Hibyの新作DAP RS8 IIを試聴したので感想を書いておきます。
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| Hiby RS8 II |
2026年3月発売で約60万円の高級ポータブルDAPです。ディスクリートDAC搭載RSシリーズの最新機として、前作RS8や私が長年愛用しているRS6と比較してみたいです。
Hiby
近頃は中華系メーカーを中心に自社製ディスクリートDACが流行っているわけですが、最初期に大々的に導入したのが2021年のHiby RS6だったと思います。そのユニークな試みに当時私も興味本位で試聴してみて、音の良さに感心して購入して以来、2026年現在までメインのDAPとして愛用しています。
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| 私のHiby RS6と新作RS8 II |
2021年当時、半導体不足や旭化成工場火災などで不安定な状況の中、根幹となるDACチップの供給が脅かさせる心配から、多くのメーカーが既製品ICチップから自社製デザインに舵を切りました。
自社製の方が優れているというものではなく、カレールウではなくスパイスから作るようなもので、コスト度外視であれこれ投入できるメリットはあるものの、手を抜けば味気ない、もしくは雑味の多いものになりがちです。
それ以前からChordやdCSを原点として、エソテリックやマランツなど高級据え置きオーディオでも自社製D/A変換回路の導入が増えてきたわけですが、それらの多くがFPGAとスイッチングエレメントを中心に置いた高速多ビットデルタシグマ方式、つまり現行の旭化成やESSなどDACチップと同じような最先端設計を模範にしているのに対して、中華系メーカーの多くはディスクリートR-2Rや1-bit PWMなど80~90年代ノスタルジーを前提にした古風なデザインが主流です。
昔の技術書を元にそこそこ容易に形にできるのと、当時と比べて表面実装ディスクリート部品(抵抗とか)の精度が飛躍的に向上していること、さらに中国を中心に多くの人が80~90年代のオーディオ黄金期の機器に触れる機会が無かったことで、R-2Rなどのキーワードが一種の神話化しているという側面もあると思います。
Hiby DAP
HibyのDAPラインナップはメインストリームなR1/R3/R6/R8のシリーズと、自社製「DARWIN」R-2R DAC搭載のRS2/RS6/RS8のシリーズに分かれおり、今回紹介するRS8 IIは2023年発売のRS8の後継機として登場しました。搭載DACも「DARWIN III」世代に進化しています。
ただし、Rシリーズの最新モデル「R8 II」のみ「DARWIN MPA」という自社製PWM デルタシグマ方式が採用されたので、ややこしくなっています。
| 初音ミクコラボのM500 |
| R6 Pro II、W4、R3 Pro II |
最近では低価格帯の「Hiby Digital」というサブブランドでM300やM500といったDAPや各種イヤホンも充実しており、日本国内に正式に入ってきていないモデルも含めるとラインナップはかなり広いです。
USBドングルDACやアナログポタアンは他社と比べるとそこまで力を入れておらず、小型真空管やオペアンプ交換のように古風なマニア向け製品も作っておらず、あくまでDAPという枠組みで面白いユーザー体験や新たなフォームファクターを提案しようとする努力が伺えます。
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| RS8 & RS8 II |
前作RS8と並べてみると、新型のRS8 IIは画面サイズや厚みは同じでも、オフセットしたシャーシでイメージチェンジを図っています。ちなみに冒頭の写真と比較してもわかるとおり、RS6とRS8はサイズが違うだけでデザインがほぼ同じなので、自分で撮った写真でもどちらだったか混乱します。
もう一つ重要な点として、RS8はチタンシャーシで584gとずっしり重かったところ、RS8 IIはアルミになり411gとだいぶ軽量化されました。ハイエンドDAPはチタンや銅などの特別な金属を使っている方が価格に説得力を出せますが、実用上は軽量なアルミの方が使いやすいです。今回使った試聴機は金色でしたが、黒も選べるそうです。
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| ボリュームノブ |
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| 裏面 |
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| パネルも良い感じです |
チタンからアルミに変わって安っぽくなったのかというと、むしろ逆に、切削加工や金色のアノダイズド処理がとても綺麗に仕上がっています。まるでSF映画のようなサイバー感と、ハイエンドDAPにふさわしい上品な質感が両立している素晴らしいデザインだと思います。
ボリュームノブやボタン類も良いですが、個人的にとくに裏面がカッコいいと思います。側面と一体型のバスタブデザインなのもコストがかかっていそうですし、無線アンテナに必要な黒いパネルも平面ではなく、シャーシの側面に合わせた形状に仕上げてあるなど、そこそこ手の混んだ作り方になっています。
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| ボタン類 |
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| SDカードスロット |
電源ボタンはボリュームノブの押し込みではなく独立して用意してあるのもHibyの特徴です。側面にトランスポートボタンと一緒に並んでいます。
SDカードスロットは蓋付きなのですが、細い棒を使わなくてよいのは助かります。ただしプラスチックなので頻繁に使うと色が剥げる心配はあります。私の職業病というか、本当に細かい点なのですが、フタにあるイラストと実際にカードを入れる向きが逆なのは気になります。
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| 底面 |
端子類がすべて下面に集約されているのもHibyらしいデザインです。端子は上か下か、Astell&KernやiBassoなどメーカーごとにポリシーが違うのも面白いです。
4.4mmと3.5mmヘッドホン出力の他に4.4mmライン出力専用端子もあります。イヤホン接続時に間違えないよう注意が必要です。
RS6やRS8では3.5mmライン出力もあって、個人的にけっこう重宝していたので、今回それが廃止されたのは残念です。ただしソフト上で3.5mmヘッドホン出力端子をライン出力に切り替えることができるので問題ありません。
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| I2S出力モード選択 |
USB Cの隣に、今回新たにI2Sデジタル出力端子が用意されています。よくあるミニHDMIケーブルを流用するタイプなのですが、入出力兼用かと思ったら出力専用だそうです。
標準規格があるわけではないので、他社との互換性のために三種類のピンアサインが用意されているのはありがたいです。
せっかく自慢のディスクリートDAC回路を搭載しているRS8 IIを単なるデジタルトランスポートとして使うのはもったいない気がするので、わざわざI2S出力端子を用意している理由がわかりません。今後なにか別の製品と連結する想定でしょうか。
I2Sでの機器間ケーブル伝送というと、PS Audioなど、SACDトランスポートをまだ作っているメーカーに限って、ディスクのDSDデータをDACまで送る方法として有効活用されていますが、そんなディスクトランスポート用途以外では、XMOSなどの非同期USBインターフェースが登場して以来なかなか見なくなりました。
わざわざ内部信号であるI2S信号バスをクロックも含めてケーブル伝送するのはジッター面で不利なので、最近の考え方である「一旦データを非同期で溜め込んでDAC機器内の高精度クロックで打ち直す」という方式と相反します。ハイエンドオーディオでもネットワークDACが主流になった現在、I2Sケーブル伝送はだいぶ廃れた印象です。
私の勝手な印象としては、むしろ低価格な中華系据え置きDAC製品にて、プロっぽさやプレミアム感を出すためにI2S端子を導入している機器が多い気がします(D/Aチップに引き込む信号線をそのまま出すだけなので実装は楽です)。昔よくあった「S/PDIFよりAES/EBUの方がプロ用だから高音質」という言説と似たような感じでしょうか。
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| レザーケース |
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| 裏面 |
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| 底面 |
付属レザーケースは高級感があります。Astell&Kernのような高級ブランドのファインレザーというよりも、もっと無骨なレザーグッズやワークブーツ系のワイルド感が、本体のサイバーなデザインとミスマッチしていて良いです。
側面ボタン部分は柔らかいスエードになっていますし、使うほどに質感に味わいが出てきそうな雰囲気のおかげで気兼ね無く扱えるのは嬉しいです。
DARWIN R2R DAC
肝心のD/A変換について、前作RS8と具体的にどこが変わったのか、公式サイトを確認してみると、中心にある「DARWIN」ディスクリートR2R回路の規模感はそこまで大きく変化していないようです。
電源回路のさらなるクリーン化や、ラダー抵抗の高速スイッチング回路の最適化など細かい点での改良が行われているようですが、そもそも今回RS8 IIの一番大きなセールスポイントとして、SoCとFPGAの高速化によって、デジタルの段階でさらに高度な演算処理が行えるようになったことが強調されています。
一般的なDACの場合、FPGAなどのDSPというのは音楽データをオーバーサンプリングしてD/A変換回路に送るだけの一方的な役割です。
そしてR-2R DACというと、ラダーを構成する個々の抵抗値や容量値のバラつきが出音に歪みを生んでしまうという致命的な弱点があり、歪みを下げるには数百個の抵抗を一つづつ測定してマッチングする(ディスクリートではなくICチップの場合は薄膜抵抗を一つづつレーザーで細かく削って微調整する)という労力が必要なため、コスト的に大量生産に見合わないため廃れたわけです。当時のR-2R DACチップの場合、量産したものを一つづつ測定して、性能が良い順にランク付けして販売するという手法が取られていました。
Hibyの考案したDARWIN R2Rでは、実装した抵抗値のバラつきによる影響をFPGAでモデリングすることで、D/A回路に送るデータを事前に補正して、R-2R特有の歪みを打ち消すというアイデアを取っているそうです。そしてFPGAの演算性能が向上することで、より正確なモデリングを導入することが可能になり、後続するD/A変換の性能を高めることができるらしいです。
このようなアイデアを、R-2R方式を追求するロマンと捉えるか、それとも回りくどい蛇足と捉えるかは人それぞれだと思いますが(だからこそ別方式のR8 IIも出しているわけですが)、なんにせよ、ハイエンドDAP相応に努力していることが伺えます。たとえるなら、蒸気機関車をデジタル制御でスムーズに動かすようなもので、そうなるとガタゴト揺れるレトロ蒸気機関車が好きなマニアへの魅力は残るのかというパラドックスです。
極論を言ってしまえば、市販の旭化成やESSのD/Aチップを搭載すれば、測定限界に迫る低歪みと低ノイズが実現できるわけですから、ディスクリートR-2Rというのは趣味性の強いロマンみたいなものです。やはりハイエンド機というのは、そのあたりも理解した上で追求するマニア心をくすぐるものであるべきなのでしょう。
ファームウェア
インターフェースについて、まず肝心な話です。今回RS8 IIを試聴した際、ファームウェアは1.5というバージョンだったのですが、これには結構致命的なバグが含まれていました。感想をほとんど書き終わった後で、対策ファームウェア1.6というのが登場したので、またやり直すことになって結構な手間になりました。
| 試聴前にひとまず更新してください |
1.5での一番目立つバグとしては、NOSを含めたデジタルフィルターのどれを選んでも実際のサウンドには一切反映しない(常にデフォルトのフィルターのまま)という不具合がありました。そういえばRS6でも初期ファームウェアでも同じトラブルがあった記憶があります。
私が使っていた個体は先行試聴機とかではなく、実際に店頭に並んでいる流通在庫です。どうせ誰も気がつかないだろうからと、未完成のまま見切り発車で発売したのかもしれません。これで「やっぱりNOSは音がいいな」なんて言っていたら滑稽です。
フィルターに関しては1.6で無事修正されたのですが、他にもDSD再生バグなど、まだまだ未完成な印象です。こちらもRS6の初期に発生して後日修正されたのと全く同じ現象なので、なんだか進歩が見られないというか、RS6の初期ファームウェアをまるまるコピペしたのかと思えるくらい未成熟な様子なので、発売初期のレビューだけに頼るのではなく、アップデートを期待して長期的に付き合う必要がありそうです。
インターフェース
RS8 IIのシステムインターフェースは5.5インチ1080×1920画面にAndroid 13 OSを搭載している、近頃のDAPとしては標準的な仕様です。
バッテリーは6000mAhですが、一般的な3.8Vではなく、並列で7.8Vを引き出しているそうです。このあたりはChord Hugoとかと同じ考え方で、昇圧する手間が省けるので瞬発力の高いクリーンな電源が望めます。
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| システム概要 |
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| Androidアプリ |
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| オーディオ設定 |
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| オーディオ設定の続き |
独自のスキンを採用しているものの、中身はAndroid 13 DAPなので、設定項目などは見慣れたものです。
ヘッドホン出力のゲイン設定は通常のHigh/Mid/Lowの他にTurbo Modeというトグルスイッチがあります。公式スペックを見ると、バッテリー再生時間はTurbo Modeオフでの数字なので、ここぞという時に使うためのものでしょう。
新たに追加されたAMP Settingsという機能は、ヘッドホンアンプ回路をクラスABからクラスAまでスライダーで調整できるそうです。Adaptiveというボタンがあり、これをオンにすると、接続されたヘッドホンのインピーダンスに応じてHibyが決めた最適値に自動的に設定されるようです。
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| 便利な操作画面 |
| 再生中の情報 |
Android DAPでは画面上端スワイプダウンのショートカットでアンプのゲインなどを切り替えるのが一般的ですが、RS8 IIではそれとは別に画面左端からのスワイプでオーディオ設定項目が集約された画面が出てきます。
ちなみにレザーケース装着時だと端からのスワイプがなかなか反応しないので、この画面を一度だけ見て以来どうやって呼び出すのかわからず、ずいぶん苦労しました。
さらにHibyプレーヤーで音楽再生している場合、トランスポート画面のサンプルレート表示をタップすると信号経路が表示され、DSPエフェクト類の状態が一覧できるのが便利です。店頭試聴機をじっくり試聴した後で、実はイコライザーがONだったと発覚するトラブルを未然に防げます。
| Darwin Controller 設定画面 |
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| フィルター類 |
Darwin Controller設定画面でオーバーサンプリングフィルターなどの変更を行います。
NOSモードだけ個別のトグルスイッチになっているので、これをONにするとフィルターの選択は無効になります。
前述のとおり、ファームウェア1.5ではNOSやデジタルフィルター変更が全く機能していなかったのですが、1.6にアップデートしたことで正しく反映されるようになりました。
44.1kHz 16bitのパルスを再生してみると、こんな感じにフィルターの種類は豊富です。
ただし、前回iBasso DX270でも指摘したとおり、フィルターごとに出力振幅(つまり音量)が変わってしまうのが厄介です。
教科書通りの単純なフィルター演算を行うと、横軸(時間方向)に分散するほど縦軸(電圧)が減ってしまうため、実用上はそれぞれの高さが一定になるようにゲイン補正を組み込むべきなのですが(ESSや旭化成などはそうしています)、iBassoやHibyはそれを行っていないので、フィルターを変更するごとに音量が変わってしまう、つまり純粋にフィルターによる音質差の評価が困難になってしまいます。
NOSの方が単純に音が大きくなることで、迫力があって音が良くなったと勘違いする心配があります。
一応Darwin DefaultなどLinear Sharp系であればNOSと振幅がほぼ変わらないので、試聴ではDarwin Defaultを使いました。
| パルス波形 |
| 発振しています |
上の例では、32Ωヘッドホン負荷を与えてアンプスライダーを動かしてみた結果で、ちょうどよい位置に合わせると黒の波形のように発振が止まりますが、運が悪いと赤線のような状態になり、さらに青線のようにパルス波形の頂点以外の部分に発振が移動する事もあります。
ADAPTIVEオンの自動設定でも必ずしも最適位置に行きませんし、クラスABやクラスA側に全振りもベストではありません。上のグラフの黒線はクラスABからちょっと上げた位置ですが、発振の具合は音量(出力電圧)、ヘッドホンのインピーダンス(負荷)、AMPスライダーの三要素が影響しあうので、目まぐるしく変化する音楽において最善の設定は定まりません。
肝心なのは、過負荷でアンプが歪んでいるというわけではなく、実用の範囲で発生している点です。上のグラフは32Ω負荷で、ボリュームを2Vppあたりに下げた状態です。アナログアンプ回路の挙動によって発生するタイプの高周波ではありませんし、デジタルフィルターやDACで発生しているようでもないので、アンプのバイアス調整ロジックが不安定なのかもしれません。
MHzなので可聴帯域外だから気にしないという考え方もある一方で、これがヘッドホン出力端子から出ているということはローパスフィルターが機能していない(もしくはローパスフィルター以降に発生している)という不安もあります。
今後アップデートで改善されるかもしれませんが、借り物の試聴機なので公式ニュースを常時監視しているわけでもなく、こうやって発売当時のレビューが残ってしまうのが厄介です。
| ちょっと古いモデルが多いです |
| 熱心な解説文があります |
| フィルターやHarmonic Controllerが変更されます |
Darwin Controller設定画面でもうひとつ、カスタムプリセットというのがあり、これを開くと多くのメーカーのイヤホン一覧が表示され、選択したモデルごとにフィルターやHarmonic ControllerといったDAC周りのパラメーターがHibyが判断した最適なものに自動で設定されます。
RS6でも実装されていた機能で、イヤホンのモデルごとに解説があったりなど、結構気合が入っているのですが、いかんせんイヤホンのモデルが全然追加されず、開発当初にプリセットとして作った古いモデルばかりなので有用性には疑問がります。
ひとつ注意点として、画面上Customized Presetsはトグルボタンなので、これをオフにすれば元の状態に戻るという動作を想定するわけですが、実はそうではなく、トグルオンするとイヤホンの選択一覧が表示されて、トグルオフしても選んだイヤホン専用のサウンド設定から以前の状態に戻りません。これはUI設計における初歩的なミスなので、できれば今後修正してもらいたいです。
Sankofa AI
RS8 IIに新たに導入されたギミックで、Sankofa AI Tonality Simulationというのがあります。これはソフト上で動作するDSPエフェクトのようなものなのですが、なんとAIを駆使して往年のMDプレーヤーなどのサウンドを忠実に再現する機能だそうです。
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| 各メーカーの許可を取っているのでしょうか・・・ |
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| 熱心な解説文もあるので、Hiby社内にマニアがいるのでしょう |
具体的には、過去の名機のサウンドをHibyがAI分析したものをDSPパラメーター化して、RS8 IIの出力に適用させるという仕組みらしいです。
たしかに近頃は中国を中心にレトロHi-Fiが流行っていますが、まさかポータブルMDプレーヤーを再現する時代になったとは隔世の感があります。当時をリアルタイムで体験した私としては、ATRACコーデックを含めてそこまで良い音だった印象は無いのですが、一定の需要があるのでしょう。
それこそレトロデザインな低価格DAPに実装するなら面白いのですが、最上級フラッグシップのRS8 IIにMDプレーヤーのエミュレーションを導入するのはミスマッチな感じもします。
それにしても、きっとHiby開発スタッフ内にマニアコレクターの人がいるのでしょう。開発のための経費という名目でコレクション増強が捗っていたら嬉しいです。
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| まだ空欄です |
ちなみにMDプレーヤーの他にオープンリールとカセットの項目もあるのですが、どちらも現時点では空欄です。Revoxやナカミチとかが加わったら、また別のマニア層が喜ぶかもしれません。
MDと違って、テープのようなアナログソースの場合は周波数特性よりも複雑なステレオクロストークや、時間軸方向のダイナミックコンプレッション成分が重要になってくるので、なかなか再現が難しくなります。
先程見たイヤホンのカスタムプリセットみたいに、結局リリース後にモデルのリストが全然増えず放置された過去があります。こういうデータベース的なギミックを導入するのなら、片手間ではなく、社内でしっかり「一ヶ月に何機種」といった明確な更新ターゲットと予算を定めて、やり尽くすまで継続的に突き詰めてもらいたいです。
出力
0dBFSの1kHzサイン波を再生しながら負荷を与えて、歪み始める(THD > 1%)最大出力電圧を確認してみました。デジタルフィルターはDarwin Defaultの状態です。
赤がバランス、青がシングルエンドで、薄い線はライン出力です。ゲインモードは破線がTurbo Modeオン、実線がTurbo Modeオフで、上から順にHigh/Mid/Lowです。
Turbo Modeだと出力が20%程度増強されます。ただ電圧上限が拡張されるのではなく、低インピーダンス側の電流供給もしっかり強化されているので、正真正銘のターボモードのようです。
公式スペックによると32Ωでバランスの最大電圧が5.08Vrmsつまり14.4Vpp、出力が812mWということで、グラフ上Turbo Modeでの数値とほぼ合っています。
ライン出力はアンプ回路を通さない高インピーダンス出力で、無負荷時バランスで3.5Vrms、シングルエンドで2.1Vrmsです。
同じテスト信号で無負荷時にボリュームを1Vppに合わせて負荷を与えたグラフです。Turbo Modeを含めてアンプの出力インピーダンスは変わらないので(グラフの線が全部重なっています)、ボリュームノブの調整範囲でゲインモードを選んで問題なさそうです。出力インピーダンスはシングルエンドが0.6、バランスが1.1Ω程度と非常に低いです。
バランス接続Turbo Modeでの最大出力電圧を他のDAPと比較してみました。このあたりが各メーカーの設計思想が強く現れる部分で、たとえばAK SP4000は高インピーダンスヘッドホンで高振幅を得られるように幅広いユースケースを想定しているのに対して、Hibyは低インピーダンスのIEMイヤホンなどでしっかりパワーが発揮できることを優先しています。iBasso DX270はそれらの中間です。Hiby DAPの中で比較しても、RS6とRS8のアンプは基礎設計がほぼ同じで、R8 IIで低インピーダンス側の電流供給が増えており、今回RS8 IIでは全体的にパワーアップを果たしているという段階的な進化が伺えます。
もちろんこういうグラフだけ見ても音質の良し悪しはわかりませんし、そもそもボリュームノブを全開に上げて、それでも音量が足りなくて困っているのでない限り、ここまでのパワーが必要なのかという議論もありますが、世代間の違いや業界のトレンドを把握するのにグラフは役立ちます。
音質とか
ハイエンドDAPということで、今回の試聴ではMadoo Typ821やDita Venturaなど優秀なイヤホンを使いました。デジタルフィルターはDARWIN Defaultで、エフェクト類は全部オフにした状態です。
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| Dita Ventura |
| Madoo Typ821 |
| Amazon |
Prosperoレーベルから新譜でMarkus Poschner指揮バーゼル交響楽団のマーラー2番を聴いてみました。
長大で荘厳な演目なので、せっかく聴くならと往年の名盤を選びがちですが、最新の録音技術やオケ技巧の進化が実感しやすい作品でもあります。とりわけPoschnerは2024年Capriccioレーベルのブルックナーが凝った解釈だったように、今回のマーラーもかなり派手で劇的な演奏です。最後の合唱にライプツィヒMDRを起用しているのも良いです。
まず第一印象から、これまでのRS6やRS8とはだいぶ違う鳴り方だと感じます。簡単に言うと、RS6とRS8が同世代の兄弟機のような関係だったのに対して、RS8 IIは明らかに次世代機として一歩先に進んだサウンドを実現しています。
Hiby RS8 IIのクラスの高級DAPというのは、こういった交響曲など巨大なスケールの楽曲において価格に見合う実力が試されると思います。
シンプルなバンド演奏なら、低価格DAPでも見通しが悪くて聴き取れないということもありませんし、録音本来の質感よりもDAPの持ち味で押し通すことも通用します。とくに中級DAPはこのあたりの味付けを上手に行うことが求められます。
一方RS8 IIくらい高価なモデルになると、ノイズや歪みなどの言い訳が許されない徹底的な完成度が求められます。これがスピーカー用アンプであれば、大きな部屋を音で満たせる大出力が高価な理由になるかもしれませんが、DAPの場合はヘッドホンの常識的な音量を超える大出力は不要なので、むしろD/A変換後のライン出力信号の純度を保ったまま(余計なノイズや歪みを加えず)ヘッドホンを鳴らせる音量まで増幅することが求められます。
肝心なのは、音楽は音量も周波数も常にダイナミックに変化しているため、一定のテスト信号での測定数値が優秀なだけではなく、実際に音楽を聴いて判断する必要があります。
話を戻して、RS8 IIでマーラー2番を聴いてみたところ、まず明らかに低音側の豊かな広がりが印象に残ります。これまでのRS6やRS8は中域重視で、音色をしっかり聴かせることに専念した仕上がりだったのに対して、RS8 IIは低域に向かうにつれてどんどん広がりが増していく三角形のプレゼンテーションです。
三角形というよりもピラミッドと言った方がよいかもしれません。低音が全体の土台のように、空間の奥行き方向にも遠くまで広がり、とくにマーラー2番のように大編成オーケストラと合唱隊に歌手ソリストという複雑な音響でも、混雑せずに大迫力を築き上げてくれます。RS6やRS8からの違いが明らかに実感できるので、後継機として進化を遂げているという十分な説得力があります。
中高域に視点を移すと、こちらはRS6ゆずりの太い鳴り方を継承しているようです。このあたりがDARWIN DACの魅力なのでしょう。真空管などの美音効果とは一味違う力強い表現は、メロディや歌詞といったコアな部分を聴き取りやすく、表現の起伏やニュアンスをわかりやすく届けてくれるため、音響効果よりも音楽を主体に聴いている実感が湧いてきます。他のDAPだと金管の刺激が強すぎるとか、男性歌唱が奥まって聴き取りづらいといった不満があるならRS8 IIを試してみる価値があります。
同じく高級DAPでも、たとえば同時期に発売したCayin N8iiiの方が美音の極地みたいな綺麗な音色を描いてくれるので、やはりこれくらい高価なDAPになってくると、単純な上下関係ではない、各メーカーごとの方針や方向性が極端に強調されるようです。
N8iiiのようなタイプのDAPの方が、音色にツヤが乗って、まるで歌手が上手くなって楽器のグレードが上がるような、うっとりする美音効果が得られるのですが、RS8 IIはもっと真面目で、演奏者本来の音色が力強く前に出てくるような描き方です。
前作Hiby RS8との比較となると、どちらもRS6からの発展という視点で見たほうがわかりやすいです。
まず前提として、私がRS6を長年愛用している理由として、歌手や生楽器にしっかりとした芯が通っており、ポータブル用途で外部騒音の上からでも明瞭なサウンドを届けてくれるあたりに魅力を感じています。ジャズやクラシックをよく聴くため、たとえサックス一本でも、演奏者の表現の幅やニュアンスが伝わるのが大事です。もっと複雑な立体音響効果を活用した打ち込みのサウンドトラックとかをメインで聴く人には向いていないかもしれません。
そんなRS6の上位機種としてRS8が登場したわけですが、私の感想としては、RS6の芯の太さや力強さといった部分がさらに強調され、ちょっと押しが強いサウンドだと思いました。なんとなくRS6の回路を二倍に増やしたパワーアップ版といったイメージがあり、RS6よりもっと色の濃さや勢いを求めたいのなら良いのですが、私の場合はRS6くらいでちょうど良いです。
RS8 IIはそんなRS8の延長線上というよりも、RS6から別方向に進化したような印象です。RS6以上に濃さや勢いが増強されるのではなく、音色のコアはそのままで、RS6に不足していた低音の広がりが加わることで、高級機らしい堂々とした落ち着きや余裕が増したようなサウンドです。たとえるなら同じシリーズのブックシェルフスピーカーからウーファーを増やしたフロアスピーカーにアップグレードした感じです。同じ例えでいうと、前作RS8は大きすぎるスピーカーを間近に設置してしまった時のような押しの強さがありました。
そのため、RS8の色濃い鳴り方が好きな人には、RS8 IIはちょっとリラックスしすぎて肩透かしをくらうかもしれませんし、逆にRS6が好きで、そこからの発展形に進みたい人にはRS8 IIとの相性が良さそうです。
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| AK SP3000と比較 |
私にとってのハイエンドDAPというとAK SP3000のサウンドが頭に定着しており、交互に聴き比べてみたところ、やはり表現手法がだいぶ違います。イヤホンはQDC V14で、AlphaレーベルでKossenko指揮リュリのアティスを試聴に使ってみました。
まず音源の解像力についてはSP3000の方が圧倒的に優れています。これは当然想定していたのですが、ここまで差があることに驚きます。SP3000は空気感やディテール描画に特化しすぎて線が細すぎるという不評もあるのは、確かにRS8 IIと比べてみると納得できます。声や楽器の音色の太さがSP3000の数倍はあり、暖かみや豊かさを引き出してくれます。
試聴に使ったバロックオペラのようなジャンルでは、私ならSP3000とQDC V14イヤホンの組み合わせが理想的で、SP3000の空間の透明感や精密さにV14の輝かしい艶がアクセントになって、軽やかな空気の流れを見事に描き出してくれます。一方RS8 IIはオケや歌手が太く主張して聴き取りやすいのですが、低音のフワフワした臨場感の前で歌手陣が一人づつ交代で前に出てくるような単調なフォーマットで、あまりストーリーのドラマ性に貢献しません。学芸会といったら言い過ぎかもしれませんが、オペラファンには、実際の歌劇とコンサートパフォーマンスの違いといったら伝わるでしょうか。
ちなみにRS8 IIにはQDC V14用のカスタムプロファイルがあるので、ためしにそれをオンにしてみたところ、確かに鳴り方は変わるようなのですが、なんとなく音色が硬質になる感じがして、そこまで積極的に使う気になりません。私は標準設定の方が好みに合います。
冒頭でピラミッド的といったRS8 IIの低域側の広がりは、安定感や余裕が感じられる一方で、SP3000と比べるとフォーカスの甘さが気になります。SP3000ではステージ上のコンパクトな音像からコンサートホール空間に音が広がっていくリアルな風景が想像できるのに対して、RS8 IIでは楽器そのものが前後左右に引き伸ばされたような緩い広がり方です。
つまり実際に録音された空間を再現するのはSP3000の方が得意で、RS8 IIは低域以外の全体的な雰囲気も含めて、まるでリビングのスピーカーで再生した時の広がり方に近いような気がします。
SP3000は歌手や楽器だけに主導権を渡さず、それらの相対距離や周囲の空間の広さといった音響全体の余白を上手く表現してくれます。優秀録音では素晴らしい空間音響体験が引き出せるのですが、逆にミックスが下手な録音だと(木管だけオンマイクでインサートされているとか)、そのすり合わせの悪さが目立って満足に楽しめません。このあたりがレファレンスと呼ばれる所以です。
一方RS8 IIは録音された空間ではなく、RS8 IIが再解釈したリスニング空間という印象が強く、背景の響きから主要な歌手や楽器が前に飛び出してくるあたりがスピーカー的です。
このあたりはRS6と同じですし、前回のiBasso DX270でも似たような感覚があったので、ディスクリートR-2R系DAPに共通する特性なのかもしれません。
スピーカーといっても専用のリスニングルームを入念に作り込んだようなハイエンドな世界であれば、SP3000のような録音空間の再現が実現可能です。ここでいうスピーカーというのは、一般家庭での折衷案でリビングのテレビ両脇に壁ギリギリで配置したスピーカーのような感覚です。ここで先程言ったようにRS6はブックシェルフでRS8 IIはフロアスピーカーという話に繋がります。
| 静かな場面 |
RS8 IIで一部のDSD128・DSD256のアルバム(Challenge RecordsやChannel Classicsなど)を聴くと、曲間などの静かな場面でキュルキュルとけっこう目立つノイズが聴き取れます。もちろん同じアルバムをSP3000などで聴くとノイズは存在しません。自宅のChordやdCS DACも同様に問題ありません。
上のDAW画面は曲中静かな2秒間を切り出したものですが、上段は元の音源データで、スペクトルがランダムなホワイトノイズに徹しているのに、下段のRS8 IIで再生したものはスペクトルに明確なトーンが上下していて、これがキュルキュルと聴こえるわけです。
以前RS6でも全く同じノイズが確認されたので、たぶんDARWIN DACにおけるDSDデータの扱いに問題があるのが変わっていないのでしょう。具体的にはDSDデータの先読みによる波形構築のバッファーを十分に行っていないせいで、無音に近い微小信号で収束せずバタバタと振れてしまっているような感覚です。
RS6では後日ファームウェアアップデートで対策されたものの、今度は音楽全体でノイズが過剰にカットされたような息苦しい鳴り方になってしまい、総じてDSD再生が不得意なDAPという印象は未だに変わっていません。もちろん普段使いではPCMの方が圧倒的に多いので、そちらの音の良さに免じてDSDは我慢して使っています。
さすがにRS8 IIではDSD再生もマシになっただろうと期待して試してみたところ、RS6と全く同じノイズが聴こえてきたのは残念です。
| こういう組み合わせに強いです |
| Amazon |
レファレンスDAPという視点ではAK SP3000の方が自分の好みに合うのですが、だからといってRS8 IIが劣るというわけではなく、全く別の方向性でかなり有意義な使い道があります。
Origin Recordsの新譜Barry Greene 「Giants」はグルーヴ感が強く耳馴染みの良いジャズで、リーダーのギターを中心に、リズムセクションにピアノトリオとハモンドオルガンが曲ごとに入れ替わるのが見どころです。
RS8 IIくらい大きなDAPの場合、ポータブルなイヤホンユーザーだけでなく、自宅のヘッドホンリスニング専用で使っている人も案外多いと思います。たとえば、こういった雰囲気のある音楽をオーテクのウッド系ヘッドホンで鳴らす組み合わせでRS8 IIが大活躍してくれます。
一曲目「Backtrack」はオルガンベースなのですが、セッションの録音方法がだいぶダイレクトで、スピーカーではなくヘッドホンで聴くと低音が喉元に突き刺さるような圧迫感が気になります。そこでRS8 IIを通して聴くことで、RS8 II特有の緩い低音の広がりのおかげで圧迫感が緩和されて、演奏全体を包みこむムードやグルーヴみたいなものに変化します。
ギターやドラムが単なる機械的なリズムではなく、ベースによって生み出された波に乗って、一つの共同体として進行していく、これこそがまさにグルーヴ感そのものという感覚を見事に再現してくれます。
これは私がHiby RS6を好んで使っている理由とも共通しており、それをさらに一歩先へと進めた体験です。
オーテクやフォステクスのウッドハウジング系や、近頃はZMFやMezeなど木材を前面に押し出すヘッドホンメーカーが増えているわけですが、これらは木材特有の美しい響きがセールスポイントになっているため、DAP側でさらに響きの演出を被せるのは好ましくありません。
シャープで味気ないIEMイヤホンで色気を出すのに真空管プリとかが有用なのに対して、すでに響きが美しいヘッドホンの場合、RS8 IIのような太く真面目な鳴り方のほうが相性が良いです。緩さはあるものの音色自体はしっかり芯が通ってソフトにならない、見事なバランス感覚だと思います。
クラシックの演奏を微動だにせず精神統一して聴くよりも、個性豊かなヘッドホンでグルーヴやスゥイング感のリズムに乗って音楽を楽しみたい人には最適なDAPです。
おわりに
Hiby RS8 IIは前作RS8のマイナーチェンジではなく、サウンドの表現が大幅に進化した次世代機という印象を受けました。
RS8のファンは意表を突かれるかと思いますが、私はRS8よりも断然RS8 IIの方が好きです。自社製DARWIN III DACのメリットは確かに実感できるので、各社ハイエンドDAPを色々と経験済みの人でも、RS8 IIにはなにか特別な輝くものを感じるかもしれません。
前回紹介したiBasso DX270のような中級DAPは(それでも20万円しますが・・・)スマホ+ドングルDACからのアップグレードも想定した、ポータブル用途で使いやすい耳馴染みの良い新鮮なサウンドが求められるわけですが、頂点を競う価格帯になると、各メーカーごとに独創性を強調しており、その点においてRS8 IIは唯一無二のサウンドを提供できています。
最近の高級DAPトレンドを見ても、必ずしもハイスペックなレファレンス性能が求められているわけではなく、DAPの世界にのめり込むような人は、もっと感性を重視した選び方であることが伺えます。
結局は予算内で何を求めているのかという話になるのですが、私の場合、普段使いのDAPはもうちょっと安いモデルで満足できており、さすがにRS8 IIは高すぎて視野に入らないため、そろそろ最新技術を反映させたRS6の後継機を(手が届く価格で)期待したいです。
もうひとつRS8 IIの目玉としてDSPの進化が挙げられます。ここ数年は中華系メーカーの多くがDSPに注力しており、その中でもHibyは積極的に取り組んでいる方だと思いますが、これが束の間のトレンドにすぎないのか、それとも今後ますますポータブルオーディオの発展に必要不可欠な要素になるのか、まさに過渡期にあると思います。
ずいぶん前にソニーがウォークマンでLPレコードっぽいサウンドに変化させる「バイナルプロセッサー」を導入しましたが(やはりソニーは先見の明がありますね)、RS8 IIではMDプレーヤーのエミュレートを組み込むなど、やはりビンテージサウンドに興味がある人が多いことは確かなようです。(この次はWinamp風スキンにして128kbps MP3とかOGG Vorbisをエミュレートした方がノスタルジーを感じる人が多いかもしれません)。
今回Hiby R8 IIの全体的なコンセプトとして、Sankofa AI、NOSモード、R-2R DACといった懐古主義で固めてきているのは、最新スペックの高性能DAPというだけでは凡庸すぎて見向きもされない市場の現状を表しているように感じます。
それでいて、高価なハイエンドDAPということは一定以上の高性能も披露しないといけないという難しさがあり、かなり回りくどいコンセプトになっている印象を受けます。
たとえばNOSモードはそのあたりを象徴している好例です。まず前提として、デジタル最初期80年代のアルバムは、近代的なオーバーサンプリングDACで聴くよりも、当時と同じNOS DACで聴いたほうがレコーディングエンジニアが本来意図したサウンドが体験できるという通説があります。
ただしここで忘れられがちなのは、当時のDAC(CDプレーヤーなど)は再生データの上限が44.1/48kHz 16bitと決まっていたので、ローパスフィルターやバッファーアンプ回路もそれに合わせてかなり緩く厚くロールオフして仕上げていたので、NOSはリンギングが無いから云々といったセオリーと、実際の当時の肌感覚はだいぶ乖離しています。
RS8 IIを含む最新DAPは384KHz・24bitなどハイレゾ信号まで対応しないといけないため、80年代のCDプレーヤーのような高周波を丸め込むアナログフィルター回路を導入できず(だからNOSだと16bitの階段波形がクッキリと見えてしまうわけで)、そうなると当時のようなサウンドは再現できず、ならばDSPでレトロ機器をエミュレーションするという、とんでもなく回りくどい事が行われている印象を受けます。
もちろん真空管プリを通すなどでアンプ回路をレトロ風に作り変えるよりも、DSPで手軽に切り替える便利さはありますが、高級DAPの使い方としては微妙なところです。NOSの話は一旦置いておいて、ディスクリートR-2R抵抗の不均一をDSPで補正する手法を導入するのならば、そもそも補正が不要な高性能D/Aチップを搭載したほうが話が早いのではという気もしてきます。
ようするに、開発や設計の労力から高価格になるのは理解できたとしても、どの部分に付加価値を見出すかが重要になってきます。結局は音の鳴り方に満足できるかといった話に集約されるので、R8 IIのような高級DAPというのは、実際に聴いてみて惚れ込んでしまった人のみが手を出すべき魔境であることは確かです。
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