2015年12月4日金曜日

Chord Mojo DAC についての追記(不具合とか)

Chord Mojo DACの発売当時、個人的に購入レビューを書いてみたのですが、あれから1ヶ月ほど使ってみて色々と経験してきたので、追記をまとめてみようと思います。

イルミネーションはほんとに注目を引きます

↓Chord Mojoのレビュー

Mojoのネットでの評判などを見ると概ね好評で、世界中で在庫が希少な状態が続いているようです。そろそろ時期的に熱も冷めてくることだと思うので、これまで冷静に傍観してきた人たちも、大体の意見がまとまってきた頃ではないでしょうか。

私自身は、実は購入後に一度不具合で返品交換する必要があったため、それも含めて記録しておきます。

Chord Mojoの使用感

個人的に長期間使ってみた上での感想としては、Mojoの音質はクセがあるものの概ね満足で、使い勝手は面倒な部分もありますが、常用するのに苦を感じません。やはり同系統の製品では、「Oppo HA-2」のほうがトータルな機能全般が優れた商品だと思いますが、音質面ではMojoに大きな魅力があると思います。

私の場合は主に自宅のパソコンでのデスクトップ用途なので、モバイルでは使っていません。持ち歩くのに手間取るので、出先では最近購入したiBasso DX80を使っています。

このロープロのカメラポーチがピッタリなのでケースにしています

ノイズの不具合

実は私のMojoは購入時から不具合を抱えていたのですが、その事実をネット掲示板で指摘されるまで気が付きませんでした。

具体的には、「サーーー」というホワイトノイズです。私の購入したMojoは、イヤホンのみを接続した状態で電源を投入すると、イヤホンからそこそこの音量で「サーーーー」というノイズが聴こえます。(USBやS/PDIFケーブルなどをなにも接続していない状態です)。

ノイズの量はイヤホンの能率で変わるので、高能率なIEMなどのほうがわかりやすいです。また、Mojoのボリューム位置に依存せずに常に一定のノイズが聴こえます。

なぜこのノイズにこれまで気が付かなかったかというと、DAC端子にUSBケーブルを接続したとたんに、ノイズがほぼ消えてしまうからです。つまり、パソコンに接続している状態では、実用上問題はありませんでした。また、IEMではなく大型ヘッドホンなどではドライバが耳から遠いためノイズが気になりません。

ただし、USBを接続していないとダメなので、たとえばTOSLINKなどでS/PDIF端子を使っている場合はノイズが聴こえます。また、ノイズが消えるのはUSB DAC端子のみで、USB充電用端子にケーブルを接続しても、ノイズは消えません。

これはネットの掲示板で、S/PDIFを使っているユーザーが「Mojoはヒスノイズが大きい」と文句を言っている書き込みを読んで確認してみた時に気づいたわけです。

これについて掲示板で質問してみたところ、Chordの中の人(Rob Watts氏)から、一部の初回生産ロットで内部回路の製造に不具合があったので、現行品は対策済み、という返答がありました。

そのため、私のMojoを返品したところ、一週間ほどで対策品が帰ってきました。それ以来、上記のノイズ問題は確認出来ませんので、完全に治っているということです。

ちなみに、私が当初購入したモデルは、シリアル番号がM0202●●だったのですが、戻ってきた対策品はM0208●●でした。

このノイズ問題については実は思うところがあります。というのは、Mojo初期のレビューでは、「Mojoはヒスノイズが・・」といった評価を散見していたからです。また、Chordによると、初期に出回った大手レビュー用の試供品はこの問題を抱えていた、とのことです。そのため、不具合だと気が付かずにノイズ云々についてレビューしている人も意外と多いかもしれません。

ちなみに、第二ロットからは問題は修正されているらしいので、日本で流通している在庫はほぼ大丈夫だと思います(というのも、日本は海外から1ヶ月ほど遅れて入荷したので)。

Mojoの音質について

次に、Mojoの音質について気になったことがひとつあります。

ネットのレビューなどでよく言われているのは、Mojoは上位モデルHugoと比べてサウンドがまろやかだとか、他社製アンプと比べて聴きやすい、みたいな意見です。私自身も、中域の解像感や音楽性に重点を置いており、アタック感が抑えられている不思議な音作りだと思いました。

またネット掲示板でMojoの高域ロールオフが過剰だ、なんて意見を読んだので、個人的に確認して見たところ、ちょっとおもしろい特性だなと思いました。

具体的には、例えば下記のサイン波スイープを見るとわかるのですが、イヤホンのインピーダンス負荷によって高域が落ちるような特性になっています。

過度なインピーダンス負荷で高域がロールオフされます

このグラフは、一般的なリスニング音量を想定して、出力を1kHzサイン波で200mV(RMS)に合わせた状態で、DCから40kHzまでスイープしたグラフです。(グラフは見やすいように5~24kHzのみの範囲です)。

RME Babyfaceのライン入力で192kHz受けで録音したので、高域のカットオフはサンプルレートの制限ではありません。また、比較対象のためにResonessence Herusで同様の測定を記載しました。

つまり、ヘッドホン出力に、測定と並列でインピーダンス負荷を与えると、高域が5kHz付近からロールオフされています。また、擬似負荷ではなくWestone UM-Pro30を並列接続した場合も、同じように負荷に対応して高域のレスポンスが変わります。

これはChordの掲示板での書き込みを読む限り、アンプ回路による意図的な特性だということなので、決してリニアとは言えないですが、そういった音作りだという感じです。実際UM-Pro30程度であれば-1dB範囲に収まっているので、大した影響はありませんし、疑似負荷の8Ωや4Ωというのも現実味は薄いので、ごく一般的なヘッドホンなどであれば影響は最小限だと思います。

このような特性が効いてくるとしたら、たとえばマルチBA型IEMなどで、クロスオーバーのせいでこの辺の周波数にインピーダンス変動が存在する場合です。とは言ってもクロスオーバーの場合インピーダンスは下がるのではなく上がるのが一般的なので(回路設計によりますが)、問題ありません。例えばUM-Pro30の場合は通常55Ωのインピーダンスということですが、クロスオーバー周波数付近では80~100Ω程度まで上昇します。

とはいっても、比較対象のResonessence(というかごく一般的な広帯域アンプ設計)とは異なる特性なので、もしかするとMojoのサウンドの秘密はこういった部分にあるのかもしれません。

また、「ハイレゾ」なのに高域がカットされているじゃないか、と文句をいう人もいるかもしれませんが、前回レビューで触れたようにChordの場合ハイレゾの高周波再生には興味を持っていないので、そういうクレームは「のれんに腕押し」だと思います。(ハイレゾのメリットは波形タイミングの正確さが増すからだそうです)。

DSD再生

最近色々なレーベルから超ハイレゾというか、最高レートの音楽データが購入できるようになってきました。たとえばDXDと呼ばれる、352.8kHz 24bitのPCM音源や、4倍速DSDとも呼ばれる、DSD256 (11.2MHz)などです。

実際の音質メリットについては論議が絶えませんが、売っているなら試してみたくなるのが心情で、私自身も色々と遊んでいる最中です。

現在手持ちのDACでこれらの高レートファイルを再生できるのは、iFi Audio micro iDSD、Oppo HA-2、そしてChord Mojoです。他にも色々なメーカーからDACが販売されていますが、対応が中途半端な物が多いです。あと一年ぐらいすれば、どの機種も上記レートで頭打ちになる予感がします(それ以上は録音スタジオ機器が追いついていないので、当分出ないでしょう)。

さて、肝心のMojoですが、DXD(PCM 352.8kHz)については問題なく再生できるのですが、DSDについては若干苦労しています。

あまり知られていないことですが、MojoはDSDはDoPフォーマットでしか受信出来ないので、Windows用にASIOドライバなどを提供しているものの、ダイレクトなDSD送信は出来ません。ASIOでもDoPモードを意図的に選択する必要があります。

ちなみに、パソコンとMojoどちらの責任かわかりませんが、間違えてASIOダイレクトでDSD再生をしてみたところ、「バチッ」というものすごいスパイクノイズがヘッドホンから出て、危うくドライバを破損してしまうかと心配しました。

一般的なシングルレート2.8MHz DSD64では、DoP再生においてなんの問題も無いのですが、DSD256ではトラブルに見舞われています。

まず、普段使っているJRiver Media Centerは現行バージョンのver. 21.0.24においてはDSD256のDoP再生に不具合があって、再生が不可能です。これについてはJRiverに報告したところ、今後バージョンアップで対策するとのことです。(追記:ver.21.0.26でDSD256のDoP再生ができるようになりました)。

Mojo+FoobarでDSD256を再生しています

それ以外では、WindowsではFoobar(DSD・ASIOプラグイン)と、MacではAudirvanaでDSD256を無事再生出来ています。ただし、実際に音楽を聴いている際に2つのトラブルに見舞われました。

まず、DSD256のデータは1アルバムが10GB程度あるのですが、私の場合音楽ファイルをNASに保存しており、無線LANで飛ばしているのですが、無線LANの帯域ギリギリで、たまにバッファが追いつかない場合があります。これは現状パソコン機器の限界なのでしょうがないです。ローカルディスク保存であれば問題ないと思いますが、10GBのアルバムを何枚も保存出来ないので苦労します。

次に、厄介な問題なのですが、これまでDSD64やDXDでは快適に使えていたもののDSD256ではUSBケーブルによって音飛びが発生します。これはバッファ不足などではなく、定期的に微小な「プチッ、プチッ」というノイズが音楽に乗って聴こえます。小さな音なのですが、気になり始めるともはや居てもたってもいられません。

USBケーブルを色々と取り替えてみたところ、安い細い、もしくは長いケーブルではプチノイズが消えず、短い高級ケーブル(Audioquest Cinnamon)を使うことで完全に消えました。なんというか高級USBケーブルを賞賛しているようで気が引けるのですが、実際そうだったので自分自身も苦笑しています。多分安価なケーブルでも太くて短ければ大丈夫だと思いますが、なかなかそういうのは見つからないんですよね。Belkinの1.2mのものなどは全部プチノイズが出ました。

Audioquestのケーブルは太くてマイクロ側端子がグラグラするので、ちょっと動かすだけで切断されてしまいイライラするので、なにか安くで柔らかくてプチノイズが出ない代用品が無いか現在探しています。ともかく、DSD256を使うことで明確にUSBケーブルの評価ができるテストになるのでちょっと嬉しかったりします(プチノイズが頻出したらアウトなので)。

不思議なのは、iFi Audio micro iDSDとOppo HA-2では、同じくDSD256を再生しても、このようなプチノイズが出ないということです。まずiFiの場合はフルサイズのUSBケーブルなのでマイクロUSBのような細い貧弱ケーブルではないという理由があるかもしれません。また、どちらもDoP経由ではなくダイレクトにDSDを送り出しているため、転送されているプロトコルによる違いもある「かもしれません」。

憶測の域になってしまいますが、何事も経験してみないとわからないものだな、と関心しています。なんか10年前にFirewireやUSBオーディオが出始めて、ドライバの設定などで四苦八苦していた時代を思い出します。

以上、Chord Mojoについての追記でした。