2026年1月24日土曜日

2025年 個人的に気に入った最新(有線)イヤホン・ヘッドホンとかのまとめ

2026年になったので、2025年の一年間を通して個人的に気になったイヤホン・ヘッドホン機器についてまとめてみたいと思います。


あくまで私が個人的に聴いてみたものや興味があるものに限定されますが、それでも例年通り大量の新作が登場した一年だったので、ポータブルオーディオ業界に活気があり喜ばしいです。

2025年

毎年のことながら、ポータブルオーディオの成長曲線もそろそろ限界が訪れるかという予想を上回り、2025年も新作リリースの量と質のどちらも衰える気配を見せない一年でした。

新製品のニュースやポタフェス・ヘッドホン祭などのイベントも盛況なようで、そこまで興味が無い人でも自然と話題が耳に入ってくる状況が続いています。

2025年の個人的な印象としては、定番ヘッドホンの第二世代機の登場が多かったのと、有線イヤホンの音質進化が著しく、数年前の高級機よりも最新の超格安モデルの方が音が良くて驚いた人も多いと思います。

あいかわらずイヤホンとヘッドホンのどちらも中国系新興メーカーの勢いが止まりません。ただし中国はもはやコストパフォーマンスだけを重視する市場ではなくなったので、無駄に高価で中身が伴っていないラグジュアリーブランドも増えてきており、そのあたりはちゃんと見極める必要があります。

オーテクやゼンハイザーといった老舗の強さも実感できた一年でした。ここ数年は続々と登場する新興ハイエンドメーカーに押され気味でしたが、肝心の音作りの感性や、それを実現するために必要な技術や材料を選定するスキルにおいて、ようやく再評価の意識が高まっているように思います。

逆に2025年はAudezeやDan Clark、Focalなど新世代の欧米高級メーカーの勢いは一旦落ち着いたようです。数年前と比べて珍しさも薄れたことで、多くのユーザーが率直にサウンドを評価する土台が固まってきて、高価だから注目を集めるという時代は終わったように感じます。定番モデルを長く売る、それこそオーテクやゼンハイザーのような老舗メーカーの仲間入りを果たしたとも言えます。

DACやヘッドホンアンプなど再生機器では、数年前からスペック性能の限界が感じられましたが、最近は新たな活路として真空管プリやディスクリートR-2Rが非常に多くのメーカーから見られるようになっており、個性豊かではあるものの、数年前に買ったモデルからのアップグレードという観点では物足りない一年でした。それでも良い製品は沢山登場したので、それらをいくつか紹介したいです。

ワイヤレス

Bluetoothワイヤレスについてもちょっと触れておきたいと思います。数年前だったら、ワイヤレスの急速な進化と普及によって有線モデルは絶滅すると言われていましたが、2025年を振り返ってみると、意外とそうでもなさそうです。

毎月のように新作が登場するようなバブル期は終わり、高評価モデルがロングセラーとして数年間売れ続けるような市場に移行しました。多くの人がすでに持っているモデルから買い替えを促すほどの技術革新が見られません。

メーカー側は音質向上を目指してはいるものの、バッテリーの連続再生時間やアクティブNC技術に大きな進展はありませんし、スマホ側のBluetooth規格やコーデック対応も、AAC・aptX Adaptive・LDACに、ようやくLC3/LE AudioやaptX Losslessなんかの話題が散見されるような状況なので、数年前に買った上級機であれば、まだまだ現役で通用します。

テクニクスを三世代使っています

私はあいかわらずテクニクスを使い続けており、2025年の新作EAH-AZ100に凄く満足できています。毎日の通勤から飛行機での移動まで大活躍してくれた、2025年の個人的なベストバイです。これまでAZ60・AZ80・AZ100と乗り換えてきた上で、純粋な音質面で着実な進化が実感できますし、デザインが無難で過度に主張しないのもありがたいです。

Final UX5000

テクニクス以外の新作では、Final UX5000というヘッドホンも買いました。年末の帰省時に買ったので、まだブログで紹介するほど評価が定まっていません。

Finalは有線では超高級ヘッドホンのイメージがあるものの、Bluetoothワイヤレスモデルは比較的安価でユニークな試みが目立つため、このUX5000も最上位モデルで3万円台に収めているあたり、興味を惹かれて、つい買ってしまいます。

タッチセンサー操作とかAIアシスタントみたいな余計なギミックが無いのも個人的に嬉しいです。音質も派手さは無く、同じ5000番のA5000イヤホンと似ている真面目な仕上がりです。LDACの音質有線と接続有線モードで音質が変わる感じがするあたりも、かなり素直な鳴り方だと思います。

FinalはUX5000以外ではTonaliteという新型イヤホンも登場したのですが、まだ試聴できていません。前作ZE8000というイヤホンが結構好きだったので、こちらも気になっています。

Victor WOOD Master

Sennheiser HDB630

自分が買ったテクニクスとFinal以外で、2025年のワイヤレス機で個人的に印象に残ったモデルを振り返ってみると、Victor (JVC)がウッド系の新作WOOD Masterを出したのと、ゼンハイザーがMomentumとは別ラインのHDB630という新作を投入しました。

Victorはあいかわらず独自のツヤツヤサウンド路線なので好き嫌いが分かれると思いますが、下手にプレミアム化せず4万円弱に抑えているので、興味本位で買ってみたくなります。

一方ゼンハイザーHDB630はこれまでのMomentumの2万円台から一気に10万円近くに踏み込んだのは驚きました。B&WやFocalの高級路線を狙っての戦略だと思いますが、私の率直な感想では、サウンドや外観デザインもMomentumが多少良くなった程度で、ラグジュアリー感は希薄です。Appleユーザー救済用にaptX Adaptive/Lossless対応のBTD700小型USB-C送信機を付属しているのは嬉しいです。普段SBC/AACで使っている人がどれだけ損をしているのか実感してもらうために有用なアイテムだと思います。

B&W PX8 Gen2

Focal Bathys MG

それら以外では、オーテクATH-TWX9MK2やBOSE QC Ultra Gen 2、B&W PX8 Gen 2、Focal Bathys MGといった人気モデルの第二世代が多かったです。

やはりITガジェット系アイテムとして、数年前のモデルは買うのをためらう人が多いと思うので、定期的にバージョンアップを繰り返す必要があるのでしょう。ソニーのWH-1000Xも第六世代M6になりましたが、流石にもう飽きてきたので、そろそろ本腰を入れた高音質路線の新型を見たいところです。

私の勝手な考察ですが、オーディオマニアやガジェットオタクよりも、ファッション・ライフスタイルトレンドに敏感な、別荘リフォームの雑誌を読んだり毎年iPhoneを気軽に買い替えるような富裕層の人の方が、シーズンごとのモデルチェンジに興味を持っている印象があります。そのため多くのメーカーがコスパや軽量化よりもPX8やBathysのような重厚で鈍い金属の輝きで魅せる十万円クラスのラグジュアリー系を出したがるのも納得できます。

ワイヤレスモデルというと昔からバッテリー経年劣化が懸念点だったわけですが、最近は冒頭で紹介したFinal UX5000のようにバッテリー交換パネルがアクセスできるような動きも見られるので、そのあたりがもうちょっと一般化してくれば、それこそクオーツ時計やコンパクトデジカメのように、嗜好品として気に入ったモデルはバッテリーを入れ替えてでも使い続けるようになるのかもしれません。

Skullcandy Method 360 ANC ・ Moondrop Space Travel 2 Ultra

低価格帯ではMoondrop Space Travel 2 UltraやSkullcandyとBoseのコラボMethod 360 ANCなど充電ケースを含めたトータルデザインでインパクトのあるモデルが印象に残りました。やはりアップルのAirPodsを筆頭にOppoやXiaomiなどスマホメーカーが提供しているワイヤレスイヤホンの性能がだいぶ良くなってきたことで、1-2万円の低価格帯ではデザインやユニークなアイデアで目立つことが求められるようです。

ワイヤレス新作を一通り試聴してみた中で私の率直な感想として、狙い目は2-4万円くらいで、それよりも安い低価格帯と、さらに高価な高級ラグジュアリー系では、音質面でそこまで大きな進歩は無いという印象です。そのため当ブログでも積極的に紹介する機会はありませんでした。

たとえば1万円台の安いワイヤレスモデルは最新機種でも相変わらず音質に不満が残り、2-4万円のモデルとの格差を痛感します。どれだけICチップが進歩しても、ドライバーやハウジング素材など出音に貢献する主要部品でコストカットしすぎると音質への影響が避けられないのかもしれません。

つまり現状では低価格の新型が出るたびに買い替えるよりも、2-4万円で音質に満足できる上級機を数年間使い続ける方が良さそうです。少なくともアクティブNCやマルチポイントペアリング、aptX Adaptive・LDACなど主要技術に目立った変化はありませんし、今後LE AudioやXPAN関連の機能がスマホ側に普及するまで様子を見るべきです。

高価格帯モデルも完璧というわけではなく、スタジオエンジニア監修みたいな触れ込みで高音質を主張しているモデルが多いものの、有線タイプと比べるとやはり音質面で満足できません。ワイヤレスだから音が悪いというよりも、DSPを駆使したサウンドチューニングがカジュアルユーザーの好みに合わせて調整してあるようで、どのメーカーのモデルを聴いても「いつものワイヤレスっぽい音だな」と思えてしまいます。具体的には音源の微細な情報を削って見かけ上のS/Nを誇張したり、周波数特性のEQ補正に注力しすぎて空間定位が曖昧に滲んでしまっているなどです。

むしろラグジュアリー系の高価なモデルほどカジュアル補正傾向が強い印象なので、私自身はテクニクスやFinalなど3-4万円付近で十分満足できています。どのみち屋外の騒音下とかで使うので、有線のようなシビアな目線ではなく、カジュアルに楽しめるサウンドと割り切って考えた方が気が楽です。

オプションキットが多すぎるAcoustune HSX1001

ひとつ例外として、Acoustune HSX1001はワイヤレスながら有線っぽいサウンドで良いと思えたのですが、こちらはアクティブNC非搭載でデザインも奇抜なので、出先で使うには向いていません。

音質は結構気にいったのでブログでも感想を書こうと思っていたところ、追加ドライバーモジュールや有線化キットなど次から次へとオプションパーツが登場して、めんどくさくて諦めました。音は良いので凝り性な人には面白いアイデアだと思いますし、自宅やオフィスの静かな環境でワイヤレスイヤホンを使いたいというニッチを埋めてくれます。

とくに数年前にちょっとだけ流行った有線IEMをワイヤレス化する耳掛けアダプター(Fiio UTWSとか)でフィットが上手くいかなかった人は、たぶんHSX1001を使う方が賢明です。

使い倒したOpenRun Pro 2

ところで、2025年の新作ではありませんが、個人的に一年を通してShokz OpenRun Pro 2が思いのほか活躍してくれました。

骨伝導だからと敬遠しているオーディオマニアも多いと思いますが、個人的に色々と試した中でもPro 2はかなり良いです。もちろんじっくり音楽鑑賞に使うようなタイプではないと思いますが、意外とレンジが広く中域も自然に鳴ってくれるため、パソコンの動画鑑賞や作業BGM用途で重宝します。

これまでのShokzが骨伝導だったのに対してPro 2は中低音用ダイナミックドライバーも搭載しており、これが若干音漏れするので、従来のShokz骨伝導ファンからは否定意見も多いモデルなのですが、逆に私みたいな自宅メインで音質優先のユーザーに最適なモデルです。骨伝導のみのモデルだと低音がビリビリとこめかみを振動させる感覚があるのですが、Pro 2はダイナミックドライバーのおかげでそのビリビリ感が無く、装着しているのを忘れてしまいます。

ステマではなく実際に一年以上毎日使い続けた証明として、いくつか不満も挙げたいです。まず上の写真にあるように、電源ボリュームボタンのゴムが破れてきたので、テープを巻いて補強しています。USB-C充電端子の防水カバーもほぼ閉まらなくなったので、ランニングに使いたい人は困るでしょう。さらにShokzはヘッドバンドが通常版とMiniタイプが選べるのですが、この二択のせいで現物を試着しないと購入に踏み切れない人が多いと思うので、次回作ではヘッドバンドを調節可能にしてもらいたいです。ちなみに私はMiniの方を使っています。バンドが長すぎると上下にフラフラ揺れて安定せず、椅子の背もたれにぶつかるなど邪魔になりますが、逆に短すぎると首を動かすたびに本体が引っ張られてしまいます。

このOpenRun Pro 2というモデルは、従来機と同じ感覚を期待しているフィットネスユーザーからネガティブな評価が多いものの、自宅オーディオユーザーには最適なので、できればOpenRunではなく別名で出したほうが混乱が起きず受け止められたと思います。

有線イヤホン

2025年の有線イヤホンの傾向としては、あいかわらず中華系ブランドの発展に目を見張るものがあるものの、混沌とした市場もだいぶ整理されてきて、主要ブランドごとの個性や強みが明確になってきたようです。

多くのメーカーが第二・第三世代へとモデルチェンジする時期が訪れたことで、開発力の高さが問われる時代に突入しています。スタートアップ気質のインパクト重視でとりあえず作ってみるのと、そこからの不満点を真摯に受け止めて第二世代モデルを作るのでは異なるスキルが求められます。

また購入方法も従来はeBayやアリエクなど並行輸入に頼っていたところ、最近では家電量販店やオーディオ専門店もそれぞれ独自にユニークなブランドを開拓して売り出すなど、いわばアパレルのセレクトショップのようにトレンドやセンスの目利きを頼りに取り揃える感じになってきています。

Hibyのイヤホンも悪くないです

何十万円もするような高級品ばかりが注目されがちですが、数千~数万円程度で素晴らしい製品も多く驚かされることが何度もありました。個人的な感想としては、一万円くらいまではイヤホン専門メーカーよりもFiio、iBasso、Hiby、Hidizsなどプレーヤー機器メーカーの方がスケールメリットを活かして高コスパなイヤホンを作れている印象です。

iBasso Gelato + Macchiato

とくに2024年末に登場したiBasso Gelatoは7,000円くらいですが完成度が高く、私も知らずに聴いたら4-5万円だと思えてしまうくらい良い音です。USB Cケーブルタイプでスマホやパソコンに接続して完結するのも良いですし、3.5mmケーブルでiBasso Macchiato USBドングルDACで合わせても二万円以下に収まるのは凄いです。

価格破壊のAzla Trinity

さらに安いモデルではAzla Trinityが2,000円で買えるのも驚異的です。こちらも3.5mmとUSB Cの二種類が用意されており、耳掛け式ではないので雑用に便利かと思っていたら、真面目な音楽鑑賞でも十分通用するサウンドなので驚きます。

ライバルとしてFinalのE500系が定番で、どちらも優秀ですが、Azlaの方が本体が大きいためか派手で迫力のあるサウンドです。一方Finalは耳穴内にコンパクトに収まってくれて音の刺激が少ないので夜寝る時に使うのに良いかもしれません。どちらにせよ、ここまで安いと買っておいて損はないです。

USBと3.5mmで悩むところです

ちなみに数年前まで有線イヤホンというとUSB DACなどを別途購入するのを考慮するとワイヤレスイヤホンの方がコスパが良いという風潮がありましたが、最近はエントリークラスの有線イヤホンにUSB Cケーブルタイプが増えてきたことで、あらためて音質面でワイヤレスよりも有線イヤホンを選ぶコストパフォーマンスのメリットが生まれました。

さきほどBluetoothワイヤレスは高価なモデルでもワイヤレスっぽい鳴り方で満足できないと言いましたが、逆に最近の有線イヤホンは数千円のUSB Cタイプでもしっかりと高級機に迫る高音質を実現できています。

2025年はこれら格安モデルが充実していたのに対して、もうちょっと上の数万円台は注意が必要です。たとえばiBassoを見ても一番安いGelatoが一番実直で真面目なのに対して、そこからKleeやCookieといった上位モデルになるにつれて無理に高解像っぽい派手さを付加しているような個性が出て、好き嫌いが分かれてしまいます。

Thieaudio Valhalla

他にもKinera、Shuoer、Thieaudioといった、これまで高コスパ路線で頑張っていた中華メーカーがこぞって十万円超のプレミアム路線に注力するようになり、意外と数万円台でおすすめできる完成度の高い新作が少なくなってきた印象です。

純粋な音作りの良さだけでは見栄えしないため、ハイブリッドマルチドライバー化や、チタンやベリリウムなど高級素材を導入するといったスペックで競い合っている様子で、響きのクセが強いモデルが多くなります。ようするに、本格的なハイエンド機にアップグレードするまでは、1-2万円台のモデルでも十分満足できると感じました。

Dita Mecha

Dita Prelude

Dita Ventura

ここへきて2025年は中国に対抗してシンガポールの小規模メーカーがだいぶ目立った一年でした。これまでも片鱗は伺えましたが、それとなく試聴して気に入ったイヤホンの出生を調べるとシンガポールという事が何度もありました。

まず代表的なのはDitaですが、2025年は10万円台でチタン製のMechaがシャープな高解像サウンド、続いて2万円台のPreludeは軽快かつ心地よいサウンドで好印象でしたし、年末には80万円の新フラッグシップVenturaが登場しました。

どれもDitaが得意とするシングルダイナミック型で、最近主流のハイブリッドマルチドライバーに負けず凄いサウンドを引き出しています。Venturaは現在試聴しているのですが、目立った死角が無い仕上がりで、どういう切り口で感想を書いたらよいのか困っているところです。

Forte Ears Macbeth・Mefisto

同じくシンガポールのメーカーForte Earsから、2024年末に出た赤いMacbethに続いて2025年にはグレーのMefistoという兄弟モデルが登場、どちらもDitaとは対照的にハイブリッド構成で、BAを中心に骨伝導と静電ユニットのMacbethに、DDと平面型のMefistoと根本的に違います。とくにMacbethの方は個人的に現行ハイブリッド型のベストだと思えるくらい端正なサウンドで、新興メーカーがどうやってここまで凄い音作りができるのか不思議に思います。約50万円という価格と奇抜すぎるデザインで購入に踏み込めないのが残念です。

他にもケーブルのEffect AudioやEletech、カスタムIEMのFatFreqなど、シンガポールは中国の大量生産路線とは一味違う個性豊かなガレージ工房的な面白さがあり、とくにサウンドの仕上げ方に各メーカーごとの明確なポリシーが感じられます。最近はスペックやグラフだけ見て音を聴かずに決め打ちで買っている人が多い中で、これらシンガポールのメーカーはそれぞれ音作りに一家言あるため、実際に店頭で試聴してみたくなるモチベーションが湧いてきます。

Madoo Typ930

超高級機では日本のメーカーも負けておらず、Madooの新作Typ930にも圧倒されました。ラインナップ最上位の35万円で、平面型とBAのハイブリッド構成です。直近のモデルが平面型のみだったのに対して、2022年のデビュー作Typ711と同じ平面型+BAのハイブリッドに原点回帰したのは興味深いですし、そのTyp711と比べても短期間で大幅な進化を遂げたことが実感できます。

平面型のみのTyp821・Typ622はどちらかというと繊細で空間情景重視だったのに対して、Typ930は音色の力強さや艶っぽい美しさが出せているため、モダンな音楽ジャンルに向いている仕上がりです。

Acoustune RS FIVE

Madooの兄弟ブランドAcoustuneからは、ダイナミック型のRS FIVEというモデルが印象的でした。4万円台のダイナミック型で、プロ用ステージモニターRSシリーズの最上位でありながら音楽鑑賞用に十分通用する素晴らしいサウンドです。ハウジングの美しい作り込みも注目に値します。肥大化するIEMイヤホンの中でも珍しくShureやWestoneのようなコンパクトサイズなので扱いやすいです。

Beyerdynamic DT70 IE

同じくコンパクトなプロモニター系ではドイツのベイヤーダイナミックからDT70IEシリーズが登場しました。

スタジオモニターDT70IE、ドラマー・ベーシストのDT71IE、ギター・ボーカルのDT72IE、クラシック・キーボードのDT73IEのどれも同じ十万円弱というラインナップで、買う側を悩ませて、売る側も在庫管理に泣かされそうです。

主に楽器店での販売になると思いますが、DT70IEとDT73IEはロングセラーXelentoシリーズの発展型としてカジュアルな音楽鑑賞にも向いていると思うので、あまり耳奥まで挿入されない軽快なイヤホンを探している人はチェックしてみるべきです。プロ用のステージモニターとしても、カスタムIEMが視野に入るのは15万円くらいからなので、そこまで出したくない人にベイヤーは良い選択肢になるかもしれません。

Vision Ears

ドイツのプロモニターといえば、Vision Earsのカスタムラインナップがリフレッシュされて、個人的に大好きなVE10がVE ZENという名前でカスタム版が登場したのは嬉しいです。

他には6BAのXCONというモデルがVE10とは対象的にエキサイティングな鳴り方でだいぶ気に入りました。最近はハイブリッドが流行っていますが、やはりマルチBAというのも良いので、ぜひ試聴してみてください。

全機種試聴したのでブログで紹介しようと思ったのですが、インピーダンスを測って感想をまとめる前に返却しなければならなかったので、残念ながら断念しました。私は今のところカスタムはUEしか持っていないので、次回作るならVision Earsも有力候補なのですが、流石に高価なので覚悟が決まりません。以前検討した時VEは3Dスキャンは不可で物理インプレッションのみという制限で断念したのですが、最近は変わったのでしょうか。

Audio RIF XR3・XR4

カスタムといえば、米国ポートランドのFiR Audioから、低価格シリーズのAudio RIFというのが出ました。

FR10、XR3、XR4の三種類で、中国製にすることでカスタムでUSD$450~750とかなり安い価格設定にしているのが魅力的です。個人的にはXR3というモデルが低音がパワフルでEDMとかを楽しむのに良いと思いました。本家FiR AudioはRadon 6というモデルが一番好きなのですが、40万円くらいするので流石に手が出せません。このAudio RIFというのも本家と同じくカスタムのノズル先端が柔らかい素材でできているためフィットと密閉感が良好だそうです。

最近はユニバーサル型もどんどん高額化しているので、カスタムという選択肢も意外とリーズナブルに見えてきます。

Volk Audio Etoile

Empire Ears Triton Kashmir & Odin Mk II

高級イヤホンでは、Empire Ears Triton & Odin Mk IIとVolk Audio Etoileを試聴できたのも有意義でした。なぜ合わせて紹介するのかというと、米国アトランタに本拠地を置くEmpire Earsのオーナーファミリーの一人が独立プロジェクトとして立ち上げたのがVolk Audioだそうです。

どちらも約60万円で黄金が眩しいEtoileとOdin Mk IIですが、バンド音楽の熱量を強調するEtoileと、オーケストラなどの圧倒的なスケール感のOdin Mk IIで、それぞれ両極端にあるような性格の違いがあり、ここまでハイエンドになると単なるレファレンスに留まらず一筋縄ではいかないと実感しました。

そこへきて20万円台のEmpire Ears Triton(Triton Kashmir)はドライバー数が少ないため値段は安くなりますが、逆にそれが軽快な親しみやすさを提供してくれて、私なら普段使いはこれくらいでちょうど良いと思える優秀なモデルでした。

有線ヘッドホン

2025年の有線ヘッドホンは、意外にも日本のメーカーの新作が目立った一年でした。Audeze LCDやFocal Utopiaなど欧米メーカーの到来で数十万円クラスのヘッドホンがもはや当たり前になったことで、日本も張り合うように高価格帯で勝負をかけてきた具合です。

市場全体の高額化は、我々買う側にとっては悩ましい事態ですが、しかしあまりにも多くのメーカーが高価格帯に参入してきたことで、逆に特別感が薄れてしまった側面もあり、高価な方が高音質という先入観を利用したマーケティングは通用しなくなってきました。さらに、これまでのような「ダイナミック型より平面型、密閉型より開放型」といった先入観も払拭され、メーカーや駆動方式を問わずフラットな視点で音質を評価できる土台が整ってきたようにも思います。

ここ数年はFiioを筆頭にMoondropやSIVGA (SendyAudio)、GoldplanarやHarmonicDyneといった中国メーカーの多くが有線ヘッドホン市場にも参入してきたことで、市場を掻き乱すような良い効果を発揮しているものの、2025年もヘッドホンではまだIEMイヤホンほど覇権を握る位置には届いていない様子です。

価格相応にサウンドは優秀なので、いくつかブログで紹介しようかとも考えたのですが、公式サイトにアリエクのリンクが貼ってあるなど売り方がややこしいので、どうしても消極的になってしまいます。

イヤホンもそうなのですが、私は身近なショップや代理店のツテや友人経由で試聴機を借りているので、中華系メーカーをあまり取り上げないのは避けているわけではなく、ネット通販メインだとどうしても試聴する機会が少ないからです。

同様の理由からHifimanも取り上げる機会が減ってしまいました。数年前までは輸入代理店やオーディオショップの力を借りて知名度を築き上げていったわけですが、最近は直販体制に転換して、アリエクやアマゾンでたまにとんでもない格安価格で売っていたりなど、末永く愛用できる定番モデルとして薦めるのが難しい状況です。余談になりますが、2025年末にHifimanがIPOするという話があり、投資家向けに財務資料が開示されて中国ネット界隈で盛り上がるなど、あいかわらず話題に事欠かないメーカーです。

中華系ヘッドホンメーカーの共通課題として、艶消しの黒いパウダーコート、一枚の板金を曲げたヘッドバンド、直角や真円しか工作できない機械加工など、十万円クラスに参入するには設計や製造技術のレベルが不十分なモデルが多いです。たとえば高級線材のケーブルといっても安いビニール系外皮だったりなど、嗜好品として求められるレベルにまだ追いついていない印象です。欧米のガレージ工房系なら製造設備の弱さは理解できますが、深センの量産体制ならスマホと同様にもっと高度な製造が可能なはずです。

真剣にハイエンドに取り組むのであれば、これまで多くのハイエンドオーディオメーカーがそうだったように、ネジ一本の試行錯誤から音響技術と製造技術の粋を極めたステートメントモデルを利益度外視の数量限定で販売して、そこからの知見を元にコストダウンした量産モデルでようやく利益を出すという逆転の発想が求められると思います。

その点、日本やドイツの老舗メーカーは何十年もの技術の蓄積のおかげで、サウンド以外の部分においても、複雑な製造工程が求められる立体造形のフィット感であったり、5-10年後でも劣化しない信頼性といったトータルデザインに強みがあります。

ATH-ADX7000

2025年の新作でまず印象に残ったモデルとしては、10月にはオーディオテクニカから次世代フラッグシップATH-ADX7000が登場、56万円という非常に高価なモデルですが、2017年の前作ADX5000の面影を残しつつも大幅な進化を遂げたことで注目を集めています。

私自身ADX5000を持っているので、このアップグレードは気になっていたのですが、サウンド面では従来のようなオーディオテクニカらしい尖った個性がだいぶ払拭され、よりモダンで万人受けしそうな仕上がりだったので、どちらが自分の好みに合うのか迷っています。死角の無い最先端のサウンドを体験するならADX7000ですが、オーテクらしい個性や味わいはADX5000の方が強いので、それぞれでファンが分かれそうです。とにかく凄いヘッドホンであることには変わりありません。しかも非常に軽いので、他社の重量級ヘッドホンを使うのがバカらしく思えてしまいます。

ATH-R70xa

ATH-R50x

ADX7000の影で見落としがちですが、2025年にはATH-R70xの後継機ATH-R70xaも登場しました。5万円という手頃な価格帯でも本格的な開放型モデルなので、長らくR70xを絶賛してきた私も購入しましたし、多くの人に注目してもらいたい傑作です。従来のR70xと比べて派手さが増したことで、実直なモニターとしての退屈さを越えて音楽鑑賞でも楽しめそうなモデルに進化しました。

同時にATH-R50xも登場、こちらはR70xaの半額の25,000円という格安価格でありながら品質は遜色なく、ケーブルが片側出しに変更され、サウンドもボーカルの厚みが感じられるポピュラー路線に調整されているため、単なる廉価版として侮らずに試聴してもらいたいです。さらに安いR30xというのも出たのですが、ここまで安くなるとドライバーの限界も目立ってくるので、私としてはR50xかR70xaをお勧めしたいです。

DX6000・DX3000CL

日本のメーカーでは先鋭のイメージがあるFinalからも面白い新作が登場しました。26万円の開放型DX6000と8万円の密閉型DX3000CL、どちらもダイナミックドライバーを搭載しています。個人的にじっくり試聴できる環境が身近に無いためブログで紹介できないのが残念です。

近頃のFinalというと平面型ドライバーで50万円を超えるような頂点クラスのヘッドホンを作っている、手が届かない雲の上のイメージを持っている人も多いと思います。しかしワイヤレスヘッドホンでは手頃な価格で優秀なダイナミック型モデルを展開しており、今回の新作はそれらの知見を見事に融合したモデルという印象を受けます。

サウンド面では平面型シリーズのようなカッチリしたシャープな感じではなく、だいぶ温厚でマイルドな中に音色の美しさも感じられるリラックス系なので、とりわけ昔のFinal Audio Sonorousシリーズを愛用している人には待望の新作です。

YH-5000SE・YH-4000・YH-C3000

2022年にYH-5000SEで電撃参入したヤマハから、2025年は開放型YH-4000と密閉型YH-C3000が登場しました。YH-4000はYH-5000SEとそっくりで10万円ほど安い廉価版というイメージがあったものの、実際に聴いてみると音作りの方向性を変えた兄弟機として対等な存在だと感じました。

価格差はケーブルやスタンドなど付属品の差額だと割り切って、音色が自分に合う方を選ぶべきです。どちらにせよ独自の高解像ドライバーと三次元の立体音響の相乗効果がヤマハの強みなので、たとえばゼンハイザーHD800Sなどからもう一歩踏み込んだ音響体験を楽しみたい人は乗り換える価値があると思います。

YH-5000SEがヤマハらしいサウンドを強調するステートメントモデルであれば、YH-4000の方はもうちょっとリビングルームのスピーカー音響に近いバランス感覚を狙った王道路線なので、普段自宅のスピーカーで音楽を聴いている人に向いていると思います。個人的には密閉型YH-C3000が完成度が高く優秀だと思ったのですが、30万円とカジュアルに使うにはちょっと高すぎるため見送りました。

TH910・TH919

フォステクスからは、ダイナミック型最上級の密閉型TH900・開放型TH909の後継機としてTH910・TH919が登場しました。とくにTH900の方は2012年の初代発売からだいぶ時間が経っているので、待ち望んでいた人も多かったと思います。

私も開放型TH909を長らくメインのヘッドホンとして愛用してきたので、今回の新作TH919が気になっているのですが、残念ながら身近で試聴する機会がありませんでした。どちらも基本的なデザインコンセプトは継承しながら、ドライバーやハウジングからパッドに至るまで完全新設計ということで、フォステクスファンにとって納得の進化を遂げています。

ちょっと意外だったのは、2024年に登場したRP平面ドライバー型最上級のTH1000RP・TH1100RPがたった一年でTH1000RPmk2・TH1100RPmk2にモデルチェンジしており、これは日本のメーカーとしてはかなり珍しい事例です。しかもマイナーチェンジではなく、肝心のドライバーが第2世代へと進化しているということで、なにか事情があったのでしょうか。ちなみにmk2からケーブル着脱端子が2ピンではなく一般的な3.5mmTSプラグに変更されたのはありがたいです。

T60RPmk2

フォステクスからは高級機ばかりでなく、RPドライバーの主力モデルT60RPもT60RPmk2に更新され、さらに密閉型T60RPmk2CLも合わせて登場しました。

2017年発売の初代T60RPはT50RPモニターヘッドホンを木材ハウジングで音楽鑑賞向けにアップグレードしたモデルで、今回MK2ではドライバーの更新とともに着脱ケーブルも左右両側出しになるなどオーディオファイルに向けた嬉しい進化です。若干値上がりしましたが、それでも7万円以下でここまで完成度の高い平面型ヘッドホンというのはコストパフォーマンスが非常に高いので、平面型は海外の高級ブランドばかりというイメージを払拭してくれる貴重な存在です。

私自身初代T60RPはかなり酷使したので今回のmk2もすぐに購入しましたが、より鮮明にレスポンスが向上しており概ね満足できています。平面型なので音量が出しにくいヘッドホンではあるので、できればバランスケーブルも別売ではなく同梱してもらいたかったです。

T60RPmk2ai

ちなみに5月にT60RPmk2を購入して満足していたところ、10月にTH1000RPm2発売のタイミングで、そちらと同じ阿波藍染ハードメイプルハウジングの特別仕様T60RPmk2aiというモデルが出たので、自分用のクリスマスプレゼントとして購入しました。

もはや自宅にFostex RP系ヘッドホンが何台あるかわかりません。フォステクスで困るのは、こういった限定モデルがただのカラーバリエーションではなく、使用木材、内部配線、特殊イヤーパッドと、音質に影響しそうな部分を細かく変えてくるので、どうしても気になってしまいます。

青のMDR-M1と赤のMDR-M1ST

ソニーからはそろそろMDR-Z1Rの後継が出るかと噂が絶えない中、意外と静かな一年でした。唯一新発売と呼べるのは密閉型モニターMDR-M1ですが、こちらはMDR-M1STの海外展開版の逆輸入という形で、私自身は2024年に紹介したので目新しさはありません。

このMDR-M1は海外エンジニア主導のチューニングだそうで、確かに日本向けのCD900STやM1STと比べると中低音がかなり厚く出ます。

私の要望としては、これらソニーモニター系は価格を抑えることで損をしている部分が大きいと感じるので、業務用の備品としてはそれで良いかもしれませんが、自分専用で大事に使いたい人向けに、もうちょっと上の価格設定でソニーの技術力を見せてくれるようなモデルを期待したいです。たとえば10万円付近でMDR-Z7M2の後継機やMDR-MV1の上級機が出てくれたら人気が出そうです。

SR-007S

STAXからは個人的に待望していたSR-007Aの後継機SR-007Sが登場しました。最近のSTAXというと、SR-X9000など超ハイエンドばかりが話題になり、SR-007系の事は忘れてしまったかと心配していたところ、前作から18年ぶりの後継機登場は素直に嬉しいです。

20万円台とSTAXとしては中堅に位置するモデルで、009系やX9000と比べるとマイルドで派手さは無いかもしれませんが。私の解釈としてはスピーカーオーディオの代用としてのSTAXは本来こうあるべきだと実感できる代表作です。前作007A(007mk2)と比べて雑味や濁りが解消され、響きのダイナミクスが素直になったことで、ようやく現行STAXラインナップの一員として遜色ないレベルに引き上げられました。

STAXからはSR-009Sもマイナーチェンジがあり、SR-009Dとして他の現行STAXと同じようにケーブルが着脱交換可能になりました。音質面の変更は無いそうなので、今後当面は現役で活躍してくれると想定すると、購入を迷っていた人にとっては良い後押しになるでしょう。

DT770 PRO X・DT990 PRO X

個人的に長年愛用しているドイツのベイヤーダイナミックは、6月に中国企業に買収されたというニュースがありました。深センのCosonicというOEM家電を作っているメーカーだそうなので、ベイヤーブランドのライフスタイル機器などを出す予定なのか、今後の動向は不明ですが、現時点ではまだ目立った変化はありません。

皮肉にもベイヤーダイナミック創業100周年記念のタイミングでの買収ニュースで、その影響で日本での販売契約が終わり一時流通が止まっている時期がありました。幸い2025年8月からはプロオーディオ大手メディア・インテグレーション社が代理店を引き継ぐことになったようで入手性は改善しているようです。

ベイヤー100周年記念で2024年に出た密閉型DT770 PRO X 100th アニバーサリーモデルは昨年このブログで大絶賛しましたが、限定モデルで終えるのは実に惜しいと思っていたところ、幸い100周年のロゴが無い通常版DT770 PRO Xが発売され、おまけに開放型のDT990 PRO Xも同時に出ました。4万円台で堅牢実直な高音質プロモニターとして優秀なモデルだと思います。音楽や動画制作などじっくり集中して作業したいクリエイターにおすすめしたいです。

DT270 PRO

DJ300 PRO X

オンイヤーとアラウンドイヤー

ベイヤーダイナミックからは他にも2万円以下の密閉モニターDT270 PROというモデルも出たので、こちらも試聴してみたのですが、DT770 PRO Xと比べると明確な格差を感じたので、そこまで好みに合いませんでした。なんとなくATH-R50xに対するR30xのような物足りなさです。低音が強いのでカジュアルに打ち込みEDMとかを聴くには楽しいと思いますが中高域は粗いです。

同じシリーズでDJ300 PRO Xというのも出ており、こちらはオンイヤーとアラウンドイヤーの二種類のパッドが付属しているのがユニークです。DT270 PROが普通のフィット感なのに対して、DJ300 PRO Xは近年稀に見る強烈な側圧の強さなので、過酷な業務用としてホールド感重視の人におすすめできます。

HD550

続いてゼンハイザーは、8月頃にネット上でHD800Sの後継機HD900(?)がまもなく出るなんて噂で持ち切りでしたが、結局なにも出ませんでした。まだ開発中ということでしょう。Sonovaに買収されて業態が変わって以降、有線ハイエンドヘッドホンの行く末に不安も多いようですし、それだけ多くの人に待望されていることを実感します。

Sonova以降のゼンハイザーというと、2024年の密閉型HD620Sに続いて2025年は開放型HD550が登場、定番のHD500系の基礎設計をどんどん発展させることで、価格を抑えた定番モデルを目指している様子が伺えます。HD550は5万円程度の開放型ヘッドホンとして死角のない落ち着いた仕上がりなので、HD600系のHD660S2などシビアなモニターサウンドよりも、こちらの方が普段使いには良いかもしれません。ただしゼンハイザー特有の弱点として、プライムデーなど激安になることが結構多いため、購入のタイミングを見計らうのが難しいです。

Signature Fusion Open Back (OB)

ベイヤー、ゼンハイザーと続けばUltrasoneにも触れておきたいです。高級志向のEditionシリーズが終わり、プロモニターのSignatureシリーズに一本化された様子で、2025年は解放グリルを設けたバリエーションのSignature Fusion Open Backが出ました。

個人的に結構好きなシリーズなのですが、現時点でSignature Master、Fusion、Pure、Xと四つのグレードがあり、2026年には最上位のSignature Quantumが出る予定と、どれもデザインが似ており、初見では中身の違いがよくわからないので、今後なにか新しいシリーズを期待したいところです。

HEDDphone 2 & 2GT

ドイツといえばHEDDphoneも忘れてはいけません。スピーカー用リボンツイーターのようなドライバーをヘッドホンに応用しているユニークなメーカーで、2024年末に新たにHEDDphone 2GTというモデルが登場しました。

2020年の初代から2023年のHEDDphone 2と地道に改良を続けているようで、とくに初代のメリハリの弱い鳴り方やヘッドバンドの短さといった弱点が着々と改善され、最新機種2GTではだいぶ王道のサウンドと装着感に近づいてきました。前作HEDDphone 2と比べても左右の摺合せが向上して空間表現が改善しており、20万円台で平面型の新たな選択肢として普通に勧められるモデルに仕上がっています。

Meze 105 SILVA・105 AER

欧州メーカーではルーマニアのMezeが近年目を見張る成長を遂げています。2011年の発足以来、定番の99・109シリーズがロングセラーで売れ続けている中で、2025年は105 SILVAと105 AERという二機種が登場、どちらもほぼ同じスペックの10万円以下の開放型モデルで、ドライバーとハウジングの仕様を変えることで音作りを変えているという気合の入れようです。

私自身は黒い105 AERのサウンドの方が好みでしたが、あいかわらずMezeというブランドは高解像レファレンスというよりも特定の音色の個性を醸し出すような性格なので、楽曲ジャンルによって印象が大きく変わりますし、相性が悪いと本当に上手くいかない扱いづらさがあるので、自分が普段聴く音楽のスタイルに合わせて選ぶべきです。

Meze Poet

Mezeからは、さらに平面型のPoetという30万円台の新作も出ており、こちらもこれまでのElite、Empyrean、Liricといったモデルと比べて明確な上下関係を設けておらず、あくまでユーザーの直感に任せて好きなモデルを選ぶべきというポリシーを感じます。

Mezeの平面型モデルは指向性やスイートスポットに配慮したダイナミック型に近いコンセプトなので、一般的な平面型っぽいサウンドが苦手な人の方が気にいると思います。音色の個性は非常に強いですが、そのおかげで熱烈なファンも多いのも納得できる説得力があります。

ZMF ORI 3.0

Meze以上の個性派ヘッドホンというと、最近では米国シカゴのZMFが台頭してきたわけですが、2024年に好評を博したダイナミック型のBokehに続いて、2025年はORI 3.0という平面型モデルが出ました。

あいかわらず木工ハウジングの仕上がりは荒削りで日曜大工感がありますが、アルミフレームを軽量なマグネシウム製に換装するオプションや、高級レザーパッドの種類を豊富に用意するなど、メインストリームなピュアオーディオとは別ジャンルで一定のファン層を築いています。

Grado S950・S750

荒削りな木工といえばGradoも忘れてはなりません。2025年はメインストリームのRS・SRシリーズに変更はありませんでしたが、新たにS950・S750という上級モデルが出ました。

個人的にGradoといえばSR80やSR325など安価なわりに音が良いというのが最大の魅力だと感じているので、その点では最近の30万円付近の上級機はどうも肌に合いません。それでもGS1000xやPS2000はだいぶ良かったので、今回の新作もできればじっくり試聴してみたかったのですが、残念ながら身近で入手できませんでした。

Noire X

米国繋がりでは、Dan Clark AudioからもNoire Xという新作が出ました。定番のAeonシリーズの密閉型で、上位モデルStealthで導入されたAMTSモジュールを追加しています。

AMTSとは平面振動板の前に蜂の巣のようなプレートを挟むことで音波を整えるというアイデアで、これまでStealthやExpanseで導入された際には余計な響きが加わる感覚があって、個人的にどうしても好みに合わなかったのですが、その後のE3や今作Noire Xではそこそこ違和感が少なくなっています。

私自身2020年のAeon Noireを持っているので、Noire Xに買い替えようか迷ったのですが、値段が約20万円に上昇したので断念しました。ちなみに個人的にAeonシリーズ最大の不満点である、パッド内のスポンジが回転してしまうという問題が、Noire Xでは解消されたらしいので、そのパッドだけ買ってAeon Noireに応用できるのか興味があります。

Abyss JOAL

米国の平面型つながりで、ニューヨーク州バッファローのAbyssからJOALという新型が出ました。Dianaシリーズのシャーシデザインを簡略化して価格を抑えたモデルです。

それでも30万円くらいするので安くはありませんが、このメーカーはとんでもなく高価なことで有名で、上の写真で隣にあるDiana MRは40万円以上しますし、最上位AB1266 Phi TCに至っては100万円超です。

私の感想としてAbyssのラインナップは上位モデルに向かうにつれて音がシャープすぎて聴き疲れするので、実は一番安いDiana MRがマイルドな仕上がりで一番好きでした。今回の新型JOALもそのDiana MRによく似たリラックス系サウンドで、しかもヘッドバンドはハンモックタイプに変更されて頭頂部の痛さも改善され、だいぶ良い感じです。パッドだけはDiana MRのレザーパッドの方が音が良いと思うので、JOALとレザーパッドのセットで欲しくなります。

Auribus Sierra

最後に一点、米国カリフォルニアから珍しいヘッドホンで、Auribus Sierraというのを試聴する機会がありました。2024年末にデビューして2025年にイベントなどでちらほら見るようになった十万円台のダイナミック型ヘッドホンです。昨年紹介したKuraDa KD-Q1のような3Dプリンター製ハウジングで非常に軽量です。

この手の3Dプリンター製は少量生産の新規参入を手軽にしてくれるメリットがありますが、素材の表面質感はザラザラして安っぽいので、さきほどのZMFの木材と同様に、そのあたりのDIY手作り感を好意的に捉えるかで印象が変わってきます。サウンドはDENONっぽいマイルドな仕上がりで、軽量なハウジングと合わせて長時間のリラックスしたリスニングに向いています。

ヘッドホンというのは個人の頭形状に沿ってフィットする必要がありますし、耳や耳穴とドライバーの相対関係で聴こえ方も変わってしまいますから、将来的には、ドライバーやハウジング内部の音響技術はメーカーに任せて、イヤーパッドやヘッドバンドの形状については個人の3Dスキャンデータと3Dプリンターで製造する、カスタムIEM的なフォーマットが生まれるのかもしれません。

それともイヤホンが進化することで、耳穴内だけで圧倒的な高音質を実現する技術の方が先に到来して、そもそも大きなヘッドホンが不要になるのかもしれません。

DAP・アンプ類

スマホのストリーミングアプリが普及したことで、数年前からDAPよりもスマホとUSB DACアンプの組み合わせを好むユーザーが増えており、2025年もそれを象徴するようにポータブルDACアンプの新作が多かったです。

DAPの新作もそこそこ出ているのですが、機能や性能面では目立った変化は見られず、むしろ中堅モデルに色々とギミックが追加されることで価格上昇が目立ち、気軽に手が出しにくくなった一年でした。

最上級DAPがとても高価なのはこれまでどおりですが、中級機は10万円あたりが相場だったところ、近頃は20万円あたりに落ち着いています。本当に必要な人だけが買っているため、その要望を満たすような凝ったモデルだけが残っている様子です。

SP4000

DAPについては、まず最初にAstell&Kernに触れなければなりません。2025年はフラッグシップSP4000が登場しました。前作SP3000が2022年なので、そこそこ時間が開いており、待ち望んでいた人も多かったと思います。

あいかわらず70万円という非常に高価なモデルなので、実際に導入できる人は一握りだと思いますが、実際に音を聴いてみたところ、すでに最高峰だと確信していたSP3000と比べても明らかな進化を実感できたことに驚きました。とくにセンター音像以外の周辺音響の正確な描き方は目を見張るものがあります。

Astell&Kernが凄いのは、他社がR-2R DACや真空管モードなどのレトロな味付けで付加価値を高めようと競い合っている中で、AKは本命のフラッグシップ機はあくまで現時点での最高峰を目指して、基板レイアウトや電源回路などの基本を忠実に開発を進めており、しっかりと音質で結果を出せているのが凄いです。

そのため、他社があの手この手で個性豊かな高級機を出しても、ポータブルオーディオにおける最高峰のレファレンスとして、あいかわらずAKが君臨し続けています。

AKからはPD10というモデルも登場しました。こちらも30万円台と非常に高価なモデルで、ドックスタンドと合体することで据え置きラインソースになるというギミックが面白いです。

肝心のDAP部分は普通に良いDAPだと思うのですが、何故かドックのとの連携の事ばかりが取り上げられ、しかも直後にSP4000が登場したことで、どうにも影が薄くて不憫です。

個人的にAKの中でもACROシリーズが好きなので、このPD10もその雰囲気があって(公式ではACROシリーズとは無関係なようですが)、結構気になる存在です。

DX340

AMP17

2025年はiBassoの新作をとくに沢山見た一年でした。毎月なにか必ず新しいモデルの試聴をしていた記憶があります。

最上位DAPは30万円弱のDX340に進化、前作DX320はD/AチップにロームBD34301EKVを採用していたのに対して、今回DX340では最近のトレンドに合わせてFPGAベースのディスクリートPWM DACに路線変更しています。

個人的にiBassoを称賛したい点として、交換可能なアンプモジュールカードというのを定期的に出し続けており、最新のGaNトランジスター採用のAMP17カードもDX320・DX300と二世代前までしっかり互換性を保っているのがありがたいです。

DC04U

ちなみにDX340はステンレス製シャーシの角が素手で掴むのが怖いくらい尖っているため、私はどうも好きになれなかったのですが、新たなUSBドングルDACのDC04Uも同じ製造工程なのか非常に尖っており、しかもケースが付属していないため、こちらも購入する気が失せてしまいました。

iBassoに限らず、高級感を出すためにステンレスを選ぶのは良いのですが、手で持つポータブル機なのだから、切削加工の面取りや研磨の指定をもうちょっと手に馴染むように考えて作ってもらいたいです。

DX270 & Nunchaku

そんなわけでiBassoはステンレスよりもアルミシャーシの方が私の好みに合うようで、中堅DAPの新作DX270とUSBドングルDAC Nunchakuのどちらも良い感じで気に入りました。

とくに10万円台のDX270の方はDX340よりも一回り小さくアンプカード交換も不可ですが、独自のR-2R DACを導入しており、これが意外と良い感じで、DX340のディスクリートPWM DACよりも落ち着いたサウンドを魅力的に感じました。個人的に愛用しているHiby RS6と共通する部分があります。

Nunchakuは5万円台なのでドングルDACとしては高価な部類ですが、内部に小型真空管を搭載しているおかげで、非力で線が細くなりがちなドングルDACを温厚に仕上げてくれる良いアイデアだと思います。私はDC-Eliteよりもこちらの方が好きです。

D17 ATHERIS & PB6 MACAW

iBassoのDACアンプ新作D17 ATHERISはディスクリートR-2Rと1-bit DACを両方搭載して任意で切り替えることができて、さらにNutube真空管も搭載している贅沢なモデルで、DX340 DAPとほぼ同じ30万円弱の高級機です。たしかに凄いコンセプトなのですが、ボリュームノブ操作にクセがあったり、Nutubeをバイパスできないなど、かなり尖った個性の強いモデルなので、生粋のiBassoファンに向けたモデルという印象です。

私にとって、どちらかというとアナログポタアンPB6 MACAWが目玉商品でした。他のiBasso製品と比べてシャーシの設計と製造品質がだいぶ洗練されており、内蔵の小型真空管のON/OFFも切り替えられるなど、普段ドングルDACを使っている人なら、ここぞという時のブースターとして活躍してくれそうです。7万円という価格もリーズナブルだと思います。

K17・K15

iBassoのライバルというとFiioが思い浮かびますが、2025年は身近で新作をじっくり試聴できなかったので、残念ながら音質についてはコメントできません。

個人的に印象に残るモデルとしてはやはりK17でしょう。これはデスクトップ据え置きDACアンプとして死角が無い優れた設計で、レトロ調デザインもカッコいいので、かなり売れているようです。

これまでのFiioのゲーミングRGB LED系デザインから決別して、古典的なAV機器風デザインのおかげで、大人のオーディオファイル勢のサブ機としても好評なようです。古いシステムを使っている人にとって、最新のストリーミングDACプリとヘッドホンアンプをまとめて一台で導入できるため、ハイエンド機に行く前にひとまず現代的なシステム構成を試してみる実験台としても活躍しているようです。

WARMER R2R・S15

さらにWARMER R2R DACやS15ストリーマーといった据え置きセパレート機も投入してきたので、Fiioも本格的なオーディオラックに収める方向に転身しているようで、すでにEversoloやWIIM、Auneなどで混雑している市場でどれくらい戦えるか見ものです。オーディオ回路に関しては申し分ないと思いますが、2024年のFiio R7/R9を使ってみた限りでは、据え置き用Android OSインターフェースの完成度はまだ未熟で使いづらかった様子です。そのためK11やK17などAndroidを必要としないデスクトップ機器の方が安心して使えます。

他にはK11R2RとK17の間を新作K13R2RとK15で埋めることでラインナップが盤石になっています。一気にモデルを出しすぎている気もしますし、各モデルごとに数万円の価格差で、機能や入出力端子が結構違うので、どれを買うべきか迷っている人も多いと思います。そのため公式サイトで一覧できる比較チャートを導入してもらいたいです。(海外版サイトには一応あるのですが、ラインナップ全体を網羅していませんし穴も多いです)。

あいかわらず私自身FiioはM15SとQ15Sのサウンドで満足できているので、ポータブル周りは今後これらがアップデートされたら興味が湧きそうです。

R6PRO II 2025、W4、R3PRO II

R6PRO MAX

Hibyも面白い製品がいくつかあり、ポップなデザインのエントリー機が多かった印象です。とくにDACアンプのW4や小型DAPのR3PRO IIなど、鮮やかなプラスチックのゴロンとしたデザインが目立ちます。

私みたいなオーディオマニアは音質やスペックのためなら巨大な機器を持ち歩くのも厭わないわけですが、こういう新作を見ると、ポケットに入るサイズのシンプルなデバイスの需要は依然としてあるようです。

主力DAPでは6インチサイズのR6シリーズがアップデートされ、2024年末に登場したR6PRO MAXに続いてR6PRO II 2025と、同時進行で色々と増えすぎてそれぞれの位置関係がよくわからなくなってしまいました。

私の感覚では、2023年のR6PRO IIが若干非力だったので、それの出力アップ版としてR6PRO MAXが出たようなのですが、しかしその次のR6PRO II 2025はMAXよりも安くて同じくらい高出力、しかもそれぞれ旭化成、ESS、シーラスロジックとD/Aチップが違うため、いまいちどこへ向かっているのかわかりません。

私自身はRS6というモデルを長らく愛用しているのですが、こちらは2021年から一向に後継機が出ていないのが不思議です。上位モデルRS8の新型RS8 IIは発表されたものの、発売は2026年に延期されたようで、まだ現物を見ていません。

Cayin RU9

Cayinもあいかわらず頑張っており、こちらはFiioと比べると堅実な王道路線で、モデルごとに真空管やディスクリートDACなどあれこれサウンドの方向性を模索している様子が伺えます。

DAPではN6iiiやN7+が出ましたが、たぶん一番注目を集めたのはRU9というポータブルDACアンプだと思います。AK4493SEQにNutube搭載で8万円台という堅実な構成で、マグネット搭載でスマホの裏に貼り付けるのにちょうどよいサイズです。

USBドングルDACも便利ですが、ある程度普及したことで、RU9のようにバッテリー内蔵でパワフルな出力が得られて、USBとBluetooth受信両対応で利便性に配慮した製品の人気が出ているようです。

HA-6A MK2

Cayinといえば据え置き真空管アンプのメーカーとしての伝統はしっかり継続しており、2025年はHA-6AがMK2に更新されました。初代と比べて電源部が別筐体になり、パワー管もEL34からKT88に変更されるなど、全くの別物に進化しており、昨今のハイエンドヘッドホンのパートナーとしてふさわしい上質な鳴り方です。

あいかわらず真空管ヘッドホンアンプというと設計が杜撰なメーカーが多い中で、Cayinは古くから力を入れているだけあって、一番安心できるブランドです。値段は40万円台と決して安くはありませんが、昨今のポータブル機の値段高騰を考えると、意外とこういった据え置きアンプのほうがリーズナブルに見えてきます。

とくに最近はNutubeやJAN6418プリ管で真空管の味付けを加えているポータブル機が増えている中で、やはり据え置きでパワー管まで含めたオール真空管アンプには特別な魅力があると思います。

Chord Alto

据え置きアナログヘッドホンアンプはポータブルと比べて製品の息が長いので、そこまで目立った新作は無かったのですが、2024年末にChordからAltoというモデルが出ました。

プロ用という位置づけで、既存のQutestやDAVEなどのシャーシサイズとは異なる独立したデザインで、約90万円という非常に高価なモデルです。

一応試聴はしてみたのですが、ゲインが高すぎて扱いづらいです。一昔前と比べて最近はハイエンドやプロ用ヘッドホンも能率が高く鳴らしやすいモデルが主流になっているため、個人的にはここまで高ゲインなアンプよりも、低ノイズでIEMイヤホンなども扱える汎用性を求めたいです。

その点あいかわらずHugo 2やMojo 2はイヤホンもヘッドホンも活用できる、ちょうどいい塩梅だと思います。2025年は意外にもMojo 2のマイナーチェンジがあり、4.4mmとUSB C端子が追加されました。中身は差動アンプではないので4.4mmは利便性のみですが、2022年発売の古いモデルということで購入を迷っていた人には良い後押しになったかもしれません。同じアップデートをHugo 2にもやってほしいのですが、あえてそうしなかったということは、そろそろHugo 3が出るのでしょうか。

Luxury & Precision EA4

DAC非搭載のアナログヘッドホンアンプでは、2024年末に登場したLuxury & Precision EA4が印象的でした。

一応ポータブル機というものの、巨大なシャーシはむしろデスクトップ向きです。バッテリー駆動のおかげで電源からのアイソレーションが期待できるメリットの方が重要かもしれません。

いわゆるアナログポタアンに50万円も出せる人がどれだけいるのか不明ですが、昨年試聴したCayin C9iiもだいぶ高価で凄い高音質だったので、価格に見合う価値はあります。どちらもNutube真空管を搭載しており、Cayinの方が優雅な美音系なのに対してL&P EA4は力強い迫力と熱量が味わえます。

Questyle Sigma Pro ・ Quloos MUB5

ポータブルDACアンプの新作では、Quloos MUB5やQuestyle Sigma Proなんかがあります。ちょうど今試聴しているところなので、まだ感想は定まっていませんが、どちらもポータブルとしては大型で高価(10-20万円)でも好評なところを見ると、多くの人が自宅用途においても据え置き機よりもこういうのを求めているようです。

A100

もうちょっとコンパクトなモデルではNIPO A100というのも好評なようで、私の周りで所有している人が多かったです。

ES9039Q2M搭載のDACアンプで、5万円台という価格とシンプルなデザインが使いやすく、金属シャーシのエッチングのような表面処理や、反対側が革張りなのもユニークで高級感があります。

先ほどのCayin RU9と同じく、マグネットでスマホに貼り付けられるのも人気の秘訣のようです。最近はMagSafeという規格のおかげか各社フォームファクターに統一感が出てきました。

ちなみにNIPO A100はUSB入力のみで、Cayin RU9はBluetooth受信可と、スマホからDACに音楽を送る方法にもメーカーごとに色々と思惑があり、今後どれが定着するのか気になります。

USB-Cケーブルは安静にしておかないと通信切断しやすいですし、ポタアン側の給電設定次第でスマホの電力を消費してしまう心配もあります。一方BluetoothはaptX Losslessでも44.1kHz/16bit止まりですし、RU9など多くの場合はaptX HD/LDACなど非可逆圧縮転送に頼ることになります。

そのあたりの煩わしさから、私自身はあいかわらずDAPを使っているわけですが、2025年のDAPを振り返ってみると、やはり停滞感が拭えません。AK SP4000のように音質の進化は確かに実感できるのですが、それ以上にユーザーインターフェース周りの仕様が数年前から目立った変化がありません。

たとえばiBassoやHibyの新作DAPを試聴してみても、音は良いのですが、近頃のスマホと比べると画面解像度は粗く、アプリインターフェースのレスポンスも悪いため、2025年の最新機種を使っているという感覚が無く、買い替える意欲が薄れてしまいます。

DAPの高出力化戦争が一段落ついて、現在はディスクリートDACや真空管ギミックで戦っているわけですが、もう一度原点に戻って、ユーザーが快適に使える高速SoCや、美しい画面や再生アプリといった部分にも注目してもらいたいです。音質面では今のままで十分満足できるので、もし買い替えるなら、もうちょっと製品としての完成度を高めてもらいたいと思っている人は私以外にも多いと思います。

個人的なシステム構成

最後に、2025年末時点で私自身がメインで使っているポータブルオーディオ機器を紹介したいと思います。

普段から新製品を試聴していて、ぜひ欲しいと思ったとしても、いざ自腹で購入するとなると、そうあれこれ即決で買えるわけではありませんし、すでに愛用しているモデルから乗り換えるとなると相当な覚悟がいります。

安いものならネタとして買ってみることもありますが、数万円を超えるとなると、数カ月にわたり何度も店頭試聴を繰り返すことでようやく購入を決断するような感じです。それでも2025は例年と比べて入れ替えが多かった一年でした。

相変わらず信頼できるDT1770PRO MK2

まず個人的にもっとも稼働率が高い密閉型ヘッドホンは、2016年からベイヤーダイナミックDT1770PROを使い続けており、2024年末にはDT1770PRO MK2に移行して、そちらを日々愛用しています。

自分の好みに合ったヘッドホンに巡り会えることで、これだけ長く満足して使い続けることができるという証明になります。MK2に乗り換えたのも、劇的なアップグレードというよりは、気分的なリフレッシュと、できれば店頭で容易に手に入る現行モデルを使いたいという理由からです。

MK2へ移行して、どうしてもサウンドに納得できなければ、また別のヘッドホンに乗り換えるつもりだったのですが、密閉モニターヘッドホンは色々試した中でやっぱりベイヤーが自分の性格に合っているようです。

Austrian Audio Composer + Full Score One

じっくり精神統一して音楽を聴きたい時に使う開放型ヘッドホンは、新たにAustrian Audio The Composer & Full Score Oneアンプを導入しました。静かな環境での純粋な音質では現時点で一番気に入っているヘッドホンです。

ベイヤーと同様に、なにかあった時に修理や買い替えが難しくない現行モデルを使いたいと思っているので、これまで5年くらい使い続けてきたFostex TH909がようやく販売終了になったタイミングでThe Composerに乗り換えました。

TH909の方も後継機TH919が登場したのですが、身近でじっくり試聴する機会が無かったのと、気分転換も兼ねてThe Composerを選びました。サウンドはTH909と比べると派手さやメリハリが薄いものの、私が普段聴くクラシック音楽に合う鳴り方を気にいっています。往年のAKGの再来というタイプの高音ツヤツヤ系ではなく、モダンな高解像録音でも限界を感じさせず自然な音色を引き出せるあたり、システム全体の中でヘッドホン自体がボトルネックにならないポテンシャルを秘めています。

据え置きアンプもAustrian Audio Full Score Oneで合わせました。実は最初にこのアンプの方を気にいって単独で購入して、後日ヘッドホンを買い足したというのは珍しいケースだと思います。これまで愛用してきたViolectric V281やSPL Phonitor Xもまだオーディオラックに収めてありますが、最近はどのヘッドホンもだいぶ高能率で鳴らしやすくなってきたので、これら高出力アンプの出番も少なくなってきました。

Full Score Oneアンプはだいぶシンプルで凡庸なデザインで、中身もそんなに仰々しいものではないと思いますが、そこから出るサウンドは一級品で、ノイズと出力インピーダンスもDAP並みに低いおかげでIEMイヤホンでも活用できるあたりも重宝しています。以前ブログで紹介したとおりバランス接続だけは注意が必要なのと、リモコンボリュームでないのが不便です。

上流は相変わらずChord Qutest DACとdCS Debussy DACで満足しています。このあたりは最近あまり音質面での明確な進歩が実感できない印象です。やはり良いものは末永く使えるので長期的なコスパが良いようです。

これらのようにUSB入力でDXD・DoP-DSDに対応するDACが普及してからもうだいぶ年月が経っているので、中古のハイエンド品とかも狙い目だと思います。とくに最近はストリーミングDACに移行することで古いUSB DACを手放したユーザーが多いと思います。

トランスポートはDELA N1AやEversolo DMP-A6/A8などオーディオNASを色々と試している最中です。不思議と結構鳴り方が変わりますね。このあたりのUIの機能性や快適さはDACと比べて日々進歩しているので、オールインワンのストリーミングDACも便利ではあるものの、私としてはUSB DACとネットワークストリーマーは分けて検討した方がアップグレードのハードルが低いため気が楽です。

ただし個人的に驚いたのは、ここ数年でスピーカー用インテグレーテッドアンプの方でもストリーミングDACを内蔵したものが増えてきており、昔ほどラインソースとプリ・パワーをセパレートにして役割分担を厳密にする必要が無くなってきました。たとえば先日もHegel H600を試聴してみて、これ一台をスピーカーと有線LANに接続するだけで十分満足できるなんて、一昔前なら考えられないくらい便利な時代になったと痛感しました。インターコネクトケーブルに悩まなくて済むのも精神的に気が楽です。

願わくば、Roon以外でUPnP・DLNAでオーディオファイル向けの優れた操作アプリが欲しいです。色々試してみても、どれも似たり寄ったり、ライブラリ観覧なども一歩踏み込んだ利便性が感じられません。

その点ではLinnやEversoloなど独自アプリも開発しているメーカーの方がハードウェア制御のメリットがあると思いますが、逆にハードに囚われない汎用操作アプリもありがたいので、なにか良いものをご存知であれば教えてほしいです。

AK CA1000T

据え置きソースか、それともDAPに入れるべきか迷ったのですが、AK CA1000Tという卓上DAPもかなり重宝しています。ヘッドホンアンプとしても悪くないですが、背面のRCA/XLR端子からのライン出力が使いやすいため、出先で急遽システムを組む際のラインソースとして大活躍しています。いつかブログで紹介しようと思って忘れていたので、需要があれば書いてみたいです。

QDC Anole V14が忘れられず買いました

ポータブルシステムもかなり変化がありました。有線イヤホンは相変わらずマルチドライバーとシングルダイナミック型それぞれの良さを使い分けるような使い方をしていますが、2025年はそこに新たに平面型も加わりました。

マルチはここ数年Unique Melody MEXT・MEST IIやUE Liveなど色々使っていたところ、2023年に試聴機を借りたQDC Anole V14というモデルが個人的に強く印象に残っており、それ以来、店頭試聴を繰り返すたびに良い音だと関心して、2025年にようやく重い腰を上げて購入することにしました。以来私の本命イヤホンとして活躍してくれています。

10BA + 4ESTという、最近のハイブリッド型では珍しくダイナミックドライバー不在のモデルですが、それが逆に、一時代を築いたマルチBA型の最高峰であり終着点といった独自の魅力を放っています。BAのみなので低音は弱いですが、そのおかげでSTAXなどとも共通する線の細い広大な空間を生み出してくれる凄いイヤホンです。

Acoustune HS1900X

シングルドライバーでは、ゼンハイザーIE600からAcoustune HS1900Xに移行しました。こちらは2020年の前作HS1697Tiがすごく良かったので、新型HS1900Xは確かな音質向上を実感して即決しました。明るくも柔らかさを感じさせるサウンドは、あまりシビアにならず、どんな場面でも迷わず楽しめる万能機として重宝しています。

HS1900Xの不満点を挙げるなら、二ヶ月ほど使っているとシャーシ固定ネジが緩んで脱落しました。幸いにも、まず床にネジが落ちているのを発見して、なんだろうと思って保管していたところ、後日イヤホンのだと判明したので運が良かったです。スマホやノートパソコンのネジでよくある先端の青い緩み防止剤が使われておらず、他のネジもだいぶ緩んでいたので、この際ぜんぶロックタイト紫で締め直してみたところ、以来半年くらい緩んでいません。

Madoo Typ821

Acoustuneの兄弟ブランドMadooから2024年に出たTyp821平面型イヤホンも、何度も店頭試聴を繰り返すことで音質の凄さにますます確信が持てて、2025年にようやく購入しました。現時点で技術的に一番凄いイヤホンとして挙げたいです。

ただしこちらもHS1900Xと同じく、発売当時に買った友人はシャーシネジが緩んでドライバーから異音がするという不具合に悩まされていたので、私は購入を見送っていたのですが、以来現行品は対策されたと聞いて購入に踏み切りました(中古品を見ても「ネジ対策済」などと記載されているのを見ます)。MadooからはTyp622、Typ930と続々新作が登場して、どれも良いのですが、個人的な音質の好みではTyp821が格別です。

Madoo MDX30イヤピース

余談になりますが、Madooの別売シリコンイヤピースMDX30がTyp821購入を決断する後押しになってくれました。たかがイヤピースと思うかもしれませんが、これを装着することでフィットの安定感や音の良さが大幅に向上して決定打になったのは確かです。

イヤピースに関しては、多くの人が軽視しがちなので、この場を借りて重要性を主張したいです。たかがシリコンゴムに数千円も払うのはバカらしく思うのは当然ですが、実際に装着感や音質が大きく変わるので、私としてはケーブルのアップグレード以上に実験する価値があると思っています。

肝心なのは、自分に合うイヤピースを一つ決めるのではなく、イヤホンごとに自分の耳との相性の良いイヤピースが違うので、色々なメーカーやサイズの異なるイヤピースをたくさん持っておくと後々重宝します。高価なイヤピースは耳穴を圧迫する不快感が少ないのにピッタリとフィットして、しかも脱落しないので不思議です。やはり素材が違うのでしょうか。

Hiby RS6

AK SP3000

ポータブル再生機器では、いまだにHiby RS6を愛用していますが、そろそろ年季が入ってきて、修理に送り返す事もあったので、今回AK SP4000発売のタイミングで型落ちで安くなったAK SP3000を思い切って購入しました。ただしSP3000は重いので、普段バッグに入れて携帯するのはRS6を選ぶことが多いです。

RS6はディスクリートR-2R DAC搭載DAPの先駆者として2021年に登場したモデルですが、それから様々なメーカーからディスクリートDAC系DAPが登場しているものの、どれも満足の行くレベルで進展していないように思いますし、上級機を選ぶメリットもそこまで感じられません。ただしRS6も完璧ではなく、とくにDSDの再生には当初から不満があったので、新作イヤホンの試聴時などにはもうちょっとレファレンス的に信頼できるDAPとしてSP3000を導入しました。

SP3000は以前からイヤホンメーカーのデモやイベントブース試聴機で定番のDAPとして遭遇する機会が多かったので、個人的に買う前からだいぶ慣れ親しんだサウンドです。新型SP4000も本当に凄いのですが、やはり高価すぎますし、まだ日も浅いので、長らく信頼してきたSP3000がまだ手に入るうちに押さえておこうと思いました。

DAP以外のポータブル機器ではそこまで目立った変化はありませんでした。ドングルDAPは2024年のiBasso DC07PROが相変わらず優秀なので使い続けており、アナログポタアンも2023年に買ったAK PA10で満足できています。PA10は本当に音が良いと思うのですが、地味な存在でなかなか注目されないのが残念です。バッテリー内蔵のポータブルDACアンプはFiio Q15使っていますが、そろそろ何か新しいものを検討したい時期です。

おわりに

2025年のポータブルオーディオを振り返ってみると、意外と多くの新製品に触れてきたことに自分でも驚いています。

さらに面白いことに、ジャンルごとに偏りはあるものの、日本、中国、欧州、米国、韓国、さらにシンガポールなど、世界各国のメーカーがそれぞれ活躍している分野があり、これほど多くのメーカーが頑張っているのは素直に嬉しいです。

たとえば中国だけを取り上げても、深センの量産体制で高コスパを打ち出すメーカーもあれば、内陸の奥地で趣向を凝らした芸術品を生み出す個人経営の工房も存在します。

昔と比べて、それら全部を網羅して試聴するのは不可能ですが、逆に言うと、昔ほどグローバルな売れ筋モデルや星5レビューを気にせず、自分だけが愛用する逸品を見つける楽しさが増しています。とくにイベントの試聴ブースなどを巡回する際には、たとえ自分が知らないメーカーであっても積極的に試聴して、スタッフの話を聞いてみることを心掛けたいです。

2026年の展望としては、できればDAPやDACアンプなど再生機器側の純粋な品質と音質向上を目指してもらいたいです。

具体的には、ディスクリートDACや真空管プリなどのトレンドが一段落ついたら、次はもっと肝心な電源やアンプ回路の設計の方に力をいれた製品が見たいです。

IT系メーカーはFPGAやデジタル周りの設計は出来ても、電磁誘導や温度特性などアナログパワー系の物理現象のノウハウが弱いため、出来合いのチップアンプICをデータシート通りの実装で済ませてしまいます。逆にディスクリートで組む古風なオーディオメーカーは大昔のジェリービーン部品を使い続けて、最新のICやパッシブ部品であったり基板設計のトレンドを積極的に導入しておらず、どちらにせよ停滞気味です。

最近はGPUや車載機器などの需要から新しい高性能ICなど電子部品が続々登場しているので、これまでの固定概念を崩すような凄い次世代ヘッドホンアンプ回路設計を見たいところです。

アンプ類と比べると、イヤホンやヘッドホンはすでに十分すぎるほど充実していて、選択肢も豊富なので不満は無いのですが、できれば5-10万円くらいでもっと音楽鑑賞に特化したモデルが増えてもらいたいです。

MDR-MV1、HD490PRO、ATH-R70xなど、人気の新型も色々あるじゃないかと言われるかもしれませんが、肝心なのは、これらはジャンルとしてはプロフェッショナルモニターヘッドホンです。もちろん音楽鑑賞に使うのは間違いではないのですが、私としては、買う側の話ではなく、売る側、つまりメーカー側が、もっと純粋に音楽鑑賞に向けた有線モデルの開発に力を入れてもらいたいです。

現状をスピーカーにたとえると、中級価格帯の家庭用スピーカーが無いから、みんなジェネレックなどのスタジオモニタースピーカーを居間に置いて使っているような感じがして、どうにも違和感があります。

できればソニーやオーテクなどの大手が率先して、プロフェッショナル系とは一味違う、趣味全開の味わい深いモデルを出して、あえてそれらを選ぶメリットを大衆メディアを通して浸透させてもらいたいです。

肝心なのは、音楽よりもオーディオ機器の方に興味があるマニア向けにターゲットを絞っても、結局は小さなニッチとして高額化して先細りすることになります。それよりも純粋に音楽を聴くことが好きな人に訴求するマーケティングの方が大事だと思うのですが、そういった「音楽を聴く喜び」的な売り方は現在ワイヤレスモデルの方が強く感じられます。

もちろんワイヤレスが今後有線を超えるレベルに発展する可能性もありますが、私は今のところ有線の方にポテンシャルを感じていますし、たとえばMezeなどが人気なことからもわかるとおり、音楽ファンが有線を使いたい需要は依然強いと思うので、そのあたりの、オーディオマニア以外へ訴求できる魅力的な有線モデルが出て、世間一般で人気になってくれることを期待しています。


アマゾンアフィリンク

N/A
AZLA Trinity (USB-C)

N/A
iBasso Gelato (3.5mm)

N/A
Technics EAH-AZ100

N/A
Final UX5000

N/A
Beyerdynamic DT 770 PRO X

N/A
Audio-Technica ATH-R70xa

N/A
Fostex T60RPmk2

N/A
Cayin RU9

N/A
iBasso PB6

N/A
Acoustune RS FIVE

N/A
Eletech Baroque