2020年9月13日日曜日

ベイヤーダイナミック T1 & T5 3rd Generation ヘッドホンの試聴レビュー

 ベイヤーダイナミックからフラッグシップモデルT1とT5の最新型「3rd Generation」が登場したので、試聴してみました。

T5・T1 3rd Generation

欧州では2020年9月発売、価格はそれぞれ999ユーロです。開放型のT1、密閉型のT5、どちらも旧型を個人的にずいぶん愛用してきたので、5年ぶりの新型でどの程度変わったのか気になります。

T1・T5

初代ベイヤーダイナミックT1は2009年、T5pは翌年2010年に発売、そして第二世代「2nd Generation」はそれぞれ6年後の2015・2016年に発売しています。

そんなわけで、時期的にもファンのあいだでは「もうそろそろ三代目が出るんじゃないか・・・」と噂されていました。今回ようやく第三世代「3rd Generation」が登場したことは、驚きよりも、満を持してといった感じがあります。

試聴するにも、どれがどれだか混乱します

それよりも個人的には価格設定にちょっと驚きました。999ユーロというのは確かに安くはありませんが、近頃のハイエンドヘッドホン価格高騰の中では比較的安価というか、他社のフラッグシップに合わせて価格を吊り上げていないのは良心的です。最近のヘッドホン業界は「値段が高くないと富裕層に売れない」というような悪循環を感じていたのですが、そんな中で今回の発売価格にはホッとしました。

ベイヤーダイナミックはモデルチェンジのペースが非常にゆっくりなので、実売価格が比較的安定しています。2nd Generationの発売時は約12万円でしたが、5年経った現在でも店頭価格は10万円程度です。そのため、陳腐化を心配せずにいつでも安心して買えるという反面、私なんかは「もうちょっと様子を見ようか・・・」と、なかなか購入の決断ができないという側面もあります。

私自身は2009年の初代T1を発売当時からずっと愛用していて、そろそろボロくなってきたので2nd Generationを買おうかと思っていながら、結局2018年に「Black Edition」という限定カラーが出て、ようやく重い腰を上げて買い替えました。T5p 2nd Generationも同様に「いつか買わなきゃ」と思いながら、友人が使い古したやつを中古で引き取っています。結構熱心なベイヤーファンなのに、発売日に飛びついたりしないので、なんだか申し訳ないです。

初代T1

ベイヤーダイナミックT1は高級レファレンスモニターヘッドホンというジャンルそのものの先駆者みたいな存在で、2009年の発売時には、10万円を超えるヘッドホンというのはかなり異色な存在でした。ゼンハイザーHD800はまだ登場しておらず、ライバルといえばHD650やK701といった5万円くらいのモデルが代表的だった時代です。

DT880と初代T1

DENONやオーテクなどの高級ヘッドホンは当時からありましたが、それらは家庭での音楽鑑賞向けにあつらえた嗜好品といった感じで、一方ベイヤーT1はプロ用スタジオモニターヘッドホンとして名を馳せたDT880の上位機種という事で、かなり珍しいコンセプトでした。簡単に言うと、DENONなどは高級オーディオ店、ベイヤーダイナミックは楽器店で販売しているイメージです。

T1はベイヤーダイナミックが初めてテスラテクノロジードライバーを採用したヘッドホンとして命名されており、2010年には同じくテスラを導入した初の密閉型ヘッドホンとしてT5pが登場しました。インピーダンスを下げた事でポータブルでも使えるということで「p」とついています。

その後ベイヤーダイナミックは多くのモデルでテスラテクノロジードライバーのバリエーションを搭載するようになりましたが、T1とT5pを常に最上位のフラッグシップモデルに置いています。

初代T1・T5p発売以降の動きを見ると、

  • 2009年 「T1」
  • 2010年 「T5p」
  • 2014年 創業90周年限定モデル「T1 90th Anniversary」
  • 2015年 Astell&Kernコラボレーション「AK T5p」
  • 2015年 第二世代「T1 2nd Generation」
  • 2016年 第二世代「T5p 2nd Generation」
  • 2016年 Astell&Kernコラボレーション「AK T1p」
  • 2018年 Astell&Kernコラボレーション「AK T5p 2nd Generation」
  • 2020年 第三世代「T1 3rd Generation・T5 3rd Generation」

といった具合に、あまり波風を立てずに、コラボと交互に着々と開発を進めているような印象です。

それぞれサウンドチューニングの変更や更新が主な理由ですが、外観デザインでは、2nd Generationからケーブルが着脱可能になったのはオーディオマニアに喜ばれました。

T1・T5 3rd Generation

今回登場した3rd Generationは最新型といっても、デザイン面では伝統的なベイヤーダイナミックのスタイルを守っており、新ロゴに変わったくらいで、2nd Generationと比べても外観上は目立った変化はありません。

T1 3rd GenerationとT1 2nd Generation(Black Edition)
T5 3rd GenerationとT5p 2nd Generation

これまではT1がシルバーで、T5pがブラックという区別がされていたのですが、今回はどちらもブラック系なので、遠目では見分けがつかないです。(上の写真ではT1 2nd Generation Black Editionなので、さらに混乱しますが・・・)。

T1は開放グリルが大きく変わります

目にとまる部分では、ハンガー部品がこれまではロゴが肉抜き加工された特注品だったのが下位モデルと同じシンプルなものに統一されましたし、T1の開放グリルも以前は細かい金属メッシュによる精巧な部品だったのが、金属板に穴を開けたものに変わっているなど、全体的に合理化とコスト削減が伺えます。

これらが音質面にどう影響を与えるかは不明ですが、そういうのを気にする人には賛否両論あるみたいです。

T1 3rd Generationの開放グリル
T5 3rd Generation

T1が開放型でT5が密閉型なので、やはり一番目立つ違いはハウジングです。

今回はどちらも共通のスレンレス板を使っているようですが、T1は穴が貫通して開放型になっており、T5では表面に模様を付けるのみに留まっています。レーザー加工だと思いますが、どちらも綺麗に仕上っています。見分けがつきにくいのが唯一の難点でしょうか。

新旧デザインはそっくりです
あまりにも有名なデザイン
シンプルながら素晴らしい装着感です

ハウジングやヘッドバンドの形状はDT880など過去40年近くほとんど変わっておらず、何万人ものユーザーが慣れ親しんだデザインなので、あえて大きく手を加える必要は無いのでしょう。

他のベイヤーヘッドホンもあわせると、多分私の人生で一番長時間装着しているデザインだと思いますし、それでも一切不満はありません。軽量で快適、フィット感や遮音性も優秀な、本当に優れたデザインだと思います。

T1・T5のどちらもここまで回転します

ところで、昨年発売されたDT177X GOではハウジング回転ヒンジ部品が改悪されていて、十分な角度まで回転してくれず、耳の下に隙間で出来てしまうという最悪のデザインでした。今回も同じ改悪部品を使っているのかと心配していたのですが、幸いにもT1・T5のどちらも2nd Generationと同じ部品だったので、ピッタリ隙間なく装着できて一安心しました。

ヘッドバンド
あいかわらずMade in Germanyだそうです

イヤーパッドはどちらも2nd Generationと同じもののようです。開放型のT1は通気性や肌触りの良いベロア調パッドで、密閉型のT5は遮音性重視のレザー調パッドが付属しています。

個人的にどちらのパッドの装着感も好きで、特にT5のレザー調は柔らかくモチモチしていてピッタリ密閉するので良いのですが、二年ほどでボロボロになってしまったので(表面が崩れてきます)、これまでに二度交換しています。快適さの代償と考えれば仕方がありません。

他にも社外互換品も豊富にあるので、装着感や音質を自分の好みに合わせてチューニングすることも容易です。

ちなみにヘッドバンドも同じようなレザー調素材でできており、こちらも私のT5p 2nd Generationではボロボロに崩壊しはじめたので、修理に出すべきか悩んでいます。

3rd Generationは布みたいなものが追加されています
イヤーパッドは同じもののようです

イヤーパッドを外してドライバーを見ると、これまでどおり前方から耳に向かって傾斜配置されており、周囲は音響をチューニングするためのメッシュに囲まれています。

3rd Generationでは、T1・T5のどちらもドライバーの前に厚い布のような部品が追加されています。こちらも音響チューニングのためでしょうか。ゼンハイザーHD800でも似たような布がありますね。

ベイヤーでも他のモデルは平行配置ばかりです

ベイヤーのヘッドホンでも、ドライバーを傾斜配置しているのはT1・T5pシリーズのみで、DT1770やDT770などではハウジング中央に並行配置されています。

傾斜配置の方が設計に余計な手間がかかるとは思いますが、傾斜と平行でどちらが優れているというものでもなく、傾斜配置だと音が自分の前方から来ているように(つまりスピーカーと似たような感覚に)なり、平行配置だとヘッドホンらしい左右のステレオ分離が得られます。他のハイエンドヘッドホンを見ても、開放型・密閉型を問わず、傾斜型と平行型で半々くらいに分かれています。

つまり、DT1770など平行タイプを聴き慣れている人がT1のような傾斜タイプを聴くと、どうも音が前方センターにまとまりすぎて、空間の広がりが狭いように感じてしまい、逆にT1を聴いてからDT1770を聴くと、音が左右に分かれすぎてセンターが薄く感じます。

裏は赤いスポンジでした

3rd Generationにて追加された布カバーみたいな部品はドライバー固定リングで固定されています。この固定リングを外すとハウジングからドライバーが脱落してしまうので、万が一分解する場合はドライバーを下に向けないでください。

布カバーを外すことで2nd Generationと同じような見た目になりますが、これで音質が変わるのかについては後述します。

T5 3rd GenerationとT5p 2nd Generation
T5 3rd GenerationとT5p 2nd Generation

T5 3rd Generationの構造はT5p 2nd Generationとほぼ同じで、唯一布カバーが追加されたのみですね。ドライバーやハウジング内部のデザインもそっくりです。

3rd GenerationではT5と同じ部品構成になりました
よく見ると奥にスポンジが追加されています

T1の方はドライバー自体は600Ωが32Ωに変わりましたが、見た目は2nd Generationと一緒です。

ただし、2nd Generationでは初代T1から使われていた細いウレタンゴム付きの固定リングでしたが、3rd GenerationではT5と共通のものに変更されています。旧タイプの方が優れていたというわけではないので、この機会に共通部品に変わったのは合理的だと思います。

それよりも、よく見ると3rd Generationではハウジング外面にスポンジが追加されています。これは音質面でかなり大きな影響を与えると思います。開放グリルが金属メッシュからステンレス板に通気孔を開けたものになったので、そのあたりの調整のためにスポンジを追加したのでしょうか。

ドライバーはベイヤーダイナミックが誇るテスラテクノロジータイプです。原理的には通常のダイナミックドライバーと同じですが、1テスラ(10000ガウス)という強力な磁石を搭載することで、振動板を正確・高レスポンスで駆動するというコンセプトです。

テスラテクノロジードライバーにもいくつかのバリエーションがあり、T1・T5pに搭載されている最上級のものは、振動板と磁石を固定するフレームとヨーク部品が強固な金属で作られており、もうちょっと価格が安いDT1770PROなどは青いプラスチックフレームでした。

DT1770の青いドライバー

そのうち合理的に全モデルをプラスチックに変更するのかと思っていたのですが、今回3rd Generationでもあいかわらず金属フレームを使っています。もちろん外観が似ているというだけで、サウンド設計面では初代→2nd→3rdと着々と進化を遂げているだろうと思います。

3.5mmプラグ
ジャックが奥まっています

ケーブルのヘッドホン側には2nd Generationと同じく左右両出しの3.5mm TRSコネクターを採用しています。

ヘッドホンケーブルのコネクターは各メーカーごとにバラバラで厄介な状況が続いていますが、個人的にはやはり3.5mmというのが一番確実性があり、入手しやすく、太いケーブルも扱えるので理に適っていると思います。

3.5mmの唯一の難点は、TS(2接点モノラル)かTRS(3接点ステレオ)か、信号とグラウンドはどこを使うか、というルールが決まっていない事です。

ベイヤーの場合はTRSで、T(先端)が信号、R(リング)がグラウンドです。つまり、このタイプかTSなら互換性がありますが、TRSでSがグラウンドのタイプでは音が出ません。

さらにTRSのSは、先程ドライバーの写真を見てわかるように、ドライバーの金属フレームにグラウンドとして落とされています。金属製フレームなのでシールド効果と帯電防止のために、しっかりと考えられているのがプロらしいですね。つまりバランスケーブルではT(HOT)R(COLD)S(GND)になり、純正XLRバランスケーブルもちゃんとSがXLRのシャーシに接続されています。

ちなみにヘッドホン側の3.5mmジャックはハウジング内に結構奥深く入っているので、かなり細い3.5mmプラグでないと挿入できません。社外品アップグレードケーブルを検討する場合は、ちゃんとベイヤーダイナミックT1対応品と書いてあるかチェックが必要です。

1.4m・3mケーブル
別売の4ピンXLRバランスケーブル

今回3rd Generationに付属しているケーブルは、T1が3m、T5が1.4mで、パーツ番号を見ても2nd Generationと同じもののようです。純正オプションパーツとしてAK 2.5mmバランス(1.4m)と4ピンXLRバランス(3m)も販売しています。

個人的な感想ですが、これら純正ケーブルはかなり優秀だと思います。どれも同じ7N-OCC線材で、3mでも抵抗値は1Ω以下、柔らかく絡まりにくい布巻きです。これまでT1やT5p 2nd Genrationにて色々な社外品アップグレードケーブルを試してきましたが、音質面で結局この純正ケーブルが一番好きだという結論に落ち着きました。

他のヘッドホンメーカーだと、純正付属ケーブルはインピーダンスが非常に高かったりクロストークが多かったりで、社外品に交換するメリットがあるケースが多いのですが、T1・T5については純正品で十分満足できています。ずいぶん高価ですが4ピンXLRバランスケーブル(25,000円)も追加で購入してしまったくらい好きなケーブルです。

付属ケース
かなりしっかりしています

収納ケースも2nd Generationと同じデザインの丈夫なものが付属しています。ロゴのみ新しいタイプに変更されています。厚くしっかりしたものなので、携帯するには不便ですが、自宅での収納や荷物としての輸送時にはとても安心できます。

インピーダンス

これまでは開放型T1は600Ω、密閉型T5pはポータブル向けに32Ωだったのですが、今回3rd GenerationではT1も32Ωになりました。

そのため、本来ならT1pとでも呼ぶべきですが、ポータブル向けだと思われたくないのか、あえてT5pから「p」を削って「T1・T5 3rd Generation」という名前になりました。ちなみに2018年のAK T1pも32Ωでした。

どちらも32Ωということは、ドライバーが共通のものなのか、それとも個別にチューニングを変えているのかは不明です。能率はどちらも100dB/mWと書いてあり、実際の音量もほぼ同じです(T5の方が遮音性が高いので音が大きく感じますが)。

ところで、ヘッドホンのインピーダンスを下げるというのは賛否両論あると思います。特に600Ωから32Ωとなると、ずいぶん大きな変更です。

昔から、ヘッドホンはインピーダンスが高い方が音が良いと言われている理由は主に二つあり、まず古典的なセオリーだと、インピーダンスを下げるためにはボイスコイルを含めた駆動部分が重くなってしまい、動きが鈍く繊細な描写ができなくなると言われていました。現在はドライバー技術の進歩で、そこまでのデメリットは無いのかもしれません。

もうひとつは、そもそもインピーダンスを下げる目的は、大きな電圧が出せないポータブルアンプなどでも大音量を出せるようにするためですが、そのかわりに電流を大量に消費するので、アンプの特性に音質が影響を受けやくなります。

ようするに、インピーダンスが下がる事で「鳴らしやすく」なると思いがちですが、音質面ではむしろ、下手なアンプの弱点を露見しやすくなってしまうので、優れたアンプが求められるようになります。

各メーカーのハイエンドイヤホン・ヘッドホンが最近こぞって低インピーダンス化しているのも、単純に鳴らしやすいからという理由だけでなく、DAPやアンプなどの違いがわかりやすくなり、「聴き比べ」で盛り上がっているという風潮もあるのかもしれません。

インピーダンス
T1 2nd以外

実際にインピーダンスを測ってみると、こんな感じです。T1 2nd Generationのみ600Ωで桁違いなので、それ以外のモデルをグラフにしてみると、同じ32Ωスペックでも、低音側は結構違うことがわかります。

1kHz付近ではちゃんとスペックどおり32Ωくらいで、それより上はあまり違いが無いので、つまりドライバーそのものの特徴はよく似ており、100Hz付近で一番目立った違いがあるのは、ハウジング由来でしょうか。

T1 3rd Generationは80Hz付近で大きくインピーダンスが上昇する性質はT1 2nd Generationと似ていますね。T5p 2nd GenerationとT5 3rd Generationでは低域周辺が意外と違うのが面白いです。

位相グラフ

位相で比較してみると、T5 3rd Generationはほぼ一直線に近く、T1 3rd Generationが一番派手な変動があります。80-100Hzを軸に回転しています。

音質とか

今回の試聴では、主にChord M-Scaler + Hugo TT 2を使いました。T1も32Ωになったので、DAPとかを使っても申し分ないと思いますが、以前からT1・T5p 2nd Generationで聞き慣れているDACアンプを選びました。

Chord M-Scaler + Hugo TT 2

Chandosレーベルから新譜で、Jean-Efflam Bavouzetのベートーヴェン・ピアノ協奏曲集を聴いてみました。オケはスウェーデン室内管弦楽団で弾き振りです。

全集と五重奏Op.16も入ったセットで安かったので買ったのですが、内容も奇抜な事はやらず、王道かつ最高水準です。数年前にソナタ全集にて新鮮で綺麗な演奏を披露してくれたバヴゼですが、今作も同じ爽快感のある演奏です。ピアノはあいかわらずヤマハで、スケールが大きくキラキラしたサウンドが魅力的です。


T1・T5ともに、とくに中~高域にかけてのテスラらしいサウンドは3rd Generationでも健在で、明らかに旧モデルの後継機だということを実感させてくれます。とくにこういった高音質ハイレゾ生録音を聴くと、テスラの高音の粒立ちの良さには目をみはるものがあります。

まずT1・T5シリーズを聴いたことがない人のために簡単に言うと、テスラテクノロジーの性能は本物で、ここまで凄いポテンシャルを秘めたダイナミックドライバーというのは他になかなか類を見ません。

高級ヘッドホンとなると平面駆動型や静電型ドライバーなどのライバルも増えてきますが、テスラテクノロジーはこれらとは全く別の方向性で、独自の頂点を極めています。

とくにT1・T5に搭載されている最高クラスのドライバーユニットは、制動が力強く正確で、人間が聴き取れる最高音域まで一直線に登りつめます。淡くフワッと四方に広がるとか、特定のピークだけが強調されるような高音ではなく、まさにドイツの精密機械のように、定規で引いたような鋭く切れ味のあるサウンドを実現してくれます。

他のヘッドホンで、高音が魅力的だとか、派手だと言われるモデルの多くは、たとえば振動板の金属コーティングや、反響させるメタルパーツを多用することで、そもそも録音に含まれていない独自の倍音成分を付加させることで、キラキラとした輝きや、いわゆる美音と呼べるような演出を加えることが多いのですが、テスラテクノロジーの場合はそういった演出効果が極めて少なく、録音されたとおりの音がスカッと鳴ってくれます。

T1・T5では、ドライバー部品が強固なアルミやステンレスで作られているため、それらによる響き成分も多少は感じるのですが、肝心なのは、そういった付帯音の引きが素早く、録音に含まれる音の邪魔にならないため、結果として、録音から最大限のディテールを引き出す事が可能になります。

他社のハイエンドヘッドホンと比べても、T1・T5はとくに中~高域の再現性がとても良好で、録音された内容が良いほど、その魅力を引き出せるヘッドホンです。余計な響きの付帯音に邪魔されないということは、録音の空間定位の再現性がとても優秀であり、たとえばライブ生録演奏なんかだと、ピッタリと定位が揃い、音の粒の発生源(つまり楽器)と、音像の輪郭がイメージできます。金属的な響きが四方八方に響き渡るようなヘッドホンとは根本的に次元が違います。

ただし、このような音像定位の忠実さが仇となって、もっと意図的に派手な広がりをつけているヘッドホンに慣れている人からすると、T1やT5は「サウンドステージが狭い」「音像のスケールが小さい」なんて不満が挙がる事は確かです。とくに、録音自体の立体音場が十分に練られていない楽曲だと、このT1・T5のメリットは活かせきれません。

たとえば、試聴に使ったベートーヴェン協奏曲は、Chandosレーベルらしく、あまりステレオ感を広く取らず、実際のコンサートホール観客席での体験に近づけています。

T1・T5のどちらも、目を閉じてイメージしてみると、演奏者の音像が自分の目の前の近い位置に正確に描かれていて、それ以外の余計な場所に飛散していない感じが掴めると思います。オケも両端がちゃんと前方視野角に収まっていて、たまにティンパニーの響きとかが背後に回ることはありますが、基本的に、現実の観客席からの情景から逸脱しません。

とくにオーケストラ作品だと、録音されたコンサートホールの音響やマイク設置場所、録音エンジニアの好みやセンスによって、指揮者やソリストの立ち位置、そしてその背後の管弦セクションの展開などが変わるのですが、T1・T5で聴くと、とくに中~高音において見事に再現できています。

逆に言うと、T1・T5のどちらも、楽器が飛び回って自分を包み込むような非現実的なサラウンド効果は期待できませんし、また、必要以上に音像を遠くにして(つまり音像よりも前に響きを作って)眺めるような距離感・立体感は得られません。そういう効果が得意なヘッドホンは他にあります。

初代T1・T5pに遡ると、ピアノ打鍵などでかなり鋭い硬さが目立ち、それはそれで魅力があったのですが、不評も多かったらしく、T1 2nd Generationではそのあたりが穏やかに変更されました。T5pの方は2nd Generationでもまだ高音が鋭かったですが、低音を盛る事でバランスを取るような仕上がりでした。

初代T1・T5pの特徴だった高音の鋭さというのは、悪い事ではなく、むしろそれが魅力でもあったのですが、聴く音楽ジャンルをかなり限定するので、結果的に汎用性重視でマイルドな方向へと変更していったのは納得できます。

初代の高音はとくにヴァイオリン、アコースティックギター、トランペットなど、金属弦や金管の音との相性が良く、ダイナミックレンジが広いハイレゾクラシックやジャズ楽曲を聴くと凄い体験ができたのですが、逆に、ダイナミックレンジが狭く、常に同じ音量の高音(たとえば電子ドラムのチキチキ音)が続く楽曲だと耳障りでした。

アコースティックギターの単独弾き語りみたいな、ダイナミックレンジが広い生楽器録音であれば、演奏の平均音量(適正なボリューム)に対して本当に大きな音というのは稀にしか鳴らないのですが、ポップス楽曲だと一定の刺激音が延々と続くので、それらを初代T1・T5pで聴くと疲労してしまいますし、不快になります。

3rd GenerationではT1・T5のどちらも高音がさらに控えめになっており、特にT1に関しては、初代、2nd、3rdと聴き比べる事で、ヴァイオリンやトランペットなどの鋭さが段階的に低減していることがハッキリと伝わります。さらに、今回のチューニング変更によって、T1とT5のサウンドの違いが狭まり、単純に「開放型」か「密閉型」という違いのみで選べるくらいになりました。

とくにT1は600Ωから32Ωに仕様変更されたので、その影響もあると思います。同じ32ΩのT5とドライバー設計がどれくらい違うのかは不明ですが、鳴り方はよく似ており、どちらもテスラらしい高域の素直さは健在ながら、ビクッと驚かせるような高音の尖りはありません。

ベイヤーダイナミックの場合、同じドライバーでインピーダンスを下げると大味で解像感が損なわれる印象があったのですが(DT880の600Ω・32Ωとか)、T1に関しては、特に高域に関してはそこまで悪い印象は無く、確かに丸くはなっているものの、メリットを損なうほどの問題は感じませんでした。むしろ、これまでのT1・T5pの高音がちょっと尖すぎると感じていた人なら、3rd Generationの仕上がりは気に入ると思います。

高音のテスラらしさは健在ですが・・・

3rd Generationは中~高域にかけてテスラらしさを維持しながら、より一般的なヘッドホン並みに落ち着いた表現になったのは良いのですが、今回試聴してみて、中~低域の表現に関しては、かなり困惑しました。私がイメージしていたベイヤーダイナミックとは根本的に違うような、ずいぶん雰囲気を変えた仕上がりです。

簡単に言うと、T1・T5のどちらも、3rd Generationでは、中低域の厚みが大幅に増したのですが、ハウジング内反響が極めて顕著で、出音を覆い隠すような強い響きが耳に残ります。

従来のベイヤーは「高音寄りで低域が薄い」と一部から言われていたのは確かなので、今回は他社並みに厚みのある雰囲気にイメージチェンジしたようですが、それを実現するために、かなり響きに頼っています。低音そのものの音圧やパンチはそこまで強くなく、むしろ400~800Hzくらいの濁りが気になります。

全体的な周波数バランスでいうと、T1よりもT5の方が大幅にイメージが変わりました。T5p 2nd Generationはまさにテスラっぽさの象徴とも言えるドンシャリで、鋭い中高域が前方の空間に広く展開して精密に描かれ、最低音はズシンと体に伝わり、それ以外の音色は奥の方で質素に鳴るような、まるで虫眼鏡で中~高域部分だけ空間に拡大したような鳴り方でした。

3rd Generationでは全体の雰囲気がかなり「普通のヘッドホンのバランス」に近づいています。そのため、雰囲気としては、特定の周波数帯だけが目立つという事が無くなり、より万人受けするような仕上がりです。ただし、実際の音の成分を観察してみると、相変わらずドライバーからの出音は中高域重視で、それ以外はほとんどが響きによるものです。

T5p 2nd GenerationとT5 3rd Generationの「響き」の違いをわかりやすく体感する方法があります。

同じ楽曲(なるべく中低域が強めのもの)を聴きながら、ハウジングの外側に手を当ててみると、T5p 2nd Generationでは盛大にビリビリと振動しているのが伝わりますが、T5 3rd Generationでは、振動がとても少なく、半分以下くらいに感じます。

振動している方が良いか悪いか、というルールはありませんが、音響設計が違うんだな、ということは明らかに実感できます。密閉型なので、振動エネルギーで逃せていない音波は、そのまま耳に向かって反射・反響していると考えるのが妥当です。特にT5には内部にダクトやスポンジなど他の吸音メカニズムがありません。

感覚的には、T5 3rd Generationの方が、ハウジングのステンレス板が厚くなっていて、ドライバー背圧の反射が多めなのでしょうか。少なくとも聴こえ方に違いがあることは確かです。

T1の場合も、T5ほどハウジングの振動は感じられませんが、2nd Generationではハウジングが細かな金属メッシュだったものが、T5と同じような厚いステンレス板に変わり、開口率もそこまで高くないので、似たような効果があるのかもしれません。音を聴く限りでは、そう感じます。ステンレス版の裏に新たに薄いスポンジが追加されているのも、その対策のためでしょうか。

Hyperionレーベルから新譜で、Marc-André Hamelinによるリストとタールベルクによるピアノ独奏のためのオペラ編曲集を聴いてみました。

普段はこういった超絶技巧の変わり種はあまり聴かないのですが、Hyperionでアムランということで聴かないわけにもいきません。開始早々からリスト節の大迫力で、原曲はどこかに飛んで行ってしまいますが、精神性とかはどうでもよく、とにかくパワーに圧倒されろというような作品です。ダイナミックレンジの幅が尋常でなく、ハッとするような小音もあるので、鳴らし切るのが大変なオーディオマニア向けのアルバムです。


ヘッドホンのハウジング反響という意味がいまいちわからない、音が良ければ正解・不正解は無いのでは、と思う人もいると思うので、もうちょっと補足してみます。

一番わかりやすいのは、今作のようなグランドピアノなどのソロ録音です。音楽が好きな人であれば「小ホールでのスタインウェイD型の生音」なんていえばあまりにも定番すぎて、感覚的に「正解」を知っており、スタジオやライブ録音での音も、過去のアルバムから大体想像がつきます。

誰かの家の寝室で下手なマイクセッティングでのレコーディングとかだと、明らかに違和感を感じて「不正解」だと思えてしまう、という意味で、明確な正解と不正解があるという事です。

今作は世界最高峰Teldex Studioベルリンにて録音されていますが、このように優れたスタジオであれば、マイクの設置や、部屋の残響などをきっちりと管理しており、録音エンジニアも、過去何十年の経験から正しい録音手法を熟知しています。ステレオの広さやタッチの質感などの細かな違いはあるにせよ、作品には楽器とスタジオ音響の全体が、正しいパッケージとして収録されています。

そんな優れたピアノ録音を、ハウジング反響がほとんど無い完全開放型ヘッドホン(たとえばSTAXやオーテクATH-R70xなど)で聴いてみて、録音に含まれている音色や響きを把握した上で、改めてT1・T5 3rd Generationで聴いてみると、結構な量の中低域の響きが追加されていて、かなり長い時間響いているように聴こえます。

鍵盤を叩いてから一瞬遅れて「ボワーッ」と左右から残響が発せられ、それが次の一音の上に被る事で、次の音の細部が隠れてしまいます。ハウジングによる響きは本来のスタジオ残響とは違う距離感とタイミングの響きなので、それらが交じる事で、録音の立体像が滲んでしまい、霧に包まれたように感じます。

肝心なのは、録音本来のリアルな響き成分と、ハウジング由来の響き成分が喧嘩をしているという事なので、ピアノの生録音に限らず、打ち込みやマルチトラックのDI入力でも、ミックス時に複雑な空間系デジタルエフェクトで擬似的なサウンドステージを作り込んでいる作品なら、同じ問題が発生します。

しかし、完全にドライだとか、距離感や空間の再現が乏しい録音ならば、ハウジングの響きが豊かさを加える演出効果としてメリットにもなります。T1・T5 3rd Generationはむしろそっちの方向を目指しているように思えました。

個人的に、特にT1にはレファレンスモニターとしての性格を維持してもらいたかったのですが、T1 3rd Generationは明らかに方向性が違い、別路線のように感じます。

レファレンスモニターの定義というのは各自あると思いますが、私の場合は「悪い録音なら悪い部分が露見するサウンド」つまり忖度せず作品の音質の良し悪しを分析、提示してくれるヘッドホンというイメージです。周波数特性のフラットさはそこまで重要ではなく、それ以上に、立ち上がりや響きの長さ、空間定位や位相の関係などをしっかり再現してもらいたいです。

逆にレファレンスモニターではないヘッドホンというと、設計者が好む音楽作品、特定のスタイルやジャンルなどが心地よく鑑賞できるように意図的に仕上げたヘッドホン、というイメージです。

それらのどちらが正しいかという問題ではなく、両方が存在して良いのですが、少なくとも以前のベイヤーダイナミックは前者で、プロ用としての目的意識や設計思想が明確にあったのですが、今回の3rd Generationは後者、という印象を受けました。

プロ用としてはDT1990PROやDT1770PRO、もしくはDT880などを残し、T1・T5は方向転換でコンシューマー音楽鑑賞向けに舵取りを行ったように感じます。

それはそれで構わないのですが、ただ今回かなり悩まされているのは、では一体誰をターゲットに想定してチューニングを仕上げたヘッドホンなのか、という疑問です。

メタル、ヒップホップ、ハウスなど特定のジャンルや、モータウンやブルーノートなど特定のレーベルとめちゃくちゃ相性が良くて、聴き慣れた作品が普段以上に凄い音質で楽しめる、というものを発見できれば、T1・T5 3rd Generationは、そのジャンルが好きな人にぜひオススメできる、というふうに明確なメリットが生まれるのですが、今の所それを模索中で、まだ答えが見つかっていません。

布カバーを外した状態

T1 3rd Generationの中低音はクラシック生録とかを聴くにはあまりにも不明瞭で濁っているため、どうにか対策しないとかなり聴きづらいと感じていたので、色々と考えてみました。

まず手っ取り早く、誰もが思いつくのは、3rd Generationで新たに追加されたドライバーの布カバーを外してみることです。これで外観上は2nd Generationと同じになりましたので、同じサウンドになるかと期待できます。

ところが、このカバーを外すと事態が悪化しました。それまで400-800Hzくらいの、いわゆる中低域のみで響いていた濁りが、カバーを外すことでもっと広帯域に、中高域の方まで耳障りになってしまいました。ようするに、このカバーは反射を低減するためのダンパーの役割があり、中高域で効果を発揮していたようです。本来2nd Generationではカバーが無くても良かったのに、あえてコストを割いてでも追加したということは、それなりの必要に迫られての事なのでしょう。

カバーは失敗でしたが、幸い有効そうな対処法を発見しました。

裏に穴が四つあるDT1990PROパッド

どういう原理がわかりませんが、ベイヤーダイナミックDT1990PROに付属している「裏に穴が四つ」のパッドに交換してみると、驚くほど私好みのスッキリとした鳴り方になります。写真では穴が沢山あるのがT1のパッドです。

実は、今回私が試聴する前に、何日か先に試聴していた友人が、同じく低音の鳴り方にかなり悩まされており、色々なパッドで試行錯誤していたようで、結論として、これが一番良かったと教えてくれたのです。確かに効果抜群です。

潜在的な中低音の響きの不明瞭さは消えないのですが、このパッドにすることで、低音の量が大幅に減るので気にならなくなります。ようするに、周波数特性のフラットさや充実感よりも、響きが録音本来の音を邪魔しないようにする、というアプローチです。

このパッドで中低音の量的にはちょうどT1 2nd Generationと同じくらいになります。しかも3rd Generationは高音が若干マイルドなので、全体的にかなり落ち着いて聴きやすく、そこそこ実用的なサウンドに変身します。

ベイヤーのパッドは社外品や互換品のバリエーションがたくさんあるので、他にも色々試してみる価値はあると思います。そもそも、今回良かったDT1990PROパッドもT1と同じベロア調で、穴の数以外ではそっくり同じに見えるので、ここまで効果があるとは試してみるまで全く予想できませんでした。もっとよく観察してみると、DT1990PRO用は中がふわふわなスポンジで、T1のものは硬い低反発ウレタンっぽく硬めです。

T1 3rd Generationのパッドは2nd Generationと同じものですから、パッドそのものが悪いという事ではなさそうです。つまり、このパッドを含めたT1 3rd Generationのサウンドチューニングに個人的に納得できなかったという話です。別の人なら、むしろT1 3rd Generation本来のチューニングの方が断然良いと思うかもしれません。

T5 3rd Generationの方は、残念ながらDT1990PROパッドを装着しても、願ったような効果は得られませんでした。ベロア調だと密着感が悪いせいか、T5のレザー調パッドによって生まれる低音の弾むようなパンチが薄れてしまい、むしろフワフワ漂う響き成分ばかりが目立ってしまいます。

T1は開放型なので、ドライバーの後方(つまり開放グリル)と、前方(つまりドライバーから耳穴まで、パッドに覆われた部分)の空気のバランス次第でどうにか自分好みに調整できるようですが、密閉型のT5ではハウジング由来の響き方を変えることは難しいのでしょう。

音響設計というのはたくさんの要素が絡んでくるので、簡単な答えは無いと思いますが、今回色々と聴いてみて感じたのは、T1・T5のどちらも、テスラテクノロジードライバー周りの順当な進化と、ハウジング周りの新たな聴かせ方と、それら二つが全くの別要素として同時に起こっている、という印象です。音を聴いただけの勝手な想像なので、もし新ドライバーを旧ハウジングに入れたらどう聴こえるだろうとか、色々と気になってしまいます。

おわりに

今回はT1・T5 3rd Generationをじっくり試聴してみましたが、ずいぶんと方向性を変えてきたな、というのが率直な感想です。

最近ベイヤーダイナミックはロゴやウェブサイトのデザインをカジュアル路線に変更しており、ゲーミングなども積極的に参入しているので、T1・T5のサウンドデザインもこれら新たな方針の現れなのでしょうか。

いくらドイツの伝統的な老舗だからといって、過去にしがみついているだけでは駄目ですし、市場規模が限られているプロオーディオ用にこだわるよりも、ヘッドホンブームが盛り上がっているカジュアルコンシューマー方面に注力するメリットは大きいです。(といっても、DT770とかは相変わらず好調に売れているようですが)。

個人的には、これまでのT1・T5pの、鋭く高解像で、客を選ぶようなサウンドが好きだったので、それをメーカーの独自性として続けてもらいたかったです。ユーザーフィードバックの平均点を目指すよりも、むしろ珍しい独自技術をどう楽しむべきかの解説や教育の方がメリットがあるように思います。もちろんそれでヘッドホンが売れなければ責任は取れないのですが・・。

今回の3rd Generationは、一体どんな客層をターゲットに想定して作り上げたヘッドホンなのでしょうか。従来機と比べて、かなり異色であることは確かです。

私自身は主に超高音質な生楽器録音作品ばかりを好んで聴いていて、これまでベイヤーダイナミックはそういうジャンルと相性が良いサウンドなので愛用してきたのですが、今回は明らかに違います。これからも何度か試聴してみますし、今後日本などでも普及してきて、ジャンルとの相性などについて市場の評価が定まってきたら、また見方や印象も変わってくるかもしれません。今は謎のままなので、回答がわかれば、意外とすんなりと受け入れられて、手のひらを返すことはよくあります。

T1の方は、パッド交換による効果が大きいのも考慮すべきです。つまり、もし明日、私のT1 2nd Generationが故障してしまい、急に買い換えるなんて事になったら、例のパッドさえ手に入れば、T1 3rd Generationでもそこそこ満足して使えると思います。個人的に全体の分析力はもうちょっとあったほうが好みですが、音楽鑑賞を楽しむには問題ありません。

同じベイヤーでも、DT1770PRO・DT1990PROは、そのことを踏まえて、サウンドが違う二種類のパッドを付属しているわけですし、T1・T5もフラッグシップなのだから、ケチらずにパッドを数種類付属してくれれば良かったと思います。最近IEMイヤホンなんかでは、硬さが違うシリコンイヤピースを色々付属している事が増えていますね。そうすることで、レビューの視点や評価も、パッドによる聴き比べなど、また違ったものになっただろうと思います。

なんにせよ、個人的にちょっと答えが出せないので、今後プロの方のレビューとかを色々と参考にしたい、不思議なヘッドホンだと思いました。