2026年9月14日月曜日

Cayin CP6 CDプレーヤーの試聴レビュー

Cayinの新作CDプレーヤーCP6を使ってみたので感想を書いておきます。近頃は中国を中心にこういったCDプレーヤーがブームのようで、色々なメーカーから出ている中の一つです。

Cayin CP6

今作CP6はUSD$700のバッテリー駆動ポータブル機で、真空管ヘッドホンアンプを搭載しておりUSB DACアンプとしても使えます。

CP6

Cayinといえば中華系メーカーの中でもヘッドホンブーム以前から据え置きCDプレーヤーを作っていた老舗メーカーなので、今作CP6についても期待が持てそうです。

それにしても、オーディオ業界は数年前まではLPレコード、それからカセットテープ風デザインがブームだと思ったら、もうCDのリバイバルというトレンド消費の速さに圧倒されてしまいます。すでにMoondrop、Fiio、Shanlingなど多くの中華系メーカーが似たようなポータブルCDプレーヤーを発売しており、よくここまで横並びに急ピッチで開発製造するスタミナがあるなと感心します。

今作Cayin CP6はその中でも後発の部類になると思いますが、Cayinらしく単なるトレンドガジェットに留まらずオーディオ回路にも力を入れており、D/A変換にはシーラスロジックの最新チップCS4308Pを二枚搭載、プリ回路にJAN6418真空管、そしてヘッドホンアンプ回路はバランス接続と外部給電で1300mWの高出力という仕様です。

さらにXMOS USB接続とQualcomm QCC3083チップの双方向Bluetooth接続対応、バッテリーはUSB PD/QC充電対応で7.5時間再生と、CDプレーヤー部分を無視して最先端ポータブルDACアンプとしても優秀で、そう考えるとUSD$700という価格もそこそこお買い得に思えてきます。

再生中のディスクが見えます

裏面のゴム足もしっかりしています

重厚でしっかり作られており、720gなのでポータブルというにはちょっと重いのですが、むしろ据え置きで使うならこれくらい安定感があるデザインの方が安心できます。全盛期のCDウォークマンと比べれば、ポータブルと主張するのは苦しい大きさですが(薄型レーザーメカがもう手に入らないという事情もあると思いますが)、ポータブルとミニコンポの中間くらいの独自のフォームファクターは悪くないと思います。

トランスポートボタンは上面にあります

真空管が見える窓

スモーククリアのディスク窓や、天板に集約された操作ボタン類とボリュームエンコーダーなど、全体的に落ち着いた統一感があり、子供っぽいガジェット感が無いのが良いです。

肝心の真空管も過度に主張することなく、グリルからオレンジの発光が若干見えるのがカッコよく、これなら本格派オーディオルームに置いてあっても恥ずかしくありません。

画面は情報が多いです

ヘッドホン端子

前面に電源ボタンと画面、そして3.5mmと4.4mmヘッドホン出力端子があります。画面は文字が大きく情報量も多いので使いやすいのですが、卓上で手元に置いて使う場合は見にくい位置にあります。

トレイのレバー

しっかりしたヒンジ

背面の端子類

側面の物理スイッチでCDトレイのフタが開くようになっています。ヒンジの剛性も高そうで安心できます。ちなみに反対側には同じような形状のホールドスイッチがあります。

背面のUSB-C端子は充電用とDAC用に分かれており、3.5mm・4.4mmライン出力と3.5mmの光・同軸兼用出力があります。DC/BATTというスイッチもあり、給電時にはヘッドホンアンプが1300mWにパワーアップするそうです。

個人的な不満点をひとつ挙げるとするなら、ライン出力用にRCA端子が無いのは残念です。3.5mmでも実用上問題ありませんが、システムに組み込むとなるとチープな感じがします。

ケース

バスタブ構造です

裏面のマグネット

派手な空色のレザーケースはオプションだそうです。左右にベルトフックもありますが、さすがにこれを肩に下げて歩きながら音楽を聴いていたら注目を集めそうです。

レザーケースのフタはマグネットになっており、ボタン類にもアクセスしやすいので、卓上で使う場合もケースは付けたままでも違和感ありません。

最近よく見るメカ

CP6が採用しているメカはアリエクとかで同じ光学系やスピンドルモーターを様々なブランド名で見かけるので、実際どんな工場で作っているのか不明ですが、大昔のソニー・サンヨー方式の発展形で、普通に問題なく動くレベルのものです。

CP6はバッテリー搭載のポータブル機ということですが、昔のCDウォークマンみたいに倍速読み込みで先読みしてアンチショックメモリーに溜め込むといった処理ではなく、等速でバッファーメモリーもそこまで大きくありません。筐体やメカ自体は安定しているので、ちょっと手で持って揺らすくらいなら音飛びする心配はありませんが、叩くくらいの衝撃を与えると音が飛ぶので、バッグに入れて歩きながら聴くには向いてなさそうです。カフェに持参して意識高いアピールするくらいでしょうか。

ところで率直な疑問なのですが、昨今のCDプレーヤーリバイバルは一体どのあたりの層に刺さっているのでしょうか。アナログレコードであれば、大きなジャケットアートワークの魅力もあり、アーティスト側が率先して新譜のレコード盤をリリースしており、ファンが限定アルバムをゲットするという需要供給サイクルがありますが、CDにそこまでの市場があるという話は聞きません。

一つ考えられるのは、ライブ物販の手売りやBandcampサポーターにCDは今でも好評なようです。私の友人のメタル愛好家もあいかわらずインディーズなバンドCDを買い漁っているので、そういう人へのプレゼントに良いかもしれません。もしくはレコード価格が高騰しているので、まだ捨て値で手に入る中古CDの収集に移っている人もいるのかもしれません。

また、年配の方で、膨大なCDコレクションをリッピングする気も起きず、サブスクストリーミングをいまさら覚える気にもならず、大規模なオーディオシステムの電源を立ち上げる機会も減ってしまったという人にも、CDラックから一枚選んですぐに聴くことができるCP6は重宝しそうです。

一番謎なのは、CayinやFiio、Moondropなどのコア客層である中国のポータブルオーディオユーザーです。そういう若者はそもそもCDが身近にあった世代ではなさそうです。そんな人達がCDプレーヤーを買ったとして一体何を聴くのでしょう。本当に不思議です。

JVC K2 XRCDはCD末期まで頑張ってました

私はCD世代の人間ですが、さすがに今となってはタワー限定SACD以外でCDを買う機会はほぼ無くなりました。今回押入れの段ボールを開けて昔のCDコレクションを出しましたが、個人的にCD音源の可能性に最後まで挑戦しつづけたJVC XRCDシリーズに敬意を払いたいです。香港とかのマニアにも馴染み深いシリーズだと思いますが、やはり今手にとっても風格があります。ちなみにCDの生みの親ソニーとフィリップスはSACDに移行したので意外とCD末期の愛は薄いです。

デジパック以外はスリーブで保管しています

ちなみに生粋のCDコレクターに非難されそうですが、私はデジパック以外の透明ジュエルケースは全部捨ててスリーブに入れて保管しています。

大きな書斎の据え付けラックにズラッと陳列するという夢を捨てて、スリーブに入れれば厚さが1/3程度になるのでだいぶ段ボール収納が楽になります。この手のスリーブは劣化してCDをダメにするという不安もありますが、今のところ十年くらい問題ありません。

不満や不具合など

今回CP6を実際に使ってみて、細かな不満もいくつかありました。今後ファームウェアアップデートで対策されるのかもしれませんが、Cayinに限らず中華系メーカーはソフトの作り込みの甘さで第一印象を悪くしていると思うので、もっと入念にテストしてほしいです。

インターフェースは充実しているのですが

一番困ったのは、どういった条件で発生するのか不明ですが、上の画像の左上のように一曲リピート再生モードのはずなのに次の曲に進行してしまうというトラブルが何度か発生しました。

たとえば測定時にテスト信号のトラックをリピート再生したいのに、勝手に次の曲に行ってしまうことがあり、手動で戻すのが面倒でした。(ちなみに再生ボタンを長押しすることでリピート再生モードになります)。

読み込みなどで時間がかかります

もう一点厄介だったのは、これはバグというよりシステムの仕様だと思うのですが、CDトランスポートボタンがロジック上の優先順位が低いようで、システムがバックグラウンドでなにか処理を行っているせいで、停止を押しても音楽が止まらないとか、曲戻し・曲送り動作がテキパキ行えないことにイライラさせられました。

これはとくに昔のCDプレーヤーを使い慣れている人ほど戸惑うと思います。本来であればトランスポートボタン、とくに再生停止ボタンは全てに優先して確実に動作すべきなのですが、たとえば設定変更など行った際など、ちょっと待たないとボタンが反応しなかったり、音楽を止めることができず電源を落として強制終了することが何度もありました。

また、CDプレーヤーに慣れている人は、ディスクを入れてすぐに曲送りをカチカチと押して任意のトラック番号で再生するといった一連の動作が指に染み付いていると思いますが、CP6だとCDを入れてから待機完了状態になるまで操作できず、回数分のボタン連打に反応したりしなかったりと、昔のCDプレーヤーのような先行入力のブラインド操作ができません。本来であればCDトランスポート制御専用のマイコンICで瞬発的に動作すべきところ、なにか汎用OSでDAPの機能のようにソフト処理している感覚があり、ユーザーエクスペリエンスを悪くしています。できればCDプレーヤー部分の反応を優先してレスポンスを上げてもらいたいです。

SMSL PL200 MK2

余談になりますが、同じく中国からSMSL PL200 MK2というCDプレーヤーも手近にあったので、ちょっと比べてみようと思います。

今回あくまでCayin CP6がメインなので、サイズ感などを比較するのみに留めますが、中国でCDプレーヤーが流行っているというのは事実のようで、ほぼ全てのメーカーが似たようなモデルを一斉に出しています。

SMSL PL200 MKII

H200とのスタック

ご覧のとおり、SMSL PL200 MK2はコンセント電源(バッテリー非搭載)の据え置きモデルなので、Cayin CP6よりも一回り大きいです。

一応ヘッドホン出力端子はあるものの、H200というヘッドホンアンプとセットで使うことを想定して簡素に留めています。Cayinのような真空管ギミックはありませんし、4.4mm出力端子もホットのみのシングルエンド接続のようです(背面のバランスライン出力はバランスで出ています)。

カッコいいボタン

マグネットパック

メカ

背面

SMSL PL200 MK2の特徴としては、トランスポートボタンがピアノ鍵盤みたいにストロークが長くて、押す満足感があります。液晶画面も綺麗ですし設定メニューも豊富なのですが、リピートやランダム再生は付属リモコン必須のようです。

レーザーメカはCayinとは見た目が違いますが、同じく等速動作で、スピンアップやシーク速度もCayinと同じくらいです。どちらもメカ周りの黒い部品が本体シャーシと一体で固定されているため、シャーシを叩くと音飛びします。

PL200 MK2はディスク固定用にマグネットパックの上にアクリル蓋という二段構えで、マランツCD23を思い出します。ディスク交換のたびに手動でそれを行うのはレコードプレーヤーみたいな儀式感があって最初は良いのですが、慣れてくると面倒になります。Naimとかと同じで、マグネットパックを紛失すると一巻の終わりなので要注意です。

据え置き機器だけあって、背面端子類はCayin CP6と比べて充実しています。電源内蔵でIECコンセント接続なのは嬉しいですね。アナログ出力とS/PDIF出力の他にはBluetoothアンテナ(黒いノブみたいなのはカバーです)、USB DACとして使うためのUSB-C、そして外部クロック入力用のBNCがあります。このクロック入力は設定で50/75Ω切り替えができて、ワードと10MHzの両対応なので、そういうのが好きな人には嬉しい機能です。

CDとUSB DAC

Cayin CP6に話を戻しますが、今回はCDプレーヤーということで、いつもテストに使っている波形WAVデータをCDに焼くことになり、家電店に行ったら空のCD-Rがまだ売っていたことに驚きました。最後にCDを焼いたのはいつだったか忘れましたが、今あらためてやってみると、外付けCDドライブやライターソフトを探したりする中で懐かしい記憶が蘇ってきました。

久しぶりにCD-Rを焼きました

私くらいの世代の人だと「太陽誘電は音が良い」とか「Princoは直射日光でデータが消える」なんて当時のエピソードを思い出すかもしれません。ImgburnとかファイナライズとかDisc-At-Onceとか懐かしいキーワードも、今となっては全く役に立たない情報です。CDに十字に傷を付けるとかエッジをトリミングするとか緑の油性マーカーで塗ると音が良くなるなんて怪しいテクニックもありました。

昔話はさておき、久々に焼いたCDは無事CP6で再生できたものの、やはり安価なCD-Rは軸の精度が甘く、回転がブレブレで、レーザーのサーボがだいぶ苦労してそうです。JVC XRCDとかの高価なプレスCDは回転しているのかわからないくらいスムーズに回ってくれるので、窓から見ていて気持ちが良いです。

CP6

J-Test波形をFFTで9~13kHzリニア表示したものです。、上は波形をCD-Rに焼いて再生して、下は同じ波形をUSB DACモードで再生したものです。

手近にあったRMEオーディオインターフェースで確認したのみなので、縦軸を校正していない感覚的なデータですが、USB DACモードの方が細かい周期的なピークが多いです。どちらも問題になるようなサイドバンドも発生しておらず良好です。ちなみにUSB給電とバッテリー駆動で明確な差はありませんでした。

私の当初の予想では、USB DACの方を主体に作ってCDプレーヤー部分は安価なCDドライブにS/PDIFとかでDAC基板に送っているのかと思っていたのですが、実際はむしろ逆にCD再生の方がここまでクリーンなことに驚きました。

PL200 MK2

参考までに、同じJ-Test波形を先ほどのSMSL PL200 MK2で再生するとこんな感じです。上のCD再生の方が下のUSB DACと比べて綺麗なのはCP6と同じですが、サイドローブの広がりはSMSLの方がだいぶ大きいですね。クロックかサーボの影響でしょうか。外部クロックを使うと音が良くなるのを意図しているのかもしれません。


CP6に戻って、いつもどおり0dBFSの1kHzサイン波を再生しながら負荷を与えて歪みはじめる(THD > 1%)最大出力電圧を測ってみました。

赤線がバランス、青線がシングルエンド接続で、それぞれハイ・ローゲインが選べます。外部電源で給電すると破線のハイパワーモードになり、さらに背面のライン出力は薄い線で表しています。

ハイパワーモードについてはいまいち挙動がよくわかりません。USB PDでしっかり9Vを給電している事を確認して、背面のBATT/DCスイッチを切り替えたり、メニュー画面でゲイン設定を切り替えたりと色々試しても、グラフの破線になる時とそうならない時があり、いまいち条件が把握できませんでした。再起動とかが絡んでくるのでしょうか。

それ以外は比較的シンプルで、CDとUSBで同じテスト音源を再生すると同じ出力電圧になりますし、設定メニューのクラスA/ABや真空管のON/OFFはどちらもプリアンプ回路に影響するため、ゲインに僅かな差はあるものの、肝心のヘッドホンアンプ部分の出力特性には大きく影響しません。

同じテスト音源で無負荷時1Vppにボリュームを下げてから負荷を与えたグラフになります。こちらもバランスとシングルエンドで僅かな差があるものの、外部給電モードを含めて他の設定はアンプの出力インピーダンス特性に影響を与えないようです。

バランス接続の最大ゲインモードのみで、Cayinの他のDAPやアンプなどと比較してみました。

やはり最上級アナログポタアンC9iiは圧倒的な高電圧で、低インピーダンスの負荷までしっかり高出力を発揮しており、それ以外のモデルはだいたい同じような出力特性のようです。電源の余裕の差か、N3Uのみ上限が低いですが、CP6やRU9でもN8iii ハイエンドDAPと遜色ないパワーが得られるのは安心感があります。

音質

CP6をCDプレーヤーとして使う場合は当然ながら44.1kHz 16bit音源に限定されます。USB接続モードであればハイレゾPCMやDSDにも対応していますが、せっかくなので同じアルバムをCDとリッピングFLACのUSB接続で聴き比べてみました。

イヤホンは普段から聴き慣れているMadoo Typ821を使います。

Madoo Typ821

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最後にCDで音楽を買ったのはだいぶ前なので、ちょっと古いアルバムになりますが、高音質で真っ先に思い浮かぶHyperionレーベルからStephen Houghのグリーグとリストピアノ協奏曲を聴いてみました。Litton指揮ベルゲンフィルといえばグリーグホール録音環境の音の良さは保証済みです。


同じ音源をCDとUSB DACで聴き比べてみると、聴こえ方が明らかに違います。まず真空管をオフにして、ソリッドステートのクラスABモードで聴いてみたのですが、CDの方がスムーズに流れるようなサウンド、USB DACは刺激が強くギラギラした感じが強いです。

音量や周波数バランスといった基本的な部分はほぼ変わらないので、あくまで音色の好みで評価が分かれるところですが、ここまで違うとなるとCP6であえてCDを再生するメリットがあるように思えてきます。

CDとUSBのどちらも共通するCP6の特徴として、高音は比較的鮮やか、明るめで退屈にならないよう仕上げてあり、BGM用というよりも音楽に集中して楽しめるようなサウンドです。一昔前のミニコンポなど味気ないライフスタイル系CDプレーヤーを未だに使っている人はCP6に乗り換えるメリットは大きいです。

試聴に使ったピアノ協奏曲では、ホール全体にフルオーケストラが響き渡る雰囲気を楽しむにはCD再生の方が断然有利です。バラバラに刺激的な要素が飛び交うとか、オンマイクで細部のディテールを間近で聴き取るというよりも、一体感のある世界に包みこまれるような音楽体験ができますし、ピアノの音色も硬質になりすぎず、美しい艶が乗っています。逆に言うとフォーカスが甘く、細部を解像しきれていないもどかしさもあるのですが、CDを聴いているという先入観からか、そこまで気にせずに楽しめます。

もちろんCDだからフォーカスが甘いというわけではなく、エソテリックとかの最新ハイエンドCDプレーヤーを使えばハイレゾPCMに迫る凄い高解像サウンドが実現できるのですが、CDの全盛期にそんな凄いハイエンドCDプレーヤーを全員が使っていたわけではありませんし、CP6はあえてレコードやテープの延長線上にあるCDらしいノスタルジーの魅力を上手く演出できています。

このCDらしさを言葉で説明するのはなかなか難しいのですが、たとえばピアノ協奏曲の主役であるピアノの描き方に注目して、CD以外のメディアとの違いを想像してみると、なんとなく意味が伝わると思います。

まずレコードやテープであれば、もっと至近距離でガツンとソリストが主役を張る鳴り方を期待します。これは当時のアナログ記録媒体と収録技術の限界から、そのようなバランスに仕上げるのが一般的だったからです。

その一方で、最近のDXDなど超ハイレゾ録音では、ホール全体の空間情報に注目しすぎて肝心のソリストが薄味になってしまうこともよくあります。実際の生の演奏会を再現するという点ではこの方が正しいと理解できても、往年のレコーディング芸術のインパクトに慣れた耳だとどうしても演出が物足りなく感じます。

CP6のCD再生はそれらのちょうど中間くらいで、アナログメディア時代と比べてノイズの低さや高音の伸びは優秀でも、空間展開の広さや奥行きは限定的で、デフォルメした絵画や映像作品のようなわかりやすい統一感があります。重箱や弁当箱のような収まりの良さといった方が伝わるでしょうか。試聴に使ったHyperionレーベルの音質が良いという理由もありますが、昔のアナログレコードから最新のハイレゾ音源への進化の過程にこのようなCD特有の鳴り方の魅力があったことを再認識させてくれます。

もちろん当時はこういったCDらしいサウンドがオーディオの中心にあったわけで、そこに新たにSACDやハイレゾPCMが登場して、それらの鳴り方の未来感に驚いて盛り上がったわけですが、今になってCDに回帰してみると、そのサウンドは意外と特徴的で独自の魅力があり、悪くないことに気が付きます。

ここで気になるのは、CP6はCDという物理的な円盤で再生することでCDらしいサウンドになるのか、それともCDとUSBでデジタルデータをD/A変換する過程が違うからサウンドに差が出るのか、という疑問です。

前者は昔のCDプレーヤーでとりわけ主張されていたポイントで、メカ部分が貧弱で回転やレーザー制御が不安定だと、モーターやサーボの負荷による電源の乱れがD/A変換やアナログ回路にまで影響を及ぼしてしまうといった類の話です。

後者はたとえばCDの制御をDAC側のマスタークロックで行っているのか、PLLを通しているのか(先ほどジッターFFTではUSBとほぼ同じようでしたが)といった差で音質に影響を及ぼしてしまうという話です。CD全盛期には、S/PDIFなどで外部DACに送るのと比べて、単一のクロック分配でD/A変換できるCDプレーヤー単体で完結させた方が有利という考え方が強かったです(そのために当時は外部マスタークロックとかが流行りました)。

どうであれ、CP6はCDで聴いたほうが良いと思えたのも、CD再生の音のスムーズさや二次元的なわかりやすさというのが、私がCDに期待している先入観と一致しているのもあるかもしれません。

これを書いている時点でCP6の日本での価格は不明ですが、15万円くらいになると想定して、USB DACヘッドホンアンプとして検討するなら、Cayin RU9というモデルが8万円くらいで手に入るので、CD再生にどれくらいの付加価値を見出すかが重要です。

CP6とRU9ではUSB接続でのサウンドは全く同じというわけではなく、RU9の方が落ち着いていて、若干暗めで骨太な鳴り方、CP6は前述の通り明るく新鮮さを感じさせますが、RU9と比べると軽くて地に足がついていない感じもあります。D/AチップはCP6がシーラスロジックでRU9は旭化成、真空管モードもCP6はJAN6418でRU9はNutubeといった具合に中身は別物なので、単純にRU9にCDドライブを組み合わせたのがCP6というわけではありません。

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続いてCP6各種モード変更の音質変化を聴き比べるためにAudio WaveリマスターレーベルのブルーノートDonald Byrd 「The Cat Walk」を聴いてみました。

ジャズ黄金期の名盤を聴くなら、個人的には公式ハイレゾPCMやDSD版よりも、今作のようなJVC K2リマスター XRCDの音質が一番良いと思います。とくにCD末期のAudio Waveシリーズはベタな定番以外のアルバムも多く、ダブらないので嬉しいです。マスターテープ至上主義ではなく当時のアナログレコード体験を呼び起こす感覚を重視するリマスターのおかげで、ノイズが少なく迫力があるのが嬉しいです。


このアルバムでもCDとUSB再生の差は明確です。傾向もクラシックの時と同じで、CDの方がスムーズで柔らかい鳴り方です。ただしジャズの場合はUSBのギラッとしたエッジや荒っぽさも魅力になるので、どちらが有利とは一概には言えません。

まずクラスA・ABモード切り替えは、正直そこまで違いがわかりませんでした。なんとなくクラスAだと圧迫感があって、クラスABモードの方が軽さやリズム感の良さを感じます。ブラインドだとなかなか明確な差は指摘できないものの、毎回試すたびになぜかABモードの方に落ち着くような感じです。

続いて真空管モードを試してみますが、こちらは違いがわかりやすいです。CayinはこれまでにN8iii、C9ii、RU9など真空管搭載モデルではNutubeを採用していることが多く、今回CP6と同じJAN6418はN3Ultraに前例があります。

どちらにせよプリ管なので、ヘッドホン駆動に影響を与えるというよりはD/A変換後の信号の味付けに使われているわけですが、なんとなく私の感覚として、Nutubeがまろやかな美音を生み出すのと比べてJan6418搭載機は全体のプレゼンテーションをスッキリ整える印象があり、CP6もまさにそんな感じです。

真空管モードをONにしてもイコライザーやフィルター的にサウンドが劇的に変化するわけではなく、注意して聴かないと違いに気が付かないかもしれません。真空管モードにはクラシック(C)とモダン(M)モードがあり、個人的にはクラシックモードの方が真空管の効果がわかりやすいため使う機会が多かったです。

真空管クラシックモードにすると、音楽の情報量が減って全体のプレゼンテーションがスッキリすることで、余計なノイズに翻弄されず演奏自体にフォーカスしやすくなります。とくにジャズの場合、ドラムやベースの明暗がハッキリして押し出される感覚が強くなり、ペッパーアダムスのバリトンサックスも威勢がよく張りがあってカッコいいです。ドラムやトランペットの刺激は控えめになるものの、音色の質感や艶は損なわれないあたりが真空管の上手いところです。

モダンモードの方が全体的に音像の輪郭の主張が強くなるので、クラシックモードだと浮足立って軽すぎると感じる楽曲はモダンモードの方が良さそうです。どちらもソリッドステートと比べてシャリシャリ感が低減され、音に芯が出るので、ジャズなど古い音源のデジタルリマスター盤はもちろんのこと、80年代デジタル初期の乾いたサウンドのアルバムでも、真空管を通すことで聴きづらさや古臭さが緩和されます。

とくに80-90年代CDアルバムの多くはアナログ世代と比べてリマスター復刻にも恵まれておらず、演奏や内容は良いのにデジタル臭いパキパキした音のせいで敬遠されている側面もあるので、今回CP6の最新DACと真空管モードを通すことで再評価する楽しみも生まれます。

おわりに

近頃ポータブルCDプレーヤーブームの中でどれを買うべきか悩んでいるのなら、Cayin CP6は悪くない選択肢だと思います。卓上で使えるカジュアルさと、CayinがこれまでDAPやポタアンで培ってきた高音質設計が絶妙なバランスで両立しており、USB DACヘッドホンアンプとしても活用できることを考えると価格は十分妥当だと思います。

CP6よりも安価なモデルになるとトレンドガジェットの枠を超えませんし、逆にこれ以上高価なら本格的なフルサイズCDプレーヤーが視野に入ってきますが、そろそろ大きなCDプレーヤーをオーディオラックから撤去したいという人へのダウンサイジング用としても最適です。

ところで、奇遇にも前回試聴したAstell&Kern SP4000T DAPと今回Cayin CP6のどちらも真空管モードを搭載しているヘッドホンアンプでした。56万円のSP4000Tと10万円台のCP6では大きな開きがありますが、それでも真空管を通すことで測定スペックとは別に音楽の魅力を引き出すという狙いは共通しています。

SP4000Tの場合は、真空管を四本搭載して、周辺回路もコストを惜しまず作り込むことで、最高峰DAPに通用するレベルまで真空管モードを引き上げたことを実感できました。一方CP6はアナログレコードとの対比でよく指摘されるCDのデジタル臭さという先入観を、真空管を通すことで緩和させる効果が期待できます。

CDを使ったことがない若い世代には、レコードやテープと同じレトロな昔のイメージを真空管が与えてくれますし、逆に年配のCD世代には、本棚で埃を被っている青春時代のCDを再訪してみるきっかけになってくれそうです。

近頃の中華系CDプレーヤーブームは一過性のトレンドだと思いますが、これから将来的にCDプレーヤーはどうなるのか、私にはまったく予測がつきません。

Marantz CD70、Eversolo DMP-A8 Gen 2 Master Edition

フルサイズのCDプレーヤーも、エソなどの超高級機だけでなく、たとえばこれを書いている時点でもマランツから新作CD70が10万円以下で登場しましたし、他にもRotel、Arcam、NADなど手頃な老舗メーカーもまだ現役で頑張っており当面安泰です。

さらに、ネットワークストリーマーDACにリッピング用のCDドライブが内蔵されているモデルも多いです。最近だとEversolo DMP-A8がGen 2 Master Editionで新たにCDドライブが追加されたのを見ても、やはり市場での要望があるようです。

私はSACDも大量に持っているので、どうせ買うならSACDプレーヤーの方が好ましいのですが、どのみちファイル再生が便利すぎて今更ディスク再生に戻る気は起きません。

ところで、最後に余談になりますが、アナログレコードの場合は代用が効かないので高性能レコードプレーヤーの需要は依然高いままですが、CDの場合はリッピングしたFLACファイルと比べてCDプレーヤーで円盤を回すことの音質メリットは本当にあるのでしょうか。

少し前であれば、USBによる非同期(Asynchronous)伝送がまだ存在しなかったので、I2Sでも使わない限り、外部DACはS/PDIFのPLLクロックの揺らぎという大きな問題がありました。その当時ならCDプレーヤー単体でD/A変換まで完結させたいという考えは真っ当です。しかし現在のUSB DACやUPnPネットワークDACであれば、そのあたりの課題は解決済みなので、CDプレーヤーで円盤を再生するメリットは利便性とノスタルジーに限定されるのではと個人的に思っています(なにか他に見落としている点があれば教えてほしいです)。

CP6を主にUSB DACとして使いたいのなら、同じCayinでもRU9を選んだ方が良いと思いますし、すでに大量のCDコレクションを持っているのでなければ、今からCDプレーヤーに手を出すべき具体的な理由は思い浮かびません。

それでも、今日聴きたいCDを2-3枚選んで、CDプレーヤーにセットして、円盤が回転しはじめたら、プレイリストやアルバムブラウザーに惑わされず純粋に音楽観賞に没頭できる感覚があるのは確かです。

私がCD世代の人間だからかもしれませんが、このように気を引き締めて集中できている感覚は、昔CDを聴いていた頃を思い起こさせてくれますし、現代のDAPやスマホでの音楽の聴き方とはだいぶ心構えが違うように思えてきます。

物心ついた頃からスマホやストリーミング再生が一般的だった世代の人が今回初めてCDで音楽を聴いた時に、私と同じように、なにか特別な感覚を受けるのか、それとも私の勝手なノスタルジーによる錯覚なのか、気になるところです。


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