2018年8月17日金曜日

Astell&Kern A&norma SR15 DAPの試聴レビュー

Astell&Kern DAP最新シリーズのSR15を試聴してみました。価格は約10万円弱ということで、AK70 MKIIよりもちょっと上位にあたる、AK300の後継機のような感じです。

A&norma SR15

AK第四世代DAPシリーズではすでに先行してSP1000・SE100が発売しているので、このSR15でようやく三兄弟が揃いました。


SR15

画面が斜めになったことを除いて、SR15の本体サイズはAK240やAK70 MKIIに近いので、AK300の後継機というよりは、むしろAK70 MKIIの上位モデルというほうが感覚的にしっくり来ます。

もちろん内部のオーディオ回路はAK70 MKIIとは異なるようですが、実用面で一番大きな変更点は、タッチスクリーンユーザーインターフェースがSP1000やSE100に近い、いわゆる第四世代AK DAP相当にアップデートされたことです。

第三世代の「AK380・AK320・AK300」が販売終了し、これでようやく第四世代「SP1000・SE100・SR15」というラインナップへの交代が完了しました。公式サイトの現行ラインナップの中では、AK70 MKIIとKANNのみが旧式インターフェースを搭載しています。

画面が斜めです

フロントガラスと液晶画面がボディに対して傾斜しているのがユニークです。最初は戸惑いますが、実際に使ってみるとあまり違和感はありません。左手で持ってちょうど親指が本体左側の切欠きにくるので、ホールド感は良好です。AK240から続く伝統的な物理ボタン配置や操作性を継承しながら、ちょっとしたひねりを加えてみたという印象です。

SR15とSE100の比較

AK240SS・AK70 MKII・SR15


SR15の本体サイズは「57.5 × 99.7 × 16.1mm・154g」ということで、AK70 MKIIの「62.8 × 96.8 × 15.2mm・150g」と比べて数ミリ違う程度で、 ほとんど変わりません。

写真で見ても、AK240と同じ画面サイズながら、筐体の無駄な部分が削ぎ落とされたような形状です。上位モデルのSE100と並べてみると、サイズの違いが明らかになります。

無線LANのAK Connectストリーミングや、BluetoothはaptX HD対応、USB OTG接続によるDoP対応トランスポート機能など、最新AK DAP相当の豊富な機能を搭載しています。

D/A変換部分については、第二世代(AK240など)はシーラスロジック、第三世代(AK380など)は旭化成と、世代ごとに搭載DACチップを変えていましたが、第四世代ではSP1000が旭化成、SE100がESS、そして今回のSR15はシーラスロジックの最新チップCS43198を搭載しています。

DAPの音質はD/Aチップのみで決まるわけではありませんが、全体的な回路設計はD/Aチップに依存する部分が大きいです。常識的に考えれば、シリーズで同じD/Aチップを共用した方が基板設計が流用できるので有利なのですが、わざわざ異なるチップを採用することで、値段による単純な上下関係ではなく、それぞれに個性的なサウンドを与えるという面白い試みです。

これまでAK240やAK70・AK70 MK IIが搭載していたシーラスロジックCS4398は、2002年にSACDプレイヤーなど高級据え置きオーディオ用として登場したD/Aチップで、ポータブル用途は想定していなかったため、ポータブルでは不利になりがちな電源安定性やクロック、データジッターなどへの耐性が低く(つまり外堀を固めないと良い音で鳴ってくれず)、さらに消費電力の高さが問題でした。(AK240はそんなチップをポータブルに採用したことが当時画期的でした)。

今回SR15が搭載するCS43198は、CS4398の後継として2017年に登場した最新チップで、パッケージ小型化で電力消費を下げて、測定スペックも向上し、ライバル旭化成やESSに対抗できる魅力的なチップです。こういう新作チップは、既存の導入例が少ないと(つまり設計を丸パクリできないと)なかなか新規採用するのが難しいのですが、そこをAKは真っ先に採用した事が有意義です。

個人的にSR15で不満な点は、せっかくCS43198という最新チップを搭載していながら、ネイティブ再生はPCM192kHz・DSD64(2.8MHz)までのみで、DSD128(5.6MHz)やDSD256(11.2MHz)はPCM変換になることです。もし低価格モデルとしての意図的な制約だとしたら、せっかくの最新チップなので残念です。

ボリュームノブ

本体デザインはAK DAPらしく直線の多面体で、AK70 MKIIとAK240をあわせたような感じです。ボリュームノブやヘッドホンジャック、電源スイッチなど、AK DAPを使い慣れている人であれば何の違和感もないと思います。

本体は濃いガンメタル調のアルミ削り出しで、個人的にもうちょっと派手なアクセントが欲しかったです。例えばAK70 MKIIのボリュームノブの青い線など、そういうのが無いと、ただのグレーの塊です。もちろん派手すぎると好みが分かれるので、グレーが一番無難なのでしょう。

マイクロUSB

ひとつ気になった点は、上位モデルのようなUSB Cではなく、マイクロUSB端子を搭載しています。そのあたりはコンパクトな本体サイズということで、まだ旧モデルと兼用している部分があるのでしょうか。最近スマホ充電器はほとんどUSB Cなので、そろそろマイクロUSBは廃止してほしいです。

背面

背面パネルはいつものAKらしく凝った立体パターンが埋め込まれています。こういうところにさりげない高級感が垣間見えます。

新インターフェース

プルダウン

SR15はSP1000から導入された新インターフェースを搭載しており、慣れれば結構使いやすいです。画面サイズは小さいですが、片手で操作するためにはメリットにもなります。

旧インターフェースはAndroidスマホベースの「進む、戻る」階層メニューでしたが、SR15は左手親指のフリックでブラウザが呼び出せるなど、片手でほとんどの操作が可能なので、方法さえ把握すれば素早く操作できます。

さらに、画面上端からプルダウンするショートカットボタンは設定画面で並び替えができるので、使う機能をすぐ呼び出せるのは便利です。たとえば無線LAN、EQなどは使わなければ2ページ目に隠しておけます。細かくゴチャゴチャ多機能にするのではなく、親指で押しやすいという点が良いです。

Settingsメニューは新旧でほぼ変わりません

システム

Settingsメニューの項目は、新旧インターフェースでほぼ変更はありません。ファームウェアはVer 1.02だったのですが、試聴途中から無線LAN経由のアップデートで1.04になりました。

はっきりしたことはわからないのですが、Ver 1.02ではUSB OTGトランスポートとしてDACとうまく繋がらなかったのですが、アップデート後はそこそこ接続できるようになりました。それでも以前のAK DAPと比べてちょっとコツがいるようです。

nano iDSD BLとOTG接続

ボリュームがFIXになれば成功

色々試した結果、DAC側ではなくSR15側のUSB端子抜き差しが重要なようで、接続に失敗するようであればSR15側でマイクロUSBを抜いて一息置いてから再試行するとつながるようでした。

それでもうまくいかない場合はSR15を再起動したら繋がるようになったり、相手側のDACによっては試行錯誤が必要だったりもしたので、原因は何であれ今後ファームウェアアップデートで改善してくれると嬉しいです。

うまくOTG接続が完了すると、External USBアイコン下に「USB Output」と表示され、ボリューム数値も「FIX」になります。

アンバランス

いつもどおりヘッドホン出力の最大電圧を測ってみました。0dBFSの1kHzサイン波信号を再生しながら、負荷を与えた状態で得られるPeak to Peak電圧です。

まず3.5mmアンバランスですが、これまでのAK DAPはどれもほぼ同じレベルの最大出力電圧を狙って設計されていますが(公式スペックで約2Vrms、つまり5.6Vpp)、AK240・AK70といった旧世代モデルと、AK70 MKIIを含む第四世代モデルでアンプ設計が変わったことがわかります。

低インピーダンス負荷での最大振幅(つまり音割れまでの音量限界)という点では旧モデルのほうが有利ですが、音質面であえて新世代アンプの設計を変えてきたのでしょう。こういった部分が、単純にD/Aチップの銘柄とかだけでは予測できない音質設計の重要なポイントです。

バランス

2.5mmバランス出力の方を見ると、新旧アンプ設計の差が明確に浮かび上がります。とくにAK70とAK70 MKIIが新旧の分岐点なのが面白いですね。旧モデルではバランス・アンバランスでほぼ同じゲインとパワーが得られるよう設計されていたところ、新モデルではバランス出力を選ぶことで無負荷時の最大電圧が二倍になります。

1Vpp

次に、無負荷時1Vppになるようボリュームノブを合わせて、負荷に対する電圧の落ち込みを測ってみました。

SR15はバランス出力においても出力の落ち込みがほとんど見られないところが優秀です。AK70 MKIIはアンバランスではSR15に追従していますが、バランスでは落ち込みが顕著です。これはアンプ回路の電源供給など、全体の設計に基づくスペックなので、世代ごとに着々と性能が進化していることがハッキリと伝わります。

これらを見ただけで音質を想像できるわけではありませんが、それでもわかることは、SR15はSE100やSP1000と同じ第四世代のアンプ設計であって、それぞれ音色の違いはあるにしても、アンプの駆動力に関して言えばどれも同じ最新設計に基づいており、旧世代モデルから明確な進化が見られるという事です。つまりユーザーインターフェースやD/Aチップといったわかりやすいポイントよりもむしろアンプ部分の設計において第四世代と呼べるのかもしれません。

音質とか

今回の試聴では、Final E5000、Campfire Audio Andromeda、Fostex TH610などを使いました。

使いやすいアンプです

SR15は最新設計のアンプだけあって、Andromedaのような高感度イヤホンでは低ノイズで常識的な音量範囲が得られ、E5000など低感度イヤホンでは十分な音量が確保できる、絶妙な使いやすさです。必要であればバランス出力でさらに高ゲインが得られるので、さすがユーザーの要望をよく理解しているベテランメーカーです。


先日Evidence Classicsレーベルのセールをやっていたので、とりあえず雑誌レビュー推奨盤ということでXavier Phillips/François-Frédéric Guyのベートーヴェン・チェロソナタ集を買ってみました。チェロソナタ三作と変奏曲も入っているお買い得盤で、高評価なだけあって音質・演奏ともにかなり良いです。

チェロは瑞々しく力強い演奏で、ピアノもまるでソロリサイタル並に派手なのですが、それぞれが衝突せずにノリがよく爽快です。いわゆる古典的な巨匠のどっしりした演奏も良いですが、こういう演奏の方が音楽的に聴いていて楽しいです。


SR15のサウンドは、聴きはじめてすぐに感じ取れるくらい、中~中低域が豊かな、いわゆる「太い」音です。AK70 MKIIやSE100・SP1000とも違う、独自の音楽観を持っています。

チェロを聴くと、弓が当たるザクッとした質感は控えめで、弦の伸びやかな音色が強調される傾向です。ピアノも同様に、金属質なアタックや、演奏者の指使いなどよりも、メロディとハーモニーが心地よく聴こえます。カチャカチャしたディテールよりも音色の豊かさを重視した、丸く聴きやすいサウンドだと思います。

音色と空気感の境界がちょっと曖昧なので、そこまでクリアな高解像っぽさは得られません。そのあたりはもっと別のDAPの方が良いです。また、音色が豊かといっても艷やかな輪郭や響きが乗るといった脚色効果でもないので、たとえば真空管アンプとかの音色とは異なります。

SR15はもっと素朴で、空間を埋める響きよりも、音色そのものの厚みがよく出ており、安定して落ち着いたサウンドです。どちらかというとiBassoみたいなしっかりしたアナログポタアンに近く、安心して長く付き合えるタイプの音作りだと思います。


イタリアのジャズピアニストStefano Bollani「Que Bom」を聴いてみました。ピアノトリオにパーカッションを加えた、ブラジル・ラテンジャズっぽい音楽で、数曲ゲストでボーカルやギターなども加わり、懐が深く退屈にならない良いアルバムです。雰囲気的にはおしゃれなカフェで鳴っているようなイージーリスニングラテン・ジャズなのですが、曲の作り込みやピアノ演奏が前衛・多面的でレベルが高いです。


ジャズといってもライブの臨場感というよりはスタジオミックスな作風ですが、こういった音楽もSR15は得意です。ただ「地味で無難な」サウンドというだけで終わるのではなく、SR15だけでしか味わえない独自の魅力を持っている事が素晴らしいです。

とくに魅力として感じられたのは、中域付近の音像が豊かであっても、前方奥行き方向で見通しがよく、しっかりと解像できている事です。つまり上下左右ではなく奥行きで深い立体感があります。

この特徴的な鳴り方のおかげで、全体像としては中低域重視なのに、個別の音像はちゃんと前後で分離していて、意外と見通しや音抜けが良いという、絶妙な仕上がりになっています。ボーカルは男性・女性とも、アクセントが刺さらず、それでもベタッと背景に埋もれず立体感があり、ピアノ単体は太く豊かな音色であっても、ピアノとギターが同時に演奏しても双方が濁らないというような、理想的な効果です。

ウッドベースがしっかり感じ取れるよう中低域は充実していますが、ドラム・パーカッションの刺激は控えめです。不快感無く、ボーカルを主体に長時間聴きやすいサウンドでありながら、こういった点で音作りの上手さを実感します。


AK70 MKIIも個人的に好きなDAPですが、どちらか選ぶならSR15です。双方を比較すると、AK70 MKIIの方が低音や高音が派手に出る、パワフルなドンシャリサウンドです。AK70 MKIIはベースよりもキックドラムのパンチが効いて、SR15はもっとウッドベースからチェロなど中低域の音色がよく鳴る感じです。

パンチやワイルドなドライブ感はAK70 MKIIの方が得られるので、そっちが好きな人にとってSR15は丸くて退屈すぎるかもしれません。

SE100とSR15は完全に別ジャンルのサウンドだと思いました。SR15のしっかりした低重心なサウンドを聴いてからだと、SE100はふわっと足元が落ち着かない感じがしますが、その一方で、SR15では引き出せないような高音の浮遊感や美しさが得られます。高域が繊細で解像感が高く、それでも硬質な刺さりが無いので、キラキラ輝く女性ボーカルとかの美音を味わうような場面はSE100が特に上手だと思います。

AK DAPの中で個人的に一番好きなSP1000(ステンレス版)は、空間展開が圧倒的に広いです。単純に楽器が分散しているというよりも、楽器の周辺にある空気や臨場感の存在感が正確で、演奏だけでなく、ライブのホール会場とかも意識させる、高価なだけあって一番ハイエンドオーディオファイルっぽいサウンドです。ただし優れた音源に依存する面もあり、下手な録音だとむしろSR15ほど落ち着いてゆったりと聴けません。たとえば試聴に使ったジャズアルバムでは、楽器の音色は美しいものの生の環境音響は限定的なので、SR15で聴いても十分楽しめて、SP1000がとりわけ有利とも思えません。

私は未だにAK240SSを使っているのですが、これはSR15のマイルドさとSP1000の空間余裕のちょうど中間くらいです。曖昧というか絶妙というか、相変わらず良いDAPだと思います。優劣というよりも、音色の好みで言ったらAK240SSが優勢ですが、SR15はバランス出力でさらに高出力が得られる点が一枚上手です。

DSD256(11.2MHz)も一応再生できます

SR15が上位モデルSE100・SP1000などに劣る点として、DSD128・DSD256がネイティブではなくPCM変換再生ということです。この事は実はSR15を試聴している時には知らなかったのですが、自分がメモした感想を読み返すと、そこそこ音質への影響があるようです。

まずSR15はDSD64の再生がとても素晴らしいという事に驚きました。音像はあまり広がらず、厚くセンター付近に集中するのですが、真面目に聴くと深い奥行きがあり、音色はゆったりしていながら、まるで望遠鏡で遠くを覗くような解像感と立体感があります。

先程PCM音源でも同様の印象でしたが、DSDというフォーマット自体がライブ音響を重視したサウンドなので(というかライブ音響を重視するレーベルがDSDを使いたがるので)、より一層SR15の魅力が伝わります。つまり、ただ厚く重なるだけではなく、録音された音響情報を正しく復元できているということでしょう。この点は、AK70 MKIIと比べてかなり大きな進歩だた感じられました。

ところがDSD128やDSD256ファイルになると、思ったほどそういった効果が無く、全体的にBGMのようにフワッと流れるように軽く済ませてしまいます。同じアルバムをそれぞれのフォーマットで聴き比べても、SR15ならDSD64で聴いたほうが良いと思いました。DSD64がネイティブ再生で、それ以上はPCM変換だという事に直結しているのかもしれません。

私がAK70 MKIIを買わなかった最大の理由が、DSDファイルの鳴り方があまり良くないと感じたからでした。なぜか定位が定まらず、空気が気持ち悪い感じがしたのですが、AK70 MKIIはDSD64を含めてすべてPCM変換だから、きっとそのせいだろうと結論づけていました。

SR15の場合、DSD128・DSD256もそれほど悪くはありませんが、明らかにネイティブ再生されるDSD64と比べると一歩劣る印象です。とくにDSD256はクラシックのオーケストラアルバムで使われる事が多く、iFi AudioやChord Hugo 2、もしくはAK SP1000では素晴らしい空気のスケール感が体験できるので、それをSR15でも味わえたらと期待していた分だけ、少し残念でした。

実際DSD128・DSD256はかなりニッチなフォーマットで、私もそこまでアルバムを持っているわけではありませんし、もしそこまでこだわる人なら、素直にSP1000を買えということでしょう。SR15はDSD64の音が良いというだけでも大きな収穫です。

Gradoとの相性がとても良いです

最後に、余談になりますが、SR15で色々なイヤホン・ヘッドホンを聴いていて、意外にも相性がとても良かったのがGradoです。写真のPS500e以外でも、RS1iやGS1000eなど色々試してみましたが、どれも音が良くて関心しました。

Gradoヘッドホンはアンプにとって鬼門で、相性が悪ければとことん音が悪いです。据え置きアンプではそこそこ良い音が出せても、これまでDAPでここまで良く鳴らせた事はありません。なにか論理的な理由というよりは、感性によるもので、Gradoファンの私でも未だに予測がつきません。(たとえば、私が使っているQuestyle QP2R DAPはどうしても相性が悪いと思います)。

きっと、派手で美しい響きを演出するGradoと、落ち着いたSR15との組み合わせが成功したのでしょう。Gradoにありがちな耳障りな高域のざわつきが低減され、美しい音色をずっと聴いていられます。これまでGradoを敬遠していたという人は、ぜひSR15との組み合わせを試してもらいたいですし、Gradoファンには特におすすめのDAPです。(そのためだけにSR15を買いたいくらいです)。

おわりに

SR15は第四世代AK DAPの中では最低価格ですが、かなり良いDAPだと思います。空間・帯域ともに派手さは控えめですが、重心が低く、奥行きのある豊かな音色が楽しめます。

高音質音源に限らず、どんな音楽でも破綻せず上手にまとめてくれるところが、AKの標準モデルとして相応しい仕上がりだと思います。AKはこういう音作りが上手で、単なるカタログスペック比較だけでは計り知れない、オーディオメーカーとしての魅力があります。

もっと中高域重視でサラッとした美音が好みであればSE100、音場の広さや空間展開のスケールであればSP1000と、モデルごとにサウンドの個性が確立しており、それぞれ音楽の中にある異なる魅力を引き出しているので、音楽性の高さは第三世代AK DAPから大きく進化していると思いました。

個人的にAK240が好きという事もありますが、SR15はAK240の延長線上にあるモデルだとも思いました。AK70・AK70 MKIIは低価格シリーズということによる制約もありましたが、SR15にて第四世代のパワフルなアンプ、最新ユーザーインターフェース、そして新型シーラスロジックD/Aチップを搭載することで、音質・機能・使用感を総合的に見て、ほぼAK240の後継機と言っても良いと思います。

商品として不満があるとすれば、DSD128・DSD256のネイティブ再生を搭載してもらいたかった事と、バッテリーの持続時間も、ソニーの30時間とかと比べると、AK DAPはあいかわらず10時間なのは見劣りします。特に私のような旧モデルユーザーが買い替えを検討するとなると、もうちょっとバッテリーが長持ちして欲しいと思うので、そろそろ進歩を期待したいです。デザイン面では、グレーのハウジングがちょっと地味だと思うので、AK70のように将来カラーバリエーションが出てくれれば嬉しいです。

音質面で、私の好みとしては、SR15の重厚な音色はそのままに、あとちょっと音像をスッキリとさせて、周囲の空間との分離が感じられればなお良かったと思います。これは以前AK240でも似たような不満を持っていて、その後ステンレス製のAK240SSにて改善が感じられた部分だったので(未だに理由は不明ですが・・・)、SR15もステンレスに変わったらどうだろうなんて想像してしまいます。アルミ以外のハウジングは高価格モデルだけの特権ではなく、あえてこのクラスでも検討してもらいたいです。

ともかく、毎年肥大化が進むDAPの中で、AK240ユーザーとして、ここにきて新たなコンパクトサイズのAK DAPが登場したという嬉しさがあります。4インチのAK300や、5インチのSE100は巨大すぎて持ち歩きたくないという人も多いと思うので、SR15がコンパクトサイズで登場してくれた意義は大きいです。しかも、操作性・音質ともに進化しており、実用的で死角の無い、良いDAPです。