2021年8月19日木曜日

SPL Phonitor Mini ヘッドホンアンプのレビュー

 今回はドイツのプロオーディオ機器メーカーSPLのヘッドホンアンプPhonitor Miniです。

SPL Phonitor Mini

2014年に発売した結構古いモデルで、実はすでに後継機に交代して生産終了になったのですが、SPLというメーカーの凄さや、独自の120Vアンプやクロスフィード・マトリックスについてなど、現行ラインナップとも共通する部分が多いので、忘れる前に今更ながら紹介しようと思いました。

Phonitor Mini

SPL Phonitor Miniはご覧のとおりの据え置き型ヘッドホンアンプで、入力はアナログのみ、DACは搭載していません。薄くコンパクトなフロントパネルと比べると、奥行きはかなり長いです。

フロントパネル

奥行きは長いです

Violectric V281と比較

iFi Audio micro iDSDとの比較写真で奥行きの長さに驚くかもしれませんが、外付けACアダプターではなく大規模なトランス電源を内蔵しているので仕方がありません。同じくドイツのViolectricやLehmannなどと同じようなフォームファクターというか、プロ用スタジオ機器ではよく見るタイプの形状です。

一般的な家庭用オーディオラックでも、無駄な横幅をとらずに、ちょっとした隙間に収まりやすいサイズだと思いますが、デスクトップで使う場合はちょっと扱いづらいかもしれません。

複雑なフロントパネル

フロントパネルにはボリュームノブと6.35mmヘッドホンジャックの他にも後述する多数のスイッチ類があります。このPhonitor Miniに限らず、SPLのヘッドホンアンプはこのようなスイッチがとても多いため、なんとなく難解そうで敬遠している人も多いかもしれません。

ミュート

ボリュームノブは手動のみでリモコンには対応していません。内部にLEDが組み込まれており、通常はオレンジ色で、ミュートスイッチが入っている状態では赤色になります。この光がヘッドホンジャックからも漏れて見えるのは実用的でカッコいいです。

裏面

リアパネルにはコンセント電源とステレオRCA・XLRライン入力が用意されています。Phonitor Miniはラインナップの中でもエントリーモデルに位置づけられているため、入出力に関してはかなり簡略化されているので、上位モデルとの具体的な違いについては後述します。

ちなみにコンセント電源は説明書を参照して115V・230Vを事前に切り替えておく必要があります(上の写真では230Vになっています)。最近は自動で両対応になっている機器が多いので、つい忘れがちです。海外から個人輸入する際などには注意してください。

ケーブル接続

RCA入力端子は間隔が狭いので、ケーブルのバレルが太い場合は厳しいかもしれません。上の写真のWBTプラグではギリギリ大丈夫でした。

ちなみにPhonitor Miniは日本での販売価格は約10万円弱ということで、ヘッドホンアンプとしては安からず高からず、微妙な価格設定だったように思います。というのも、これくらいの値段では、バッテリーやUSB DACを搭載したiFi Audio micro iDSDシリーズやChord Mojo/Hugo 2などを買った方が便利で音質の良さにも十分定評がありますし、近頃はそこそこパワフルなポータブルDAPなんかも色々と手に入ります。さらにもっと熱心なオーディオマニアなら、据え置きオーディオシステムと外観がマッチするようなフルサイズの大型ヘッドホンアンプを選ぶと思うので、このようにコンパクトでコンセント電源が必要なヘッドホンアンプというのは中途半端でニッチな存在です。

プロオーディオ用としても、RME・Focusrite・ApogeeなどのUSBオーディオインターフェースも近頃はそこそこ低ノイズでパワフルなヘッドホンアンプ回路を搭載するようになってきましたし、SPLのセールスポイントであるクロスフィード効果も、パソコン上のVSTプラグインエフェクトなどで事足りるだろうと考える人なら、あえて単独のアナログヘッドホンアンプを買い足すメリットが薄いです。しかもPhonitor Miniはライン出力が無いので、モニタースピーカー用コントローラーとしても使えません。

そんなわけで、Phonitor Miniはちょっと中途半端な不人気機種というイメージが個人的にあったわけですが、実際に中身と性能、そしてもちろんサウンドの良さに触れることで、これはかなり凄いヘッドホンアンプだと再確認できたので、今回はそのあたりについて紹介しようと思いました。また、Phonitor Miniに搭載されている設計コンセプトはSPLの上位機種や最新機種にも共通している点が多いので、そのへんも振り返ってみます。

SPL

SPL社について理解するには、近代のレコーディングスタジオにおける「アナログオーディオ機器」の重要性について触れておかなければなりません。

初心者は「デジタルはアナログよりも優れている」「デジタルの到来後アナログは衰退した」「最近は全てパソコン上で作業する」と勘違いしやすいですが、デジタルが優れているというのは記録メディア、つまりアナログテープよりもデジタルファイルで保存するほうが良い、というだけの意味であって、それ以外のミックスやマスタリング作業は今でもアナログで行った方がヘッドルームや位相管理の面で良い結果が得られる事が多いです。

もちろんパソコン上で全ての作業を完結させる方が低コストで済みますが、一流スタジオのマスタリング工程では、音質メリットのために、未だに各デジタルトラックを一旦アナログに戻してからEQやコンプレッサーなどで調整する事が多いです。そのため、SPL社のようにアナログマスタリング機器を製造するメーカーは、このデジタル世代であっても音楽制作の高嶺の花として存在しています。

SPL社は1983年に発足したベテラン企業で、正式にはサウンドパフォーマンスラボの略称となっています。(サウンドプレッシャーレベルとかけているのかもしれません)。

日本では2020年になって株式会社エレクトリが正式に代理店販売を始めたので、そのニュースで初めて知った人も多いでしょう。それまでは本格的なプロスタジオ機器のみを扱ってきたメーカーだったので、日本ではプロショップが独自に取り扱っているケースが多かったところ、最近になってコンシューマーオーディオにも展開する事になり、そのタイミングで日本にも正式に参入したような流れです。

SPL MMC2

プロオーディオといっても、自宅のパソコンにDAWソフトを入れて、USBオーディオインターフェースでレコーディングするスタイルしか知らない人も多いかもしれませんが、SPLが得意としているのは、世界有数の大手レコーディングスタジオ用の設備で、特にマスタリングスタジオ用メインコンソールの受注生産を手掛けている、世界的に見ても数少ないメーカーです。

コントロールミキサー、コンプレッサー

マイクプリ

マスタリング室のミキサーコンソールを中心にアウトボードで接続する凄いスペックのコンプレッサーやイコライザー、AD/DAコンバーターなどがあり、さらにレコーディング用にも細分化されたマイクプリやチャンネルストリップなど、音声の入出力に関わる機器が多く、さらに各種プロセッサーやAPI 500サイズのモジュールも多数用意しています。

そんな中で、ヘッドホンアンプはラインナップのほんの一部に過ぎないのですが、実はこれらマスタリング機器のために開発されたアンプ回路を流用して生まれたヘッドホンアンプというのが最大のメリットで、今回のPhonitor Miniも例外ではありません。

120Vアンプ搭載機

SPLヘッドホンアンプの独自技術としてよく紹介されているのが120V Railテクノロジーと呼ばれているもので、該当機種にはフロントパネルにそう書いてあり、そうでないモデルと差別化されています。

この120Vアンプというのは、SPLが2000年に最高峰マスタリングコンソールMMC1用に開発した技術で、公式サイトによると初号機はベルギーのGalaxy Studioに導入されたそうです。現在でも同スタジオのサイトを見るとMMC1がスタジオのデスクに鎮座しています。

右にあるのがSPL MMC1

マスタリングコンソールは楽曲のサウンドを仕上げる心臓部とも言える機器なので、そう頻繁に買い換えるものでもありませんから、20年来現役で活躍しているようです。MMC1は世界各国の大手スタジオで採用され、上の写真のイギリスのSuper Audio Masteringスタジオなんかは特に有名で、こちらも現役で使われています。デジタルと違って高性能アナログ回路は陳腐化しませんので、SACDやハイレゾPCMのマスタリングにも対応できる性能を誇っています。

120V搭載マスタリング機材

これらの成功を経て、同じ120Vアンプをラック式のマイクプリやモニタースピーカーコントローラーといった製品にも投入するようになり、その延長線でヘッドホンモニターコントローラーを作ってみたら、思いのほか好評を得たので、そのままPhonitorシリーズとして開発を進める事になったそうです。

つまり、ラインナップの中でも本格的な(数百万円規模の)マスタリング機器のみに限定されていた120Vアンプをそのまま流用したヘッドホンアンプとしてPhonitorが生まれ、その中でもPhonitor Miniが最安値のモデルというわけです。

120Vアンプ

では具体的に120Vアンプとは何なのかは、Phonitor Miniの本体を開けてみるとわかります。

SPL公式では、120Vアンプは「カスタムメイドのオペアンプ」と呼んでいますが、実際はオペアンプICではなく、いわゆるオペアンプと同じような機能をディスクリートで構成したサブ基板をモジュール化したもので、これをメイン基板に必要数挿入する仕組みです。これらを±60V電源で駆動しているため、120Vというわけです。

サブ基板が刺さっています

このサブ基板はモデル間で共通しているため、メイン基板と設計を分離することで、上位機種のサウンドとパワーをそのまま移植することが可能になり、メーカーとしてサウンドポリシーを統一できるというメリットがあります。

一般的なオーディオ用オペアンプICやチップアンプが±15V程度の電源で動くのに対して、±60Vで動く設計にしたことで、最大出力電圧やヘッドルームが増して、余裕を持ってヘッドホンを駆動するというアイデアです。

ヘッドホンアンプは実際どの程度の電源電圧で十分なのかというのは意見が分かれるところです。バッテリー駆動のポータブルDAPなどでは±5Vくらいが限界なので、大型ヘッドホンを鳴らすにはバランス化して二倍の電圧を得ないと厳しいですが、コンセント電源のアンプならばもっと柔軟に設計できます。

たとえば近代ヘッドホンアンプの元祖とも言えるLehmann Linearを見ると、TO-92とTO-220サイズのトランジスターを±15V電源で駆動していますし、私が普段使っているViolectric V281でも似たような回路を±30V電源で、さらにバランス化によって出力を倍増しています。

ちなみに、スピーカー用アンプの場合は8Ω定格で計算できるので、100Wのアンプなら大体±40~60Vくらいの電源を使うのが一般的です。たとえばBrystonのアンプを見ると150Wモデルは±65V、300Wモデルは±85V電源といった感じです。

ではスピーカーアンプのスピーカー出力端子からヘッドホンを鳴らすのは使うのはどうかというと、それもあまり上手くいきません。

ラインレベル信号を扱うプリアンプではTHD+Nは0.01%以下、S/Nも100dB以上くらいのクリーンなスペックが実現できますが、100Wくらいのスピーカー用パワーアンプは1W程度の弱い出力で使うとS/Nが80dB程度に劣化するものが多く、つまりそれらでヘッドホンを鳴らしてもノイズが目立ってしまいます。

また別の問題として、スピーカーは定格8Ωというのが一般的なので、それを想定して設計されたアンプで600Ωのヘッドホンを鳴らしても、フィードバック回路が正常に動作せず、意図した性能が得られない事が多いです。特にクラスDアンプなどではその傾向が顕著です。

スピーカーアンプでも数百万円もするような高級モデルであれば100dBくらいのS/Nを実現することも可能ですが、十万円台の価格帯では困難ですし、そもそもヘッドホンを駆動するのに100Wもいりませんので、コストパフォーマンスの割が合わないです。

つまりヘッドホンアンプでは、ラインレベルプリアンプの低歪み・低ノイズ性能と、スピーカーアンプの高パワー性能のちょうど中間くらいが理想的なので、各メーカーごとに設計思想がどちらか両極端に寄りがちです。

ヘッドホンアンプというジャンルが定着する前は、CDプレーヤーやプリメインアンプに搭載されているヘッドホンジャックを使うのが主流でしたが、たとえばCDプレーヤーの場合はライン出力をオペアンプでブーストしたものであったり、プリメインアンプならスピーカー出力に抵抗を通して音量を落としただけのものでした。つまり上で挙げたような両極端の設計思想です。

SPLの120Vアンプというのは、スピーカーアンプと同じ±60V駆動でヘッドルームの余裕を確保しながら、スピーカーアンプほどの高出力を目指さすに2W程度の設計に留める事で、ラインプリと同程度の歪み率やS/Nを実現している、ヘッドホンアンプとして理想的な「良いとこ取り」のアイデアです。

実際Phonitor Miniのスペックを見ると、THD+Nが0.00052%、S/NがAwtで-103dB、ダイナミックレンジ133dBを確保していながら、出力インピーダンス0.18Ω、300Ω2Wという高出力を実現しています。これは私が普段使っているViolectricを大部分で凌ぐスペックですし、本来マスタリングコンソール用に開発されたモジュールをそのまま移植したというエピソードにも十分な説得力があります。

Phonitor Miniのデザイン

改めてPhonitor Miniの内部を見てみます。シャーシを開けるには底面にあるネジを外すだけで、ノブやスイッチ類を外さなくても分解できます。

底面

ちなみに底面はゴム足シールが付属しているだけで、とても簡素です。VESAマウント用のネジ穴もあるので、卓上スタンドアームに取り付けるのも良いかもしれません。

内部デザイン
ボリュームノブ
クロスフィードスイッチ類

内部を確認してみると、やはりLehmannやViolectricなどと同じような、ドイツの真面目なプロ機器らしいイメージどおりの構成です。

電源はNORATEL製の大きなトロイダルトランスからTL783C高電圧用可変レギュレーターを通して、オーディオ回路は例の120Vサブ基板モジュールに集約されており、メイン基板上にはアクティブICが見当たらないのがスマートです。オーディオ周りの電解コンがパナの低ESR品なのも真面目で良いですね。

120Vサブ基板はSTマイクロのMJD340/350高電圧バイポーラペアを中心に組んであり、この基板のみ表面実装で、メイン基板などは古典的なスルーホールなので、トラブルの対処や修理が容易そうです。ボリュームノブは定番のアルプスRK27で、クロスフィード回路と合わせてフロントパネルのサブ基板に鉄板でガッチリと固定されているのもエレガントです。

ちなみにSPLは上位モデルのPhonitor 2やPhonitor xでも頑なにアルプスのボリュームポットを採用しています。多くのメーカーはボリュームポットのエラーやクロストークを敬遠して独自のリレー抵抗ボリュームなどを採用していますが、そもそもPhonitorはクロスフィード機能で有名なので、あまり深く考えるのも無意味かもしれません。

サブ基板を含めて、全体的にスッキリ理路整然としているのがSPLらしいです。一見シンプルに見えますが、もしこの規模のオーディオ回路を全てメイン基板上に実装していたら相当巨大で複雑になっていただろうと思いますので、120Vアンプモジュールのメリットが実感できます。

ここまで真面目なスルーホールの手作りで、10万円弱という価格は他社製品と比べてもずいぶん良心的だと思うので、生産終了になった理由にも関係しているのかもしれません。

クロスフィード・マトリックス

SPLヘッドホンアンプを語る上でクロスフィード機能は欠かせません。そもそもPhonitorシリーズの発端は、スタジオモニタースピーカーの代わりにどうしてもヘッドホンを使わざるをえない場合に、スピーカーと同じ聴こえ方をシミュレートするために考案された機能です。

クロスフィードを単純に言うと、スピーカーなら左スピーカーの音は左耳と右耳の両方に届きますが、ヘッドホンだと左チャンネルの音は左耳でしか聴こえないので、スピーカーと同じ聴こえ方にするには、反対チャンネルの音を若干混ぜる必要があるというアイデアです。

説明書を読むと、実際の調整方法に関しては、モニタースピーカーの前に正しく座って、スピーカーとヘッドホンを交互に聴き比べながら、それらの音像展開が同じになるように各スイッチを調整するようにと書いてあります。つまりプロの現場で実践的に活用するための機能であって、安易な3Dエフェクトギミックのようなものではありません。

一見これらのスイッチは難解なようでいて、かなり直感的に効果が実感できるため、使い慣れてくると的確に操作できるようになります。

左側スイッチ

まず左側にはXLR・RCA入力切り替え、マトリックス(クロスフィード機能)のON/OFF、そしてミュート・ステレオ・モノスイッチがあります。

実は、個人的にはこのモノスイッチだけでもPhonitor Miniを購入する価値がありました。他社のヘッドホンアンプでは意外と無い機能です。

モノに切り替えると左右信号が合成されたモノラル再生になります。1960年代のロックやジャズなどを愛聴している人なら、これのありがたみに共感してもらえると思います。当時の作品はまだステレオ録音技術が稚拙で、ボーカルが左だけ、ドラムが右だけで鳴っているとか、今では考えられないような奇抜な曲が結構多いです。そういうのをヘッドホンで聴く場合、クロスフィードでどうにかなるものではないので、もうステレオは諦めて、モノラル化した方が断然聴きやすいです。

また別の例としては、古いアナログマスターテープがデジタル復刻される際に、劣化したテープのフラッターのせいで耳障りな左右のゆらぎが発生しているアルバムも結構多いです。そういうのもモノラルスイッチを使う事でスッキリ解消できます。

もちろん、こんな機能はパソコンソフトでも実現できると言われれば確かにそうですが、私が使っているJRiverだとDSP画面を開いたりなど結構ややこしいので、手元のスイッチで切り替えられるのは便利で重宝しています。ステレオカートリッジでモノラルレコードを聴く時なんかにも有利です。

右側スイッチ

右側はクロスフィード機能を調整するスイッチです。まずMed/Low/Highの三段階で効き具合を設定できます。さらにAngleが30°/22°/40°から選べるので、これは効き具合と合わせて、実際のスピーカーと交互に聴き比べて決めます。

ちなみに説明書によると、Ultrasone S-LogicやAudezeなど、ヘッドホン自体に角度を錯覚させる効果がある場合は、実測よりも広め(30°なら40°)を選ぶべきだと書いてあります。そういうのもちゃんと説明書にあるのがさすがドイツらしくて真面目ですね。

さらにセンターの-0.6/Off/-1.2切り替えは、クロスフィード時にセンター成分をどれだけカットするかという機能です。クロスフィードをONにすると左右信号が混ざる事でセンターの音量が若干上がるため、それを補正するために使います。クロスフィードONでミックス作業をしているとセンターが強めに聴こえてしまうので、そのせいでセンターボーカルなどのミックスレベルを下げてしまうと、最終的に仕上がった楽曲を他のスピーカーで聴いてみたらセンターが弱すぎた、なんて事にならないように任意で設定するわけです。

私みたいに音楽鑑賞で使う場合には、クロスフィードONでセンターカットOFFの状態だと、楽曲によってはセンターが重苦しく感じるので、その場合にスイッチを-6にすればスッキリして聴きやすくなります。

クロスフィード効果

クロスフィードの効果は、単純に左右のチャンネルを若干混ぜるだけだから、そんなに難しい事ではないと思っている人もいるかもしれませんが、実際はもっと複雑です。

自分の前方にあるスピーカーから鳴っている音をヘッドホンで再現するために、SPLは周波数の指向性と時間差という二点も考慮して補正しています。

まず、スピーカーから発せられる音は高音になるほど指向性が強い傾向があります。つまりスピーカーの直線上からズレるほど高音が聴こえにくくなり、低音はそこまで変わらないという事です。実際にスピーカーの前に立って左右に動いて実験してみればわかります。

つまり、左スピーカーから左耳が聴いている音と右耳が聴いている音では周波数特性が異なり、それはスピーカーの設置角度と、さらにスピーカーが向いている方向(トーイン角度)によっても変わってきます。そのため、SPLのクロスフィードでは反対チャンネルをそのまま混ぜるのではなく、高域は少なめになるよう調整されています。

さらに、左スピーカーから左耳と右耳に届くタイミングは距離による時間差があるので、これもクロスフィードでは反対チャンネルを混ぜる際に若干タイミングを遅らせています。

人間の脳は、左右の耳で聴こえる音の周波数帯レベル差や時間差をもとに音像の方向や距離を認識しているので、優れたクロスフィード機能であれば、それを錯覚することができます。

そんなわけで、周波数や時間差補正についてはメーカーごとに解釈やセオリーが異なるため、単純にクロスフィードといっても効果が異なるわけです。さらにPCソフトでは、こういったクロスフィードのみでなく、周囲の壁からの反響なども含めた3Dエフェクトを演出しているものもあるので、明確な正解があるわけではなく、自分の目的に合わせて一番説得力があるものを選ぶ事になります。

ちなみにPhonitor MiniのクロスフィードスイッチにMatrixと書いてある理由ですが、これは効き具合の「Low Med High」と角度の「22° 30° 40°」スイッチで3×3 = 9パターンの組み合わせマトリクスになり、それぞれ信号を混ぜる量と時間差のパラメーターを数値化しているためです。Phonitor Miniの説明書にはなぜか情報が無いのですが、Phonitor 2では6×6 = 36パターン、Phonitor xは4×6 = 24パターンのテーブルが掲載されており、たとえばPhonitor 2で効き具合を3、角度を30°に設定すると、レベル差が0.64、時間差が280マイクロ秒になる、といった具合です。

SPLのヘッドホンアンプ

ここで一旦Phonitor Mini以外のSPLヘッドホンアンプのラインナップについて紹介したいと思います。

一見すると価格帯でグレード分けされているように思えますが、実際は各モデルごとに重要な機能があったり無かったりで、一筋縄ではいきません。

Phonitor 2

まず2008年の初代Phonitor/Auditorを経て2014年に登場したのがプロスタジオ用モデルのPhonitor 2で、同時に廉価版としてPhonitor Miniが登場しました。Phonitor Miniは生産終了になりましたが、今のところPhonitor 2はまだ販売しており、プロ用ということで他のモデルには無い独自機能も多いので、今後後継機が出るまでは作りづつけるだろうと思います。

Phonitor 2とPhonitor Miniはまさに兄弟機といった感じで、中身の設計はほぼ共通しており、Phonitor 2はバランス出力に対応しているため二倍相当のアンプ回路を搭載しているのが主な違いです。

それ以外では、Phonitor 2はXLR入力が二系統あり、XLR出力もあるのでモニターコントローラーとしても使えたり、さらにリモコンボリュームやVUメーターなど、機能面でも豪華に仕上がっています。ちなみにフロントパネルには6.35mmヘッドホン出力しかありませんが、背面のXLRライン出力がバランスヘッドホン出力も兼ねているそうです。3ピンXLR×2なので、一般的な4ピンXLRヘッドホンケーブルを使う際には変換アダプターが必要です。

クロスフィード機能を見ると、Phonitor Miniでは効き具合、角度、センターカットがそれぞれ三段階の切り替えスイッチだったところ、Phonitor 2ではそれぞれ六段階に増えており、Phonitor Miniにもあるモノラルスイッチの他にも、左右バランス調整ノブや左右チャンネルソロスイッチと逆相スイッチも搭載しています。

Phonitor 2はとにかくコスト度外視で考えうる全ての機能を詰め込もうという意気込みが感じられますが、一方Phonitor Miniはそれらのエッセンスは失わずにハーフラックサイズにギリギリ収まるように、重要な機能だけを凝縮させたような努力が感じられます。

2Control・HPm

プロ用機器では、他にもモニターコントローラーにヘッドホン出力を搭載している2Controlや、API 500ラック用でクロスフィード機能が充実したHPmモジュールもありますが、これらは120Vアンプは搭載していないので、Phonitor 2・Miniは別格の存在です。

Professional Fidelityシリーズ

2016年には新たにSPLのプロ精神をコンシューマーHi-Fiに持ち込んだProfessional Fidelityというシリーズを始めており、そこにあるのがPhonitor se・Phonitor xe・Phonitor xの三機種です。

どれも120Vアンプ回路を搭載しており、特に最上位のPhonitor xは一見Phonitor 2にそっくりですが、フロントパネルに4ピンXLRを搭載、オプションでUSB DACモジュールを内蔵可能など、コンシューマー用としての機能を充実させた一方で、クロスフィード機能は簡略化されています。

Phonitor x

Phonitor xe

廉価版のPhonitor xeはほぼ同じ設計で、背面のライン出力が無くなったものの、純粋なヘッドホンアンプとしてのスペックには遜色無いようです。

ライン出力を削ったことでリアパネルに空白ができるかと思いきや、余剰スペースに追加のヘッドホンジャックと、さらにAES/EBU入力まで搭載して、ただの廉価版で終わらせないところが粋な計らいです。

現状で音楽鑑賞用にSPLのヘッドホンアンプが欲しいのであれば、このPhonitor xとxeが最良のモデルでしょう。

Phonitor se

一番安いPhonitor seは薄型デザインでアナログ入力はステレオRCAのみ(オプションでDACモジュールを追加可能)、ヘッドホン出力はシングルエンド6.35mm、クロスフィード機能は30° & センターカット-1dBに固定で、二段階の効き具合から選べるようになっているなど、機能面ではかなり簡略化されていますが、しっかり120Vアンプを搭載しているため、音質面でPhonitor Miniの後継機となると、このPhonitor seが一番近いのかもしれません。

これらProfessional Fidelityシリーズはさらにスピーカー用プリ・パワーアンプやフォノアンプなども用意されており、家庭用オーディオシステムのフルセットを揃えられるようになっています。

Series One

2020年にはプロオーディオ用に新たにSeries Oneというラインを展開しており、コンパクトな共通筐体にモニターコントローラーのControl One、ヘッドホンアンプのPhonitor OneとDAC内蔵のPhonitor One d、そして全部入りでA/D D/A搭載のMarc Oneといったシリーズになっています。

このSeries Oneは10万円程度のプロDTM層をターゲットにしているようで、電源は内蔵ではなくACアダプター式で、120Vアンプは非搭載、ライン入出力はTS・TRSジャックのみ、といった具合に、SPLとしてはずいぶん思い切ったデザインというか、既存のPhonitorファンに媚を売らないシビアな構成になっています。ヘッドホンのクロスフィードはノブで効き具合を調整できるタイプです。

最上位のMarc Oneであれば、USB A/Dコンバーターを搭載しており、PCM 768 kHz/32bitのオーディオインターフェースとしても使えるので、かなり面白い製品だと思います。

こうやって現行ラインナップを総括してみると、Phonitor 2相当の性能をコンパクトな筐体に収めたPhonitor Miniの存在は魅力的で、性能も現行モデルに勝るとも劣らないので、生産終了になったのは残念です。その一方で、最新モデルではプロ製品とコンシューマー(オーディオファイル)製品の棲み分けをきっちり明確にしたのは、価格設定や販売経路などの観点からも良いアイデアだと思います。

出力

Phonitor Miniはアナログ入力のみなので、出力電圧は入力ソースのレベルによって変わります。

たとえば、私が普段使っているChord Qutest DACはRCAフルスケール出力レベルを1・2・3Vrmsと切り替えることができます。

Chord Qutest DAC

Phonitor Miniのヘッドホン出力ゲインを測ってみたところ、RCA入力では+18dB、XLR入力は+6dBくらいでした。つまりRCA入力には約+12dBのブーストが内蔵されており、説明書にもそう書いてあります。

プロ機器のXLR出力はレベルが高めのものが多いので、それに合わせて設計したのでしょう。しかし、家庭用オーディオ機器ではRCAとXLR出力レベルが同じという製品も多いので(ラックスマンやアキュフェーズなど)、そういうのと接続する場合はXLRの方がヘッドホンの音量が低くなります。

例えば私が使っているdCS Debussy DACはXLR出力を2Vrmsと8Vrmsで切り替えられるスイッチがあるので、これを8Vrmsに設定しておけば、Phonitor MiniではRCAの2Vrmsと同じ音量になります。(2Vrmsは8.2dBu、8Vrmsは20.3dBuなので、その差が約12dBになるので)。

説明書によると、最大ライン入力レベルはRCAが20dBuでXLRが32.5dBuということで、RCAは内部でブーストされる分だけヘッドルームが12.5dB低いようです。それぞれRMS電圧に変換すると20dBuは7.7Vrms、32.5dBuは32.6Vrmsになるので、家庭で使うなら実際そこまで強力なラインレベル信号を扱うことは稀でしょう。

プロ用機器であれば、電圧が高いに越したことはないので、たとえばSPLのマスタリングD/AコンバーターはXLRで定格24dBu、最大32.5dBu出せると書いてあるので、Phonitorシリーズはそれらに合わせて設計されていることがわかります。

RCA入力で使う場合、ゲインが+18dBもあるので、一般的な2Vrmsラインレベルではほとんどのヘッドホンで音量が大きすぎるため、その点はちょっと使いづらいです。できれば+6dB・+12dBに切り替えられるスイッチが欲しかったです。

ボリュームノブは優秀なアルプスRK27なので、ボリュームを絞った状態でも左右のギャングエラーは気になりませんでしたが、鳴らしにくい平面駆動型フォステクスT60RPでもボリュームノブは25%でちょうどよいくらいでした。

T60RP

私が普段使っているViolectric V281ヘッドホンアンプでは、ライン入力ゲインを-18dBから+18dBまで5段階に切り替えられるので、ヘッドホンの感度に合わせてボリュームノブ全域を有効活用できるのが便利です。ただし、V281はRCAとXLRでゲインが同じで、ゲインスイッチが両方に反映されるので、コンシューマー用RCAとプロ用XLRを接続する場合は音量差があって使いづらいです。

そんなわけで、Phonitor MiniとV281のどちらが使いやすいかというのは、どんな上流ソースと接続するかで変わってくるので、それもアナログヘッドホンアンプを購入する際の難しいところです。そういった事を考慮せずに「このアンプのほうが大音量だからパワフルで優秀だ」と勘違いしないよう注意が必要です。


1kHzサイン波テスト信号を再生しながら負荷を与えてボリュームを上げて、歪みはじめる(THD > 1%)時点での最大出力電圧(Vpp)を測ってみました。

ちなみに単位が混ざって混乱させてしまうかもしれませんが、私の勝手なルールではライン信号は歪ませないのでVrmsを使い、ヘッドホン出力は負荷で歪むまで測るのでVppを使うようにしています。純粋なサイン波でないとRMSでは誤解が生じるので。

参考までに、私が普段使っているViolectric V281とiFi Audio micro iDSD Signatureのグラフを重ねてあります。

それにしても、さすが120Vアンプに偽りは無く、無負荷時に最大113Vppもの大出力が得られました。

Violectric V281の方を見ると、シングルエンドで60Vpp、バランス出力で120Vppを発揮していますが、Phonitor Miniはシングルエンドで113Vppという高出力を出せているのが凄いです。

ちなみにPhonitor Miniで実際に113Vppもの出力を得るためには、RCAライン入力は5.35Vrmsも必要だったので、一般的な2Vrmsライン入力で得られる最大出力は42Vpp程度です(グラフでは破線で表しています)。それでもmicro iDSDのターボモードよりも大音量になってしまうのは凄いです。

一方V281の方を見ると、入力ゲインスイッチを+18dBに合わせることで2VrmsのRCAライン入力でも最大電圧が得られます。両社の設計に対する考え方の違いが面白いです。

50ΩくらいになってくるとV281が圧倒的ですね。つまりHifiman Susvara(60Ω・83dB/mW)など低能率でインピーダンスが低いヘッドホンの場合はV281の方が有利かもしれません。(あくまで最大音量のみの話ですが)。

確実に言えるのは、Phonitor Miniは高インピーダンスのヘッドホンを鳴らしきるのに最適なヘッドホンアンプだという事です。シングルエンドのみでここまで凄いのですから、これがPhonitor 2やPhonitor xでバランス化されると尋常ではありません。

さらに、同じ1kHzサイン波テスト信号で無負荷時にボリュームを1Vppに合わせて、負荷を与えて電圧の落ち込みを測ってみました。

スペックによると出力インピーダンスは0.18Ωと書いてあり、実測でも0.2Ω程度でした。グラフを見ても横一直線で微動だにしません。micro iDSDとほぼ同じ特性なのには驚きました。ゲインが高すぎることを除いては、インピーダンス変動が大きいマルチBA型イヤホンとかでも問題なく駆動できそうです。

ちなみにPhonitor Oneを除いて他のPhonitorシリーズ(つまり120Vアンプ搭載機)は全てシングルエンド出力で0.18Ωと書いてあるので、同じアンプ設計であることが伺えます。Phonitor Oneのみ出力インピーダンスが20Ωとかなり高いので注意が必要です。

ノイズ

Phonitor Miniの音質について書く前に、ノイズの注意点について触れておきたいです。

このアンプはダイナミックレンジと周波数帯域が非常に広く、IEMイヤホンを使ってボリュームを最大に上げてもアンプ由来のホワイトノイズがほとんど気にならないほど優秀なのですが、その一方で、環境ノイズに敏感なようで、色々な状況で使っていて何度かトラブルに遭遇しました。

こういう組み合わせは要注意です

具体的な例を二つあげると、まずポータブルDAPのライン出力をソースに使って、感度が高いIEMイヤホンで聴いていたところ、プチプチと僅かなノイズが聴こえることがありました。DAPの液晶画面を消灯するとノイズが消えるので、DAP内の回路で発生したノイズが混入してイヤホンで聴こえてしまったようです。

もう一つ困った例として、デスクトップパソコンと同じ電源タップに接続して鳴らしていると、パソコンのGPUが高負荷な作業(たとえばChromeブラウザを開くなど)を行うと、そのたびにヘッドホンからチリチリとノイズが発生しました。また別のパソコンからUSB DAC経由で音楽を聴いていると、パソコンの有線LANでデータ転送中にヘッドホンからシューッというホワイトノイズが聴こえる(転送が終わるとノイズが消える)など、些細な事で悩まされました。

ラインケーブルを全部外して、電源ケーブルとヘッドホンだけを残して、ボリュームを最小に下げた状態でもノイズが聴こえるので、コンセント側からアンプ終段に流入しているようです。ヘッドホンは感度が高く高周波の再現性が高いモデルほどノイズが聴こえやすいようで、フォステクスTH909でも聴こえるくらいでした。

この場合はケーブル配線をしっかりパソコン関連から分離しておくことでノイズは発生しなくなりました。また、一部のケースではヘッドホンのケーブルを的確に巻き上げておくことでノイズが消えるなど、やはり終段のゲインが高いため電磁波ループ(つまり配線がアンテナになる)に由来する流入が目立つのかもしれません。

よくオーディオのケーブルや電源はオカルトだとか言われますが、確かに根拠もなく高額なケーブルなどは問題だとは思うものの、このように別の家電機器からコンセントやケーブル経由でオーディオ回路にノイズが流入するというのは実際に多く発生するので、しっかりと考慮と対策を行う必要があります。

音楽再生中には気が付かない程度のノイズなら気にしなくても良い、というわけではなく、こういった細かいノイズフロアの上昇によって音楽の空間再現性やリアルな描写が損なわれてしまいます。たとえば、オーディオショップで試聴した時と自宅の環境に接続した時では音質の印象が変わってしまう、なんてこともあります。

Phonitor Miniに限った話ではありませんが、優れたオーディオ機器を扱うには、上流機器や周囲の環境、ケーブルなどもしっかり検討しないと最大限の性能は発揮できません。一点だけハイスペックでも、他の機器や環境の弱点が露見してしまいます。DAPやパソコンなどとつなげてカジュアルに楽しむのも悪いことではありませんが、できれば性能に見合った優れたオーディオ環境と据え置きソースを用意するべきだと思います。

こういった環境ノイズの影響を全く受けないアンプの方が優秀なのか、というと、むしろ逆に、電源回路にレギュレーションをかけすぎてパワーの瞬発力が無いとか、高周波ノイズをカットするために高音にフィルターをかけているなど、過剰なノイズ対策が音質を鈍らせているケースもあります。逆にPhonitor Miniの説明書によると300kHzまでフラット(-3dB)に再生できるという非常識なスペックなので、実際そこまで鳴らす必要があるのか、むしろ高周波ノイズの影響を受けやすいのでは、という疑問も起こります。

音質とか

アナログヘッドホンアンプの音質評価というのはなかなか難しいもので、優れたアンプであるほどクセが少ないため、上流ソースによって印象が大きく変わってしまい、アンプ由来の個性や特徴を把握するのが困難です。

今回はまずクロスフィード機能をOFFにして、通常のヘッドホンアンプとしてじっくり聴いてみました。

dCS DAC

今回の試聴では、RCA入力ではChord Qutest、XLRではdCS Debussy DACを使いました。

私の勝手な考え方として、ヘッドホンアンプはできるだけ駆動性能重視でストレートに鳴ってくれるものが良く、サウンドの好みや味付けについてはDACなど上流ソースで調整する方が好きです。真空管など個性的なアンプで味付けをするのが間違いだとは言いませんが、ヘッドホンを正確に駆動できていなければ本末転倒です。

また、前述したとおり、Phonitor Miniはゲインが高いわりにIEMイヤホンなどでもノイズが気にならないほど静かなのですが、電源まわりや上流ソースによってノイズが混入しやすいようなので、その点でも優れた環境を整えるべきです。

ATH-ADX5000

ヘッドホンは普段から使い慣れているオーディオテクニカATH-ADX5000やフォステクスTH909などを主に使いました。写真で見てわかるとおり、開放型でドライバーを耳元に並行して置いてあるだけのストレートな構造の方が、余計な傾斜や音響ギミックがあるモデルよりもアンプの性格が伝わりやすいです。(他にもたとえばHIFIMANやGrado、ゼンハイザーHD660Sなど)。

まずPhonitor Miniの第一印象は、まさに予想どおりパワフル、そして広大なダイナミックレンジが感じ取れます。パワフルというのは音がうるさいという意味ではなく、音楽の中で無音部分と大音量の差がはっきりとして、音色が引き締まって、帯域の足並み(いわゆる縦の線)がピッタリ揃っているという事です。音抜けが良くスカッとしていて、リズムや抑揚に迫力があり、ボリュームを上げていってもノイズが目立たず、一音の余韻がだんだんと消えていくような繊細な感覚も掴みやすいです。

そんなのは録音次第じゃないのか、と言われると、確かにそれもありますが、アンプが貧弱だと、アタックのレスポンスが鈍かったり、電源のパワーが足りず低音が遅れたり、さらにノイズフロアが高かったりなどで、無音と出音のコントラストが不明瞭になりがちです。もしくは意図的に響きを足して美音っぽく仕立てているものもあります。そういうアンプに慣れしまって普段は気が付かなくても、Phonitor Miniと聴き比べてみると違いは一目瞭然です。ヘッドホン自体に正確なダイナミクスを描く能力が無いと(たとえばハウジングの響きで濁っているとかタイミングがずれるなど)アンプの脆弱さは気になりませんが、ADX5000ほどのヘッドホンであれば明らかな差が感じられます。

とくにPhonitor Miniは中域の「押し出し」が印象的です。特定の帯域というよりは、女性・男性ボーカルや主要なソロ楽器のどれもが、背景から浮き出て、歯切れよく、実在感があるという事です。輪郭だけが強調されているというよりは、音そのものの彫りが深いといった印象です。

解像感が高く見通しが良い傾向は、たしかにプロオーディオ機器らしいと言えるかもしれませんが、たとえばオーディオインターフェスのヘッドホン出力などとは印象が結構違います。RMEやFocusrite Redなどの高級品は高解像で情報量がとても多いのですが、逆に情報量の多さにプレゼンテーションが押されてしまい、ひとつの音像というよりはそれを形成する無数の細かいディテールの観察といった感じで、音楽鑑賞用には向いていません。周波数特性はフラットでも、全体の流れよりも細かな要素の連続ばかりが目立つような感覚です。また、もっと安いオーディオインターフェースになると、基本的なスペックが不十分なのに、プロ用ということで出力ゲインを高めているせいで、音が乱暴で細かい部分が潰れた塊のような鳴り方になりがちです。

それらと比べると、Phonitor Miniはオーディオインターフェースよりもどちらかというとスタジオ用のモニターアンプのサウンドを連想します。コンシューマーに馴染みがあるメーカーだとBrystonやATCとかでしょうか。圧倒的なパワーでも暴力的にならず、悠々と音量が溢れ出すので、音が潰れるという感覚が無く、無意識のうちにボリュームを上げてしまう、というようなサウンドです。

Phonitor MiniとViolectric V281

私が普段メインのヘッドホンアンプとして使っているViolectric V281と比較してみると、同じドイツ出身でプロ機器メーカーであっても、両者の違いに驚かされます。(V281はバランス対応ですが、どちらもシングルエンドで比較しました)。

ViolectricはどちらかというとLehmannなどの直系で、世間一般のハイエンドヘッドホンアンプの王道デザインに近いです。

余談になりますが、なぜLehmannがそこまで重要なのかというと、10年ほど前、まだヘッドホンアンプというジャンルが定着していなかった頃、Lehmann BCLは唯一といっていいほどの真面目な据え置きトランジスターヘッドホンアンプで、多くのヘッドホンメーカーが開発時のテスト用そしてイベント試聴デモ用として使っていたからです。

そして同時期に、欧米の掲示板でヘッドホンアンプのDIY自作というのが一世を風靡しました。乾電池オペアンプ回路のCmoyとO2が有名になり、一方コンセント電源ではLehmann BCLをコピーしたLovely Cubeというクローン基板がeBayや中国の通販で出回るようになり、アルミケース付属の自作キットや完成品も販売されるようになり、それらを自己流で回路チューニングやアップグレードを行う人が増えて、新たなガレージブランドが生まれたり、近代のヘッドホンアンプのノウハウの礎になりました。

話がそれてしまいましたが、改めて両者のサウンドを交互に聴き比べてみると、Phonitor Miniが「押し」で、V281が「引き」という違いが感じられます。

歌手や楽器などの音像の距離感やサイズはほとんど同じです。どちらも優れた据え置き型アンプなので、音像が頭内で乱れることがはなく、しっかりとした定位置で鳴ってくれます。しかし、それらの音像の残響や、周囲の空気感のようなものが、Phonitor Miniでは音像からリスナーに向かって発せられるのに対して、V281では音像よりも遠く奥へと広がっていくような感じです。

もっと具体的に言うと、Phonitor Miniでは自分と音像の間に空気の行き交いがあるような感覚で、特に大音量とともにライブの音圧というか風圧の勢いみたいなものが伝わってくるので、それが「迫力」として感じられるのだろうと思います。これが先程BrystonやATCと言った理由のひとつかもしれません。

一方V281は空気が自分に向かってくる気配が無く、無限に広い空間に向かって拡散しているようです。そのため一歩退いた客観的な聴き方で、迫力という点では一歩劣るので、私の身の回りでもV281が嫌いな人は、退屈で面白くない、という意見が多いようです。

Phonitor Miniはどちらかというとロックなどが向いていて、V281はクラシック向きと言えるかもしれません。私は主にクラシックを聴くので、V281を買った当時も、Phonitor 2は候補にあったものの最終的にV281を選んでいます。

「ライブの空気感」なんて言葉をよく使いますが、ロックなどのように会場のPAスピーカーからの音を聴く事を前提としているものと、クラシックのようにマイクやスピーカー無しの生楽器音を聴くものでは、ライブ感に求めているものが全く違います。そういった意味でも、Phonitor Miniはスピーカーからの迫力を見事に再現できており、V281とは性格や毛色が違います。

周波数特性においては、Phonitor Miniの方が低域から中高域までの全体が引き締まっていて、パンチとか躍動感のようなものが強めです。特に低音の量もそれなりに多いのに、出音の一体感があるため、まるで中域の延長線のように自然に感じられます。

V281の方がそういった音の押し出しは控えめで、低域から中高域にかけては柔らかく、対照的に高音が綺麗に鳴ってくれるのが主な違いです。高音がシャープというよりは、キラキラと広範囲に広がっている感覚なので、特にオーケストラの管弦楽器との相性が良いです。Phonitor Miniは音の押し出しの強さの反面、高音がそこまで目立つほどではなく、意外なほどに定位置で実直に鳴っており、耳障りな刺激を生まないので、そのあたりのバランス感覚はさすがだなと関心します。

もう一つ個人的によく使っているiFi Audio micro iDSD Signatureと比べてみると、そちらも非常にパワフルで情報量も多く、たかがバッテリー駆動と侮れない素晴らしいサウンドで、そのまま使っても十分すぎるほど優秀なのですが、それをライン出力DACとして使ってPhonitor Miniを通すことで、確かに違いがあります。

iFiは解像感や質感の細やかなディテールが得意で、精巧な骨組みというか、ミニチュア的な感覚があり、Phonitor Miniを通す事で、そこにさらにアーティストの肉付けがされたような力強さが体感できます。どちらが良いかというよりも、二つ異なる表現なので、もしヘッドホンアンプを何も持っていないのなら断然micro iDSD Signatureを買うことをお勧めしますが、そこから次のステップアップを模索しているのなら、Phonitorを追加する価値は十分あります。

同じくポータブル機のChord Hugo 2と聴き比べてみても、iFiとChordそれぞれの独自技術によって音色の艶の出し方や質感といった差があるものの、Phonitor Miniと比べると迫力やスケール感といった点では根本的な差があるように感じます。

音色や質感の好みはDACで選んで、ヘッドホンアンプはできるだけパワフルでストレートなものが好ましい、と冒頭で言いましたが、Phonitor Miniはまさにそんな感じで、micro iDSDやHugo 2などをラインソースとして使っても、それらの音色の魅力や個性を濁さずに、さらに高次元な体験を生み出してくれます。

クロスフィード効果について

ひととおりヘッドホンアンプの音を聴いてみたところで、SPLが誇るクロスフィード効果をじっくり試してみました。

結論から言うと、このクロスフィードは私がこれまで使ってきた同様の機能の中では特出して優れており、常時ONで使っても全く不満が出ないレベルの効果です。

S-Logicとクロスフィード

先程言ったように、クロスフィードの効き具合を正しく体験するためには、開放型でドライバーが耳元で並行配置しているタイプのヘッドホンが好ましいです。密閉型やS-Logicなどのように特殊効果があるヘッドホンだと、クロスフィードの効果と混ざってよくわからなくなってしまいます。

そんなわけで、ATH-ADX5000を使って色々と実験してみたところ、SPLのクロスフィードは「スピーカーの指向性」を再現しているという説明通り、低音に向かうほどクロスフィード効果が強く現れ(つまり音が耳元から離れて前方から聴こえ)、高音は意外なほどに変化がありません。

角度スイッチを40°や30°に合わせると、女性ボーカルくらいの中高域でもほぼ変化が無く、22°に切り替えるとそれらにもクロスフィード効果が感じられますが、そうなると中域以下がセンターに寄りすぎて、明らかに狭く感じます。

意外と忘れがちですが、そもそもSPLのクロスフィードは「モニタースピーカーをシミュレートする」というのが目的であって、リアルなライブ感を演出するとか、録音の不備を解消するような機能ではありません。たとえばボーカルが左右どちらかのに張り付いているような作風であれば、それは録音自体が悪いのであって、クロスフィードでどうにかできるものではありません。


ECMの初期アナログ名作が最近ハイレゾPCMリマスターで登場しました。2017年のDSD版と聴き比べてみたら同じリマスターのようなので、そっちを持っている人は買い足す必要は無いと思いますが、持っていないならぜひ聴いてみるべき、歴史的な名盤揃いです。

この頃のECMやちょっと前のMPSなどの作品はステレオ感がかなり広く、特にベースを左右極端に振っている事が多いです。(逆に考えると、家庭用スピーカーで聴く場合にベースにステレオ感を与えるために、わざとここまで極端に仕上げていたとも言えます)。

こういう作品をヘッドホンで聴くと、左右のバランスが悪く、片耳だけ空気が揺れて違和感があるのですが、それがクロスフィードをオンにすることによって解消されます。

普段なら鼓膜をダイレクトに打ち付けるヘッドホン特有の低音の音圧が無くなり、前方から自分に向かって鳴っているように聴こえます。ヘッドホンに慣れている人は、最初のうちは、このワンクッション置いたような聴こえ方がもどかしく違和感があるかもしれませんが、そのうち慣れてきますし、スピーカーと同じ鳴り方という意味ではむしろ正しいです。(気に入らなければクロスフィードをオフにすればよいだけです)。

また、ピアノやギターなどのように低音までしっかり出る楽器の場合も、低音側の音色が耳元から離れることで、音像のサイズが楽器本来のものに近づきます。そもそもスピーカーを想定して仕上げたステレオ感をヘッドホンで聴く事で、必要以上に左右に広がって聴こえてしまっていたものを補正しているわけです。

実際スピーカーで聴いている印象にかなり近く、説得力があります。ただしスピーカーといってもスタジオの真面目なモニタースピーカーの事ですから、家庭で遠く離れたフロアスピーカーから部屋全体を豊かに響かせているのとは感覚が違います。しかし、普段スピーカーで音楽を聴いていて、ヘッドホンの頭内定位の煩雑さがどうにも我慢できないという人なら、SPLのクロスフィード効果を体験してみる価値は十分あると思います。

同じように、クラシックのオーケストラでも効果が実感できます。優れた録音ならクロスフィードの効果は無用なのでは、と思うかもしれませんが、実際に聴いてみるとかなり有用です。例えるなら、普段聴いているのは指揮者の立ち位置で、ヴァイオリンやチェロなど左右両翼のセクションが自分の周囲に展開しているような没入感がヘッドホンの魅力です。一方クロスフィードをオンにすることで、自分が観客席の位置に移動します。ステレオ感が一気に引き締まり、扇状に展開したオケ全体の演奏を鑑賞している感覚です。見通しの良さは高いままですし、高音プレゼンス帯の空気感はクロスフィードにあまり影響されず、広いまま周囲に展開するので、自分の立ち位置が変わっただけで、演奏を劣化させないのがSPLのクロスフィードの優秀なところです。

さらに私の場合、60年代のクラシック録音を聴く事が多く、その頃はまだモノラルとの差別化のためにステレオ感を極端に広げている作風が多かったので、ヘッドホンとの相性が悪い作品もあります。


先日HDTTから1960年ドラディのオランダ人が復刻され、確かに凄い録音だったのですが(Living StereoのチームがロンドンでDeccaと提携して録音した名盤です)、歌手陣を含めてステレオがあまりにも左右に広すぎて、ヘッドホンで聴くには辛いと感じていたところ、クロスフィードをオンにする事で、一気にリアリズムが向上して、現代の最新録音と比べても遜色無く楽しめました。

SPLのクロスフィードの最大のメリットは、周波数特性を変えたり、歌声など主要な音色を劣化させるようなデメリットが無く、むしろ引き締まるような良い効果がある、という一点に尽きます。これまで色々なクロスフィードを試してきた人なら同意してくれると思いますが、他社のクロスフィードはどうしてもギミック的な印象が強く、満足できない事が多いです。

たとえばiFi Audio micro iDSDシリーズは個人的に大好きなのですが、搭載している3Dスイッチだけはあまり好きになれません。SPLよりも高音を前方に持っていくような派手な効果で、ハイ上がりで耳障りに感じます。JRiver再生ソフトに搭載されているDSPクロスフィードは五段階に調整できますが、どれを選んでも、ボーカルなど肝心の音色が貧弱になって勢いが失われます。他のソフトやVSTプラグインなども、似たような音痩せや、妙なコームフィルターのような息が詰まる感覚が拭えません。ネイティブ再生からサンプルレート変換した時と似たような感覚なので、デジタル上で演算することで何らかの悪影響を及ぼしているのかもしれません。

それらと比べると、私がSPLのアンプを使う時は、常時クロスフィードをオンにしています。ふと気がついて「やっぱりオフで聴いた方がピュアーなんじゃないか」と心配になってオフにしてみても、数分聴いてから「やっぱりオンで聴いたほうが断然良い」と戻してしまいます。普段はピュアオーディオなどと言って、余計なフィルターを通すのは心情的には嫌いなので、「やっぱり騙されているのではないか」と定期的に無意識に再確認してしまうのが我ながら面白いです。

おわりに

SPL Phonitor Miniは同社ラインナップの中でもエントリークラスといえど、スペックと音質の両方において圧倒的なパフォーマンスを誇る、強力なヘッドホンアンプです。コンセント電源の据え置き機のメリットを体感するには最良のスタート地点だと思います。

膨大なパワーと広いダイナミックレンジのおかげで、力強く迫力のあるサウンドは特にロックなどとの相性が良く、自慢のクロスフィード回路と合わせて、まさに前方のスピーカーから音を浴びるようなリアルな体験が味わえます。ただ押しが強いだけでなく、乱雑な音楽をしっかりまとめあげてくれる力も持っています。

唯一の注意点として、私の環境では、他のアンプと比べて設置条件によるノイズフロアへの影響が気になる事もあったので、性能を引き出すためには電源アース周りやヘッドホンケーブルの取り回しにも配慮する必要があるかもしれません。

残念ながらすでに生産終了した旧式ではありますが、安く手に入る機会があればぜひ検討してみるべきですし、もうちょっと余裕がある人なら現行上位モデルのPhonitor 2やPhonitor xは市場最高峰クラスのヘッドホンアンプとして有力な候補です。

今回じっくりと試聴してみて、SPLはやはり優れたアナログアンプ技術を持つプロ機器メーカーなのだということをつくづく実感しました。

同じ据え置き機でもコンシューマーブランドとは一線を画する合理的な設計思想ですし、さらにプロオーディオといってもUSBオーディオインターフェースなどのDAW系メーカーとは一味違う存在です。

プロ用アンプというと、昔だったらアンペックス、アルテックやクラウンを家庭用として鳴らす、なんていうのが流行ったのを思い出します。今でこそ骨董品ですが、当時としてあれほどの性能を一般的なコンシューマー機器で実現するのは困難でした。

レコーディング業界でも、往年のNeve、API、SSLなどを通さないと出せない音があるということで、現在の第一線スタジオでもビンテージ品が重用されていますし、それらの音を再現するレプリカなんかも出ているくらいです。SPLの製品も将来的にはそれらと同じように、時代を代表するビンテージ品として扱われるのかもしれません。

一方コンシューマー向けの据え置きヘッドホンアンプを見てみると、とくに老舗ハイエンドオーディオブランドはあいかわらずヘッドホンアンプというものを軽く見ているようで、たとえばストリーミングDACなどのラインレベル機器に「とりあえず最近流行っているヘッドホンとやらに便乗しておくか」という程度の扱いで「高音質ヘッドホンアンプ搭載」なんて自慢している例も多く見られるようになりました。

もちろんそれなりに良い音で鳴るでしょうし、大半のヘッドホンを鳴らすには問題ないでしょう。しかし、スピーカーと違って、ヘッドホンとなると様々なメーカーやモデルをあれこれ挿し替えしたい、私みたいなコレクターも少なからずいるわけで、IEMイヤホンから平面駆動型まで全てのヘッドホンを正確に駆動できるアンプというものが求められます。ところが、いざそういったアンプを探してみると、意外と選択肢は限られています。

真面目に作っている一流メーカーであっても、アンプ設計にあたって特定のヘッドホンだけを想定しているのか、そこから逸れると相性問題が顕著になる例も多いです。同じブランドでヘッドホンを出しているならなおさらで、相性のマッチングや相乗効果というのは実際に起こります。

一例を挙げると、このあいだのHiFi News誌に、とある高級オーディオメーカーの「高音質ヘッドホンアンプ搭載」ストリーマーのレビューがありましたが、出力は8Ω2W程度と優秀なものの、最大出力電圧は7Vrms、出力インピーダンスは5Ωということで、高インピーダンスヘッドホンにはゲインが中途半端、マルチBA型IEMイヤホンにはダンピングファクターが中途半端と、どうにも使いづらいスペックでした。このメーカーは系列会社に一流ヘッドホンブランドがあり、そこのモデルを鳴らすにはピッタリのスペックです。

もちろんどんな設計思想であろうと間違いではありませんし、近頃は色々な高級ヘッドホンアンプが手に入りますが、そんな中でも、SPL Phonitorシリーズほど真面目に高ゲイン・高パワー設計を追求して、ヘッドホンをしっかりと「鳴らしきる」事ができるメーカーは希少です。

手軽さではDAPやポータブルDACアンプには敵わないかもしれませんが、もし優れたヘッドホンを手に入れたのなら、一度はPhonitorで鳴らしてみることをおすすめします。単純に大きな音量だけでなく、これまでとは違う体験ができると思います。