2024年4月4日木曜日

Empire Ears Raven イヤホンの試聴レビュー

 Empire EarsのRavenというイヤホンを試聴してみたので感想を書いておきます

Empire Ears Raven

2024年3月発売、2DD+5BA+4静電+1骨伝導の12ドライバー構成ということで、値段もそれに見合うような60万円という超高級モデルです。

Empire Ears

私自身Empire Earsはそこそこ縁のあるメーカーで、予算的に手が届くかは別として、主要なモデルは一通り試聴してきたのですが、これまで当ブログで紹介する機会もほとんど無かったように思います。

音が悪いとか、メーカーの方向性に共感できないわけではありません。しかし、このメーカーの特色というか悪いクセとして、モデルごとに音作りのスタイルがあまりにも違いすぎて、ラインナップの一貫性が伝わってこないため、レビューするにしても、なんて書けば良いのかわからないという難点があります。

Raven

他のモデルも色々と聴いてみました

単純に言えば、芸術工房、アルチザン的なメーカーなのだと思います。前衛絵画のように、後年になって全集の遍歴を振り返ってみるまでは、今どこに向かっているのか解釈が難しいです。

そのようなイヤホンメーカーは他にもいくつか挙げられますが、それらのメーカーは小規模な個人事業が多く、新作は数年に一度くらいのペースでやっている、いわば「知る人ぞ知る」存在なのに対して、Empire Earsはハイエンド界隈ではそこそこ大手ですし、続々と新製品が出てくるので、そのペースに追いつけません。

しかも、高価なモデルほどレファレンス的な高音質になるというわけではなく、中級モデルの方がバランスが良くて聴きやすかったり、高級モデルなのに奇抜でクセが強かったりなど、解釈に悩まされるメーカーです。

Hero、Valkyrie II、Raven

たとえば私がこれまで聴いたラインナップの中ではHeroとValkyrie IIというモデルが好きです。どちらも20万円前後の中堅モデルでも(それでも高価ですが・・・)、サウンドのバランスが良いです。その点40万円超のLegend Evoなどは常用するのが厳しいです。

大手メーカーとなると、値段とともにドライバー数が増えて、それに比例するように音質も向上するという売り方が一般的なので、Empire Earsでそれと同じルールを想定すると痛い目に遭うかもしれません。

どちらかというと、モデルごとに心機一転のアイデアで試行錯誤して、最終的な販売価格は開発コストや製造コストをもとに決定しているのでしょう。薄利多売の戦略的モデルではなく、それぞれが独立した性格を持っているため、試聴してみることで初めて自分との相性を探ることができるようです。

そんなわけで、ハイエンドイヤホンのユーザー界隈では話題性が絶えないメーカーです。レビューを読んだり掲示板であれこれ議論するのではなく、実際に音を聴いてみることの重要性、そして凡庸な指標を超越した自分の感性に合うモデルを見つける楽しみが人気の秘訣なのかもしれません。

Raven

今回試聴してみたRavenはEmpire Earsの中でも最上位クラスのモデルになります。他にもWraith、Odin、Legend Evoなど高額なイヤホンがごろごろありますし、カスタムIEMというルートもあるので、どれがフラッグシップなのかよくわかりません。上述のとおり各モデルごとに個性的なサウンドなので、価格で予想を立てるのが難しいメーカーです。

Raven

黒いフェースプレート

Ravenのデザインは正直かなり地味です。フェースプレートは黒と金の二種類あり、今回私が借りたのは黒いバージョンですが、シェルハウジングも黒いので全体的にステルスなイメージがあり、50万円超とは想像もつきません。

フェースプレートはステンレスのNC削り出しに黒を蒸着処理をしたそうですが、言われなければシェルと同じプラスチックかと思えてしまいます。かなり間近でじっくり見ると、たしかにプラスチック成形では得られない立体感や光沢の質感がなんとなく感じられるかもしれませんが、豪華絢爛な高級イヤホンが欲しい人なら決して選ばないモデルです。

Valkyrie II

Odin

とくにEmpire Earsの他のモデル、たとえばOdinやValkyrieなどは虹色に輝く摩訶不思議なデザインが魅力的で、これに惚れ込んで買った人も少なくないと思うので、今回Ravenのデザインはずいぶん意外性があります。

アクセサリー

アクセサリーは高級そうな収納ケースと、Finalのイヤピースが一式入っています。

試聴時にイヤピースは色々と変えてみたところ、私の耳ではFinalのやつで十分良かったです。シェルの出音穴があまり大きくないので、イヤピースの内径はそこまで気にする必要はないようです。

AZLAの新しいFoamaxも試してみたところ、そちらの方がフィットは良好で、サウンドも丸くなる印象でした。最近はイヤピースの選択肢が増えて、あれこれ選ぶのも楽しいです。

付属ケーブル

付属ケーブルも本体同様にマットブラックの地味なデザインですが、外皮やコネクターなどの質感から、明らかに高級ケーブルだということが伝わってきます。PW AudioとのコラボレーションによるRaven専用ケーブルだそうです。

左右分岐後のツイストが緩いので、注意していないと解けてしまいそうで心配になります。(音質面でなにかメリットがあるのでしょうか)。コネクターは一般的な2PINで、端子穴はシェル表面に露出しているタイプです。ここまで高価なイヤホンだと屋外で乱暴に扱うこともないと思いますが、各メーカーとも、そろそろ2PINは廃止して、もっと信頼性の高い別の規格に移行してもらいたいです。

かなり厚みがあります

ノズル形状

UE Premierと比較

実際に手にとってみると、シェルの大きさに圧倒されます。これまで試聴してきたイヤホンの中でも巨大な部類で、他のEmpire Earsモデルや、大きいと思ったUE Premierと比べてもさらに厚みがあります。12ドライバーでしかも2つのダイナミックドライバーや骨伝導、静電など大きなモジュールを詰め込んでいるので、大きくなってしまうのは当然ですが、それにしても実物はかなりデカいです。

幸いそこまで重くないですし、フィット感も一般的な部類なので、装着していればむしろ快適で、重さを意識することはありませんでした。

ちなみに、Empire Earsらしく、装着時にダイナミックドライバーの振動板が動いてペリペリと音がするのが気になります。とくに初心者は不良品かと心配する人もいるようですが、これが正常なようで、他のモデルでも同じだったので、むしろEmpire Earsらしさを思い出してしまいました。

インピーダンス

いつもどおり再生周波数に対するインピーダンスの変化を測ってみました。参考までに他のイヤホンのグラフと重ねてあります。

インピーダンス

位相

Ravenの測定中に2Ωと表示されたので、接続を間違えたかと焦ったのですが、公式スペックを見ると2Ωで正しいようです。Odinも公式スペックが3Ωとなっており、Ravenとほぼ重なっています。

他社のハイブリッド型イヤホン、たとえば64Audio U18tやUE Premierなどは各ドライバーの受け持つ帯域ごとにインピーダンスが大きく変動するのに対して、Empire Earsは全域でかなり低めに設計されているようです。そのため急激なインピーダンス変動による位相の回転が抑えられるため、電気的な位相として見ると、マルチドライバーにしては結構落ち着いていることがわかります。(U18tなんかは暴れすぎとも言えますが)。

それでも2Ωというのは低すぎると思います。アンプ側から見ればほぼショートしているようなものですから、相当な負荷がかかります。

幸い駆動能率はそこそこ高いので、アンプのゲインはそこまで高くなくても十分な音量が得られますが、どれだけ強力なヘッドホンアンプでも2Ωの駆動はさすがに厳しいので、十分な音量が得られる前に音が歪んだりするかもしれません。

これまでヘッドホンアンプの最大出力電圧を確認する時には2.2Ωまで測っていたので、Ravenを鳴らす場合の参考になります。(1kHzでの測定です)。

実際SP3000ではボリュームを上げていくと大音量の部分でチリチリとノイズが聴こえるようになり、AK PA10を追加することで十分な余裕が得られました。パワフルなことで有名なFiio M17も2Ωではさすがに厳しいことがわかります。意外にも、2Ωという条件では、これらのアンプのバランス出力よりも、Chord Mojo 2のシングルエンド出力で鳴らした方が余裕があります。

ヘッドホンアンプのカタログスペックを見ると、多くの場合、32Ωでの最大電圧や、そこから算出した電力(パワー)を掲示しているわけですが、それらは2Ωのイヤホンを鳴らす際にはあまり参考にならないということが、上のグラフを見てもわかると思います。

RavenやOdinなど、Empire Earsはあえてハイエンドモデルはこのような設計にしているのかもしれません。つまりアンプの見かけ上のスペックに惑わされるのではなく、しっかりと音を鳴らして判断できるようなベテランに限定するような、一種のエリート主義の側面もありそうです。

もちろん、意図したわけではなく、各ドライバーを厳選してサウンドを設計していった結果2Ωになってしまったのかもしれませんが、どちらにせよ、個人的にはここまでインピーダンスが低いイヤホンはむしろ敬遠したくなり、できれば16~32Ωくらいで余裕をもって駆動できるイヤホンの方が好ましいです。

音質とか

今回の試聴では、個人的に愛用しているHiby RS6 DAPを主に使いましたが、せっかくの高級機なのでAK SP3000 DAPでも鳴らしてみました。

どちらも普段から聴き慣れており、ハイエンドイヤホンにふさわしい優れたDAPです。上述のとおり出力が足りるか心配ですが、そこまで大音量で聴かなければ大丈夫です。ただ、私が大丈夫と言っても、世の中には信じられないくらいの爆音で音楽を聴いている人も結構いるので、なんともいえません。

AK SP3000

まずRavenのサウンドの第一印象は、重心が低く、安定した広がりを持った、落ち着いたサウンドです。これまで聴いてきたEmpire Earsイヤホンの中では、Heroよりも落ち着いていると言えば伝わるでしょうか。ValkyrieやOdinなどとは根本的に異なる系統のサウンドです。

そんな低音とは対象的に、中域以上は比較的素直でカッチリした、無駄な響きの少ない鳴り方です。全体的に丸みがあり、刺さるような不快感は一切ありません。

とくに低音は骨伝導+2DDという構成からLegend Evoのような凄まじい音圧を想像していたところ、性質がまるで正反対なので驚きました。パンチとインパクトを強調するのではなく、中域のメイン音像を補助するように、低音側でどれだけ自然なスケール感を演出できるかを目指したような音作りです。

ちょっと前にDita Project Mを聴いて、まるで家庭用ブックシェルフ型スピーカーのようだと言ったのですが、今回も同じような意味で、Ravenはまるで家庭用のフロア型スピーカー、とくに4WAY以上の堂々たる大型スピーカーをラウンジで鳴らしているような感覚があります。

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このRaven特有の「重心の低さ」を実演するのに最適なアルバムはと考えて、Chandosレーベルから新譜で、Elaterina Antonenko指揮PaTRAM男声合唱団のラフマニノフ晩祷(徹夜祷)を聴いてみました。

混声ではなく男声アレンジなので普段とは違う感覚はあるものの、カリフォルニアの正教合唱団PaTRAMは前回のアルバムも圧倒的な歌唱力でしたし、今作も期待を裏切りません。バリトンソロだけ空間がかなり共鳴するのが気になりますが(二曲目2:00付近とか)、それ以外は極上の録音空間が味わえます。そのあたりも含めてライブ空間録音の面白さでが実感できます。

Ravenの音場展開は、歌唱自体は比較的コンパクトで丁寧な音像で、耳元ではなく前方のちょっと離れた位置にあり、そのメインの音像の背後を覆うように低音の響きが大きく立体的に描かれています。明るいというよりは暗い印象がありますが、空間の距離感に十分な余裕があるため、耳元で響きが混雑しているような感覚はありません。さすが12ドライバーも搭載しているだけあって、クロスオーバーの断絶や違和感は無く、帯域ごとのドライバーが上手にカスケードしているのが伝わってきます。

4WAY以上のフロアスピーカー的というのはまさにそのあたりで、中域以上では優れたブックシェルフと同じようにしっかりと輪郭のある聴こえ方で、その下を補強するように専用のドライバー群が余裕を持って鳴っています。

スピーカーでも、高・中・低をカバーするだけなら3WAYでも十分なのに、なぜ高級フロアスピーカーは中低域用ドライバーを増やした4WAYや5WAYなどにするのか疑問に思う人もいるかもしれませんが、低い周波数ほどエネルギーが必要になるので、とくに部屋が大きいと、3WAYではどうしても駆動に苦労が感じられ、レスポンスが悪く、音が暴れてしまいます。ドライバーの数を増やすことで、それぞれの負荷が減って、ベストな範囲で駆動することができるのは、奇しくも合唱と同じ感覚でしょうか。適当に増やしただけでは整合性が悪く音が濁ってしまいますし、駆動するために必要なアンプの要求性能も高くなります。Ravenの鳴り方は、まさにそのようなドライバー数が多いフロアスピーカーの余裕を連想させてくれます。

試聴したアルバム的に言うと、天井が高い大聖堂にいるような荘厳さが見事に描かれていると思います。これをイヤホンで実現するのは並大抵のことではありませんし、大型ヘッドホンでも難しいです。

特に他のイヤホンと比べると低音側の分析力と分解能の高さがすごいです。低音をひとまとまりにするのではなく、周波数と空間配置で多数のレイヤーに分離できており、とりわけ合唱となると人間の声なので明確な正解があり、違和感が直感的にわかるので、Ravenの凄さが実感できます。バスのソリスト、バスの合唱、壁の反響、そして録音時のハムノイズといった様々な構成音が明確に区別できます。そのため、Ravenは第一印象では重厚でゆったりした音作りかと思いきや、実はモニター並みに分析できるポテンシャルを秘めているように思えてきます。これはイヤホンとしては異例の性能です。

底知れぬ低音のポテンシャルが感じられると同時に、テノール以上は清々しく、余計な響きが邪魔をしないのが素晴らしいです。低音を盛っているだけでなく、このあたりのバランス配分の上手さに関心します。

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低域のみでなく、Ravenの全体のバランス感覚を味わうのに良いアルバムはと考えてみて、Repriseレーベルから1966年シナトラとベイシーの「Sinatra at the Sands」を聴いてみました。2010年リマスターが最新だと思うので、新譜ではありませんが、音質はかなり良いです。

いわゆるベテラン歌手とビッグバンドの歌謡曲ディナーショウ形式のアルバムで、聴衆の騒音も含めてリアルに録られています。このように、その場の雰囲気を含めた全体の臨場感を表現しようと試みているアルバムこそ、オーディオファイル的に鳴らしがいがあると思いますし、小型ブックシェルフでは難しく、まさに大型フロアスピーカーが活躍する場面です。

私の期待どおり、Ravenはこの手の楽曲で素晴らしい能力を発揮してくれます。価格の近いOdinと比較してもRavenの方がはるかに相性が良いです。Odinはもうちょっとハイエンドイヤホンらしい高解像な音色重視の鮮やかな描き方なので、歌声の質感や背景との分離といった点ではRavenよりも優れているのですが、宙に浮いた音像をピンポイントで拾っているような聴き方になってしまいます。Ravenはそれとは対象的に、まるで観客の一人としてテーブル席に座っているかのような地に足のついた臨場感が味わえます。

我々が普段なにげなく佇んでいる静かな部屋でも、完全に無音というわけではなく、空調などの僅かな騒音が空間を形成する要素として貢献しています。Ravenはまず現実の騒音を遮断した上で、ライブ録音上の僅かな騒音を絶妙な距離感で再現してくれるため、臨場感の演出が非常に上手いです。骨伝導や静電ドライバーのおかげでしょうか。これは周波数グラフなどの測定評価では決して伝わらない音楽鑑賞の魅力です。

また、歌手や楽器の音像も、普段以上にそこにいる実在感があります。フレディグリーンのギターを刻む音や、ハリーエディソンのミュートトランペットなど、普通なら軽く聴こえてしまう楽器も、Ravenでは、くっきりした音像の背後に、その土台を増強するような空気感というか、勢いを加える空気の動きが存在します。ただでさえダイナミックなベイシーのオーケストラに拍車をかけるような勢いが加わり、単なる低音の厚みとは一味違ったスゥイング感が体験できます。

そして、とくにこのアルバムでは、実在感というのは環境騒音にも上手に働いています。観客の掛け声や、間奏中に大勢のテーブルの食器を片付けるガシャガシャという音ですら、普段なら耳障りに聴こえるところ、Ravenではそれにすら空気の動きが付帯して、臨場感を盛り上げる成分として貢献してくれます。こちらも大型スピーカーの醍醐味と似ています。

ではRavenの弱点はというと、低音の仕上げが下手な楽曲だと違和感が目立ってしまうので、そのあたりはハイエンド相応に気難しさもあります。たとえば古いクラシック録音など低音が不明瞭な塊になってしまっている場合はRavenではそれが延々と聴こえて邪魔になります。Ravenの魅力を最大限に引き出すには、できればDSD生録など自然音響の再現性を楽しみたいです。

そして、やはり派手さは控えめなので、とくに最近のハイレゾ音源とかは、もっとキラキラした輝かしい鮮やかなサウンドで聴いてみたいと思うことも多々ありました。その点はOdinが有利なので、あえて同価格帯で二機種出している理由も納得できます。

OdinとRaven

メインの万能レファレンスイヤホンとしてどちらが良いかというと、Odinの方を選ぶと思いますが、Odinなら他社からも同じくらい優れたイヤホンは見つかりそうです。一方Ravenはイヤホンとしては規格外の体験を提供してくれるので、似通ったハイエンドイヤホンの議論や枠組みから一歩離れて、自己流の音楽鑑賞に貢献してくれます。

PW Audio Orpheus

ケーブルについて、ちょっと余談になりますが、今回Ravenを試聴してたところ、近くにいたガチのイヤホンマニアの方がぜひ試聴してみたいということで、せっかくなので聴いてもらったところ「イヤホン自体はとても良いけれど、ケーブルはこれに変えたほうがもっと良くなるから」と、おもむろに持参したケーブルを貸してくれました。

そのケーブルに交換して聴いてみると、確かに素晴らしいです。全体的なバランス感覚は変わらずに、中域の音色の美しさや滑らかさが一段上に進化するような感じです。PW Audio Orpheusというケーブルだったのですが、値段を見てびっくりしました。やはり私なんかよりも遥かに凄いマニアがいるものだと関心した次第です。

ちなみに値段が高いから良いというわけではなく、「こっちは相性が良くないかも」と別の高額なケーブルも貸してくれて、実際確かにギラギラして変な音になってしまいました。このあたりも、ネットで調べたりして思い切って一張羅を買うのではなく、様々なメーカーやモデルを実地で体験してきた人の方が、組み合わせや相性の感性が育っているのでしょう。

そのあたりも含めて、Empire Earsというのはマニア向けのハイエンドにふさわしいイヤホンなのだと思います。

おわりに

Empire Ears Ravenは非常識なほど高価なイヤホンですが、それでも興味があるという人なら、真剣に検討する価値があるモデルだと思います。

スケールの大きな低音の描き方は、これまでのEmpire Earsのアグレッシブさを覆す、余裕を持った音楽体験を味わえる贅沢なイヤホンです。こういうのを買う人こそが、本当の意味で趣味を突き詰めているオーディオマニアなのだと思います。

では私はというと、最初は懸念していたシェルの大きさも実際は意外と気になりませんでしたし、デザインも慣れれば好きになりましたが、やはり尋常でない値段と、2Ωという駆動の難しさを知ってしまうと、まだ安易に踏み込めない世界だと感じてしまいます。

Empire Ears Odinとどちらが良いかと気になっている人もいると思いますが、あえて言ってしまうと、これはOdinのような系統のサウンドを十分に熟知しているマニアが二本目に選ぶようなイヤホンだと思います。

また、最近はもっと低価格でもハイスペックなイヤホンが続々登場しているので、細かい項目でマークシート的に点数をつけていくとしたら、Ravenはそこまで高得点は得られないかもしれません。しかし高得点がとれても退屈では意味がありません。

このあたりがEmpire Earsがハイエンドなメーカーとして好評を得ている理由なのだと思います。逆に言うと、コストパフォーマンス重視の低価格イヤホンを大量生産しているメーカーは、いざ高級機の市場に参入しようとしても、このようなサウンドが生み出せません。大量のドライバーを詰め込んで、マークシート的に優秀なサウンドを目指しても、退屈から抜け出せていないと思えたモデルをこれまでたくさん試聴してきました。

その点Empire Earsは、山海の珍味のように好き嫌いはあるにせよ、優秀よりも趣向を凝らしたサウンドを実感させてくれます。「色々なイヤホンを持っているようだけど、でもこのようなサウンドは聴いたことが無いだろう」と訴えかけてくるようです。



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