2015年9月1日火曜日

iFi Audio micro iDSD のファームウェア・アップデート v5.0 v5.0B

個人的に普段から愛用しているUSB DAC・ヘッドホンアンプのiFi Audio micro iDSDですが、2015年8月に新たなファームウェア・アップデートが登場しました。

今回の「v5.0」は、7月のv4.10から一ヶ月ほどしか経っていない発表なので、かなり速いペースと言えます。(ちなみに、v4.10をインストールしてからは、それ以前に頻繁に起こっていたUSB接続がたまに切れてしまう問題が完全に解消されました)。

nano iDSD
http://ifi-audio.jp/ifi-xmos-firmware-upgrade-instructions.html

micro iDSD
http://ifi-audio.jp/ifi-xmos-firmware-upgrade-instructions-midsd.html

とくに今回のアップデートは下位モデルの「nano iDSD」ユーザーには朗報で、任意の追加機能としてDoPモードでDSD256に対応になりました。


ASIOドライバによるネイティブDSD再生が可能なWindowsユーザーと比べて、Macユーザーは苦し紛れのDoP方式に頼らざるを得ず、これまで高レートDSDの対応で苦渋を飲んできたわけですが、今回のDSD256対応は素晴らしいです。

実際に高レートDSDに音質的な意義があるかは別として、nano iDSDでもDSD256をDoP再生できるようになったのはリスニングの選択肢が増えるということなので、素直に喜ばしいです。

iFi Audio micro iDSD

私の使っている「micro iDSD」の方は、以前からDoPでのDSD256に対応していたので、今回のファームウェアで、これといって大きな追加機能などは無いのですが、「Various code optimisations」と書いてあるので、何らかの最適化が行われたようです。

具体的には、iFiの人に掲示板で聞いてみたところ、ASIOネイティブDSDとDoPでは、パソコン上で送信する時点ではあまり違いは無いものの、そのデータを受け取るUSB DACのインターフェース(つまりmicro iDSDのXMOS CPU)上ではASIOネイティブDSDよりもDoPのほうが読み込むためにかなり負荷がかかるそうです。

たとえばmicro iDSDの場合は、USBインターフェースであるXMOS CPUの1コアを丸々DoPのデコード処理に使うことになるため、そのためデコード処理が最適化されていないと回路に負荷がかかり(電流を消費するわけですから)、USB DAC全体に影響を及ぼすようです。こういった部分でASIOとDoPに違いが出てくるそうです。今回のv5.0アップデートはこのXMOSのDoPデコード処理を以前よりもさらに最適化させることで、音質向上を達成できたというわけですね。

実際に試聴比較して、ASIOネイティブとDoPモードにさほど音質差があるとは思わないのですが、USB DACの内部処理的には結構違いがありますので(そもそもDoPとは、DSDをPCMに偽装して送るという事自体が怪しいわけで・・)、DSDの音質については、「DACチップがバーブラウンか、ESS Sabreか」、などと論議する以前に、各メーカーごとのUSB インターフェースのファームウェアやCPU性能に依存する部分が大きいようです。

さらに、今回のファームウェア・アップデートで、DoP方式のもうひとつの問題点である、再生時や曲間の「クリックノイズ」も以前より低減することができたそうです。実際に使ってみるとたしかに静かになっているようですが、これまでもさほど気にならなかったので、あまり不都合とは思いません。大型のスピーカー装置で使っているユーザーには朗報ではないでしょうか。

特殊ファームウェア v5.0B

もうひとつ、ちょっと風変わりな提案ですが、今回micro iDSD用ファームウェアは二種類あり、通常のv5.0以外に「v5.0B」というのが配布されています。

具体的な違いは、v5.0Bを導入することで、「使用時にPC・スマホ側からUSB給電しない」という挙動になります。

これについては、micro iDSDの通常の挙動について知らない、気がついていないユーザーも多いようなので、少し解説が必要になります(説明書にちゃんと書いてありますが)。

micro iDSDはボリュームノブが電源スイッチを兼ねているのですが(ボリュームゼロで電源OFF)、これまでの挙動は:

モード1.USBケーブルでパソコンに接続してからmicro iDSDの電源をONにすると、micro iDSDは常にパソコンから給電された状態になる(いわゆるバスパワーDAC状態)。

モード2.micro iDSDの電源をONにしてからUSBケーブルでパソコンに接続すると、micro iDSDは内蔵電源で駆動する。音楽の再生が止まると、自動的にパソコンから給電(充電)される。

上記の2モードがあるのですが、micro iDSDを例えばスマホやタブレットなどと接続する場合は、モード1ではスマホの電池を消費してしまうため、実用的ではありません。

モード2の場合、再生中はmicro iDSDの内蔵電池駆動で、たとて再生が停止しても、もしスマホのようにUSB給電が貧弱な場合(100mA以下の場合)は自動充電は行わないように設計されているのですが、最近のタブレットや大型スマホのように、100mA以上を給電できるデバイスの場合はmicro iDSDが充電モードに入ってしまうという問題がありました。

今回の特殊ファームウェアv5.0Bは、そのような状況で困っているユーザー向けの限定リリースで、ようするに「micro iDSDの電源をONにしてからUSBを接続すれば、絶対にデバイスからバスパワー電力を消費しない」という挙動になります。

もちろん、電源OFFの状態でデバイスに接続すれば充電が開始されるので、その場合はスマホの電池が消耗されますので注意が必要です。これはmicro iDSDの設計上の問題なので、どうしようもないことです。

たとえば、私の場合はmicro iDSDを常時パソコンに接続してUSB DACとして活用しているので、この場合は特殊ファームウェアv5.0Bではなく、通常ファームウェアVer. 5.0の方が使い勝手が良いです。なぜなら、micro iDSDの電源をONにしてからUSBをパソコンに接続しておけば、音楽を再生中は常時バッテリー駆動で、再生を停止していれば勝手にmicro iDSDのバッテリーが充電されるからです。

再生中バッテリー駆動であれば、USBバスパワーによるノイズや不安定要素を控えることができるので、音質的なメリットがあると思います。

Mac用アップデート

今回のアップデートのもうひとつ大きなポイントは、ようやくMac用のアップデート・アプリケーションが配布されたことです。

これまでのファームウェアはWindows用プログラムのみで、Macからのアップデートは不可能だったのですが、v5.0からはどちらのパソコンからでもできます。

個人的にはJRiver Media Centerを使っているためMac・Windowsのどちらでも良いのですが、たとえばAudirvanaに惚れ込んで、音楽サーバーはMacを使っているという人は多いみたいなので、両方サポートしてくれるのは嬉しいです。実際はWindowsの方が上記のDoP問題を考えずに済むので、良いと思うのですが、Macはドライバが要らないというメリットもありますね。とくに複数のUSB DACを所有しているとMacの手軽さがありがたいです。

v5.00とv5.0Bの二種類があります


Mac用ファームウェアアップデートは二種類のdmgファイルがあり、上記のv5.00とv5.0Bが選べます。

そのままだと開かない場合もあります

システム環境設定で「このまま開く」を選べます


Mac OSのセキュリティ設定次第では、そのままでは開かないので、その場合はOptionを押しながら開く(警告無視)あるいは、システム環境設定の「セキュリティとプライバシー」にて「そのまま開く」を選べば問題なく開けます。

完了すると唐突に現れる画面


開くと一分ほど待った後、完了したという画面が出てきます。経過表示などは一切無いので、フリーズしたと思って焦ってUSBを抜いたりするのはダメです。

Mac上でファームウェアのバージョンを確認

Windowsで見ても、ちゃんとv5.00になっています

アップデート完了後にファームウェアのバージョンを確認したい場合は、Macでは「このMacについて」→「システムレポート」→「USB」でデバイスのバージョン表示されます。Windowsの場合は、iFiドライバのタスクトレイアイコンで見れます。