ヤマハの新作ヘッドホン開放型YH-4000と密閉型YH-C3000を試聴してみました。
Yamaha YH-4000 & YH-C3000 |
Yamaha
ヤマハは2022年にYH-5000SEというヘッドホンを発売しています。これまで高級ヘッドホン業界からは疎遠だったヤマハがこのクラスに参入したのは大きな話題になりました。
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| YH-5000SEとHA-L7A |
海外勢に押されている平面駆動型(平面磁界)ドライバーという分野で、初回作から50万円という強気な価格設定、しかも同時にヘッドホンアンプのHA-L7Aも発売、こちらも40万円ということで、いきなり頂上級のヘッドホン市場に殴りかかってきたわけです。
これまでたくさんの大手オーディオメーカーが高級ヘッドホンに参入しようとして、ひとまず派手なステートメント機を一度作って、そのままフェードアウトするという図式を何度も見てきたので、ヤマハもたぶんそんな感じだろうと思っていました。
ところが、今回あまり時間を空けずYH-5000SEとそっくりで価格を抑えたYH-4000と、さらに全く新しい密閉型デザインのYH-C3000を発売したので、ヤマハの本気度に驚きました。
日本の大手オーディオメーカーというと、昔から5~10年の製品サイクルで動いていたところ、最近は米国や中国を中心に半年ペースで新作を続々投入する新興メーカーが増えてきたことで、どうにも話題性に欠けて忘れ去られてしまう傾向にありました。そんな中で、今回ヤマハが比較的短いスパンで新作を投入してきたことは、昨今のヘッドホン市場をしっかり意識した戦略を取っているようです。
YH-4000
フラッグシップのYH-5000SEと今作YH-4000は並べて比べてみても、見分けがつかないくらいそっくりです。ヘッドバンドや外枠などの部品を共有しているのでしょう。
| そっくりです |
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| 部品の色が違います |
一番わかりやすい見分け方は、ケーブル接続部分のプラスチック部品の色がYH-5000SEは黄色でYH-4000は白色になっています。アンプHA-L7Aも黄色のアクセントを加えていたので、フラッグシップ級のシステムには黄色を使うというテーマなのかもしれません。
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| 付属ケーブル |
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| イヤーパッド |
付属ケーブルはYH-5000SEではガンメタル調の太い編み込みタイプで4.4mmバランスと3.5mmシングルエンドの二本、YH-4000は一般的なゴムタイプで3.5mmシングルエンドのみです。
イヤーパッドもYH-5000SEはレザーとスエードの2セットでYH-4000はスエードのみ、さらにYH-5000SEには高級ヘッドホンスタンドが付属といった具合に差別化されています。
こうやって見ると、YH-5000SEは単純にアクセサリー類を詰め込んだデラックス版という風にも見えますが、実はサウンド設計もだいぶ変わっています。
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| イヤーパッド越しにドライバーが見えます |
| 円形のオルソダイナミックドライバー |
YH-4000もYH-5000SEと同じくヤマハ独自のオルソダイナミックドライバーというタイプを採用しています。名前にダイナミックとあってもどちらかというと平面駆動型に近いコンセプトで、ヤマハ自身は平面磁界型と呼んでいます。
振動板自体に金属薄膜で電流経路を作り上げ、そこに音楽信号を流して隣接するマグネットに反発させて振動させるのは、AudezeやHifimanといった平面駆動型ヘッドホンと原理的には同じです。
ヤマハのデザインがユニークな点は、振動板がダイナミック型スピーカーのような円形でコルゲーション(リブ)を設けることで、単純な薄膜と比べて正確に狙った振動波形を生み出せるというメリットがありそうです。このデザインはどちらかというとFinal D8000などに近いです。
Hifimanなどの平面駆動型はSTAX静電型のような大きな薄膜のメリットを目指したものだと思いますが、最近のトレンドを見る限り、ヤマハやFinal、Mezeなど、動作原理は平面駆動型でも振動板やヘッドホンハウジングの音響設計はダイナミック型の知見を活用しているような、双方の利点を併せ持つデザインが業界最先端のようです。
| YH-4000はメッシュが透けて見えます |
| YH-4000のパッドを外した状態 |
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| YH-500SEではステンレスメッシュでした |
YH-5000SEとYH-4000でドライバー技術は共通していても、振動板周辺のフィルター素材に変更があり、これは目視でも確認できます。
YH-5000SEではステンレスメッシュを採用していたので、ゼンハイザーHD800Sなどのようにドライバーの周辺に銀色の細かいメッシュパネルが張り巡らされていました。YH-4000ではこれが黒いPETプラスチックのメッシュになったことで、より開放型らしい見た目になっています。
フィルターバッフルはほとんどの開放型ヘッドホンにおいて必要不可欠で、ドライバーから発せられた音をメッシュの素材や細かさによって反射したり特定の周波数を逃がしたり、三次元的な配置を工夫することで上下前後の立体空間音響を生み出す効果があります。
スピーカーにおけるキャビネット、もっと極端に言えばスピーカーにおける部屋の役割だと考えればわかりやすいです。もしバッフルが無くドライバーだけが宙に浮いていたら、まるで無響室で聴いているような味気ないものになってしまいます。
HD600など大昔の開放型ヘッドホンでは平面的なバッフルフィルター板の中心にドライバーを配置する構造でしたが、ベイヤーT1やゼンハイザーHD800などで立体的に耳を囲う高度な配置になったことでヘッドホンの立体音響が飛躍的に進化したわけで、ヤマハのデザインもそれらの延長線上にあり、大きな振動膜が耳の真横にベタ付けされている一般的な平面駆動型デザインとは設計思想がだいぶ異なります。
それではYH-5000SEのステンレスメッシュの方が高価だからYH-4000のプラスチックメッシュと比べて優れているのかというと、そういう問題ではなく、それぞれ音作りの狙いが違うため、YH-4000のサウンドの方が好みに合うという人もいると思います。
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| YH-4000 |
YH-4000の重量や装着感はYH-5000SEと全く同じで、コストダウンによる妥協は伺えません。ケーブルが細身で扱いやすくなったくらいです。
ヤマハというとグランドピアノや管弦楽器のイメージがあるので、そっち路線でクラシックなラグジュアリー系を目指すかと思いきや、かなりハイテクなメカっぽいデザインです。デジタルサックスYDS-120とか、メカらしいデザインとなると本気度が極端になるのがヤマハらしいです。
マグネシウム材を多用した軽量かつ剛性の高い構造で、ハンガーやヘッドバンドの可動範囲も広いため、フィットに問題がある人は少ないと思います。このあたりは大手メーカーだけあってビジュアル優先ではなく人間工学的な設計をしっかり考えています。
実際に手にとって観察してみても、ユーザーが装着して音楽を聴くためのツールとして極限まで突き詰めた合理的なデザインであることが実感できると同時に、デザインも洗練されていてカッコいいと思います。最近の新興メーカーの「高級」ヘッドホンでは、平らなアルミ板に接着剤とタッピンビスで組み立てているような粗悪なデザインをとても多く見るので、このヤマハとは天と地の格差があります。
とくにハウジングや可動ヒンジ部品などは製造が困難な立体造形なので、小規模なガレージメーカーの最高級機では真似できない、大手メーカーならではの製造技術の高さを見せつけてくれます。
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| ヘッドバンド |
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| スライダー機構 |
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| アーチのロゴ |
ヘッドバンドは側圧のための金属アーチと自重を受けるパッド部分で役割を分けているハンモック構造で、調整スライダーにクリックは無く摩擦で保持されます。調整するためのボタンのような部品がわかりやすい手触りになっているため、装着後も手軽に調整が可能です。
全体的にネジを多用して修理が容易そうなデザインなのも嬉しいです。ヘッドバンドアーチのロゴもさりげなくてカッコいいと思います。
本体重量がYH-5000SEと同じく320gとそこそこ軽量なので、長時間の着用でも頭頂部が痛くならず、耳周りの側圧が緩めでもしっかりと保持してくれるのがありがたいです。400gを超えるようなモデルでは首や頭が疲れてきますし、ハウジングが重くなると自重でズレないように側圧も強めに設計されるため、せっかく高級ヘッドホンを買ったのに不快で長時間使えないという話をよく聞きます。そのあたりヤマハは上手に考えられていると思います。
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| 付属ケーブル |
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| ケーブル接続端子 |
付属ケーブルは2mで3.5mm(6.35mmネジアダプター)の黒いゴムタイプのみです。YH-5000SEとの差別化を強調したかったのだろうと思いますが、できればこちらも4.4mmバランスケーブルを付属してもらいたかったです。
これを書いている時点では、別売バランスケーブルはYH-5000SE用の高級編み込みタイプしか公式サイトに掲載されていないため、4.4mmタイプで7万円とかなり高価です。コネクターは左右3.5mmTSタイプなので社外品の選択肢も多いですが、根本に段差があり細めのコネクターしか入らないので要注意です。
YH-C3000
続いて密閉型のYH-C3000です。開放型の次は密閉型となると、大抵のメーカーは開放型モデルのハウジングにフタをしたようなデザインになるところですが、YH-C3000は全くの別設計のようです。
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| YH-5000SE・YH-4000・YH-C3000 |
並べてみると、開放型モデルと比べて一回り小さいため、コンパクトなポータブルヘッドホンという印象を持つ人もいると思います。
モデル名も5000、4000、3000ということで、グレードが一段下がるという扱いなのか、値段もモデルナンバーに沿って約50万、40万、30万というのも覚えやすくて良いです(それにしても高価ですね)。
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| 綺麗なハウジング |
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| 立体エンブレム |
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| 木目はわかりにくいです |
密閉型ということでハウジング素材にこだわっており、ヤマハのグランドピアノと同じビーチ(ブナ)木材を採用しているそうです。一見真っ黒な鏡面仕上げのようですが、光の加減によっては細かい木目が透けて見える、とても濃いコーヒーのような色合いです。立体的なエンブレムも高級感があります。
確かに綺麗だとは思うのですが、ここまでさりげなく上品な仕上げの価値に共感してくれるヘッドホンユーザーは少ないのではという心配もあります。遠目ではただの黒いプラスチックのように見えますが、一級の工芸品を見慣れた人なら、光の反射を見ただけでも素材と表面処理の質感の高さに気づき見惚れると思います。それにしても映り込みが激しいので写真で撮るのが大変です。
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| ドライバー |
開放型YH-5000SEとYH-4000が平面型なのに対して、YH-C3000はいわゆる一般的なダイナミック型を採用しています。同じ平面型を流用するのではなく密閉型専用でゼロから構想しているのもこだわりを感じます。
公式サイトによると50mm振動板はヤマハのスピーカー技術を応用したザイロン合成繊維と紙や樹脂の多層複合素材だそうで、強固なフレームに純鉄ヨークなど、いわゆる高級ダイナミック型ドライバーらしい高度な設計のようで、ヤマハはアルモダイナミックドライバーと呼んでいます。
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| シャーシ |
ところでハウジング内側に「日本製造」と刻印されているのが妙に気になりました。公式サイトによるとヤマハのグランドピアノと同じ静岡県掛川工場製ということですが、一般的に日本語なら〇〇製、中国語では〇〇製造なので変な感じです。
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| イヤーパッド |
イヤーパッドは楕円形で耳周りをピッタリ覆うデザインです。プラスチック枠の爪でハウジングに固定するタイプで、落ち着いた赤色のメッシュ布も楽器を彷彿とさせる、さりげないアクセントになっています。
一般的に高級ヘッドホンというと真円形の大きなパッドが主流ですが、最近は密閉型ヘッドホンというとワイヤレスアクティブNC式を使っている人が多いので、それらと同じサイズ感のイヤーパッドなのは親しみやすいです。
また真円形と比べて前後の装着範囲が制限されるため、ドライバー出音部と耳穴の位置関係が設計者の意図したとおりに揃うというメリットもあります。
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| ハウジング上部 |
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| ヘッドバンド |
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| ケーブル接続部品 |
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| ケーブルコネクター |
ヘッドバンドの機構は開放型モデルと同じで、こちらも本体重量が軽めな320gなので長時間の着用でも不快感はありません。密閉型なので耳周りが蒸れるくらいでしょうか。
ハウジング上部に音響調整用と思われる通気孔があるおかげか、適度に空気圧が管理されて、密閉型にありがちな鼓膜が圧迫される不快感はありません。
ケーブルも開放型モデルと互換性があり、コネクター接続部分が本体後部に張り出した別部品になっているのはデザイン面でもハイテク感があって良いですし、ケーブルが肩にぶつからないのでありがたいでず。
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| オーテクと比較 |
高級密閉型でウッドハウジングというと、やはりオーディオテクニカが代表格ですが、重量感やサイズ感も含めて、だいぶ好みが分かれると思います。ヤマハがCFXグランドピアノだとすればオーテクは和室の床の間みたいな雰囲気です。
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| Focal Stelliaと比較 |
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| TAGO STUDIO T3-01と比較 |
他にも私が好きな密閉型と並べてみると、Focalとハウジングサイズが近いものの、ヘッドバンド形状や佇まいが全然違います。Focalは強力な金属ヘッドバンドで耳に固定するヘルメット的な装着感で、設計段階からコンパクトさは捨てています。
装着時の快適さやサイズ感ではTAGO T3-01あたりが近いかもしれません。T3-01は緩めで美しい音色が大好きで個人的に愛用しているヘッドホンです。この系統が好きならYH-C3000も気に入ると思います。
インピーダンス
再生周波数に対するインピーダンスの変化を確認してみました。
平面駆動型とダイナミック型で電気的な挙動が異なることが予想できますが、やはりYH-C3000はダイナミック型らしいインピーダンス特性です。三機種とも公式スペックは1kHzで34Ωということで、実測もだいたいそんな感じです。
それにしてもYH-5000SEとYH-4000のインピーダンス特性はほぼピッタリ揃っており、同じモデルの個体差だと言われても納得しそうです。それなのに実際に音を聴いてみると全然印象が違うので面白いです。インピーダンスグラフは音質を推測するのではなく、自分が使っているアンプで十分に駆動できるかの参考に留めておく程度です。
また、YH-5000SEとYH-4000は原理的には平面駆動型でもドライバー形状は円形のダイナミック型振動板に近いデザインというためなのか、インピーダンスグラフも世間一般の平面駆動型ヘッドホンらしい横一直線ではなく、若干の山や谷のあるダイナミック型らしい側面も見せているのが面白いです。
同じグラフを電気的な位相変動で表したものです。こちらも密閉型と開放型で音楽に肝心な中低域の位相変動の傾斜がとてもよく似ているので、ヤマハらしいサウンドシグネチャーを狙って入念に調整したことが伺えます。
音質とか
今回の試聴では、せっかくのヤマハなので主にHA-L7AアンプをPure Directモードで使ってみましたが、他のアンプでの鳴り方も確認しました。
ちなみにヤマハは直近のヘッドフォン祭でHA-3000Aという新型ヘッドホンアンプの試作機を披露しており、昔のマークレビンソン38みたいなカッコいいデザインで、そちらも気になっているのですが、現時点ではまだ発売されていません(型番から推測すると30万円でしょうか・・・)。
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| HA-L7Aアンプ |
まず第一印象から、開放型と密閉型、平面駆動とダイナミック型と、それぞれジャンルが大幅に異なるため別々に感想を書こうと思っていたところ、両方とも「ヤマハらしい」と感じられる特色や共通点がとても強かったので、まずそのあたりを書いてから個別の感想に移りたいと思います。
もちろんYH-4000とYH-C3000が全く同じ音というはずもなく、一瞬で判別できるくらい明確に違うのですが、それでも他社のヘッドホンと比べてヤマハらしい特色が目立ちます。
このくらいの価格帯のモデルになると、高音が刺さるとか低音がブーミーすぎるといった初歩的な問題はしっかり対処されているので、周波数特性で好き嫌いが分かれるということもなく、幅広いジャンルに対応できそうです。また音量を上げても破綻せず性能を維持できているあたりは設計の優秀さを実感できます。
私はどちらかというと空間音響の作り込みにヤマハらしさを感じます。開発チームに明確な表現の指標があるようで、「ヤマハらしい」サウンドシグネチャーが実感できます。
もっと具体的には、ステレオ音像が前方視野角の広範囲に分散しており、音像の一つ一つが大きめに描かれています。空間配置や距離感が安定して作り込まれており、縦方向も床とスピーカーを意識するような自然な広がりです。
たとえば低音のビートだけが耳の後ろを振動させるとか、金属の打撃音が頭上から刺激するといった、ヘッドホンの内部構造によって発生する不自然な響きがありません。そういった違和感が起こらないように、ドライバーやハウジングの三次元音響を入念に調整しているようです。こういうのは最近コンピューターシミュレーションで最適解が見つかるのか、それとも人間の聴感で微調整を繰り返していくのか、どのように開発しているのが気になります。
ヤマハらしい特徴といっても、他のヘッドホンメーカーと具体的にどう違うのかと思うかもしれませんが、実際にいくつかの曲で比較してみると決定的に違う部分が現れて、音楽ジャンルとの相性もかなり極端に分かれるタイプのヘッドホンです。
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まず私なりにヤマハとの相性が悪いと思ったアルバムは、LSO Liveの新譜でPappano指揮LSOのヴォーン・ウィリアムズ5・9番が挙げられます。
最新のDXD録音ですが、この手のハイレゾオーケストラ作品は全般的にヤマハで聴くと違和感があり、どうにも上手く楽しめません。
YH-4000とYH-C3000のどちらもヘッドホン自体が緻密な音響空間を作り出しているわけですが、そのため録音に含まれている演奏会場のリアルな音響情報が埋もれてしまう傾向があります。
そして、ヤマハの作り出す音響には明確な方向性と限界距離が感じられ、たとえば10mだとすれば、そこからオーケストラの演奏が自分に向かってくる感じで、逆にそれよりも遠くへは音が伸びていかないため、明確な球体の壁に囲まれている感覚があります。
これをたとえばオーテクATH-ADX5000とかAustrian Audio The Composerなどで聴くと、録音されたバービカン・センターの音響が素直に伝わり、管弦楽器のそれぞれの位置から音が外方向へと拡散していく風景が体感できます。もちろんアルバムの制作過程で色々と編集の手が加えられているとは思いますが、少なくともマイクで収録された音の時間経過がリアルな空間情景を再現してくれます。
ヤマハの作り出す空間音響はゼンハイザーHD800Sにも似ています。こちらもヘッドホン自身がドライバーとバッフルの立体構造で独自の音響を生み出して、音源が遠くから自分へ向かってくるような演出が実際のオーケストラの音響と被ってしまい、どのコンサートホールで収録された楽曲でも総じてHD800Sっぽい響きに再構成されてしまうあたり、今回ヤマハの体験に近いです。
HD800Sとヤマハのサウンドの決定的な違いは、音像の幅広さです。ゼンハイザーのヘッドホンはHD600系なども含めて、総じて描画の線が細いタイプで、とくにHD800Sは空間に広く分散した音像が、一つ一つはコンパクトで細やかなので、それらの間の余白が目立ち、分析力や解像力が高く感じます。それと比べてヤマハは音像が縦横に引き伸ばされている感覚があり、余白が無いよう埋め尽くされている印象があります。
例えるなら、シャーペンの芯がゼンハイザーは0.3mmでヤマハは0.7mmというか、精密模写と印象派絵画というか、なんにせよ、100人近くのオーケストラを聴く場合、ゼンハイザーの方が各セクションごとの配置構成であったりソロ奏者をピンポイントで注視するような聴き方に向いており、ヤマハはもうちょっと大きい視点で音響を楽しむという感じです。
個人的にこのあたりがピュアオーディオとリビングルーム的なオーディオの違いだと思っています。ピュアオーディオというと、理想的なセットアップの定位置に座って、歌手だったら口のサイズや開き方に至るまで、オーケストラならクラリネットとフルートの座席位置の関係まで詳細に描写するなど、極限まで音源の芸術を再現することが求められます。一方リビングルーム的に、部屋の臨場感や雰囲気まで含めた音楽やホームシアターの体験はヤマハが得意とする分野です。
ピュアオーディオ的な聴き方を求めているなら、それこそシンプルに大きな振動膜が耳の間近にあるSTAXやHIFIMANなどの方が向いていると思いますし、私の場合はもうちょっと音響効果の作り込みも欲しいので、Austrian Audio The Composer、オーテクATH-ADX5000、Fostex TH909など一工夫あるタイプを好んで使っています。Final D8000もこちらに近いと思います。ヤマハは音響効果の作り込みの方向に振り切っているため、ヘッドホン自体のプレゼンテーションを聴いているという感覚が強いです。
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ヤマハらしいサウンドが抜群に発揮されるアルバムの好例として、Michal Baranski「No Return No Karma」を聴いてみました。
Polish Jazzと大きく書いてあるジャケットを見て懐かしいと思った仲間はいるでしょうか。ポーランド国営Muzaレーベルは現在ワーナー傘下で独自に運営しており、今作もポーランドの音楽シーンを切り取った良盤です。
ベースのリーダーにトランペット、ギター、ボーカルなど複雑に入り混じり、シンセを下敷に圧倒的な音響体験を生み出す作品です。スピリチュアルなフュージョンからグルーヴ感溢れるリズムと、一曲の中に様々な展開があり怒涛の勢いが体験できます。
とくに6曲目のタイトルトラックなど、かなり入念にアンビエンスを作り込んでいる楽曲なので、まさにヤマハの音響性能が得意とする分野です。空間を広く使い、しかも丁寧に敷き詰められているおかげで没入感がすばらしく、現実とはかけ離れた別世界に移送されたようなトリップ感があります。さらにトランペットやギターなどのソロパートに突入しても、空間描写が崩れず没入感が維持されます。
同曲では中盤にとんでもなく重厚なシンセベースが挿入される場面があり、多くのヘッドホンでは周波数特性が優秀でも空間管理が下手で暴れ馬に乗っているような体験になってしまうところ、YH-4000はハウジングが一切暴れず、中高域と一貫した空間表現を守ってくれるため、トータルで凄い体験を提供してくれるヘッドホンという安心感があります。
先程オーケストラ作品で感じたヤマハ特有の音響空間の限界距離みたいなものが、このアルバムではむしろポジティブな効果を発揮できており、各パートがそれぞれバラバラに飛び回って翻弄されるのではなく、一旦ヤマハの音響に再構成されてから丁寧に展開されます。たまに入る女性ボーカルなども、たとえばATH-ADX5000で聴くと、結構前に張り出してきて、ボーカルだけを聴く時間みたいになってしまうのですが、ヤマハではそうはならず、あくまで情景の中でボーカルが浮き上がってくるような、まるで映画の世界に包まれている感覚は、やはりホームシアターに強いヤマハらしいと実感します。
どの音楽ジャンルと相性が良いか悪いかは、あくまで私の個人的な主観になりますが、何を聴くにしても、開放型YH-4000と密閉型YH-C3000のどちらも確実に「ヤマハらしい」サウンドシグネチャーが感じられるのが嬉しいです。
一昔前なら、GradoっぽいとかAKGらしいといった括りで、それぞれ個性があり、相性や好みで支持するメーカーが明確でしたが、最近はほとんどのメーカーが同じような音を目指しており、好き嫌いではなく正しいか正しくないかで比較されがちです。そんな中でヤマハは明らかに個性的ですが、ツボにはまる楽曲さえ選べば、単純な好き嫌いで終わらせないくらい、誰が聴いても凄いと思えるサウンドを生み出してくれます。
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| YH-5000SEとYH-4000 |
次はYH-4000とYH-5000SEの比較ですが、バッフルメッシュ素材の違いが鳴り方に明確に現れているのが面白いですし、いい勉強になります。
先程のインピーダンスグラフを見てもわかるとおりドライバー自体に目立った仕様変更や駆動要求の差は伺えないので、本当にメッシュの違いだけなのでしょう。
YH-5000SEの方が中高域が派手に拡散され、より高解像っぽく目覚ましいサウンドなので、たしかにステンレスメッシュっぽいなと納得できてしまいます。プレゼンス帯の輝かしさや空気のざわめきを演出してくれるため、普段から聴き慣れた楽曲がひときわ新鮮に感じます。同じくステンレスメッシュを採用しているゼンハイザーHD800SやHD660S2と高音域の描写がなんとなく似ているようにすら思えてきます。
高音域のエネルギーが増えるため、若干浮足立ったような落ち着きの無さがありますが、低音側の安定具合は万全なのでバランスが崩れるわけではありません。音像の距離感や線が太くフォーカスが甘い感じも両者で共通しており、ヤマハらしいサウンドという点は変わりません。YH-4000と比べてプラスアルファの魅力と捉えるか、過剰な演出と捉えるかです。
それではYH-5000SEとYH-4000で私ならどちらを買うだろうかと考えてみると、かなり難しいです。YH-4000の方がおとなしめなバランスで、普段使いに適していると思える一方で、ヤマハ特有の空間音響を最大限に堪能するならYH-5000SEの方が効果的です。
迷っている人は、メッシュ部品の効果に十万円の価格差の価値があるのかと悩むよりも、YH-5000SEが高価な理由はアクセサリー類が充実しているからだと割り切って比較した方が良いです。
| Cayin C9ii、Questyle CMA15 |
YH-4000を鳴らすアンプに関しては、このヘッドホンはそこまで色艶を強調するタイプではないので、美音系の演出が得意なアンプとの相性が良いと思いました。
身近にあったものでは、Questyle CMA15とかCayin C9iiなどです。普段なら音色の美化が強いと感じるようなアンプに、YH-4000の空間演出が上手に働いてくれて、絶妙な組み合わせになります。
ヤマハHA-L7Aも良いのですが、どちらかというと大人しい傾向で、むしろYH-5000SEとバランスをとるのに向いていると思うので、YH-4000と組み合わせるメリットはそこまで感じませんでした。むしろ他のアンプで色々と試してみる方がYH-4000のポテンシャルを引き出せます。
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| iBasso DC07PRO |
あえてUSBドングルDACで鳴らしたほうが良い場面もあります。たとえばハウスやトランスなどEDM打ち込み系では、YH-4000の立体音響を活かしながら、できるだけ音像の線を細く、切れ味や爽快感を演出するために、iBasso DC07PROのような高解像ドングルDACが最適です。同じドングルDACでもDC-Eliteのような上級機だと返って派手さや濃さが強調されて爽快感が損なわれます。
非常に高価なヘッドホンなので、安価なドングルDACで鳴らすのは忍びないと思うかもしれませんが、ヘッドホンの個性を活かすためにも、ケースバイケースで上流の駆動機器をあれこれ試してみるのも面白いです。無らしやすいヘッドホンなので音量の心配もいりません。
| ケーブル比較 |
YH-5000SEとYH-4000の付属ケーブルは見た目がだいぶ違うので、音にも影響があるのか確認してみました。
公式スペックではどちらも線材は銀コートOFCと書いてあるので、極端な違いは無いと思うのですが、交互に聴き比べてみたところ、そこそこ違うように感じます。
さすがにYH-4000がYH-5000SEに変身するというわけではなく、先程感じたフィルターメッシュ素材による高音域の違いはケーブルによる影響は感じませんでしたが、YH-5000SE付属ケーブルの方が小音量の場面でのセンター付近の空間に浮遊感や立体感があるように感じられ、YH-4000のケーブルに戻すと平面的で単純化される感覚です。ちなみに接続はどちらもシングルエンドです。
普段ならケーブルは好みで決めればよいと思っているのですが、今回は明らかにYH-5000SEの付属ケーブルの方が良いと実感できました。
| 根本が細いので互換性は悪いです |
一般的な3.5mmTSコネクターなので、社外品や他のヘッドホンのケーブルを拝借して試してみようかと思ったのですが、根本部分の段差形状が邪魔をして、ほとんどのケーブルが入りませんでした。
手元にあったケーブルではNobunaga Labsの黒いベーシックなやつが接続できたので試してみたところ、それのサウンドはYH-4000付属ケーブルに近かったので、YH-5000SE付属ケーブルはだいぶ優秀なようです。
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| YH-C3000 |
続いてYH-C3000の方です。ヤマハらしい空間音響や音像の緩さといった部分はYH-4000と共通しています。
少なくとも空間音響のチューニングにおいては、数ある密閉型ヘッドホンの中でもトップクラスに優れており、よくここまで丁寧に安定した音響を作り出せるなと素直に関心できます。
一定距離から音がやってくるヘルメット的な音響は、YH-4000は開放型なので、他の開放型ヘッドホンと比べて特異性が目立ったわけですが、むしろ密閉型の方ではしっくり来るので、YH-C3000は他の密閉型ヘッドホンと比べて特異な感じは無く、それらと同じジャンルで戦っている感覚が持てます。
YH-4000と異なる点は、開放型と密閉型という差よりも、むしろドライバーの違いの方が大きいように思います。YH-C3000の方が激しさや鮮やかさがあり、密閉型だからといって響き過多のモコモコした眠いサウンドにならないように仕上げてあるおかげで演奏が色濃く堪能できます。しかも低音が暴れないようコントロールされているおかげで、ボリュームを上げていっても聴き疲れしにくいです。
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| RME ADI-2DAC FS |
そんなわけで、YH-C3000はどちらかというとスッキリとしたモニター系のシステムで鳴らした方が良いようで、たとえばRME ADI-2DAC FSなど最適です。
濃い真空管アンプやR2R DACみたいな自己主張が強い機器だと、YH-C3000自体の響きと干渉して暑苦しくなってしまうため、できるだけ線が細く高解像なシステムの方がYH-C3000に音色の響きの部分を任せておけます。
ポータブルで使う場合にも、DAPやポタアンにそこまで個性を求めず、できるだけスッキリしたクリーンなシステムを選んだ方が良いです。YH-4000同様、とても鳴らしやすいヘッドホンなので、バスパワーのUSBドングルDACとかでも問題ないと思います。
YH-C3000はダイナミック型ということで、左右音像の擦り合わせによるステレオイメージは平面型のYH-4000より劣ると思っていたところ、実はかなり良い感じに揃っています。ベースのインパクトからピアノの打鍵やトランペットの咆哮に至るまで安定した距離感と定位を保ってくれて、特定の周波数だけいびつな凹凸があったり変な方角から飛び出すような不具合もありませんし、時間軸のタイミングも揃っており、密閉型ポートで発生しがちな低音の遅れも目立ちません。
一見普通のダイナミック型なのに、ここまで綺麗に揃えて調整されているのは珍しいので、さすが高価なだけあります。ハウジングがコンパクトな楕円形なのも上手く考えられているのでしょう。ワイヤレス機であればDSPでなんとか不具合を抑え込むところ、素の状態でここまで整っていると、他のメーカーがなぜ同じことをできないのかと不思議に思えてしまいます。
最強の密閉型ヘッドホンとして検討する場合、考慮する点はいくつかあります。まず冒頭で述べたとおり、空間展開の距離に限界があるため、もっとそのあたりを求めているならベイヤーダイナミックDT1770PRO MK2の方が向いています。また意外とUltrasoneのSignatureシリーズとかも悪くないです。音像自体が耳元に隣接しているけれど、そこから残響が無限に遠ざかっていく演出が上手いので、相対的にヤマハとは逆にコンサートホール音源の奥行きが感じられます。
個人的にYH-C3000をメインの密閉型ヘッドホンとして使うには難しいと思う点は、やはり音像が緩く拡大されている感覚です。たとえばヴァイオリンの弦が1mmの点であってほしいところ、ヤマハで聴くと10mmの円のように聴こえます。そのあたりの精密さはFocal Stelliaあたりが優秀だと思いますし、ベイヤーはもちろんのことAustrian Audio Hi-X60も素晴らしく、TAGO T3-01も温厚な響きの中に音像描写は細かい点として描けている優秀なヘッドホンだと思います。そのようなフォーカスの効いたサウンドに慣れている耳でYH-C3000に変えると、スピーカーのスイートスポットが緩くなる、抽象的にはガラス細工が加熱されて左右に引き伸ばされるような感覚があります。
ソニーMDR-Z1Rもフォーカスは上手なのですが、高音と低音で時間軸のタイミングがズレているような感覚があり、これは他のソニーヘッドホンでも全く同じ印象があるので、ヤマハがヤマハらしいように、ソニーもソニーらしいといった、メーカー独自の音作りの解釈があるのでしょう。
そうなってくると、やはり30万円という価格設定に戻ってきます。密閉型ヘッドホンというのはメーカーごとの音作りの解釈を楽しむような嗜好品なので、高級機になると価格による優劣は結構曖昧です。
たとえば私なら、T3-01は7万円でも大変気に入っていますし、DT1770PROやAustrian Audio Hi-X60など、中身はスカスカでハイテク材料工学や木材の響きとかが皆無でも、なぜか良い感じのサウンドを実現してくれる密閉型も多いです。
また、たとえばFocalならCelesteeやLensys Proがあるからこそ最上位Stelliaの凄さが際立ち、ソニーもMDR-Z7M2があってのMDR-Z1Rといった具合に、メーカーごとに段階的なグレードアップで最上位モデルの存在意義を強めているわけですが、ヤマハは今のところYH-C3000だけなので、正直ヤマハの技術力をもってすれば、ウッドハウジングの職人工芸を除けば十万円台で同じものを作れてしまうのではとも思えてしまいます。
現時点でトップクラスの密閉型ヘッドホンはと聞かれたら、私ならYH-C3000は迷わず候補に入れますが、しかし個人的にAbyssやZMFなど新興の超高級ヘッドホンブランドにあまり積極的になれないのと同じで、少量生産の手作りだからという理由での価格設定という点は考慮すべきで、値段が二倍なら音質も二倍優れていると考えるべきではありません。デザインや手触りも含めて魅力を感じるか、メーカーの思想や努力に共感して支持するといった部分も含めて検討すべきです。
おわりに
ヤマハYH-4000とYH-C3000は、フラッグシップYH-5000SEのサウンドを継承するヤマハらしいサウンドスタイルと、そこに新たな面白さも提案してくれる、上質で有意義なヘッドホンだと思いました。
どちらもポピュラー楽曲や映画サウンドトラックなど緻密に作り込まれた音響世界を堪能するのに最適です。ヤマハというメーカーのホームシアターと楽器製造という両方の知見が存分に実感できる、他社では真似できない高度な音作りを提供してくれます。数値的な比較よりも、自分が普段どういった音楽を聴きたいのか、しっかり理解できている人に向いています。
開放型YH-4000については、フラッグシップYH-5000SEとの比較で悩む人も多いかもしれません。音質は明らかに違うものの、単純な上下関係や優劣ではないため、価格差が許容できるのなら純粋に自分が好きな方を選ぶべきです。ケーブルはYH-5000SE付属の方が良いと思ったので、YH-4000と別売ケーブルの組み合わせというのもアリかもしれません。
十万円の価格差は単純な部品材料費や製造コストだけではなく、初回モデルというのはそれまでの試作開発の人件費や生産ラインの設備投資などの回収が重くのしかかるため、高価になるのは必然です。製造が軌道に乗ってから主力量産型を出すのはセオリー通りですが、今回ヤマハは単純にペラペラの材質にコストダウンした廉価版ではなく、クオリティはそのままでサウンドチューニングを変えたモデルとして発売したことは賢明です。またYH-5000SEの方も陳腐化させず、追加のレザーパッド、ケーブル、スタンドなどのデラックス版として価格差に説得力を持たせているあたりも上手です。
YH-C3000の方は、密閉型の音響設計としては最高水準の仕上がりなので、ぜひ聴いてみる価値があります。密閉型というのはモデルごとの響きの好みが分かれやすいですが、単純な好き嫌い以上にヤマハのチューニングの上手さに素直に関心できると思います。
私には30万円はちょっと値段が高すぎる領域です。グランドピアノに通づるハウジングの丁寧な仕上がりは確かに美しいと思いますが、工芸品押しならオーテクくらいの派手さが欲しいですし、逆にカジュアルに使える小型ヘッドホンとしては、せっかくのウッドハウジングに傷をつけるのが心配で、むしろ購入をためらってしまいます。
できれば今後もうちょっと手に入りやすい価格帯のモデルが欲しいのですが、現在の国産生産ラインではそこまで数量を作れないから、あえて少数精鋭の高級路線に舵を切っているのかもしれません。
個人的にヤマハのヘッドホン市場参入で一番強く感じたのが、産業デザインと製造技術の高さです。とくに最近は新興ブランド製ヘッドホンの実物を手にしてみて、あまりの品質の悪さに落胆することが増えてきました。DACやアンプなども同様です。コストダウンのせいではなく、単純に設計と製造の経験が浅いチームが作っているため、無駄にコストがかかって高価になってしまい、しかも高価な方が注目を集めるという悪循環です。
その点、ヤマハを中心に日本の大手メーカーはネジやヒンジからパッド縫製に至るまで、しっかりした開発と製造技術の優位性は健在のようです。ヘッドホン以外の世界的なオーディオ市場を見ても、年配の人の方が日本メーカーを好む傾向があるようですが、それは単純に名の知れた老舗メーカーというだけでなく、ベテランの知見で、実物を使った時の品質の高さ、価格に見合う価値が理解できるという理由も大きいと思います。悪く言えば、ボリュームノブが重い方が売れるという話になってしまうのですが、今回YH-4000とYH-C3000を使ってみた限りでは、安易な物量投入に走らずに、設計と製造技術の高さで付加価値を生み出していると思えました。
今後ヤマハがヘッドホン市場にさらに進出するのであれば、個人的には二つの方向性を期待したいです。
まずデザインと製造技術の高さという点で、もうちょっと安い価格帯で小型高音質ヘッドホンの復権を狙ってもらいたいです。開放型ならGrado、密閉型ならHD25のような、無造作にパッと装着できるスタイルで、音がワイヤレスよりも優れているモデルの選択肢が現在とても少ないです。(それだけワイヤレスが良くなったということかもしれませんが)。開放型だとオーテクATH-R70xくらいでしょうか。FinalのX8000もどこかへ消えてしまいました。なんだかんだで身構えずにDAPで手軽に鳴らせる小型ヘッドホンが欲しくても良いものが見当たらないので、このあたりをヤマハの音響設計で作れたら凄いだろうなと期待してしまいます。ベイヤーの新作DT270も良かったですが、オーディオマニアとしはもうちょっと上を目指してもらいたかったです。
また、今回もあらためてヤマハの音響性能の高さを実感できたので、やはりDSPサラウンド系に本格的に参入してもらいたいです。YH-L700AやL500Aよりもさらに踏み込んだ、ハイエンドなPCゲーマーやホームシアターマニアが満足できる低レイテンシーのハイレゾサラウンドというのは未だにブルーオーシャンで、それに一番近づける技術力を持っているのがヤマハだと思っています。HDMI eARCやUSBで5.1chストリーミング動画プラットフォームからDolby Atmos対応ゲームまで、ソースは身近にあるのにヘッドホンで有効に活用する方法がありません。2chソースの疑似サラウンドエフェクトよりも、実際のマルチチャンネルソースをDSPアンプとヘッドホンのセットで最適化された音響体験を実現してもらいたいです。YH-4000とYH-C3000を聴いていて、これでロスレスサラウンドでオープンワールドゲームとかできたら最高なのにと思えて仕方がありませんでした。
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