2024年3月9日土曜日

iBasso DC-Eliteの試聴レビュー

iBassoからDACアンプ関連の新製品が続々登場しているので、いくつかまとめて試聴してみようと思いました。

DC-Elite D16 Taipan PB5 Osprey

ドングルDACの最上級機DC-Elite、ポータブルDACアンプD16 Taipan、NutubeアナログアンプPB5 Ospreyの三種類です。まず最初に一番シンプルなDC-Eliteから聴いてみます。

iBasso

iBassoというとFiioと並ぶ中国最古参のポータブルオーディオメーカーなので、古くからイヤホンを使っている人なら懐かしい思い出がたくさんあるだろうと思います。

発足当初はポタアンに強いメーカーというイメージでしたが、DAPやドングルDACなど時代に沿った製品ジャンルを展開しており、最近ではイヤホンなんかも好評を得ています。

緑色のケースで統一されています

今回試聴してみた三機種はセットとして登場したわけではありませんが、どれも緑色レザーケースで、内部回路にはiBasso独自の抵抗スイッチ式ボリュームノブを採用しているという共通点があります。

D16とPB5の方は次回にして、今回はまずUSBドングルDACのDC-Eliteを見てみます。ボリュームノブについてや三機種の出力比較なども今回にまとめておきます。

デザイン

DC-Eliteは高価なだけあって、デザインも他のドングルDACとは一線を画する高級感があります。シャーシはなんとチタン削り出しだそうです。

価格相応にしっかり作られています

裏面

高級感あふれる削り出しのシャーシとガラスパネル、側面にはボタンがあり、入力はUSB-C、出力は3.5mmシングルエンドと4.4mmバランスです。ちょっとわかりにくいですが、ボタンの隣にはLEDがあり、停止時は赤、PCMは緑、DSDは青になります。

iBasso UAC スマホアプリ

さらにスマホアプリでデジタルフィルターやDSDボリューム補正などの設定ができ、側面ボタンを長押しすることでS/PDIFデジタル出力モードに切り替わるという便利機能も用意されています。

ちなみにAndroid用アプリの名前はiBasso UACというのですが、私が試した時点では、Google Play経由のはバージョンが古すぎてDC-Eliteが認識されませんでした。まずGoogle Playでインストールしたバージョンを一旦アンインストールしてから、iBasso公式サイトからAPK版をダウンロードしてインストールしたらDC-Eliteが表示されました。

ボリュームノブのデザインは良いのですが・・・

iBasso独自の大きなボリュームノブはシャーシの突起で左右を保護されているので、意図せずに回ったり、ぶつけて壊してしまう心配は無いと思いますが、これのせいで操作しにくいです。

ノブ自体がそこそこ固く、指一本ではクルクル回せないので、シャーシの隙間から両端を指でつまんでカチカチ操作するような感じになり、小刻みにしか回せません。そのためか、側面ボタンはPCM Volume Reduction buttonと呼ばれており、デジタル上で瞬時に音量が落とせるアッテネーター的な機能が割り当てられています。

DC-EliteとDC06PRO

一つ下のモデルのiBasso DC06PROと比較すると、DC-EliteはドングルDACとしてかなり大きいことがわかります。

個人的に、ドングルDACは「イヤホンケーブルの延長線」という考えがあるので、使用時に自重でUSB-Cが外れてしまうようでは困るのですが、その点DC-Eliteはチタンで意外と軽量なので、簡単に外れるようなことはありませんでした。

付属ケース

付属ケース

ケース無しだと角が尖りすぎています

付属ケースは緑色の厚手なデザインで、本体をしっかり保護してくれます。

PB5やD16と比べてもDC-Eliteの方がシャーシの高級感があり、私自身もデザインがカッコいいというだけで購入したくなりました。

しかし実際に使ってみると、シャーシの角の部分がかなり鋭角に尖っていて、ケースに入れていないと怪我をする心配があるため、購入を断念しました。

ケース無しではポケットに穴が開くと思いますし、アメリカなら民事裁判にでもなりそうです。こういうコンシューマー製品というのは、漏洩電磁波や衝撃落下、温度湿度テストなどの他に、子供が触ったら危険な尖った部分を避けるなど、国の基準以上に厳格な設計ルールがあるメーカーが一般的なのですが、そのあたりはiBassoなど中国系メーカーはまだ意識が低いのかもしれません。

D/A変換チップとアンプ

近頃はほとんどのドングルDACがシーラスロジックCS43131を採用しているのに対して、iBassoはDC06PROにESS ES9129C、そしてDC-EliteにはロームBD34301EKVを搭載しています。

BD34301EKVは2020年に登場した比較的新しいD/Aチップで、ESSと旭化成の二強時代に乗り込んできたことで話題になり、ラックスマンなどいくつかの据え置きハイエンド機が採用しています。具体的になにか画期的なチップというわけではありませんが、これまでオーディオ系に縁が無かった、パワー制御系に造形が深いローム社が出した力作という点でもユニークです。

ドングルDACによく使われているCS43131やES9129Cは5mm以下の米粒のように小さなICチップで、その中にヘッドホンアンプ回路も内蔵されているのに対して、BD34301は12mm角の大きなチップで、電流出力なので、そこからI/V変換やヘッドホンアンプ回路を別途追加しなければなりません。そのためDC-Eliteではさらに6個のオペアンプを通しているそうで、それでも全体の電力消費をUSBバスパワーの範囲に収めているのは凄いですし、高価な理由にも説得力があります。

バスパワー電源

私の勝手なルールとして、バッテリーを内蔵していて単独で起動できるものはポタアンやポータブルDACアンプと呼んで、それらに対して、電源がUSBバスパワーに依存しているものをドングルDACということにしています。

近頃は様々なメーカーからドングルDACが出ており、それぞれ音質メリット主張しているわけですが、結局のところUSBバスパワーに依存するため、ヘッドホンアンプとしての最大出力も上限が決まってしまいます。そのため、D/A変換チップの銘柄などで差別化は出来ても、大型ヘッドホンを鳴らすなど高出力が欲しい場合は、やはりバッテリー駆動のDAPやポタアンが必要になってきます。

ところで、USB PD規格などUSB-C端子で高電力を供給できる機器が増えてきていますが、たとえばスマホがUSB PDで20Wの充電に対応していたとしても、スマホからドングルDACに20Wを供給できるわけではありません。もし出来たとしても、それでスマホのバッテリーがすぐに空になっては困るので、各スマホメーカーが現実的な上限を設定しています。

その最たる例がアップルで、iPhoneも最近ようやくUSB-Cになりましたが、昔のLightning端子は5V100mAつまり500mW程度が上限で、しかもiPhoneのバッテリー残量や他の条件に応じて電力供給を制限しているため、ドングルDACを接続してみたら、昨日は問題なく動いたのに今日は「このアクセサリは電力使用量が大きすぎます」とエラーがでて使えない、なんてことがよくありました。

そのため、LightningのiPhoneでも確実に動かすために、ドングルDACメーカーは300-400mW程度のバスパワー駆動に上限を設定しているモデルが多かったのですが、最近はもうちょっとスマートに、Lightningでもかろうじて動くものの、高出力なUSB-Cに接続するとアンプがパワーアップして音が結構変わるモデルも増えてきました。(逆に言うとLightningや古いスマホで使うと音質が悪くなる可能性もあります)。

今回iBassoはDC-Eliteとは別にCB19というUSB-CのY分岐ケーブルを発売しており、スマホのバスパワーとは別にポータブルバッテリーを接続することで補助することも提案しています。パワーだけでなく、クリーン電源に接続すれば音質アップにもつながるそうです。

ためしに大音量でヘッドホンを鳴らしながらUSBパワーチェッカーで確認してみるのも面白いかもしれません。

USBチェッカー

DC06PROだと

Y分岐を活用して消費電流を測ってみました。上の写真では、スマホのバスパワー給電に依存しないように外部電源ハブを通して、フルスケールのサイン波信号を再生しています。4Ωの負荷を与えてボリュームを最大にした状態では550mA、2.8Wを消費しています。全く同じ条件でDC06PROをテストしてみると416mA、2.1Wでした。

ただし、これはフルスケール信号で音が歪みまくっている状況での電流量です。実際の音楽信号はボリュームノブを最大まで上げても波形が常に最大値に張り付いているわけではないので、実用上はここまでの電力は消費しません。

音楽再生中

たとえば、DC-EliteでDan Clark Audio E3をバランス接続で音楽を聴いていると、ボリュームノブはほぼ全開にする必要がありますが、電流消費は170mA、858mWくらいでした。これはヘッドホンに858mWの音楽信号が流れているというわけではなく、USBインターフェースやD/A変換回路を含めてDC-Eliteがそれだけ電力を消費しているというだけです。

出力

いつもどおり0dBFSの1kHzサイン波を再生しながら、負荷を与えていって歪みはじめる(THD > 1%)最大出力電圧(Vpp)を測ってみました。一般的な使用条件を想定して、AndroidスマホからOTG接続した状況です。

DC06PROと比較してみると、たしかに30Ω以上あたりからはDC-Eliteの方が高出力が得られるようです。それでも、やはりグラフを見ると定格で安定して出力できるのは370mWくらいが上限のようです。

公式スペックによると690mW出せるとありますが、上のテストは最大出力を出し続けている状態なので、実際の音楽信号のような瞬間的な負荷なら、コンデンサーなどで蓄えた電力で確かに690mWくらいは出せるだろうと思います。この手のドングルDACをテストしているとわかるのは、負荷を与えた瞬間は耐えられても、それが維持できず、数秒間放置していると上のような数値に徐々に落ち着いていきます。

無負荷時にボリュームを1Vppに合わせて、負荷を与えていったグラフです。DC-EliteとDC06PROのどちらもしっかりと横一直線で、低インピーダンスのIEMイヤホンなどを正確に駆動できます。

今回あわせて試聴したD16 TaipanとPB5 Osprey、さらに同時期に発売したDX260 DAPと比較してみます。どれもバランス出力での最大出力電圧です。

アナログポタアンのPB5が一番出力が出るので、他のモデルからブースターアンプとして接続するのも面白いかもしれません。

ボリュームノブ

今回試聴してみた三機種に共通している点として、ボリュームノブにiBasso独自のステップアッテネーター方式を採用しています。

実際に使ってみると、使い勝手の不便さを踏まえると、個人的にそこまで魅力は感じられませんでした。これはかなり賛否両論に分かれるギミックだと思います。

いわゆるアナログボリュームなのですが、一般的なボリュームポットとは違い、ノブを回すと段階的に異なる固定抵抗に切り替わるという仕組みです。そのためボリュームポットにありがちなノイズや、左右チャンネルバランスの狂い(ギャングエラー)が発生しないというメリットがあるわけですが、ステップ単位でしか変化しないので、細かい微調整ができないというデメリットもあります。

とりわけ今作はゼロから最大まで24ステップということで、ずいぶん大味な調整しかできません。

DAPでよく見るデジタルボリュームというと0~100や0~150が一般的ですが、それが0~23しか無いと想像すれば使いづらさがわかると思います。

フルスケール信号でステップごとに出力電圧を測ってみると、こんな感じになりました。dB表示でほぼリニアになります。

このような固定抵抗をカチャカチャと切り替えるタイプのボリュームノブというのは、自作真空管アンプとかで稀に見ますが、ステップの粗さというデメリットが大きすぎるため、最近はほとんど見ることがありません。

同じようなアナログ固定抵抗式のボリュームでも、据え置きオーディオ機器ではデジタルリレー制御式の方が一般的です。

たとえば私が自宅で使っているViolectricヘッドホンアンプは、デジタル制御で7つの異なる抵抗の組み合わせのリレーを開閉することで、アナログボリュームでありながら、2^7 = 7bit = 128ステップの調整ができます。それでもステップの細かさが足りないということで、後継機Niimbusでは8つの抵抗の256ステップにアップグレードされています。

また、Fiioなどが使っているTIのPGA2311のように、ICチップの中に128ステップの固定抵抗回路がパッケージ化されているものもありますし、もっと言うなら、アナログボリュームでなくとも、最近はデジタルボリュームも高性能化しているため、大昔のようにデジタルボリュームは音が悪いと主張する人も少なくなりました。

そんなわけで、iBassoがボリュームノブに24ステップの固定抵抗を選んだのは、ずいぶん珍しい判断です。それでも実用的なら良いのですが、いざノブを回してみると、ステップごとに、左右の片方もしくは両方から音が鳴らなくなる不具合が頻発して、使っていてイライラさせられました。接触不良なのでしょうけれど、DC-Elite、D16、PB5の三機種とも同じ問題が発生しますし、ネットでも同様のコメントが多かったので、個体差や初期不良というわけでもありません。

iBassoとしては、オーディオファイル的に魅力的な機能を搭載しようと考えたのだと思うのですが、使いにくさというデメリットの方が目立ってしまったようです。

音質

DC-Eliteの試聴にはHiby RS6をUSB OTGトランスポートとして使いました。イヤホンは普段から使い慣れているUE LiveやIE600・IE900などです。

Hiby RS6、DC-Elite、IE900

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ChandosレーベルからAndrew Davis指揮BBC Philharmonicのストラヴィンスキーを聴いてみました。ヴァイオリン協奏曲はJames Ehnesが参加しています。

つい先日ChandosがNaxosに買収されたニュースを見ましたが、昨年のBISの件につづき、インディペンデントの統合が相次いでいるようです。そんな中でも今作は相変わらずChandosらしい王道のアーティストとレパートリーを完璧に演じており、BBC本拠地マンチェスターMediaCityでの録音も理想に近いです。

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Criss CrossレーベルからJim Rotondi 「Over Here」を聴いてみました。

最近は主要アーティストはレーベルをまたいでリリースしているのですが(RotondiだとCellar LiveやSmoke Sessionsなど)、それぞれバンドのラインナップが結構変わるのが面白いです。とくにCriss Crossは意外な組み合わせが多く、今作でも今作GrissettのピアノやKostadinovicのドラムなど新鮮さを加えています。


DC-Eliteを聴いてみた第一印象として、意外なほどに「ロームDACっぽい」サウンドが感じられたので驚きました。

数々のオペアンプ回路を経ても、D/Aチップ特有のサウンドが伝わるのかという疑問はありますが、私自身がこれまでBD34301EKV搭載DAPや評価ボードを鳴らした時に近い感覚が得られたので、私の頭の中でのロームDACで想像するサウンドにピッタリ符号します。

逆に言うなら、D/A回路のサウンドがそのまま伝わってくるくらい、DC-Eliteのヘッドホンアンプ回路は透明感があり、余計な濁りを加えていないという事でもあります。どちらにせよ、ドングルDACとしては極めて優秀なサウンドであることは確かです。

独自のボリュームノブのおかげかノイズは極めて低く、IE900で聴いても音源の細かな情報までしっかりと聴き取れます。IEMをメインに活用するなら、あえて高出力なDAPを使うよりも、むしろDC-Eliteを選んだ方が綺麗な鳴り方を楽しめると思います。

「ロームDACっぽい」というのをもっと具体的に表現するなら、あまり高解像なシャープさにこだわっておらず、むしろ淡さも感じられる中で、全体がぼやけるのではなく、背景の臨場感と前に出てくる主役の音像がしっかりと分離して描き分けられているあたりが優秀です。このあたりは最先端のドングルDACよりも、往年の優れたCDプレーヤーのような凝った音作りという感覚があります。

これは、最近ヘッドホンからオーディオに入った人には伝わりにくいと思うのですが、昔のCDプレーヤーというのは、オーディオ回路がCDメディアそのもののスペック(44.1kHz・16bit)を凌駕してしまったため、ただスペックに忠実というだけでなく、それ以上に魅力的な音作りが求められていた時代がありました。しかし現在メディアが384KHz・24bitなどに引き上げられたせいで、また再生周波数やダイナミックレンジなど、スペックで競争する時代に逆戻りした印象があります。

そんなわけで、CD世代のオーディオ機器の多くは、たとえば音場や音像の質感表現に力を入れていたわけですが、しかしそれらは過剰なまでのアナログ回路への物量投入(つまり最短経路とは逆の思想)で作り込まれた世界でもあったので、それの片鱗のようなものを小柄なDC-Eliteで体感できたのは面白いです。その点はやはりiBassoというメーカーの強さが現れています。

Criss Crossのような王道のジャズには最適ですし、もっと遡って、CD音源、たとえばK2 XRCDとかを聴きたくなるようなサウンドといえば伝わるでしょうか。CDだから帯域が狭くて限界を感じるというのではなくて、CD音源をDC-Eliteがどのように仕上げてくれるのか聴いてみたくなります。

CDを魅力的に聴かせるというと、系統としてはiFi Audioと似ている感じもありますが、あちらはもっと鮮烈で派手めなので、イヤホンとの相性が気になる事もあるのに対して、DC-Eliteはもうすこし落ち着いているあたりが、昔のハイエンドCDプレーヤーを連想させてくれます。さらに192kHz・24bitやDSD128などのハイレゾ音源を聴いても、DC-Eliteらしい緩い響きと音像の描き分けが引き継がれているのは優秀です。逆にいうとCDとハイレゾ音源の違いはそこまで明確でないかもしれません。

DC EliteとDC06PRO

iBassoから一つ下のモデルDC06PROと交互に聴き比べてみました。これらはサウンドが根本的に違うので、価格差以上に用途や好みが分かれそうです。

DC-Eliteは音像を強調して浮かび上がらせるあたり音作りを色々と工夫している感覚があり、「このアルバムをDC-Eliteで聴いてみるとどんな感じだろう」と思わせる楽しさは、まさにハイエンドオーディオの世界です。その一方で、DC06PROの方がスッキリとストレートな鳴り方に徹しており、まるでアンプを通さずにラインソースをそのまま聴いているかのような高解像な清々しさがあります。

クラシックのハイレゾ録音ならDC06PROの方が実直で良いかもしれませんし、たとえばドングルDACをライン出力として他の機器に接続したい場合にもDC06PROの方が良いと思います。飽きが来ないサウンドと言えますが、iBasso以外のメーカーでもDC06PROっぽいサウンドのドングルDACはきっとあるだろうなと思えてしまいます。その点DC-Eliteは他に類を見ないユニークな存在です。

イヤホンで十分な音量を得る能力に関しては、どちらもバスパワー駆動なのでそこまで大差なく、どうしてもDC-Eliteでないと駄目だという状況は無いと思いますし、完全に音質の好みだけで選ぶべきだと思います。そう考えると価格差に見合ったアップグレードなのかという疑問も湧きますが、高級オーディオというのはそういうものです。

ためしにDan Clark Audio E3などの大型ヘッドホンも鳴らしてみましたが、DC-EliteとDC06PROのどちらもボリュームを最大付近まで上げれば音量は十分に得られるものの、やはり音のメリハリが不足してカジュアルな鳴り方になってしまいます。高音波形の瞬間的な出力は十分でも、エネルギーを一番消費する重低音を安定して駆動することができないのか、浮ついたフワフワした感じです。Gradoなど感度の高いヘッドホンを小音量で鳴らしている人なら良いかもしれませんが、それ以外ではDC16やPB5など大型アンプが欲しくなります。

おわりに

iBasso新作の三機種の中から、ひとまずDC-Eliteを試聴してみました。ドングルDACの相場は1~3万円くらいだと思うので、7万円という値段を払うべきかというのは悩ましいところですが、サウンドとシャーシデザインの両方で、低価格帯モデルとは十分に差別化出来ていると思いました。

個人的に、シャーシの角が尖りすぎている点と、ボリュームノブのステップが粗い点、そしてノブの接触不良で片側しか音が出なかったり、何度もカチャカチャ回さないといけない点といった実用面でのマイナスが多かったため、購入は断念しました。

7万円は高価かどうかについては、まずiBassoなど中国のメーカーは新製品を怒涛のごとく出し続けているので、せっかく高価なモデルを買っても一年も待たずに陳腐化することが多く、発売から数ヶ月経ってしまったらもう新製品の心配をする必要が出てきて、なかなか思い切りがつかないという欠点があります。その点日本のメーカーなど、同じモデルを五年も出し続けている方が高価な買い物では安心感があります。

ではドングルDAC以外と比較すると、やはり許容できるサイズで候補が限られてくるので、意外と穴場になっています。iBassoのDX240やDX170なら7万円以下でも買えますが、イヤホンを鳴らすだけならDC-Eliteの方が良いかもしれません。これらDAPの製造コストの大半はタッチスクリーンやAndroid OS関連の部品になるので、本体が大きいからといって、肝心のオーディオ回路がDC-Eliteよりも優れている保証はありません。唯一のメリットはバッテリー内蔵なのでスマホの電力を消費しない事でしょうか。

そうなるとポタアンも選択肢に入りますが、D16 TaipanやFiio Q15など、やはり大型ヘッドホンも駆動できることがセールスポイントになっているので、サイズがかなり大きくなり、もはやポータブルとしては厳しくなってきます。

結局のところ、中華系のメーカーが「IEMイヤホンはドングルDAC、大型ヘッドホンはポタアン」という使い分けを明確にしているため、ドングルDAC以外ではIEMに特化したコンパクトな機器が少ないというのが現状です。

今後パワー競争も一段落ついて、「高純度なイヤホン駆動に特化した、小型バッテリーを内蔵した高級ポタアン」みたいなものも出てくることを期待したいですが、今思い浮かぶものというと、Fiio BTR15や以前試聴したQuloos MUB1のような小型多機能なトランスミッター兼ポタアンみたいな製品が多いです。そうなると、現状ではDC-Eliteも悪くない選択肢だと思います。

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