの評価を前提とした開発プランや、外注コンサル利用が増えてきた事で、一旦経営方針が平均点を狙う凡庸なサウンドに向かってしまうと、それまでコアなファンからの支持を得てきた特色や個性が失われてしまい、後々気づいて再度復活させるにも当時のスタッフやノウハウがすでに失われしまった、なんていうケースが非常によくあるように思います。特に往年の日本のメーカーなんかは見る影もないのが残念です。

そんな中で、ベイヤーはDT770・DT990など旧作がロングセラーとなっている中でも、ゲーマーやカジュアル路線でのマーケティング努力を怠らず、さらに今回DT700 PRO XとDT900 PRO Xでは、製品そのものが優秀なのはもちろんですが、それ以上に、PRO Xシリーズというコンセプトがクリエイターに重点を置いているのが嬉しいです。

つまり、閉じたエリート主義なオーディオファイルヘッドホンコミュニティとは全く別に、世界中のクリエイターからの支持があってこそやってこれたという自覚があって、そのコミュニティをさらに盛り上げていこうという意識が感じられます。

デザイン面でも奇抜な事は一切せず、DT770・DT990がロングセラーとしてプロに愛用されている理由や要素をしっかりと理解した上で、上位モデルDT1770・DT1990の技術を応用して、最新の製造技術に適応させた新設計だということが伝わってきます。

最近は自宅に高性能なパソコンが一台あれば映像や音声編集も容易にできるプライベートスタジオを整える事ができるようになりましたので、そんな環境にて手元に置きたいヘッドホンとしては最適です。

ミックス作業などに集中して細部まで入念に追い込みたいなら密閉型DT700 PRO X、毎日長時間装着する疲労感を抑えたいならDT900 PRO Xをお勧めしたいです。

音楽鑑賞用ヘッドホンとしては、録音のアラ探しになってしまいそうなので、あまりお勧めできませんが、逆に言うと、高音質ハイレゾ録音とかのポテンシャルを引き出して、ヘッドホンの脚色に邪魔されずに本当に良い音が味わえるかもしれません。

これまでの定番モデルDT770とDT990と比べても、音質とデザインの両方で大幅に進化しているので、新たに購入するなら断然新型をお勧めしますし、既存のユーザーもアップグレードを検討する価値は十分にあると思います。

一方、上位モデルのDT1770 PROとDT1990 PROの方がサウンドは一枚上手だと思いますが、とくに高音の金属的な解像感はベイヤーらしさが色濃くなります。完璧な音響を目指すハイレゾクラシックなどのモニター用途には最適ですが、ポップスや圧縮音源では刺激的すぎて敬遠されがちです。

今後ベイヤーPRO Xシリーズがどのように発展していくのか想像もつきませんが、願わくばイヤーパッドやケーブルなど交換部品の種類を増やして、自分だけのカスタム仕様を作りやすいようにしてもらいたいです。馬鹿な話ですが、私も今回とりあえず買ってみようか悩んでおり、もしこれで派手な色のイヤーパッドとかが付属していたら思わず即決していたかもしれません(HD25商法ですね)。

もっと真面目な話、PRO Xへの個人的な要望としては、ヘッドホンとマイクのセットの次なるステップとして、アイソレーションシールドやブームポールなどのアクセサリーや、USBオーディオインターフェースやミキサーのメーカーとのコラボセットなど、初心者の即戦力になるような展開を期待したいです。

私の身の回りでも、Youtuberを目指してマイクを買ったけれども自分の声がクリアに録れず断念した人や、マットレスやクッションなどを吸音材として試行錯誤している人など、ホームレコーディングも意外と上手く行かないものです。

プロオーディオメーカーは分業制が確立しているせいか、ヘッドホンやマイクの選び方など個別の情報はあっても、ホームレコーディング環境全体を整えるためのアドバイスやトラブルシューティングは、それこそSound on Sound誌のお宅訪問記事とかを読まないと、なかなかわからないことが多いです。

そのあたりも含めて、今後PRO Xシリーズがクリエイターのスキルアップの定番ブランドとして発展していく事を願っています。