iPod Shuffleくらいコンパクトなサイズに、ハイレゾ再生と高性能ヘッドホンアンプを搭載した意欲作ということで、価格が15,000円くらいと非常に安かったため、興味本位で買ってみました。さらにBluetoothやUSBトランスポート機能も使えるらしいです。
Shanling M1 |
2016年11月現在では、オンライン限定の先行販売品だそうなので、このレビューに書いてあることは、今後発売されるかもしれない正式版ではあまりアテにならないかもしれません。
Shanling
中国のShanlingは、最近乱立している新参ポータブルオーディオメーカーとは一味違って、けっこう古くからオーディオ機器を作っているブランドです。会社の歴史を読むと、1988年からオーディオアンプを製造していたそうで、私自身も、たしか10年前くらいに英米のオーディオ雑誌でShanling CDプレイヤーのレビューを見て、凄いな~と思った記憶があります。ド派手にピカピカと輝く、明らかに中国っぽいデザインがとても印象に残っています。
ものすごい存在感のCDプレイヤー「CD-T100」 |
Shanlingは中国語で「深圳市山灵数码科技发展有限公司」という会社で、日本の漢字では「山霊」でShanling(シャンリン)と読むそうです。神秘的な名前ですね。社名通り、香港の対岸にある深セン市に本社を構えているので、いわゆる典型的な中国のハイテク企業のようです。
DAP以外の据え置き型オーディオ機器は、これまでいくつかのモデルを触った経験がありますが、中身はそこそこ真面目に作っており、中国のオーディオブランドでありがちな、コンデンサやトランスなどの単品部品に高級品をあしらって、それ以外の部品や回路構成などは極力オーソドックスでシンプルなものが多いです。
各モデルがそれぞれ既視感があるのが面白いです・・ |
デザインは、なんというか、どこかで見たことがあるような筐体に、どこかで見たことがあるようなフォントのロゴをあしらっており、各モデルごとに
オーディオ機器、とくに据置き型のフルサイズモデルの場合、ただの長方形のハコとして、普段なにげなく接していますが、よく考えてみると、たとえばティアック、マランツ、アキュフェーズ、米国ならクレル、パスラボ、レビンソンなど、一目見ただけで「このデザインは、あのブランドだ」と認知できるということは、やはりメーカーが誇れるデザインというのは大事なんだなと実感しました。
Shanling DAPラインナップ |
Shanlingはこれまでにポータブル機器もいくつか作っており、現在DAPではM2、M3、M5、ポタアンではH1、H3Aというモデルが販売されています。それぞれモデルナンバーが高い方が高価です。
とくに最上位DAPのM5は、 D/Aチップが旭化成AK4490、アナログアンプはMUSES8920 → AD8610 → BUF634というデラックスな構成で、他社に引けを取らない高スペック仕様です。
低価格モデルM3、M2も充実したスペックですが、基本的にどのモデルも、他社のハイエンドDAPのような肥大化を嫌って、コンパクトで軽量なデザインを心がけているようです。
M1
今回登場したM1は、名前からもわかるように、Shanling DAPラインナップの中でも最低価格のモデルになります。CDケースと比較してみても、非常にコンパクトです |
本体は、本当にコンパクトです。最近ではCowon Plenue Dとか、Fiio X1 2nd Generationとか、コンパクトなハイレゾDAPが増えてきていますが、それにしてもM1は小さいです。
M1のオーディオ回路はM5ほど豪華ではないのですが、それでもD/Aチップに旭化成のAK4452を採用しており、フラッグシップAK4490などと同世代の最新設計の恩恵を受けています。
アンプ部はマキシム社のMAX97220という高性能ラインドライバチップ搭載しています。D/Aから直結ワンチップでヘッドホンを駆動できる高出力アンプなので、旧来のオペアンプを数珠繋ぎにしているアンプよりは合理的で失敗が無いデザインです。コンパクトなサイズを維持するためには最善の選択肢だと思うので、安かろう悪かろうといった貧弱な構成ではありません。
M1がユニークな点は、開発当初から中国のクラウドファンディングサイトで資金提供を募っており、開発資金が集まって製造が開始したら、まずは出資者に優先的に完成品を提供する、という仕組みでした。いわゆるKickstarterとかと似たような手法です。
この資金集めが無事終了し、ようやく本腰を入れた量産体制に入ったため、2016年10月頃から中国本土のネットショップ経由で購入することができるようになりました。まだファームウェアの追い込みや、生産ラインの調整などがあるので、世界的な代理店販売は行なっていません。
またM1にはBluetoothが搭載されているので、日本などの海外で販売するには輸入許可など色々面倒なようです。並行輸入モデルを日本で使用する際には、Bluetoothの認証を得たデバイスではないため、原則的にはその機能を使ってはいけません。
こういうセットで手に入れました |
私の手元にあるM1は自分で買ったものではなく、友人に便乗して余分に注文してもらったものなので、詳細はわかりませんが、M1本体とセットで、レザーケースと保護シールのパッケージもついてきました。
本体パッケージ |
豊富な付属品 |
USB Type Cケーブルが付属してます |
本体のパッケージは、中国メーカーでありがちな黒い厚紙箱で、中にはM1本体と、保護フィルム数枚、そして充実したUSBケーブル類が同梱されています。
とくに今回M1はUSB Type Cを搭載しているため、手持ちのマイクロUSBケーブルが使えなくなってしまいましたので、付属ケーブルは重宝します。
マイクロSDカード用リーダー |
マイクロSDカード用のUSBカードリーダーも付属してました。「川宇」って書いてありますが、なんでしょうね。
リセットボタンを押すやつまで付いてます |
あと、小さな画鋲みたいなやつは、本体リセットボタンを押すためのです。わざわざ同梱してくれるということは、ソフトの安定性に自信が無いんでしょうか。
レザーケースは色違いがあるみたいです |
こんな感じのケースです |
レザーケースはけっこうまともなクオリティです。今回は青色でしたが、他にも赤とかがあるらしいです。
電源ボタンがレザーケースにぶつかってしまいます・・ |
ちなみに、このレザーケースを実際に使おうと思ったら、致命的な設計ミスがありました。M1の電源ボタンは本体側面にあるのですが、レザーケースにそれがぶつかってしまい、そのまま無理矢理ケースに入れると、勝手に電源が入ってしまったり、押しっぱなしでシステムリセットになったり、トラブルの連続です。
長く使っていればレザーが伸びて押されにくくなるのかもしれませんが、何度使っても同様の問題が発生したので、結局このレザーケースを使うことは諦めました。
謎のゴムバンド |
レザーケースの背面が開いて |
こんな感じでアームバンドになるそうです |
ケース以外に、旅行用スーツケースで使うようなゴムバンドが二本ついてきました。どう使うのか謎だったのですが、公式サイトを見ると、レザーケースと合体させて、アームバンドとして活用するそうです。
たしかに、小型でBluetoothも使えるとなると、ジョギングとかで使いたい人にピッタリのDAPです。
使い所が難しい、保護シールセット |
あと、付属していた保護シールのセットは、よくあるカーボン調とかアルミ調とかかと思いきや、なんとゴッホとか世界の名作絵画シリーズみたいなデザインでした。
以前Fiioが星条旗とかキャプテン・アメリカの盾みたいなデザインの保護シールで笑ってしまったのですが、これもヒドいですね。ネタなのか真面目なのか、まったく見当がつきません。
スペック
M1は公式スペックによると60 x 50 x 12.8 mm、60gと非常にコンパクトで、画面サイズは2.35インチ、そしてバッテリー充電時間が3−4時間、音楽再生時間は9−10時間だそうです。日常的に使うのに申し分ないです。DSDは再生できますが、PCM変換です |
PCM352.8kHzとDSD256は再生できません |
対応ファイルはPCM 192kHzまでで、APE, FLAC, ALAC, WMA, AAC, OGG, MP3, WAV, AIFF, DSF, DIFFと書いてあります。ちなみにDSDファイルはネイティブ再生ではなく、88.2kHzのPCMに変換されます。
DSD64、DSD128は再生可能でしたが、PCM 352.8kHzとDSD256は「サポートしないファイル」と表示されて再生できませんでした。
使用感
このShanling M1を他人に使わせると、まず誰もが画面を指でなぞって操作しようとして戸惑う風景が楽しめます。正面からボタン類が見えないため、一見タッチスクリーンOSのように思えるのですが、実はタッチスクリーンではありません。画面は正方形の小さなカラー液晶で、解像感も発色もあまり良くありません。一昔前に家電量販店のワゴンセールでよく見かけた、「キーホルダー型のデジタルフォトフレーム」みたいな雑な感じです。これで超高画質な画面を採用して値段が2万円台になってしまったら本末転倒なので、価格相応といった感じです。
立体的なガラスも、保護フィルムのせいで台無しですね |
背面用保護フィルムも付けてみました |
画面のガラスは最近スマホなどで流行っている立体的に盛り上がった感じなのですが、実際のディスプレイはガラス面全体ではなく、けっこうな枠縁があるので、チープさが増しているように思えます。裏面はフラットなクリアパネルで、意外と高級感があります。
本体カラーは、私が買ったのはブラックですが、他にもシルバーとブルーのカラーバリエーションがあるみたいです。
ヘッドホンジャックは本体下部にあります |
アナログ出力は3.5mmのステレオヘッドホンジャックのみ、という潔さです。
内蔵ストレージが無いためマイクロSDカードは必須です。この手の安いDAPというと大概カードデータ読み込み関係の不具合があることが多いのですが、Shanling M1は何の不自由もなく使えることに驚きました。
FAT32以外ではexFATフォーマットにも対応しており、ためしに200GBのSandisk Ultraに目一杯音楽を入れたものを読み込んでみたところ、4分ほどでライブラリ構築が終了しました。これはかなり速い部類です。(Fiio X1 2nd Generationはこれが遅すぎてギブアップしました)。
ファームウェアアップデートはマイクロSDカードから行います |
Ver. 1.10が最新でした |
購入時はファームウェアVer. 1.0が入っていたのですが、これを書いている2016年11月の時点で最新のVer. 1.10というのが公式サイトにあったので、それをインストールしてみました。
ファームウェアのアップデート方法は、ダウンロードした圧縮ファイルを展開して、マイクロSDカードのルートに入れておけば、M1の設定メニューからファームウェアアップデートを選ぶことでアップデートが開始します。
Ver 1.0はなにかと不具合が多かったらしいので、M1を手に入れたら真っ先に最新版にアップデートすることをおすすめします。
初回の起動時は中国語でした |
ちなみに、私のM1は中国の国内向けモデルを買ったので、画面の初期表示は中国語でした。
「フォルダの間放送曲」とは一体 |
「すぐに私の音楽を更新して」と・・ |
日本語も一応選択できるのですが、現行ファームウェアではかなり大雑把な翻訳です。色々な場面で笑わせてくれますが、理解不明な部分が多いため、より正しく翻訳されている英語に切り替えて使いました。
ほぼFiioと同じような操作感です |
M1の操作画面は、はっきり言ってFiioのDAPとほぼソックリです。Fiio X1〜X5までを使い慣れた人であれば、あまりの親近感に「あれっ?」と思うかもしれません。
中国の業界についてはあまり詳しくないのですが、M1の起動画面に「Powered by HiBy Music」と書いてあったので、調べてみたら、HiByというのは中国の「海貝音楽」というソフト開発会社で、各社DAP用ファームウェアを作成しているようです。パートナー会社の欄にはずらりと「Fiio、Cayin、Shanling、Questyle、Hidizs、Eros」と書いてあるので、各メーカーがこの海貝音楽に外注委託してソフトを作ってもらっているようです。
Shanling M1の操作性がFiioとソックリなのも、初回ファームウェアからかなり安定しているのも、納得がいきますね。
ダイヤルは使いやすいです |
そんなわけで、操作に関しては、Fiioの大型スクロールホイールの代わりに、M1では背面右上のダイヤルになったような感じです。このダイヤルを回すとガリガリとクリック感があり、押し込むと再生停止ボタンになります。往年のソニーウォークマンとかと同じ感覚です。
電源以外の操作ボタンは本体左側にあります |
ダイヤル以外のボタンは、基本的にFiioと一緒で、電源ON/OFF、メニュー戻り、曲戻り、曲送りといった感じです。
本体がコンパクトなため、使いにくいかと思ったのですが、実は片手にすっぽりとおさまり、人差し指でダイヤルをグリグリして選択・決定、親指で戻るボタン、といった持ち方が最高に快適でした。例えば暗いところでも持ち方を買えずにスイスイとナビゲートできるので、よく考えて作られているなと感心しました。
変な喩えですが、ダイヤルをガリガリと回していると、ZIPPOライターみたいな、手にしっくりくる感触に愛着がわきます。
ダイヤルはブラウザ画面では選曲操作用のスクロールとして使えるのですが、音楽再生画面や、ディスプレイ消灯時には、ボリュームノブとして機能するため、たとえばFiioのようにボリュームボタンがどれだか手探りで迷うことはありません。
ブラウザはテキスト表示のみで、アーティスト、アルバム、ジャンルといったカテゴリ選曲ができますが、アルバムジャケットで観覧できないのは残念です。個人的に、最近買ったアルバム名を思い出せないことが多く、ジャケットを一覧表示できるDAPを使いたいので、どうしてもAKやCowonのような高価な大型モデルを常用することになってしまいます。
最近は内蔵SoCの速度やメモリ容量も十分低価格になっていると思うので(1万円の大画面スマホは沢山ありますし)、低価格DAPといえど、サイズとの兼ね合いもありますが、もうそろそろシンプルなテキスト画面は卒業して、より魅力的な操作性やグラフィカルなインターフェースを導入して欲しいものです。
Bluetooth
M1は低価格ながらBluetoothヘッドホンにも対応しているので驚きました。コーデックに関しては、公式サイトにはAPT-X対応と書いてありますが、実際どのコーデックで接続されているのか画面上に表示されないので、確認できませんでした。Bluetooth接続で、QC35とペアリングできました |
設定画面でBluetoothをONにすると、検索モードになります。ためにしBose QC35を使ってみたところ、すんなりとペアリングできました。音楽も音飛びなど無く、快適に楽しめます。ただし、Boseヘッドホンのボリュームボタンと、M1のボリューム表示が連動しておらず、しかもどちらもボリューム操作ができるので、どういった関連性を持っているのか謎です。
M1と私のBoseは相性が良いみたいで、拍子抜けするほど手軽に使えたので、これといって書くことも思い当たりません。
Bluetooth受信モード
追記になりますが、M1のBluetooth機能は、実は双方向通信ができる(つまり受信側としても使える)ということに気が付きました。(このブログを読んでくださった方から教えて頂きました)。M1はBluetooth受信機としても使えます |
早速試してみたところ、スマホのBluetoothを検索モードにした状態で、M1のペアリング画面にてちゃんと表示され、ペアリングできました。Onkyo HF Playerにて音楽を再生してみたところ、M1のヘッドホン出力からちゃんと音がでます。さすがにこんな低価格なDAPで、ここまでの機能が搭載されているとは想定していなかったので、つい見落としていました。
私のスマホ(Xperia Z3 Compact)では問題なくペアリングできましたが、Macbook Air(2012)では、ペアリングはするものの、オーディオデバイスとして選ぶところで上手くいきませんでした。なにかトリックが必要なのかわかりませんが、この機能が必需品であれば、機器間の相性問題などは要確認です。
なんにせよ、この機能について教えてくださった方に感謝です。
USB DACモード
M1をUSB DACとして使うには、事前に設定画面にてストレージモードからUSB DACモードに切り替えておく必要があります。Fiioとかと一緒ですね。パソコンに接続するための、短いUSB Type C↔USB Aケーブルが同梱されていますが、それ以外の一般的な長いUSB Type C↔USB Aケーブルでも問題なく使えました。
WindowsではShanling公式サイトからドライバをダウンロードします。アップルではドライバ不要で認識して、192kHz 24bitまでのサンプルレートに対応しています。ボリューム操作はパソコンと連動せず、M1本体でのみ調整できるタイプです。ちなみにDSD DoPには対応していないので、無音でした。
これもBluetoothと同様、まったく問題なく使えたので、何も書くことが思い当たらないです。JRiverソフトから192kHz PCM音源を再生してみましたが、音飛びなどもなくリスニングを楽しめました。
USBトランスポート
USB DACモードはほとんどのDAPにもある機能ですが、USBトランスポート機能は結構珍しいですので、それが目当てでM1が気になっている人も多いと思います。とくに最近AK70などAstell & Kern DAPがUSBトランスポート機能に対応したことが話題になりました。トランスポート機能というのは、ようするにShanling M1を親機として、別のUSB DACにデジタルデータを送るということです。トランスポートとして活用できれば色々と遊べる範囲が広がります。もちろん光や同軸のS/PDIF出力であっても良いのですが、USBのほうが対応サンプルレートも広いですし、次世代っぽくてカッコいいです。また、スティックタイプのUSB DACであれば、M1からのバスパワーでかろうじて駆動できるものもあると思います。
たとえば、誰もが思いつく用途として、Chord MojoなどのポターブルDACアンプとの組み合わせが魅力的です。また、私の場合は外出先で据え置き型DACなんかの試聴の際に重宝します。
突き詰めればUSBであっても音質への影響とかを気にする人は多いかもしれませんが、この手軽さは魅力的ですし、S/PDIFよりはケーブル依存は少ないだろうという期待もあります。
なんとUSBならPCM 352.8kHzも出力できました |
私が使ったファームウェアVer.1.10では、PCMであればほぼ問題なくトランスポート出力が可能です。しかも、本体のみでの再生が不可能な(File Not Supportedと言われてしまう)PCM 352.8 kHzファイルも、USBトランスポートとしてならネイティブ出力できました。
追記:2017年1月に登場したファームウェアVer.1.12にて、USBトランスポート出力がDoP対応になりました。これで、外部USB DACに接続した際、DSDをネイティブで聴けるので、さらにM1の有用性が増したことになります。素晴らしいです。
USB Type CとOTG
今回Shanling M1をトランスポートして使うにあたって、新しいUSB Type C端子なので、ケーブルの互換性とOTG接続について事態が若干混乱しています。たとえばShanling M1をChord Mojoと合わせて使うには、「USB Type C → マイクロUSB」というケーブルが必要なのですが、ちゃんと動くケーブルと、そうでないケーブルがあるそうです。
付属していたUSB Type C・マイクロUSBケーブル |
Chord Mojoとつないでも、動きません |
私が購入したM1のパッケージには、それらしき「USB Type C ~ マイクロUSB」のL字型ショートケーブルが同梱してあったのですが、これはMojoと接続しても動きませんでした。
なぜケーブルによって挙動が異なるのかというと、原因はケーブル配線にありました。USB Type Cの場合、新たに導入されたUFP、DFPというOTGっぽい規格があるみたいです。
OTGというのはOn-The-Goの略で、たとえばAndroidスマホやタブレットなどにUSBアクセサリ類(USBメモリやDACとか)を接続する際に使う特殊ケーブルです。
OTGについて簡単におさらいすると、まず一番重要なのは、OTGというのはケーブル全体のことではなく、端子に対して使う言葉です。さらに言うと、OTGはマイクロUSBの規格であって、フルサイズUSB A・Bタイプの端子には、そもそもOTGという概念はありません。
フルサイズUSBの場合は、端子形状で上流・下流を決めています |
フルサイズUSBの場合は、上流側のパソコンはAタイプ端子で、下流側のDACやプリンターなどのアクセサリはBタイプ端子、というふうに物理的に区別を付けています。データの流れはもちろんのこと、電源をどっちがどっちに供給するのかも、これで決まります。(パソコンのバスパワーでDACを駆動するとか)。
マイクロUSBの場合、スマホもDACもどっちも同じマイクロUSBでは、上流と下流の区別がつかないため、誤動作で故障したら困ります。そのため、上流側(スマホなど、いわゆるトランスポート)はOTG端子を使う、という風に区別をつけています。
OTGの仕組みは意外と簡単で、通常のUSBケーブルであれば4端子(V+、Data-、Data+、GND)のところ、マイクロUSBにはIDピンという余分な端子があって、それが未使用であれば通常のUSB、それがGNDとショートしてあるとOTGだと認識される仕組みです。
OTGアダプタの場合、そもそも下流はAタイプなのでOTGにはなりえない |
上の図のように、よくあるマイクロUSB OTG → フルサイズUSBアダプタケーブルの場合、上流のマイクロUSB側はIDピンがショートしてあるOTG端子なので、Androidスマホなどに接続すると、「これはOTGだから、こっちが上流で、相手がアクセサリなんだな」と理解してくれます。下流のフルサイズUSB側はそもそもこのIDピンがありません。
マイクロUSBのOTG接続 |
USB Type Cは24ピンもあります |
では、USB Type Cの場合はどうなっているのかというと、USB Type Cコネクタにはなんと24もの配線ピンがあります。上下を逆転しても使えるようにということで、こんな複雑なコネクタになってしまったようで、苦労が伺えます。自作ケーブルを作るのも一苦労です。(実際は24ピン全部を使うことは稀ですが)。
これまでのOTG用IDピンの代わりに、USB Type Cでは新たにCCピンという機能が使われています。規格仕様書を見ると、5VパスパワーからCCピンに56kΩ抵抗を接続していると、その端子は下流に向いている(DFP:Downstream Facing Port)というサインなんだそうです。
つまり、上流側のデバイスはそれを見て、あっちが下流なんだな、と理解して、バスパワー電源を送る動作になります。さらに、たとえば急速充電対応の場合は56kΩではなく22kΩを使えとか、USB Type C規格上で複雑な取り決めがあります。
さらに、二台のスマホをUSB Type Cケーブルで接続する際、どっちも上流になりうる、といったケースもあるので、その場合はCCピン信号をやりとりする相互ネゴシエーションという方法で、どっちが上流か下流か決める手法もあり、結構複雑なソフト制御をするそうです。
今回のように相手がマイクロUSBの場合は、そこまで複雑ではありませんので、合っているか心配ですが、付属ケーブルなどをアナライザで確認しながら、ちょっと図に書いてみました。
USB Type Cが上流の場合
|
図で見るとわかるように、今回のShanling M1付属ケーブルがChord MojoなどのDACで動かない原因は、2つあります。
まず、ケーブルのマイクロUSB側が、OTG配線でした。つまりIDピンがGNDにショートされています。そして、USB Type C側のCCピンに56kΩ抵抗がついており、これはつまり、「USB Type C側が下流だよ」と宣言している意味になります。
ようするに、このケーブルは上流のShanling M1で下流のChord Mojoを動かすのではなく、むしろ逆に、上流のAndroidスマホやタブレットから、下流のShanling M1をDACとして活用するためのケーブルだというわけです。実際そうやって接続してみると、ちゃんと動きました。
付属のケーブルは、M1をDACとして使うためのものでした |
一番の問題は、ネットショップなどが、どっちが上流か下流か明確にせずに「USB Type C OTGケーブル」なんて名前で販売しているので、購入は運任せになってしまいます。良心的なショップは、「USB Type Cのスマホで、マイクロUSBのDACを鳴らすためのケーブルです」なんてちゃんと書いてあったりします。
アップルのアダプタを買いました |
とりあえず一番確実で手っ取り早いのは、アップルが最近Macbookのために売っているUSB Type C → USB 2.0変換ケーブルが安くて品質も良かったです。これであればOTG的な要素はまったくないので、確実にShanling M1をトランスポートとして使えますが、スマートではありませんね。
また、この手のアダプタを改造してマイクロUSBコネクタにしてみましたが、これもマイクロUSB側をOTG配線にさえしなければ、どのUSB DACでも問題なく使えました。
今考えてみると、LightningとUSB Type Cのどっちもアップルのアダプタが使えるというのは皮肉なものですね。
いつもどおり、3.5mm出力に擬似的なヘッドホンインピーダンスを与えた状態で、最大ボリュームでどれくらいの電圧が出るか測ってみます。テスト信号は1kHzの0dBFSファイルです。
ご覧の通り、ハイゲインモードで3.2Vpp(1.1Vrms)、ローゲインモードで1.5Vppと、コンパクトながらアンプの出力はかなり優秀です。とくに、アンプに使われているMAX97220チップのおかげで、低インピーダンスまで軽々とドライブしてくれます。
無負荷であれば、ハイゲインモードでボリュームを最大にしても波形が歪んだり潰れたりしないので、たとえば他社であるような、歪ませてホットな大音量を演出するタイプのDAPではなく、むしろボリューム最大で1Vrmsライン出力として活用できるようちゃんと配慮されているのは好感が持てます。
また、ボリュームを1Vppまで下げた状態での出力(薄い青線)を見ても、ほぼ横一直線なので、公式スペックの出力インピーダンス = 0.1Ωというのもほぼ正しいです。
ここまで出力インピーダンスが低いと、マルチBA型IEMとかと相性が良いと思いますが、ただし安いDAPなりに、バックグラウンドのホワイトノイズがけっこう聴こえるため、あまり能率が高いイヤホンですと気になる人もいるかもしれません。
最大出力電圧が想像以上に高いため、そこそこのヘッドホンでも駆動できそうです。もちろんあまり低能率なヘッドホンを駆動させるほどの力はないですが、モバイル用ヘッドホンであれば駆動に困ることは無いと思います。ベイヤーダイナミックDT1770 PROを使ってみたところ、ハイゲインモードで、最大ボリューム100のうち80くらいで十分な音量が得られました。パワー不足で音痩せやモコモコするようなこともありません。
第一印象としてトランペットとかの中高域が若干目立つ感じで、ハリがあるというか、歯切れよくフレッシュな鳴り方です。つまり、過度にシャリシャリする高音寄りイヤホンよりも、そこそこ重厚なタイプのイヤホンと合わせると相性が良いみたいです。
色々と試してみたところ、個人的にはJVCのウッドイヤホン「HA-FX1100」との相性が絶妙に良かったです。このイヤホンはちょっと濃密でコッテリしすぎる傾向があるので、マイルドなアンプだとモコモコしがちなのですが、その点M1のフレッシュさとはピッタリとマッチします。
同様の理由で、ゼンハイザーIE80や、ベイヤーダイナミックAK T8iEなんかも良かったですので、ダイナミック型全般が合うようです。逆に、高域が目立つBAを搭載するAKG K3003やCampfire Audio Andromedaなんかはちょっとサウンドが軽すぎて、ホワイトノイズも目立つ感じでした。
M1とHA-FX1100の組み合わせはパンチが効いており、とくにクリアな音色の下でパワフルに鳴ってくれる低音のキレが素晴らしいです。HA-FX1100の低音は、アンプが悪いとダレてしまい、引きが長い、ボワボワした感じになってしまいがちなのですが、軽妙なM1と合わせることで、アタックのドスンという部分が終わったら、スッと音が引いてくれるため、歌手などの邪魔にならず、中高域とのバランス感覚が絶妙でした。R&Bやヒップホップなどでは、聴かせるべき部分がグッと強調されて楽しさが倍増します。
やはりM1はコンパクトなだけあって、サウンドは完璧に満足できるというわけでもなく、使い慣れたAK240やCowon Plenue Sなどと比べると負けている部分もあります。たとえばクラシックなどを聴くと、どうしても前後の空間表現や音像のリアル感が乏しい感じがしますし、音色そのものの魅力というか、音の深みが不足しています。
リアルな音楽そのものというよりも、楽譜や設計図というか、概要だけを聴いているかのような「平面的な」味気無さがあるので、じっくりと音楽の音色に没頭するという使い方では不満が現れます。
また、ハイレゾPCMやDSD(PCM変換ですが)なんかを聴いてみても、聴感上の空気感や音像のリアリズムといった要素はCD音源より優れているように感じられないため、録音のポテンシャルを引き出すという意味では、よりハイエンドなDAPに譲ります。
ただ、そこまでマイナス点を並べるのが申し訳ないくらい上等なサウンドです。なんというか、M1はこれと言って特出した問題点とか、破綻している部分があるわけでもなく、全体的にバランスよく仕上がっており、薄味の料理みたいな「全ての要素において、若干の物足りなさを感じる」、といった印象が一番的確です。
そのため、街中で雑踏の中を歩いているときなんかは、わざわざ重量級のハイエンドDAPを持ち歩く手間を考えると、気楽に扱えるM1は「これくらいで十分だろう」と思わせてくれます。たとえ4~5万円の中堅モデルでも、サウンドのクセが強く常用したいと思えないDAPはたくさんあるので、そう考えるとM1は優秀な仕上がりだと思います。
音質面では、安いなりにちゃんと堅実に作られており、音色の魅力や空間の豊かさはハイエンドモデルに一歩譲りますが、一般的なヘッドホンを十分に駆動するという点では満足できるパワーと性能を誇っています。
さらに、「USBトランスポートモード」と、「Bluetoothヘッドホン接続」という、話題性の高い機能を搭載しているため、単なるエントリーモデルでは終わらず、すでにハイエンドなDAPを所有しているようなマニアでもサブ機として活用できる、なにかと便利な商品です。個人的には、今後ファームウェアアップデートでM1がDoP出力対応になってくれたりでもしたら、もはや死角無しです。
追記:2017年1月に登場したファームウェアVer.1.12にて、USBトランスポート出力がDoP対応になりました。
低価格、小型DAPのライバルというと、最近登場した新型Fiio X1 2nd Generationはデザイン・サウンドともに高品質で、M1と同様にBluetooth双方向通信も搭載しています。ただしデジタル出力は搭載していないですし、相変わらずFiio特有の大型スクロールホイールのせいで本体サイズが大きいです。
ソニーの新型ウォークマンNW-A35も、Bluetoothヘッドホン対応、タッチスクリーン操作と機能は充実していますが、充電やパソコン接続に一般的なUSBケーブルが使えないことは大きな痛手です。さらにUSBトランスポート機能もありますが、あのソニー専用の巨大なWMC-NWH10ケーブルを用意しないといけませんし、これまでのウォークマン同様、USB出力時の電池消耗が激しいのが難点です。いい加減この無意味なウォークマンケーブルのしがらみさえ卒業してくれれば、二万円の単独DAPとしてはかなり完成度が高いので残念です。
USBトランスポート機能が欲しいとなると、やはりAstell & Kern AK70は魅力的です。完成度の高いタッチスクリーン操作や、単独DAPとしての高音質はもちろんのこと、トランスポートではDSD DoP対応など、いたせりつくせりな性能ですが、値段は5万円台なので、M1よりは敷居が高い商品です。
そんなわけで、Shanling M1は他社のライバル製品と比べてもコストパフォーマンスが高い、魅力的な商品だと思います。
2017年に向かって、まだまだDAPメーカー戦国時代は続くと思いますので、最終的にどのメーカーがこの熾烈な戦いを乗り切って覇者になるのか、とても興味深いです。
超高音質を目指すハイエンドDAP勢は、ゴージャス化、肥大化の道を歩んでいますが、逆にM1のような、コンパクトで軽量、多機能で、そこそこ高音質、といったDAPは必ず一定の需要があるので、ビギナーもマニアも視野に入れた絶妙な設計の采配につくづく感心します。
今後各メーカーともに、このような低価格DAPは、どれも「全部入り」な多機能化が進むと思いますが、そろそろ市場が熟成されてきたというか、どのメーカーも、型にはまったような定番化してきたようにも思えるので、この先、次世代のDAPはどう進化していくのかも気になるところです。
これなら無事動きました |
PCM変換ですが、DSD128もいけます |
マイクロUSBに改造したもの |
また、この手のアダプタを改造してマイクロUSBコネクタにしてみましたが、これもマイクロUSB側をOTG配線にさえしなければ、どのUSB DACでも問題なく使えました。
今考えてみると、LightningとUSB Type Cのどっちもアップルのアダプタが使えるというのは皮肉なものですね。
出力
USBトランスポートとしての話が長くなってしまいましたが、実際M1を単独DAPとして使う場合はどの程度の性能なのか、出力を測ってみました。いつもどおり、3.5mm出力に擬似的なヘッドホンインピーダンスを与えた状態で、最大ボリュームでどれくらいの電圧が出るか測ってみます。テスト信号は1kHzの0dBFSファイルです。
ハイゲインで無負荷、最大ボリューム |
ヘッドホン出力のグラフ |
ご覧の通り、ハイゲインモードで3.2Vpp(1.1Vrms)、ローゲインモードで1.5Vppと、コンパクトながらアンプの出力はかなり優秀です。とくに、アンプに使われているMAX97220チップのおかげで、低インピーダンスまで軽々とドライブしてくれます。
無負荷であれば、ハイゲインモードでボリュームを最大にしても波形が歪んだり潰れたりしないので、たとえば他社であるような、歪ませてホットな大音量を演出するタイプのDAPではなく、むしろボリューム最大で1Vrmsライン出力として活用できるようちゃんと配慮されているのは好感が持てます。
また、ボリュームを1Vppまで下げた状態での出力(薄い青線)を見ても、ほぼ横一直線なので、公式スペックの出力インピーダンス = 0.1Ωというのもほぼ正しいです。
ここまで出力インピーダンスが低いと、マルチBA型IEMとかと相性が良いと思いますが、ただし安いDAPなりに、バックグラウンドのホワイトノイズがけっこう聴こえるため、あまり能率が高いイヤホンですと気になる人もいるかもしれません。
最大出力電圧が想像以上に高いため、そこそこのヘッドホンでも駆動できそうです。もちろんあまり低能率なヘッドホンを駆動させるほどの力はないですが、モバイル用ヘッドホンであれば駆動に困ることは無いと思います。ベイヤーダイナミックDT1770 PROを使ってみたところ、ハイゲインモードで、最大ボリューム100のうち80くらいで十分な音量が得られました。パワー不足で音痩せやモコモコするようなこともありません。
音質
DT1770 PROで音楽を聴いてみたところ、1万円台の低価格DAPとは思えないほど整ったサウンドに驚かされました。チープなDAPにありがちな、過度にドンシャリを演出するわけでなく、むしろクリアでバランスのとれた丁寧なサウンドです。第一印象としてトランペットとかの中高域が若干目立つ感じで、ハリがあるというか、歯切れよくフレッシュな鳴り方です。つまり、過度にシャリシャリする高音寄りイヤホンよりも、そこそこ重厚なタイプのイヤホンと合わせると相性が良いみたいです。
色々と試してみたところ、個人的にはJVCのウッドイヤホン「HA-FX1100」との相性が絶妙に良かったです。このイヤホンはちょっと濃密でコッテリしすぎる傾向があるので、マイルドなアンプだとモコモコしがちなのですが、その点M1のフレッシュさとはピッタリとマッチします。
同様の理由で、ゼンハイザーIE80や、ベイヤーダイナミックAK T8iEなんかも良かったですので、ダイナミック型全般が合うようです。逆に、高域が目立つBAを搭載するAKG K3003やCampfire Audio Andromedaなんかはちょっとサウンドが軽すぎて、ホワイトノイズも目立つ感じでした。
M1とHA-FX1100の組み合わせはパンチが効いており、とくにクリアな音色の下でパワフルに鳴ってくれる低音のキレが素晴らしいです。HA-FX1100の低音は、アンプが悪いとダレてしまい、引きが長い、ボワボワした感じになってしまいがちなのですが、軽妙なM1と合わせることで、アタックのドスンという部分が終わったら、スッと音が引いてくれるため、歌手などの邪魔にならず、中高域とのバランス感覚が絶妙でした。R&Bやヒップホップなどでは、聴かせるべき部分がグッと強調されて楽しさが倍増します。
やはりM1はコンパクトなだけあって、サウンドは完璧に満足できるというわけでもなく、使い慣れたAK240やCowon Plenue Sなどと比べると負けている部分もあります。たとえばクラシックなどを聴くと、どうしても前後の空間表現や音像のリアル感が乏しい感じがしますし、音色そのものの魅力というか、音の深みが不足しています。
リアルな音楽そのものというよりも、楽譜や設計図というか、概要だけを聴いているかのような「平面的な」味気無さがあるので、じっくりと音楽の音色に没頭するという使い方では不満が現れます。
また、ハイレゾPCMやDSD(PCM変換ですが)なんかを聴いてみても、聴感上の空気感や音像のリアリズムといった要素はCD音源より優れているように感じられないため、録音のポテンシャルを引き出すという意味では、よりハイエンドなDAPに譲ります。
ただ、そこまでマイナス点を並べるのが申し訳ないくらい上等なサウンドです。なんというか、M1はこれと言って特出した問題点とか、破綻している部分があるわけでもなく、全体的にバランスよく仕上がっており、薄味の料理みたいな「全ての要素において、若干の物足りなさを感じる」、といった印象が一番的確です。
そのため、街中で雑踏の中を歩いているときなんかは、わざわざ重量級のハイエンドDAPを持ち歩く手間を考えると、気楽に扱えるM1は「これくらいで十分だろう」と思わせてくれます。たとえ4~5万円の中堅モデルでも、サウンドのクセが強く常用したいと思えないDAPはたくさんあるので、そう考えるとM1は優秀な仕上がりだと思います。
おわりに
Shanling M1は、超コンパクトサイズに一万円台という低価格ながら、ハイレゾDAPとしての基本機能は全て押さえており、安定感も抜群に良いので、かなり良い買い物をしました。音質面では、安いなりにちゃんと堅実に作られており、音色の魅力や空間の豊かさはハイエンドモデルに一歩譲りますが、一般的なヘッドホンを十分に駆動するという点では満足できるパワーと性能を誇っています。
さらに、「USBトランスポートモード」と、「Bluetoothヘッドホン接続」という、話題性の高い機能を搭載しているため、単なるエントリーモデルでは終わらず、すでにハイエンドなDAPを所有しているようなマニアでもサブ機として活用できる、なにかと便利な商品です。個人的には、
追記:2017年1月に登場したファームウェアVer.1.12にて、USBトランスポート出力がDoP対応になりました。
低価格、小型DAPのライバルというと、最近登場した新型Fiio X1 2nd Generationはデザイン・サウンドともに高品質で、M1と同様にBluetooth双方向通信も搭載しています。ただしデジタル出力は搭載していないですし、相変わらずFiio特有の大型スクロールホイールのせいで本体サイズが大きいです。
ソニーの新型ウォークマンNW-A35も、Bluetoothヘッドホン対応、タッチスクリーン操作と機能は充実していますが、充電やパソコン接続に一般的なUSBケーブルが使えないことは大きな痛手です。さらにUSBトランスポート機能もありますが、あのソニー専用の巨大なWMC-NWH10ケーブルを用意しないといけませんし、これまでのウォークマン同様、USB出力時の電池消耗が激しいのが難点です。いい加減この無意味なウォークマンケーブルのしがらみさえ卒業してくれれば、二万円の単独DAPとしてはかなり完成度が高いので残念です。
USBトランスポート機能が欲しいとなると、やはりAstell & Kern AK70は魅力的です。完成度の高いタッチスクリーン操作や、単独DAPとしての高音質はもちろんのこと、トランスポートではDSD DoP対応など、いたせりつくせりな性能ですが、値段は5万円台なので、M1よりは敷居が高い商品です。
そんなわけで、Shanling M1は他社のライバル製品と比べてもコストパフォーマンスが高い、魅力的な商品だと思います。
2017年に向かって、まだまだDAPメーカー戦国時代は続くと思いますので、最終的にどのメーカーがこの熾烈な戦いを乗り切って覇者になるのか、とても興味深いです。
超高音質を目指すハイエンドDAP勢は、ゴージャス化、肥大化の道を歩んでいますが、逆にM1のような、コンパクトで軽量、多機能で、そこそこ高音質、といったDAPは必ず一定の需要があるので、ビギナーもマニアも視野に入れた絶妙な設計の采配につくづく感心します。
今後各メーカーともに、このような低価格DAPは、どれも「全部入り」な多機能化が進むと思いますが、そろそろ市場が熟成されてきたというか、どのメーカーも、型にはまったような定番化してきたようにも思えるので、この先、次世代のDAPはどう進化していくのかも気になるところです。